Dark Chocolate
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夜も更けエリに風呂と2階の客室を提供し、俺はもう1度ひとりきりでソファに座る。
自然と先程の会話が回想され、エリの微笑みがリアルに蘇ってきた。
アルコールのせいか、ほんのり染まった頬と潤んだ瞳。
おまけにものすごい爆弾発言をされて、この晩の勝者は完全にエリだった。
「私が…ブラコンだったから…だよ」
どういう意味なのか。
しかもそれを俺に直接言うなんて、ちゃんとわかっていてやっているのか。
俺がお前に、ずっと叶わない片想いをしてることを知っているんだろうか。
それともお前も、もしかして俺のことを?
そこまで考えて再びソファから立ち上がり、酔っ払って突っ伏したままのクソ兄貴の元へ戻る。
「おい、バージル」
肩を揺らすとさすがに回復したのか、バージルはゆっくりとまぶたを開いた。
まだ少しだけぼんやりしているように見える。
「…?」
「大丈夫かよ。酒弱いな、笑っちまったぜ」
双子なのに、アルコール耐性もこんなに違うんだな。
俺の台詞に少しずつ記憶が戻ってきたのか、バージルは頭を抱える。
いっそのこと全部忘れてしまう方がこいつには良かったんじゃないかと思ったが、自分の身体の作りなので受け入れるしかない。
「…エリに引かれた気がする。しかし全部本音だから腹をくくるしかないだろうな」
本音で直球ストレートであれだけ口説き文句めいた言葉が言えるなら、ほんの少しだけ羨ましい。
俺は長年エリと「兄妹」やってただけに、距離感が掴めないところもまだある。
頭を抱えていた手を解放しバージルが辺りを見回したので、エリを探していることはすぐにわかった。
「…エリはどこだ?」
「2階の客室を貸してるぜ。昼間に帰るってよ」
「そうか…」
「あんたこの世の終わりみたいな顔してんじゃねぇよ」
「おい、馬鹿にするな」
顔に思いっきり切ないと書いてあり、俺はそんなバージルがおかしくて笑い混じりに言った。
いや、まじで丸くなりすぎだろこいつ。
なんだかんだ、魔界で戦ってそして協力してエリを招く準備をしている間、俺たちは普通の兄弟並みに仲良くなった気がしている。
あくまで、俺目線だが。
「エリがこれから毎日電話してくれって。デートの誘いはお互い遠慮なしの勝負な」
さっきエリから言われたことをバージルにも伝えると、心なしか目が輝きを取り戻す。
「絶対にお前には負けない」
「そうこなくっちゃな」
こんなところも敵意むき出しのバージルに、俺はまた笑って返した。
正直自惚れでなく、俺に脈がある気がする。
だがもし万が一、バージルとアプローチ勝負してエリがバージルを選んだら。
その時俺は、凹まないでいられるだろうか。
まだ、わからない。
だけど若い頃のように、今もう1度エリを口説くチャンスがある。
それだけで、十分だ。
「2人ともお見送りありがとう。とっても楽しかった」
楽しい時間ってのはすぐに過ぎるもので、俺たちは帰宅するエリを駅まで見送りに来た。
エリが今働いている会社は、この駅から乗り換えもあるため近いという訳でもない。
できればこの再会を機に、ずっと事務所にいてほしい気持ちもあるが、エリはまだ自分自身の生活スタイルがある。
今後は俺のせいで変わっていくかもしれないが。
いや、俺が変えてやる。
「エリ、帰ったら早速今晩から電話するからな」
「ありがとう、バージル」
バージルもバージルでまるで遠い国に引っ越すのを見送るかのように、エリにしっかりと宣言した。
「あ、そういえばバージルはどこで働いてるの?ダンテと一緒に悪魔狩りしてるとか」
俺たちもだいぶいい歳だから、ガキの頃のようにふらふらしてる訳がない。
魔界ならともかく人間界では一般的とも言える疑問を、エリはバージルに投げ掛けた。
どうフォローしてやろうと一瞬思ったが、バージルの株を下げるチャンスだと気づき、俺は口角を吊り上げる。
「エリ、こいつニート…」
「今訳あって求職中だ。決まったら連絡する。その時はまた祝ってくれ」
バージルは俺の声にかぶせて、きりっとした表情でエリを真っ直ぐに見つめた。
すげぇー。
この一瞬でここまで出てくるなら、あんた多分人間界でもやっていけるぜ?
