「はぁぁーーー、疲れた。癒してくれ。」

バタバタと帰ってくるなり料理中の私を後ろから抱きしめたかと思うと頸にぐりぐりとおでこを擦り付けてくる。

「うわ、びっくりした。珍しいね」

「帰り際だってのに厄介ごとに巻き込まれちまってな。おかげで遅くなった。」

そう言うと私が握ってた包丁をまな板に置いて、着けてたエプロンも剥ぎ取られ今度は前からギュュゥぅぅぅと抱き締められた。

だいぶ加減はしてくれているのだろうが、いつもより力が強くて骨がミシミシと音を立てそうな勢いだ。

「はぁぁ…お前の匂いは落ち着くな」

首元に顔を埋めながら喋られると少しむず痒い。

啄むように耳にこめかみにキスを落とされ、また首元に頭を寄せておでこをぐりぐりと擦り付けてくる。

そんな姿がいつものカッコいい右大将殿とは違って、ともて愛らしく思える。

私にだけ見せてくれていると思うとなんだか心が満たされる気持ちになって、どうだ私の恋人は可愛らしいだろうと誰かに自慢したくなってしまう。

私はもう随分と彼の虜になってしまったらしい。

「キスしていいか？」

少し目を伏せながら、上目遣いで一応確認とばかりにこちらに承諾を取りにくるあたり、少し無理やりすぎたかという自覚はあるのだろう。
なにせ私は料理中だったのだから。

そんな確認必要ないのに、少しくらい邪魔されたっていいって思うくらいにはあなたの行為が嬉しいと思っているのに。

好きにしていいよ、そう意味を込めて今度は私から彼の首に腕を回して口付けた。