【第1章】夢のようなひと
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
昨日から私たちの間には、何か見えない壁みたいなものを感じ始めた。
Vが何を考えているのかは、わからない。
最初からわかるようなひとじゃなかったけど、益々わからない。
ただ今まで一緒にいるのがすごく楽しかったのに、それが曇ってしまった。
いつものようにVたちが外に出て行った後、私はなんとなく、私抜きで何か話し合いがされているんじゃないかと勝手に想像してしまっていた。
例えば、早々にここを皆で出て行こうと相談しているとか。
この前Vが怒ったのは私絡みだってことは、分かりきっている…。
さすがの私も、そんなことはわかる。
私自身がVを好きなのかってことは、相変わらずあんまりわからないけれど…。
珍しくレコードを1枚も触らず、だけど日記だけはつけてぼーっとあれやこれや考えていたら、皆はいつも通りに陽がかたむいた頃帰ってきた。
「…おかえりなさい」
「…ただいま」
Vと目を合わせて、形上は挨拶する。
その後やっぱり一緒にいるのがちょっと気まずかったから、私は逃げるように夕飯の支度をすると言ってVから離れた。
その時Vの近くにいた鳥くんに意味深に視線を向けると、察してくれたのか、後を追ってきてくれた。
「どうしたよー?」
「鳥くん、Vと何か話した…?」
私は立ち止まって、恐る恐る、だけどしっかりと鳥くんの瞳を見つめる。
鳥くんはわざとなのか本気でわからないのか、首を大きく傾げた。
「何かってなんだよ、アリア」
「この間の喧嘩のことだよ…」
「ケンカァ?…あ、アレか」
はっきり言えば、あからさまに視線を逸らされ、私たちは再び足を進める。
ここであんまり込み入った話をすれば、もしかしたらVに聞かれてしまうかもしれない。
いつも寝るために使っている書斎へ向かうと、鳥くんはスタンドライトにゆっくりと留まり、いつものハリのある声じゃなく真剣に話し始める。
「Vちゃんな、色々あるんだ。詳しくは言えねェけどよ」
鳥くんの最初の発言に、鳥くんだけはちゃんと言葉にして、私のこともVのことも考えていることを表してくれるんだなぁと思った。
Vは、考えていてくれたとしても何も言ってくれない。
だからどうしても不安に、こんなに悲しくなる。
「だけど、俺はVがアリアを気に入ってると思う。それだけはマジだぜ」
切ないのが顔に出てしまっていたのか、鳥くんは私が欲しい言葉をくれる。
「…ただ、まァ…曝け出すのが怖いのもしれねェな」
Vが、何も隠すこともなく素直になれるなら、Vも私と仲良くしたいと思ってくれているの?
鳥くんの言うことを信じたい。
それが本当なら、Vに避けられてしまったことも、まだ納得して自分を慰めてあげられる。
「私は…Vがどう思ってても、Vが考えてることを知りたい…」
「アリアちゃん」
「そうしないと…辛い…」
Vがすぐにここを出て行きたいなら、その理由を私に話してほしい。
何も言われないでただ避けられてるだけなんて、すごく嫌だ。
でも直接Vに聞くのも、ものすごく怖い。
「…グリフォン」
泣いてしまいそうなのを我慢して床を睨みつけていたら、部屋の中に静かにVの声がこだました。
いつからいたんだろう…。
私はVには反応せずに、視線はそのままでいた。
「ヤダ!いたのVちゃん!?」
「戻れ」
Vの声は、また低く冷たい。
Vはなんで、そんなに怒ってるの?
なんで私を急に避けるの?
ちゃんと私に話してほしい。
私は今、あなたの目の前にいるんだから。
「Vちゃん怖い顔し過ぎだぜ?気楽に行こうぜェ」
「もう…気楽にいられる状況じゃない。何度も言っただろう」
「知らねェ、俺は何も聞いてない」
2人の会話を聞いていると、やっぱり鳥くんが私に配慮してくれていたんだとわかった。
優しいなぁ、鳥くんは。
「お前は、使い魔のくせに俺を裏切るつもりか?」
「おい!V!その言い方はないだろうが!」
益々白熱する2人の言い合い。
なんで、こんな風になっちゃったの?
どうしたらいいの?
いっそのこと、何も考えたくない…。
「もうやめて…!!」
私の頭はとうとう、全てを放棄する道を選んだ。
力の限り叫べば、Vも鳥くんも一斉に私の方を見る。
鳥くんは心配してくれたのか、すぐに私の傍に来てくれる。
「アリア?」
「もう、いい…もういいから」
「アリア、大丈夫だ。俺の話を聞いてくれよ」
「いい…いいの」
頭を何度も何度も、横に振った。
鳥くんの気持ちだけで、私は嬉しいから。
大丈夫だから。
「もう皆出て行って。お願い…ひとりにさせて」
これでいいんだ。
こうしたら少なくとも、鳥くんとVの言い合いは終わるから。
私、泣いてない。偉い。
ちゃんとVの瞳を見て、ちゃんと言えた。
Vは私と真正面から対面して、一瞬眉をひそめた。
それから、まるで逃げるように私に背を向けて行ってしまう。
ああ、そっか…。
「…V!?待てよ!!マジで行くのかァ!?」
信じられないというように、鳥くんが叫ぶ。
使い魔だからVに着いて行くのが当たり前なんだろうけど、私をひとりにするのをためらって、着いていかない。
「なァ…アリア…」
「行って、鳥くん…今までありがとう」
私は精一杯笑って、鳥くんの背中を押す。
こんな風に終わるなんて、想像もしてなかった。
「…待ってろ!このままじゃ終わらせねェ!」
鳥くんは1度私に振り返ってそう叫び、Vの後を追って行ってしまった。
end.
