【第1章】夢のようなひと
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日記を書くと宣言して、4日目までの出来事を書き記した辺りから、Vの様子がおかしくなった。
どこか避けられているような感じ。
私、何か悪いことをしただろうか。
自分では何も心当たりがない。
出逢ってから、むしろVとは近づけたように見えたのにどうしてなんだろう。
5日目はVたちが出て行って早めに帰って来たので、揃って店内にいた。
「もー、鳥くん動いちゃダメだよ」
「だってよォ!ずっと固まってるの、めちゃくちゃ辛いぜ…!?」
「もうちょっとだから…!」
日記の空きスペースに皆の絵でも描いておこうと、鳥くんを目の前に留まらせて、鉛筆を走らせる。
絵心がないのはわかってる、というかこれまで絵を描いたことなんてないんだけど、やっぱり「形」としても残しておきたくて。
「よし、できた!」
「メシアちゃん、そんなに気合入れちゃって!お手並み拝見だなァ!」
完成の合図と共に、早々に鳥くんが翼を広げて私の背後に回ってきたので、とっさに描いたページを自分の胸に押し当てて隠す。
「あっだめ!日記だから基本は私だけが見ていいものなの…!」
「ケチケチすんなよ!」
肉親以外の誰かに、自分の気持ちとか創作物とか色々を開示したことはないから、やっぱりものすごく心臓がドキドキ言ってる。
だけどきっと、良いきっかけなんだよね。
鳥くん、いいヒトだし仲良くしてくれてるし。
見せてみよう。
身体に密着させていた日記を静かに離せば、鳥くんがそのページを一生懸命に見つめる。
「メシアちゃん、絵画の才能はねェな!あっでも個性的なタッチでいいってかァ?」
そんなの最初からわかってた。
嘴の端を上げて笑う鳥くんに、思わず拳を振り上げる。
初めてを鳥くんにあげたの、間違いだったかもしれない。
「もー!!鳥くん、殴ってもいい!?私が楽しむだけだから、いーの!」
「ははっ!悪ィ悪ィ!猫ちゃんも描く?」
「勿論だよ!」
本当に悪いとは思ってないだろうけど、もういいや。
ある意味で少し耐性もできた。
鳥くんは笑いながら、Vの傍にいた黒猫ちゃんの方を嘴で指す。
Vは椅子に座って相変わらず本を読んでいたけど、私たちの様子に一瞬だけ視線をこちらにやった程度。
Vから話し掛けてくれるのはあんまりなかったのに、やっぱりどことなく避けられてる。
気が、する。
私の返事を受けて、黒猫ちゃんがすぐ隣に来てくれて、その背中を柔らかく撫でた。
一方鳥くんはモデルから解放されたのにも関わらず、私の傍から離れず見守っている。
「さぁ、黒猫ちゃん。じっとしててね」
それからは自分の指先に集中した。
それこそVのことはものすっごく気になる。
というか、Vって私が前「知りたい」って言ったら、それを認めてくれたのに。
なんで今は、こんなに避けるの?
意味がわからない。
鉛筆を走らせていると、何故か色々考える。
集中しようと思っても、返って逆効果。
申し訳ないけど、そんな中途半端な労力で黒猫ちゃんの絵が完成する。
「できたよ」
「おっ、見せろよォ!」
「また鳥くんは!!」
鳥くんは私がツッコむより早く、背後に回って覗き込んで来た。
さっきは本気で嫌だと思っていたのに、こんなやりとりも楽しくなってる自分も少しいて。
「オーッ!俺のよりうまくね?ヒイキかよ!」
「別に贔屓はしてないですよーっだ!ね、黒猫ちゃん」
集中力と画力は一致しないみたい。
私は鳥くんに舌を出して見せた後、満面の笑みを黒猫ちゃんに向ける。
それに応えるように、黒猫ちゃんは私に擦り寄ってきた。
Vとは違って、2人とはとっても仲良くなれた気がする。
嬉しいな。
「じゃあメシアちゃん、次はVだな」
「え…!?」
順番的には何もおかしくないかもしれないけど、当たり前に鳥くんに言われて、過剰に大きい声で反応してしまう。
思い返したら私、ずっとVのことばっかり考えてた。
「い、いいの!Vは!」
「なんでだよー遠慮はいらねェ!な、Vちゃん?」
やめてやめて、鳥くん!
特に今は避けられてるかもって気にしてたところなんだから!
