#09
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#09 デッドエンドダンスホール
高速道路の奥に厚生省のノナタワーが見えてきた。
遠目から見ても、エントランスの警備システムは木っ端微塵に破壊されているのがわかる。
先程、宜野座経由で状況を確認したところ、ノナタワーに槙島率いる武装集団が侵入したことは疑いようのない事実だという。
――プルルッ
唐之杜から通信が入った。
『やほー、おなまーえちゃん』
「どうしたんです?唐之杜さん」
『ちょっと気になることがあって。聞いてもいいかしら?』
「どうぞ」
おなまーえは視線を正面から逸らさずに答えた。
『単刀直入に聞くわ。秀くんと何かあった?』
「……それは事件に関係のあることですか」
縢秀星と何かあったかと。
答えたくないという気持ち以上に、いま聞く必要のあることか甚だ疑問だった。
『いいえー』
唐之杜は艶っぽくウインクをした。
『でもね、秀くんあなたに謝りたいって言ってたわよ』
「謝る?何を?」
『一番好きなやつに大嫌いって言っちまった、って』
「……」
そういうのはずるい。
本当にずるい。
おなまーえは下唇を噛みしめる。
鉄の味が口の中に広がった。
まるで学校の教師のように、唐之杜は優しい声で続ける。
『相当気にしてるっぽいから、あとで話聞いてあげてね。あの子も悪い子じゃないってのはあなたが一番よく知ってるでしょ?』
「…気が向いたら」
素直になれず、おなまーえはプイッとそっぽを向いた。
唐之杜はくすくすと笑うと、表情を真剣なものに戻した。
『で、ここからが本題』
「これが本題じゃなかったんですか」
『その秀くんと連絡が取れなくなったの』
「え?」
『槙島聖護が上の階に行ったっぽいから、コウちゃんと朱ちゃんがそっち向かったんだけど、地下に向かった秀くんとB4から先は通信ができないの。』
頭の中に様々な可能性がよぎる。
チェ・グソンによる電波ジャミング?
いや、いくらアイツでもこんな短時間でジャミング装置を限定的に動かすなんて困難だろう。
だとすれば、考えられるのは元々が圏外だったということ。
ノナタワーの前には大型のバスと、公安局の乗用車が一台止まっていた。
槙島達が乗ってきたものと、朱たちが乗ってきたものに違いなかった。
おなまーえはドミネーターを抱え、急いでタワーの中に入る。
『おなまーえちゃんは上と下、どっちに行く?』
「もちろん下に決まってます。ナビお願いします!」
唐之杜のナビ通りに足を進める。
自然と早歩きになるのは、彼の無事を一刻でも早く確かめたいからか。
使われていないような施設も通り抜け、みょーじおなまーえはだだっ広い空間に出た。
『監視カメラで映像で追跡できたのはそこまでよ。図面だとただの行き止まりなんだけど。』
唐之杜の言葉は半分ほどしか聞こえなかった。
だだっ広いホール。
行き止まりと言われたその奥の壁は剥がされ、地下へと続く階段を見つけた。
「……唐之杜さん、このタワーって私の今いる地下4階で終わりのはずですよね?」
『一応そのはずだけど』
「やだなぁ、もう…」
壁の奥の階段は底が見えないほど深く、だが照明は煌煌と灯っていた。
『そういえば、秀くんも同じこと言ってたわね』
「じゃあ私もここ降りますね」
『気をつけて。下に行った奴らも武装はしていたから。』
「うん、気をつける」
おなまーえは奈落へと続く階段に一歩踏み出した。