Vが何を考えているのかは、わからない。
最初からわかるようなひとじゃなかったけど、益々わからない。
ただ今まで一緒にいるのがすごく楽しかったのに、それが曇ってしまった。
いつものようにVたちが外に出て行った後、私はなんとなく、私抜きで何か話し合いがされているんじゃないかと勝手に想像してしまっていた。
例えば、早々にここを皆で出て行こうと相談しているとか。
この前Vが怒ったのは私絡みだってことは、分かりきっている…。
さすがの私も、そんなことはわかる。
私自身がVを好きなのかってことは、相変わらずあんまりわからないけれど…。
珍しくレコードを1枚も触らず、だけど日記だけはつけてぼーっとあれやこれや考えていたら、皆はいつも通りに陽がかたむいた頃帰ってきた。
「…おかえりなさい」
「…ただいま」
Vと目を合わせて、形上は挨拶する。
その後やっぱり一緒にいるのがちょっと気まずかったから、私は逃げるように夕飯の支度をすると言ってVから離れた。
その時Vの近くにいた鳥くんに意味深に視線を向けると、察してくれたのか、後を追ってきてくれた。
「どうしたよー?」
「鳥くん、Vと何か話した…?」
私は立ち止まって、恐る恐る、だけどしっかりと鳥くんの瞳を見つめる。
鳥くんはわざとなのか本気でわからないのか、首を大きく傾げた。
「何かってなんだよ、アリア」
「この間の喧嘩のことだよ…」
「ケンカァ?…あ、アレか」
はっきり言えば、あからさまに視線を逸らされ、私たちは再び足を進める。
ここであんまり込み入った話をすれば、もしかしたらVに聞かれてしまうかもしれない。
いつも寝るために使っている書斎へ向かうと、鳥くんはスタンドライトにゆっくりと留まり、いつものハリのある声じゃなく真剣に話し始める。
「Vちゃんな、色々あるんだ。詳しくは言えねェけどよ」
鳥くんの最初の発言に、鳥くんだけはちゃんと言葉にして、私のこともVのことも考えていることを表してくれるんだなぁと思った。
Vは、考えていてくれたとしても何も言ってくれない。
だからどうしても不安に、こんなに悲しくなる。
「だけど、俺はVがアリアを気に入ってると思う。それだけはマジだぜ」
切ないのが顔に出てしまっていたのか、鳥くんは私が欲しい言葉をくれる。
「…ただ、まァ…曝け出すのが怖いのもしれねェな」
Vが、何も隠すこともなく素直になれるなら、Vも私と仲良くしたいと思ってくれているの?
鳥くんの言うことを信じたい。
それが本当なら、Vに避けられてしまったことも、まだ納得して自分を慰めてあげられる。
「私は…Vがどう思ってても、Vが考えてることを知りたい…」
「アリアちゃん」
「そうしないと…辛い…」
Vがすぐにここを出て行きたいなら、その理由を私に話してほしい。
何も言われないでただ避けられてるだけなんて、すごく嫌だ。
でも直接Vに聞くのも、ものすごく怖い。
「…グリフォン」
泣いてしまいそうなのを我慢して床を睨みつけていたら、部屋の中に静かにVの声がこだました。
いつからいたんだろう…。
私はVには反応せずに、視線はそのままでいた。
「ヤダ!いたのVちゃん!?」
「戻れ」
Vの声は、また低く冷たい。
Vはなんで、そんなに怒ってるの?
なんで私を急に避けるの?
ちゃんと私に話してほしい。
私は今、あなたの目の前にいるんだから。
「Vちゃん怖い顔し過ぎだぜ?気楽に行こうぜェ」
「もう…気楽にいられる状況じゃない。何度も言っただろう」
「知らねェ、俺は何も聞いてない」
2人の会話を聞いていると、やっぱり鳥くんが私に配慮してくれていたんだとわかった。
優しいなぁ、鳥くんは。
「お前は、使い魔のくせに俺を裏切るつもりか?」
「おい!V!その言い方はないだろうが!」
益々白熱する2人の言い合い。
なんで、こんな風になっちゃったの?
どうしたらいいの?
いっそのこと、何も考えたくない…。
「もうやめて…!!」
私の頭はとうとう、全てを放棄する道を選んだ。
力の限り叫べば、Vも鳥くんも一斉に私の方を見る。
鳥くんは心配してくれたのか、すぐに私の傍に来てくれる。
「アリア?」
「もう、いい…もういいから」
「アリア、大丈夫だ。俺の話を聞いてくれよ」
「いい…いいの」
頭を何度も何度も、横に振った。
鳥くんの気持ちだけで、私は嬉しいから。
大丈夫だから。
「もう皆出て行って。お願い…ひとりにさせて」
これでいいんだ。
こうしたら少なくとも、鳥くんとVの言い合いは終わるから。
私、泣いてない。偉い。
ちゃんとVの瞳を見て、ちゃんと言えた。
Vは私と真正面から対面して、一瞬眉をひそめた。
それから、まるで逃げるように私に背を向けて行ってしまう。
ああ、そっか…。
「…V!?待てよ!!マジで行くのかァ!?」
信じられないというように、鳥くんが叫ぶ。
使い魔だからVに着いて行くのが当たり前なんだろうけど、私をひとりにするのをためらって、着いていかない。
「なァ…アリア…」
「行って、鳥くん…今までありがとう」
私は精一杯笑って、鳥くんの背中を押す。
こんな風に終わるなんて、想像もしてなかった。
「…待ってろ!このままじゃ終わらせねェ!」
鳥くんは1度私に振り返ってそう叫び、Vの後を追って行ってしまった。
end.