【第1章】夢のようなひと
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思い描いた結末とは違うが一応終わらせることはできた。
これで良かったんだと自分に言い聞かせながら、とにかく彼女のもとから離れることばかり考えていた。
「おい!!V!」
やや遅れてやって来たグリフォンが、翼をはためかせ横並びになる。
散々彼女にはもう心を開くなと説明したのに、全く聞き入れなかった。
今も確実に言い足りないんだろう、だが、視線さえやらずに進んでいく。
「V!!黙ってんじゃねェ!今回ばかりは、さすがの俺もブチ切れた!」
「…静かにしろ、チキン」
「テメェ…!!」
一瞬だけちらと見ると、グリフォンは益々声を荒げる。
俺も皮肉なことに彼女と同じで「もういい」のだ。
もう何も考えずにいたい。
だから、雑音は全て消したい。
俺はこれで良かった。
正しく進んでいる。
もともと彼女と出逢ったことが予定外な事態だった。
「おい、猫チャン!どけ!ジャマだ!!」
怒りのあまり主人である俺自身に攻撃を仕掛けようとするグリフォンが、俺の影から出て来たシャドウに制止された。
初めて契約した時からそうだが、何故こんなにこいつは騒がしい。
これは、俺が望んだことだ。
今更揺るがそうとするな。
再び先を急げば、またすぐにグリフォンが追ってくる。
「…V、マジでこれでいいと思ってるのか!?」
こいつはこいつでアリアを気に入っていたからな。
離れがたいのは認めよう。
「あのアリアの目を見たか?気づいてんだろうが、アリアが本当はどうしてほしいのか」
見るべきではなかっただろうな。
しっかり見てしまった。
そしてそれに僅かでも動揺する自分自身にも気づいてしまった。
「おい、V!答えろ!」
グリフォンが目の前に身体を広げて行く手を阻むので、そこでようやく立ち止まる。
いつまでも諦めない姿勢に、少しだけ溜め息をついた。
「わかってる…アリアは俺とどこか似ているところがあるからな…」
アリアは心で思っていても、口にしない時がある。
それは俺と同じで、だから、なんとなく瞳の奥にある言葉がわかる。
あの時本当は、俺に出て行って欲しくなかった。
知っている。
知っていて、アリアが言葉で言う通りにしてやった。
俺を好いているのかはわからないにしても、その感情だけは確かだろう。
「わかってるなら、なんで…」
「さよならが決まっているなら、それは早い方がいい」
グリフォンが話している途中に、被せるように宣言した。
俺は彼女を利用していたに過ぎない。
こうならずとも、どのみち、アリアとの関係は終わるのだ。
それが早まっただけ。
「…これ以上深くなる前に、終わりにしたんだ」
グリフォンに言いながら、再び自分自身を納得させる。
我ながら醜い最後だった。
あれは、アリアに恨まれても仕方ない。
でももう、過ぎ去ったこと。
「なんで勝手に過去形にしてンだよ?それなら、それをアリアに言えよ!」
グリフォンがまだ言い返す。
片付けようとしたことをそのまま返され、むっとした。
「今更言ったところでどうなる」
「お前なァ!言ったのと言わないのとでは、全く違うだろうが…!」
また戻って、アリアと話したら何が変わる?
そもそも何を言う?
エンディングが美しくなるのか?
それともなんだ?
「アリアの立場になってみろ。突然お前に拒否されて、嫌なことばっかだぜ。極め付けはあのさよならだ。最悪だろ」
そうだな。
それについては、全面的に賛同する。
自分がした行動を振り返っていくと、1番されたくないことを俺は彼女にしてしまった。
だからこそこのまま、よくわからない男で終わらせよう。
これで終幕だ、グリフォン。
ゆっくりと瞳を閉じて少しだけ感傷に浸っていれば、まだ台詞には続きがあった。
「…それに、終わりが決まってても、その思い出が消えることはねェんだぜ」
まぶたを開くと、グリフォンは至って真剣な目をしている。
ああそうか、こいつは違う。
戻って、自分の本心に素直になって改めて彼女に向き合えと言っているんだ。
きちんと「さよなら」を告げに戻るんじゃなく。
「改めて聞く、Vちゃん。お前はそれでいいのか」
先程チキンと言ってしまったことは詫びよう。
お前は強いな。
たくさんの思い出が詰まった宝箱を捨てる覚悟があるのか。
はたまた、全く考えなしなのか。
ふと、最後のアリアの顔が、心に浮かんできた。
あの不安な表情を消し去ることができるのも、きっと自惚れでなく、今は俺だけなんだろう。
そうだな。
悪いが、まだこの1ヶ月を完結できる覚悟はない。
だが、もう1度アリアに会ってみよう。
泣いていたら、涙を拭いてやろう。
今考えられるのは、俺はそこまでだ。
「…グリフォン」
「なんだ、Vちゃん」
「戻ろう、1度」
「そう来なくちゃなァ!」
再びグリフォンの声に覇気が戻る。
お前の考えそのままに、俺は戻る訳ではない。
「大切なもんは大切にしなきゃな!」
来た道を引き返し始めると、嬉しそうにやや先行してグリフォンも飛んでいく。
大切、か…。
end.
