1. 終わりの始まり
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The beginning of the story.
皆様は初恋の時の記憶を思い出せるだろうか。
新学期で一目惚れ。
思わぬ一面を見てギャップに惹かれる。
気づいたら好きになっていた。
おそらく十人十色、様々な経験があることだろう。
今回の物語の主人公である少女の初恋は、完全に一目惚れだった。
煌びやかな社交界の中、ひっそりと壁際に立つあの紅い眼に込み上がるものを感じ、心を奪われてしまったのである。
これは恋のために生きた少女の、報われない滑稽なお話。
****
ぴちゃぴちゃと2人分の足音が響く。
どこまでいっても果てのない不思議な空間に、男が1人と、まだ年端もいかない少女が1人。
彼らはもうかれこれ数時間歩き続けていた。
男がぴたりと足を止めると少女も立ち止まった。
「…ここからなら出ることができます」
漆黒の水面の上にキラキラと光る場所を見つけた。
彼はここが出口だという。
「◼︎◼︎◼︎はここから出ないの?」
「私は別のところから出ます」
「……お別れ?」
「ええ。あなたはここにいてはいけません。もう二度とチェインと契約はしないでください。」
「…うん」
彼の赤いローブの裾を握っていた手を放し、少女は迷わずまばゆい光に飛び込んだ。
(やっと出られる…!)
怖い思いをした。
寂しい思いをした。
何度も何度も"彼"の名を呼んだ。
やっとだ。
ここから出られる。
「…っ…痛いっ…!」
光の中で全身がバラバラに引きちぎられ、無理やりくっつけられ、そんなことを何度も繰り返しているうちに――彼女の脳は限界を迎えた。
――ドンッ
次の瞬間、ひんやりとした床に彼女は打ち付けられる。
「痛っ…っ…」
顔を歪め、ゆっくり起き上がろうとした。
「…汝」
頭の上から声がしたため彼女は顔を上げる。
赤い髪の美しい男性が、細い切れ目をこれでもかというほど大きく見開いていた。
「汝…どこから来た?」
「…ど、こ…?」
ぼやけた思考を動かす。
(…わたしはどこにいた?)
記憶がひどくあやふやだ。
何かを握っていた感覚がたしかに手に残っているのに、どうしてもそれが思い出せない。
(たしかだれかにたすけてもらって……だれに?なにから?)
ひどく頭がいたい。
思い出そうとしても文字が掠れたようにように、記憶を思い出すことができない。
「なにも…おもい、だせない…」
彼女は頭を抑え、赤色の目を歪めた。
「ほう。ならば問いを変えよう。汝は何者か。」
なにもの…?
なまえのことだろうか。
なまえ…
なまえ…
「うっ…」
――『おなまーえ様!!』
一瞬チカッと記憶がフラッシュバックし、誰かに名を呼ばれた気がした。
「……おなまーえ…?」
「おなまーえか…」
男は値踏みするようにおなまーえを頭から足まで見下ろす。
「…ふむ…暇つぶしにはなろうか」
赤い長髪の彼は不敵に笑った。
end