「そうだったんだ。うん、その時はお祝いしようね」
相変わらず疑うことを知らないエリは、バージルの言葉をそっくりそのまま信じた。
そうして、エリが乗る電車の時間がやってくる。
改札を抜けてもずっと振り返って手を振ってくれるのが、ものすごく嬉しく感じる。
「またな、エリ!電話、絶対にするからな!」
エリが、妹としてなのか久しぶりに俺にしてくれたお願いを、実現しない筈がない。
信じてほしくて年甲斐もなく大声で叫ぶと、エリは確かに目を細めて俺だけに微笑んだ。
知らずに不安にさせた10年を、これから満たしてやりたい。
言えなかったけど、俺はずっとお前を愛してる。
今この瞬間も。
俺は自分なりにたっぷりエリの余韻に浸ってから、隣にいるバージルに視線をやった。
「…あんた、うまいことごまかしたな。ちゃんと職探せよ」
「そうだな、早急に探すことにしよう。エリに早く会いたい」
こいつ、人間界で一体どんな職につくんだろうか。
今まで悪魔としてストイックに戦い続けていたバージル。
今俺の脳内では何も想像できなかった。
とにかく俺もバージルも、エリのおかげも相まってこの歳にして「明日を生きる活力」を得た訳だ。
魔界から帰還しひとまずの目標を達成した俺は、次にした方がいいであろうアイデアを思いつく。
「てか、俺たちネロにも挨拶に行った方がいいよな」
「…?」
「いや、あれだけ迷惑かけたら当たり前だろ。あと一応お前父親だからな」
唐突に息子の名前を出されたバージルは、心底不思議そうに俺を見たので思わずつっこむ。
俺たちがお互いこうして生きていて、なんだかんだでよろしくやっていられるのは、他でもないネロがいたからだ。
あいつ、俺たちが顔出したらめちゃくちゃ驚くだろうな。
「どうした、ダンテ。いきなり常識人になったな。妙なものでも食ったか」
「エリの飯しか食ってねぇよ」
そうだ。
魔界から帰って、まともに食ったのはエリの飯だけ。
それが、俺にとっては最高の「活力」だった。
事務所に戻って早速ネロのやつに連絡すると、想像通りに素直じゃない台詞を吐きながら、俺たちの帰還を喜んでくれた。
近々、バージルを連れて行くという約束も取り付けた。
やばいな。
全部のことにやる気が漲ってくる。
最高だ。
勿論俺は、この調子のまま夜エリに電話した。
「エリ」
「ダンテ。ちゃんと電話してくれたんだね」
「当たり前じゃねぇか。大切な妹の頼みだ」
「ふふ、ありがとう」
心なしかここ最近の電話で、1番エリの機嫌がいい。
俺も俺でちゃんとエリの話を聞こうと、楽しもうと思ってるからだろうが。
バージルを連れて魔界から帰ってきて、本当に良かった。
「突然だけど、来週末空いてるか?連れて行きたいところがあるんだ」
俺はもう、エリを誘うことにためらいは全くなくなっていた。
「空いてるよ…!どこだろう?言わないでね、当日のお楽しみにするから」
「そうだな。これもサプライズだ」
「待ち合わせはどうする?また駅でいいかな?」
「いや、俺が迎えに行く。めかし込んで待っててくれ」
楽しそうなエリに、俺はかつてエリに「ヒーロー」だと言われていた若い頃を思い返す。
まるで、あの頃に戻ったみたいだ。
俺たち、またこんなにも近い存在になれるんだな。
俺は来週末を指折り数えるという、まるで思春期のガキみたいなことを繰り返した。
end.