これで良かったんだと自分に言い聞かせながら、とにかく彼女のもとから離れることばかり考えていた。
「おい!!V!」
やや遅れてやって来たグリフォンが、翼をはためかせ横並びになる。
散々彼女にはもう心を開くなと説明したのに、全く聞き入れなかった。
今も確実に言い足りないんだろう、だが、視線さえやらずに進んでいく。
「V!!黙ってんじゃねェ!今回ばかりは、さすがの俺もブチ切れた!」
「…静かにしろ、チキン」
「テメェ…!!」
一瞬だけちらと見ると、グリフォンは益々声を荒げる。
俺も皮肉なことに彼女と同じで「もういい」のだ。
もう何も考えずにいたい。
だから、雑音は全て消したい。
俺はこれで良かった。
正しく進んでいる。
もともと彼女と出逢ったことが予定外な事態だった。
「おい、猫チャン!どけ!ジャマだ!!」
怒りのあまり主人である俺自身に攻撃を仕掛けようとするグリフォンが、俺の影から出て来たシャドウに制止された。
初めて契約した時からそうだが、何故こんなにこいつは騒がしい。
これは、俺が望んだことだ。
今更揺るがそうとするな。
再び先を急げば、またすぐにグリフォンが追ってくる。
「…V、マジでこれでいいと思ってるのか!?」
こいつはこいつでアリアを気に入っていたからな。
離れがたいのは認めよう。
「あのアリアの目を見たか?気づいてんだろうが、アリアが本当はどうしてほしいのか」
見るべきではなかっただろうな。
しっかり見てしまった。
そしてそれに僅かでも動揺する自分自身にも気づいてしまった。
「おい、V!答えろ!」
グリフォンが目の前に身体を広げて行く手を阻むので、そこでようやく立ち止まる。
いつまでも諦めない姿勢に、少しだけ溜め息をついた。
「わかってる…アリアは俺とどこか似ているところがあるからな…」
アリアは心で思っていても、口にしない時がある。
それは俺と同じで、だから、なんとなく瞳の奥にある言葉がわかる。
あの時本当は、俺に出て行って欲しくなかった。
知っている。
知っていて、アリアが言葉で言う通りにしてやった。
俺を好いているのかはわからないにしても、その感情だけは確かだろう。
「わかってるなら、なんで…」
「さよならが決まっているなら、それは早い方がいい」
グリフォンが話している途中に、被せるように宣言した。
俺は彼女を利用していたに過ぎない。
こうならずとも、どのみち、アリアとの関係は終わるのだ。
それが早まっただけ。
「…これ以上深くなる前に、終わりにしたんだ」
グリフォンに言いながら、再び自分自身を納得させる。
我ながら醜い最後だった。
あれは、アリアに恨まれても仕方ない。
でももう、過ぎ去ったこと。
「なんで勝手に過去形にしてンだよ?それなら、それをアリアに言えよ!」
グリフォンがまだ言い返す。
片付けようとしたことをそのまま返され、むっとした。
「今更言ったところでどうなる」
「お前なァ!言ったのと言わないのとでは、全く違うだろうが…!」
また戻って、アリアと話したら何が変わる?
そもそも何を言う?
エンディングが美しくなるのか?
それともなんだ?
「アリアの立場になってみろ。突然お前に拒否されて、嫌なことばっかだぜ。極め付けはあのさよならだ。最悪だろ」
そうだな。
それについては、全面的に賛同する。
自分がした行動を振り返っていくと、1番されたくないことを俺は彼女にしてしまった。
だからこそこのまま、よくわからない男で終わらせよう。
これで終幕だ、グリフォン。
ゆっくりと瞳を閉じて少しだけ感傷に浸っていれば、まだ台詞には続きがあった。
「…それに、終わりが決まってても、その思い出が消えることはねェんだぜ」
まぶたを開くと、グリフォンは至って真剣な目をしている。
ああそうか、こいつは違う。
戻って、自分の本心に素直になって改めて彼女に向き合えと言っているんだ。
きちんと「さよなら」を告げに戻るんじゃなく。
「改めて聞く、Vちゃん。お前はそれでいいのか」
先程チキンと言ってしまったことは詫びよう。
お前は強いな。
たくさんの思い出が詰まった宝箱を捨てる覚悟があるのか。
はたまた、全く考えなしなのか。
ふと、最後のアリアの顔が、心に浮かんできた。
あの不安な表情を消し去ることができるのも、きっと自惚れでなく、今は俺だけなんだろう。
そうだな。
悪いが、まだこの1ヶ月を完結できる覚悟はない。
だが、もう1度アリアに会ってみよう。
泣いていたら、涙を拭いてやろう。
今考えられるのは、俺はそこまでだ。
「…グリフォン」
「なんだ、Vちゃん」
「戻ろう、1度」
「そう来なくちゃなァ!」
再びグリフォンの声に覇気が戻る。
お前の考えそのままに、俺は戻る訳ではない。
「大切なもんは大切にしなきゃな!」
来た道を引き返し始めると、嬉しそうにやや先行してグリフォンも飛んでいく。
大切、か…。
end.