鳥くんはとうとうVのところまで飛んでいく。
そこでやっと、Vは顔を上げて私の方を見た。
もしかして、今日初めて目が合ったかもしれない。
「…見られるのはあまり好きじゃない」
「ほら!ね!」
あ、やっぱり避けられてる。
傷付くのとか忘れて、とりあえずVの絵を描く展開を回避しようと、鳥くんに叫んだ。
「ンー?どうしたよ、2人とも。何か変じゃね?」
「どこが…!?」
「そういうとこだぜ、メシアちゃん」
鳥くんがずばり指摘してくる。
いやいや、変なのはVだけ。
私はどこも変じゃない。
ずっとVのことを考えてる以外は。
「俺サ、気づいちまった。メシアちゃん、Vのこと好きだろ」
今なんて言った!?
「好き」という言葉に、心臓が過剰に飛び跳ねる。
同時に全身が熱くなって、煙でも出て来ちゃいそう。
「す、好き…!?私がVを!?」
「メシアちゃん恋愛疎いのな!今まで誰かに惚れたことないのかァ?」
鳥くんは問い掛けながら、また私のもとに戻ってくる。
鳥くん、鳥のクセに恋愛マスターみたいな発言してくれちゃって。
でも、図星です…。
「…お恥ずかしながら」
「そうか!純白のお姫様なんだな、アリアちゃんは」
「あ、私の名前…」
さりげなく私の名前を初めて呼んでくれたと思えば、Vの方に向き直った。
「良かったな、Vちゃん。こんな子がお前を好きで」
ちょっと待って。
なんで勝手に鳥くんに、私の気持ちを大々的に本人に発表されてるの!?
今まで黙って聞いていたVが、静かに椅子から立ち上がり、本を閉じた。
「グリフォン、お喋りが過ぎるぞ」
「え、Vちゃん何故か怒ってるゥ!?」
「怒ってはいない…」
「怒ってんじゃん!」
鳥くんの言う通り、今までで1番Vの声が低くて冷たい。
さっきまで沸騰しそうだった身体は、一気に落ち着いた。
そうだよね。
いきなりそんなこと言われても、困っちゃうよねV。
私だってこれが恋心かわかってないから、大丈夫。
「…ごめんなさい、V」
2人の言い合いにそう囁くと、Vは私の方を見てから何故かすぐに逸らした。
「アリア…別にお前に…謝ってほしい訳でもない」
じゃあ、なんでVは怒ってるの…?
その台詞は言えず、私は押し黙った。
end.
どこか避けられているような感じ。
私、何か悪いことをしただろうか。
自分では何も心当たりがない。
出逢ってから、むしろVとは近づけたように見えたのにどうしてなんだろう。
5日目はVたちが出て行って早めに帰って来たので、揃って店内にいた。
「もー、鳥くん動いちゃダメだよ」
「だってよォ!ずっと固まってるの、めちゃくちゃ辛いぜ…!?」
「もうちょっとだから…!」
日記の空きスペースに皆の絵でも描いておこうと、鳥くんを目の前に留まらせて、鉛筆を走らせる。
絵心がないのはわかってる、というかこれまで絵を描いたことなんてないんだけど、やっぱり「形」としても残しておきたくて。
「よし、できた!」
「メシアちゃん、そんなに気合入れちゃって!お手並み拝見だなァ!」
完成の合図と共に、早々に鳥くんが翼を広げて私の背後に回ってきたので、とっさに描いたページを自分の胸に押し当てて隠す。
「あっだめ!日記だから基本は私だけが見ていいものなの…!」
「ケチケチすんなよ!」
肉親以外の誰かに、自分の気持ちとか創作物とか色々を開示したことはないから、やっぱりものすごく心臓がドキドキ言ってる。
だけどきっと、良いきっかけなんだよね。
鳥くん、いいヒトだし仲良くしてくれてるし。
見せてみよう。
身体に密着させていた日記を静かに離せば、鳥くんがそのページを一生懸命に見つめる。
「メシアちゃん、絵画の才能はねェな!あっでも個性的なタッチでいいってかァ?」
そんなの最初からわかってた。
嘴の端を上げて笑う鳥くんに、思わず拳を振り上げる。
初めてを鳥くんにあげたの、間違いだったかもしれない。
「もー!!鳥くん、殴ってもいい!?私が楽しむだけだから、いーの!」
「ははっ!悪ィ悪ィ!猫ちゃんも描く?」
「勿論だよ!」
本当に悪いとは思ってないだろうけど、もういいや。
ある意味で少し耐性もできた。
鳥くんは笑いながら、Vの傍にいた黒猫ちゃんの方を嘴で指す。
Vは椅子に座って相変わらず本を読んでいたけど、私たちの様子に一瞬だけ視線をこちらにやった程度。
Vから話し掛けてくれるのはあんまりなかったのに、やっぱりどことなく避けられてる。
気が、する。
私の返事を受けて、黒猫ちゃんがすぐ隣に来てくれて、その背中を柔らかく撫でた。
一方鳥くんはモデルから解放されたのにも関わらず、私の傍から離れず見守っている。
「さぁ、黒猫ちゃん。じっとしててね」
それからは自分の指先に集中した。
それこそVのことはものすっごく気になる。
というか、Vって私が前「知りたい」って言ったら、それを認めてくれたのに。
なんで今は、こんなに避けるの?
