このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

花籠

怪物は醜かった。若しくは醜いから怪物なのかもしれない。暗い中でもぼんやりと判る呻き声はひとのそれとはかけ離れていて、思わず後ずさった。勢いよく水たまりに飛び込んだせいで泥水が足首にかかる。不快感はない。ひたすらに嫌悪と恐怖がこころを占めていた。グレイの脳裏にフランケンシュタイン、という単語が思い出される。今では怪物の代名詞になってしまった、もともとは怪物を生みだした博士の名前だった。
 フランケンシュタイン博士は怪物を作った。そのとき彼も怪物になった。
 グレイがもう一歩後ずさると怪物はゆっくりと一歩近づいた。深い叢の匂いがする。もう一歩後ずさる。怪物が踏み出した足が枝を折る。音からしてそれなりの太さがあるはずだ。
 怪物がこちらをじっと見つめて、一歩下がるごとに距離を詰めてくる。今すぐとってくおうという気配はないが、腰が引けて足はもう震えあがっていた。恐怖が身体を固めているものの、恐怖こそが私をなんとか奮い立たせている理由にもなっていた。ここでこけたら立ち上がることなど出来ないだろう。
 ほんの少しずつ後ろに下がる。怪物はその分距離を詰めているものの身体は少しは動くようになっており、あと一手で走りだせるだけの余裕が生まれてきた。しかしそれも怪物の一声で終わる。
「ウ、ウ、」
 一声といってよいのか、それは獣の鳴き声に等しい。二足歩行の獣だ。歩いてはいるものの、これは人間ではない。あまりに低くて地響きと同一視してしまいそうなほどに。
 怪物はもう一度喉を鳴らした。人間の言葉を話しているつもりなのかもしれない。彼は喉を鳴らしながらこちらに近づいてくる。手が伸びてくる。グレイを捕らえようとしているのだとわかると身体はまた固くなっていた。毛深い指が胸に触れる。小さく悲鳴をあげてその手を振り払うと、とうとうバランスを崩して水たまりに倒れ込んだ。
 泥水が顔にかかって、口の中にも入り込んでくる。恐怖よりも嫌悪が勝った。怪物は今すぐとってくおうとはしない。殺そうとはしない。けれど捕らえようとする。胸に触れた毛深くて太い指。この怪物は人間の女に慾情している。
 捕まったら、と思うとぞっとした。いっそ死んだ方がましだと思うような目に遭う。魔術師との最後の会話を思い出す。君にはいつか天罰が下るだろう。彼にはこの天井は雨も太陽の光も罰さえ弾くだろうよと返した。否。これは天罰などではない。神が与える罰がこんな醜い怪物からの凌辱なのだとしたら、神は罰し方が間違っている。
 怪物の手が肩を掴む。レインコートは馬鹿力までは弾いてはくれなかった。肩を掴んだ手がゆっくりと押される。抵抗できないまま背中がゆっくりと泥だらけの水たまりに沈む。レインコートの隙間から泥水が服にしみこんでくる。矢張りこの怪物はグレイを。ぞっとして乱暴に降った手は何度か怪物の腕や胸に触れたけれどびくともしなかった。冗談じゃないと思った。そうしてそのあとで冷静に、これは冗談ではないのだと理解する。
 怪物が人間の女を抱くなど、おこがましいにも程がある。けれど同じくらい人間の女が怪物相手に優位に立てることもありえない。怪物はもともと魔術師が自分の魔力を引き換えに量産した最も低級の使い魔だ。頭は悪い。そもそも知能がない。力だけがばかみたいにある。目を潰しても腕をもいでも死ぬまで動き続ける暴力の化身だ。腕がなくなっても、最後には歯で相手の首を噛み切る。勝てるわけがないのだ。かつて魔術師が溢れていた時代には皆自衛していた。怪物が溢れていたからだ。けれど今になって、古代の遺物が森に潜んでいるなど誰も思わない。もちろん、グレイも。
 怪物の爪がレインコートを切り裂いた。服も肌着もまとめて破かれる。冗談じゃない。泪が横に流れた。真っ暗な天井に月だけがぼんやりと見える。雲が時々月を覆うけれど暗さはあまり変わらない。手のひらが胸を揉みしだく。痛くはない。怪物でも力の調節くらいは出来るらしい。それは何の慰めにもならないけれど。手はよがってもらおうというようにグレイの女を刺激するけれど、ちっとも気持ち善くなどならなかった。片手が下着をずり下ろす。指が出し入れされるのを感じながら身体が生理的に熱くなる。これが初めてかと諦めつつ、静かに息を吐きだした。指が太い。爪が長くないことは幸いだった。ただひたすら、太い指が出し入れされる。人間の男のそれと同じくらいかと思えるほどグレイの中はいっぱいいっぱいで、雨とは無関係の水音が聞こえる。激しかった。それが自分からでているのだと気づく。彼は静かに指を動かして、時々思い出したように胸をまさぐった。胸に顔を寄せて胸の先端をざらざらとした舌が絡め取る。歯をたてられるとどうしようもなかった。
 彼は女の反応の変化に気づいて、だんだん指の動きを早めてくる。唇から出てくるのは最早息ではなく喘ぎ声だった。こんな怪物に犯されて感じている自分が恥だった。背徳感が気持ち善かった。
 這い上がってくるこれが何かは既に知っている。彼が指を出し入れするたびにぐちゅぐちゅと卑猥な音が聞こえる。胸のふくらみの頂点を親指と人差し指で弄られる。彼が舐めまわしていた頂を甘噛みすると、押さえていた全てが弾けてグレイは背をのけ反らせて絶頂に達した。
 グレイが荒い息を吐き出している間もいつのまにか二本になっていた指がなかを広げるように正反対に動いていた。
「ぁっ……あぁ…」
 声はもう抑えられなくなっていた。夜の森で怪物の下で私は喘いでいる。毛深い手と乱暴な指にどうしようもなくよがっている。
 彼の手がグレイの手首をつかむ。恐怖心は既になく彼の行動に疑問符を浮かべていると、その手はゆっくりとグレイに覆いかぶさっている彼の股間に触れた。硬くて大きい。本来おぞましい筈のそれが今はひどく魅力的なものに見えた。掴んでいた手が離れてもグレイは手を下ろすことが出来なかった。ここまできたらどうなるのかなどわかっている。これが入るのだ。こんなに大きいものが。
 両手で包む。人間の男よりもどれだけ大きいのかはわからないが突っ込まれるのだと思うと息が荒くなる。こんなの。
 怪物が覆いかぶさってくる。指は未だ中をまさぐってほんとうに入れられるのか確かめているようだった。そうして乱暴に指が抜かれる。切なさを感じた次の瞬間、それが押し付けられた。
「あっ…!」
なかにすすもうと小さく動いているのがわかる。こんなの入るわけがない。けれど入ったら。
「あぁっ…あっ、」
 ゆっくりとなかに入ってくる。苦しかったが、痛いとは思わなかった。入ってる。あんなに大きいのに。
「ぁっ…あッ!」
 彼がずん、と深く突きつける。それだけで軽くイキながら、全部入ったことを理解した。
 怪物が動き始める。だんだん腰づかいが荒くなっていく。
「ぁんっ、あぁ…っ」
 快物がグレイの腰を掴んで激しく動く。動くたびに卑猥な音が耳を犯しながら、気づけば彼の首に腕を回していた。なかはとっくにぐちゃぐちゃだった。頭も。時々胸の頂を軽く噛まれると背中を弓なりにしてイった。私が何度もイって、もう何も考えられなくなった頃に彼はようやく私のなかにどろりとした精液を吐き出した。
3/30ページ