自然と先程の会話が回想され、エリの微笑みがリアルに蘇ってきた。
アルコールのせいか、ほんのり染まった頬と潤んだ瞳。
おまけにものすごい爆弾発言をされて、この晩の勝者は完全にエリだった。
「私が…ブラコンだったから…だよ」
どういう意味なのか。
しかもそれを俺に直接言うなんて、ちゃんとわかっていてやっているのか。
俺がお前に、ずっと叶わない片想いをしてることを知っているんだろうか。
それともお前も、もしかして俺のことを?
そこまで考えて再びソファから立ち上がり、酔っ払って突っ伏したままのクソ兄貴の元へ戻る。
「おい、バージル」
肩を揺らすとさすがに回復したのか、バージルはゆっくりとまぶたを開いた。
まだ少しだけぼんやりしているように見える。
「…?」
「大丈夫かよ。酒弱いな、笑っちまったぜ」
双子なのに、アルコール耐性もこんなに違うんだな。
俺の台詞に少しずつ記憶が戻ってきたのか、バージルは頭を抱える。
いっそのこと全部忘れてしまう方がこいつには良かったんじゃないかと思ったが、自分の身体の作りなので受け入れるしかない。
「…エリに引かれた気がする。しかし全部本音だから腹をくくるしかないだろうな」
本音で直球ストレートであれだけ口説き文句めいた言葉が言えるなら、ほんの少しだけ羨ましい。
俺は長年エリと「兄妹」やってただけに、距離感が掴めないところもまだある。
頭を抱えていた手を解放しバージルが辺りを見回したので、エリを探していることはすぐにわかった。
「…エリはどこだ?」
「2階の客室を貸してるぜ。昼間に帰るってよ」
「そうか…」
「あんたこの世の終わりみたいな顔してんじゃねぇよ」
「おい、馬鹿にするな」
顔に思いっきり切ないと書いてあり、俺はそんなバージルがおかしくて笑い混じりに言った。
いや、まじで丸くなりすぎだろこいつ。
なんだかんだ、魔界で戦ってそして協力してエリを招く準備をしている間、俺たちは普通の兄弟並みに仲良くなった気がしている。
あくまで、俺目線だが。
「エリがこれから毎日電話してくれって。デートの誘いはお互い遠慮なしの勝負な」
さっきエリから言われたことをバージルにも伝えると、心なしか目が輝きを取り戻す。
「絶対にお前には負けない」
「そうこなくっちゃな」
こんなところも敵意むき出しのバージルに、俺はまた笑って返した。
正直自惚れでなく、俺に脈がある気がする。
だがもし万が一、バージルとアプローチ勝負してエリがバージルを選んだら。
その時俺は、凹まないでいられるだろうか。
まだ、わからない。
だけど若い頃のように、今もう1度エリを口説くチャンスがある。
それだけで、十分だ。
「2人ともお見送りありがとう。とっても楽しかった」
楽しい時間ってのはすぐに過ぎるもので、俺たちは帰宅するエリを駅まで見送りに来た。
エリが今働いている会社は、この駅から乗り換えもあるため近いという訳でもない。
できればこの再会を機に、ずっと事務所にいてほしい気持ちもあるが、エリはまだ自分自身の生活スタイルがある。
今後は俺のせいで変わっていくかもしれないが。
いや、俺が変えてやる。
「エリ、帰ったら早速今晩から電話するからな」
「ありがとう、バージル」
バージルもバージルでまるで遠い国に引っ越すのを見送るかのように、エリにしっかりと宣言した。
「あ、そういえばバージルはどこで働いてるの?ダンテと一緒に悪魔狩りしてるとか」
俺たちもだいぶいい歳だから、ガキの頃のようにふらふらしてる訳がない。
魔界ならともかく人間界では一般的とも言える疑問を、エリはバージルに投げ掛けた。
どうフォローしてやろうと一瞬思ったが、バージルの株を下げるチャンスだと気づき、俺は口角を吊り上げる。
「エリ、こいつニート…」
「今訳あって求職中だ。決まったら連絡する。その時はまた祝ってくれ」
バージルは俺の声にかぶせて、きりっとした表情でエリを真っ直ぐに見つめた。
すげぇー。
この一瞬でここまで出てくるなら、あんた多分人間界でもやっていけるぜ?
