第9夜 奇妙な館
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第9夜 奇妙な館
#アニメ45話
「
「はい」
おなまーえはティエドールに
神田とマリには食料の買い出しに行ってもらっている。
ローマでの任務以来、おなまーえはサポート系の能力が使えず、攻撃系の能力に頼ってきた。
苦手分野を伸ばすいい機会ではあるが、もともと使えてた技が使えなくなるのは奇妙だし、何かと不便である。
「攻撃とかはできるんだよね?」
「はい。なのでシンクロ率の問題ではない気がして。」
「ふぅむ…」
実践してみても相変わらず輪郭しか成さず、矢が完成しない。
透き通ったガラスのような矢ができては崩れる、そんな感じだ。
「なんか心境に変化でも起きた?」
「まぁ、あったっちゃありましたが……」
神田への恋心を自覚したこと。
だがそれが関係してるとはとても思えなかった。
「……若いってのはいいねぇ」
ティエドールはしみじみと、暖かい眼差しをおなまーえに向ける。
「え!?な!ちが、違います!!」
「えー?僕は別に何も言ってないけど、何が違うんだーい?」
「え、あっ」
ニマニマとティエドールは笑った。
いけない、この人のペースに流されている。
彼女はげふんと1つ咳払いをする。
「とりあえずその悩みを解決せんことにはどうしようもないさ」
「そういうもんですか…」
「なおるまでは私と一緒に下がっているかい?」
「いえ、いい機会なので攻撃系の技をもう少し活用しようかと」
「良い心がけだ」
街から神田とマリが帰ってくる姿が見える。
この距離なのに神田と目が合い、おなまーえはふいっと目を逸らした。
「…ユー君とも早く仲直りしてあげなさい」
「べ、別にあの人とは何もありませんから!」
見透かされ、おなまーえは赤面した。
****
ここはアメリカ大陸。
ヨーロッパから海を渡り、一行は西へと進んでいた。
田舎道のため美しい自然が広がり、空気も非常に澄んでいる。
「あら〜」
故に我らの師匠は少し歩くたびに足を止めてその景色を味わっていた。
「美しい」
すっと息を吸うと、彼はスケッチブックを開く。
おなまーえは苦笑して前を歩く2人を呼び止めた。
「2人とも」
「あぁ…」
げんなりした様子で神田とマリは振り返る。
短気な神田がイライラした様子でティエドールに歩み寄った。
「元帥、そんなことをしている時間はないはずですが」
「ここを訪れるのは一生に一度かもしれない。この風景を絵に残せるのは今この時だけだよ。」
もともと画家であったティエドールは芸術に関しては時間と労力を惜しまない。
気持ちはわかるが、振り回される周りの身にもなってほしい。
「すぐ書き終えるからさ」
「師匠、あちらからの景色も良さそうですよ」
「お!おなまーえちゃんナーイス!」
スケッチブックを胸に抱え、ティエドールは走る。
余計なことを言いやがって、と言わんばかりの目を神田に向けられたが、おなまーえは相手にせず目も合わせなかった。
「………」
神田も眉を顰めて小さく舌打ちをする。
2人の間には確かに大きな隔たりがあった。
マリもそれを察して敢えて神田に声をかける。
「諦めろ。師匠はああいう人だ。」
「…わかってる」
合流してから、おなまーえは神田のことを先輩と一切呼ばない。
彼を呼んだとしても「神田さん」という、どこか他人行儀な呼び方である。
マリは耳が良い。
近くにいる人の心音であればすぐに聞き分けられる程である。
だが神田と話しているときのおなまーえの心音は複雑で、それは彼女の心そのものを表していた。
「まぁ、これはこれは」
先に進んだティエドールが声を上げる。3人は声の方に歩みを進めた。
「先客だ」
「ん?あぁ、こんにちは!」
師匠の視線の先にいたのは中年の男性。
彼もまた絵描きなようで、小さなスケッチブックを持っていた。