春
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「また来てるよ、桃城」
マリアちゃんの呆れたような声に顔を上げる。
教室の入り口で桃城くんが手を振っていた。
「よぉ」
「残念、もう食べ終わっちゃった」
「えーっ!ツイてねーな、ツイてねーよぉ」
本当に残念そうな顔をするので、なんだか笑ってしまった。
「…ごめんね」
「っておいおい笑ってるじゃねーか」
「美奈子のお弁当なんだからいいじゃん。ってか今日桃城来るの遅かったね」
マリアちゃんが残っていたメロンパンを頬張りながら指摘する。
「あー、先輩に呼ばれてたんだ」
「先輩ってテニス部の?」
「おう。大石先輩直々にお話って」
私は大石先輩の顔を思い浮かべる。
テニス部では確か副部長を務め、生徒会の副会長でもある有名人だ。
「優しそうな先輩だよね」
「そうそう優しい先輩だぜ、俺といい勝負だな」
「くだらないこと言ってないでさっさと自分のクラスに戻りなさいよ」
マリアちゃんがシッシッと手を振る。
「お前はヒデーやつだな」
「桃城くんすごいよね、2年生でテニス部のレギュラーだもん。友達として誇らしいよ!」
事実、青学のテニス部の部員30数名の中から、2年になったばかりでレギュラーに選ばれているのだからすごいことだと思う。
「あ…改まって言われると照れるな」
「ダメダメ美奈子、絶対コイツ調子乗るよ」
鬱陶しそうな顔でマリアちゃんが桃城くんを睨む。
「昔っからお調子者でさ、褒められるとすぐ調子乗るの」
「別にいーだろ。大体お前は口が悪いんだよ」
「まあまあ二人とも」
息のあった掛け合いを見て、微笑ましくなる。
「相変わらず仲良いよね、マリアちゃんと桃城くん」
二人が全力否定してくる。
「いや、マジない」
「ありえねー」
「ほら息ぴったり。うらやましいなあ」
私の言葉に二人は一瞬固まり、すぐにマリアちゃんが桃城くんの胸ぐらを掴んだ。
「アンタ完全に誤解されてるよ」
「はぁ!?なんでそうなるんだよ!なんとしてでも解いてくれ!」
「アンタなんかこっちからお断りよ」
なにやら小声で小突きあっている二人を横目に、私は席を立った。
「じゃあ私ちょっと先生に呼ばれてるから行ってくるね。桃城くん今日はお弁当全部食べちゃってごめんね。明日は卵焼き多めに持ってくるから」
「えっ、あっ、ワリーな」
「何言ってんの美奈子は悪くないよ、悪いのはいつだって桃城。いってらっしゃい」
「ありがと。マリアちゃんあとでね」
美奈子の後ろ姿を目で追いつつ、桃城はため息をついた。
「はあー、誤解してるよな」
「うーん…協力してあげたいのはやまやまなんだけどね」
マリアもまたため息をつく。
「つーかアンタいつまでもお弁当もらうだけじゃダメだよ。美奈子相当鈍いからもっと果敢に攻めてかないと」
「だよなあ、伝わってねーよなあ」
1年間同じクラスでほぼ毎日お弁当のおかずをもらっていたが、なにも進展しなかったのだ。
マリアは項垂れている幼馴染の恋が少しでもうまくいくようにと、私も協力するからと彼を励ました。
「悪いやつではないからねぇ…」