「そうだったんだ。うん、その時はお祝いしようね」
相変わらず疑うことを知らないエリは、バージルの言葉をそっくりそのまま信じた。
そうして、エリが乗る電車の時間がやってくる。
改札を抜けてもずっと振り返って手を振ってくれるのが、ものすごく嬉しく感じる。
「またな、エリ!電話、絶対にするからな!」
エリが、妹としてなのか久しぶりに俺にしてくれたお願いを、実現しない筈がない。
信じてほしくて年甲斐もなく大声で叫ぶと、エリは確かに目を細めて俺だけに微笑んだ。
知らずに不安にさせた10年を、これから満たしてやりたい。
言えなかったけど、俺はずっとお前を愛してる。
今この瞬間も。
俺は自分なりにたっぷりエリの余韻に浸ってから、隣にいるバージルに視線をやった。
「…あんた、うまいことごまかしたな。ちゃんと職探せよ」
「そうだな、早急に探すことにしよう。エリに早く会いたい」
こいつ、人間界で一体どんな職につくんだろうか。
今まで悪魔としてストイックに戦い続けていたバージル。
今俺の脳内では何も想像できなかった。
とにかく俺もバージルも、エリのおかげも相まってこの歳にして「明日を生きる活力」を得た訳だ。
魔界から帰還しひとまずの目標を達成した俺は、次にした方がいいであろうアイデアを思いつく。
「てか、俺たちネロにも挨拶に行った方がいいよな」
「…?」
「いや、あれだけ迷惑かけたら当たり前だろ。あと一応お前父親だからな」
唐突に息子の名前を出されたバージルは、心底不思議そうに俺を見たので思わずつっこむ。
俺たちがお互いこうして生きていて、なんだかんだでよろしくやっていられるのは、他でもないネロがいたからだ。
あいつ、俺たちが顔出したらめちゃくちゃ驚くだろうな。
「どうした、ダンテ。いきなり常識人になったな。妙なものでも食ったか」
「エリの飯しか食ってねぇよ」
そうだ。
魔界から帰って、まともに食ったのはエリの飯だけ。
それが、俺にとっては最高の「活力」だった。
事務所に戻って早速ネロのやつに連絡すると、想像通りに素直じゃない台詞を吐きながら、俺たちの帰還を喜んでくれた。
近々、バージルを連れて行くという約束も取り付けた。
やばいな。
全部のことにやる気が漲ってくる。
最高だ。
勿論俺は、この調子のまま夜エリに電話した。
「エリ」
「ダンテ。ちゃんと電話してくれたんだね」
「当たり前じゃねぇか。大切な妹の頼みだ」
「ふふ、ありがとう」
心なしかここ最近の電話で、1番エリの機嫌がいい。
俺も俺でちゃんとエリの話を聞こうと、楽しもうと思ってるからだろうが。
バージルを連れて魔界から帰ってきて、本当に良かった。
「突然だけど、来週末空いてるか?連れて行きたいところがあるんだ」
俺はもう、エリを誘うことにためらいは全くなくなっていた。
「空いてるよ…!どこだろう?言わないでね、当日のお楽しみにするから」
「そうだな。これもサプライズだ」
「待ち合わせはどうする?また駅でいいかな?」
「いや、俺が迎えに行く。めかし込んで待っててくれ」
楽しそうなエリに、俺はかつてエリに「ヒーロー」だと言われていた若い頃を思い返す。
まるで、あの頃に戻ったみたいだ。
俺たち、またこんなにも近い存在になれるんだな。
俺は来週末を指折り数えるという、まるで思春期のガキみたいなことを繰り返した。
end.
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