「おい、なんで避妊してた？」

まずい、バレた。
いつもは優しく情熱的に見つめてくれるラズベリーレッドの瞳が今は悲しみと怒りが混じった色で揺れている。

「俺との子ども欲しくないのか？」

そんなわけない。リリアとの子、できるなら欲しいに決まってる。

それなのに彼に気づかれないように避妊魔法を使ってた理由、
正直、あまりはっきりとした理由はない。

ただ、なんとなく、怖くなってしまったんだ。

このまま自然に子どもができて、結婚して、リリアと一緒に普通の生活を送る。そんな日常に。

この前まで命のやり取りをする場所で平気で戦っていたのに。
私が普通の生活を送る権利なんてあるんだろうか。

そう思ったら子どもなんて万が一にもできちゃダメだ。
だから気づかれないように避妊した。

上手くやれてたと思うんだけどな。
なんでバレちゃったんだろう。

「あんだけ気にせずヤってんのにお前はガキできたかもとか全然気にしてなさそうだから逆に気になった。そしたら気づいた、ただそれだけだ。

…言い訳があるなら先に聞いてやってもいいが、どうしたい？」

そう言って私を押し倒して身動き取れないように手首まで押さえつけてくる彼に、バレたなら仕方ないと抱えていた思いを話す。

そしたら

「チッ、そういうことは先に言えよ。俺から離れる気なのかとか、何か気に障ったことしたかとか色々考えちまった。」

『そんなことない、今もこれからもリリアのことが大好き。ずっと一緒にいれたらって思ってる。でもリリア、子ども欲しいのかなって思うと言いづらくて…』

「ならそういうことは全部言え。俺だって無理やりお前が嫌がることはしたくねぇ。ガキなんかいなくたって俺はお前を一生愛してる。だから隠し事はすんな。」

わかったか？そう言って噛み付くようにキスされた。
何度も何度も、存在を確かめられるように深く口付けられた。

どれくらいそうしていたかわからないくらいキスをした後、ふとリリアを見ると余裕のなさそうな顔が目に入る。

「俺から離れようとだけはするな。」

そう言って強く抱き締められる。
抱き締める力の強さと切羽詰まったような声色に、彼を傷つけてしまったことを反省する。

だからごめんねの意味を込めて私からもたくさんキスをする。

この先もずっと彼と一緒の人生を歩んでいけますように。