意味がわからない。
鉛筆を走らせていると、何故か色々考える。
集中しようと思っても、返って逆効果。
申し訳ないけど、そんな中途半端な労力で黒猫ちゃんの絵が完成する。
「できたよ」
「おっ、見せろよォ!」
「また鳥くんは!!」
鳥くんは私がツッコむより早く、背後に回って覗き込んで来た。
さっきは本気で嫌だと思っていたのに、こんなやりとりも楽しくなってる自分も少しいて。
「オーッ!俺のよりうまくね?ヒイキかよ!」
「別に贔屓はしてないですよーっだ!ね、黒猫ちゃん」
集中力と画力は一致しないみたい。
私は鳥くんに舌を出して見せた後、満面の笑みを黒猫ちゃんに向ける。
それに応えるように、黒猫ちゃんは私に擦り寄ってきた。
Vとは違って、2人とはとっても仲良くなれた気がする。
嬉しいな。
「じゃあメシアちゃん、次はVだな」
「え…!?」
順番的には何もおかしくないかもしれないけど、当たり前に鳥くんに言われて、過剰に大きい声で反応してしまう。
思い返したら私、ずっとVのことばっかり考えてた。
「い、いいの!Vは!」
「なんでだよー遠慮はいらねェ!な、Vちゃん?」
やめてやめて、鳥くん!
特に今は避けられてるかもって気にしてたところなんだから!
鳥くんはとうとうVのところまで飛んでいく。
そこでやっと、Vは顔を上げて私の方を見た。
もしかして、今日初めて目が合ったかもしれない。
「…見られるのはあまり好きじゃない」
「ほら!ね!」
あ、やっぱり避けられてる。
傷付くのとか忘れて、とりあえずVの絵を描く展開を回避しようと、鳥くんに叫んだ。
「ンー?どうしたよ、2人とも。何か変じゃね?」
「どこが…!?」
「そういうとこだぜ、メシアちゃん」
鳥くんがずばり指摘してくる。
いやいや、変なのはVだけ。
私はどこも変じゃない。
ずっとVのことを考えてる以外は。
「俺サ、気づいちまった。メシアちゃん、Vのこと好きだろ」
今なんて言った!?
「好き」という言葉に、心臓が過剰に飛び跳ねる。
同時に全身が熱くなって、煙でも出て来ちゃいそう。
「す、好き…!?私がVを!?」
「メシアちゃん恋愛疎いのな!今まで誰かに惚れたことないのかァ?」
鳥くんは問い掛けながら、また私のもとに戻ってくる。
鳥くん、鳥のクセに恋愛マスターみたいな発言してくれちゃって。
でも、図星です…。
「…お恥ずかしながら」
「そうか!純白のお姫様なんだな、アリアちゃんは」
「あ、私の名前…」
さりげなく私の名前を初めて呼んでくれたと思えば、Vの方に向き直った。
「良かったな、Vちゃん。こんな子がお前を好きで」
ちょっと待って。
なんで勝手に鳥くんに、私の気持ちを大々的に本人に発表されてるの!?
今まで黙って聞いていたVが、静かに椅子から立ち上がり、本を閉じた。
「グリフォン、お喋りが過ぎるぞ」
「え、Vちゃん何故か怒ってるゥ!?」
「怒ってはいない…」
「怒ってんじゃん!」
鳥くんの言う通り、今までで1番Vの声が低くて冷たい。
さっきまで沸騰しそうだった身体は、一気に落ち着いた。
そうだよね。
いきなりそんなこと言われても、困っちゃうよねV。
私だってこれが恋心かわかってないから、大丈夫。
「…ごめんなさい、V」
2人の言い合いにそう囁くと、Vは私の方を見てから何故かすぐに逸らした。
「アリア…別にお前に…謝ってほしい訳でもない」
じゃあ、なんでVは怒ってるの…?
その台詞は言えず、私は押し黙った。
end.