Charlotte
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「ダンテ、バージル。お誕生日おめでとう!」
特別な日にはシャルロット。
料理上手なお母さんが作ってくれる手作りケーキには好きなものがなんでも詰まっている。
たくさんのフルーツとババロア、そしてその周りを囲むさくさくのビスキュイ。
りぼんで可愛く飾り付けるのが私の仕事。
その日はダンテとバージルの誕生日。
私は自分のことのように喜んで、はしゃいでいた。
お父さんとお母さんの2人へのプレゼントは、お揃いのアミュレット。
赤い宝石が付いてきらきらしたそれに、私はだめだと思いながら、2人に嫉妬してしまった。
「いいなぁ2人とも」
「ごめんね、エリ」
お母さんはあれは2人が持っていないとだめなのと言いながら、私の頭を撫でて慰める。
お母さんを困らせる気はなかったけれど、2人がお揃いのものをもらっていたから、仲間外れにされたようで少し悲しかっただけだ。
そんな私の姿を予想してか、お父さんはどこからか小箱を取り出してきて、私の前に差し出した。
「ちゃんとエリの分も用意したんだ。開けてごらん」
小箱は黒い包装紙に白いりぼんが巻いてある。
子どもへのプレゼントにしては大人っぽいそれに、胸のドキドキと緊張感からゆっくりと包装を解いていく。
「わぁ…きれい」
中に入っていたのはロザリオのネックレスだった。
私の小さな手に収まるくらいの大きさだけど、白と黒の宝石が散りばめられたそれは、とても高価そうなものだった。
「今のお前には早いかもしれないが、大きくなってこれが似合う素敵な女性になってくれ」
そう言って微笑みながら、お父さんは優しく私の髪を撫で私は黙って頷く。
「悪魔なのにロザリオをプレゼントするのはどうかと思ったが…」
「悪魔でも人間でも、祈る気持ちは皆同じように持ってるわ」
照れくさそうにするお父さんに、お母さんが言う。
私は2人の会話を聞きながら、ロザリオを指でなぞった。
まだ私には祈ることも日常の不満もなかったけれど、この先いつか祈りたいことがあったら、このロザリオをつけよう。
「ありがとう!お父さん、お母さん」
私は幸せに包まれながら、2人の頬にキスをした。
電話に出てすぐに出て行ったダンテは、夜になっても帰って来なかった。
エリはこの間食べたいと言っていたシチューを作って待っていたが、夜10時になってひとりで遅い夕食を取り戸締まりを確認して、自分のベッドへ潜った。
「ダンテ…」
待っているひとの名前を呼んでみても、いないのだから返事が返ってくる訳がない。
寂しいというより、心配だった。
この間の電話と今日の電話。
何かよくないことが起きている気がした。
それが何なのか、ダンテは教えてくれない。
あるいはダンテ自身もわからないのか。
どちらにしても、ダンテのことを強く信じている。
ダンテの事務所に住み始めて数日。
これまでダンテのおかげで平和に日常を送っていたけれど、ダンテが身を置く世界がだんだん実感できるようになってきた。
兄は悪魔と戦っている。
じゃあ自分は何ができるか。
戦うことはできない。
でも、ダンテをここで待っていることはできる。
ダンテがいつでも安心して帰って来られるように。
エリはベッドから起き上がり、大切にしまっていた黒い小箱を取り出して中を開いた。
白と黒の宝石で装飾されたロザリオ。
お父さん、お母さん。
今、私には祈りたいことがあるの。
「私の大切な家族が、無事でありますように」
これからこのロザリオをつけて生活しよう。
つけるべき時が来たのだと、何故か強く思った。
エリは枕元にそれを置き、目を閉じた。
「エリ…!今帰った!」
朝一番、ダンテは事務所のドアを蹴破るようにして帰宅する。
早く帰ると約束したくせにこんなに遅くなってしまった。
エリは怒っているだろうか。
どうやって埋め合わせしようか。
そんなことばかり考えていると、エリが2階の部屋から顔を出した。
ダンテににこりと微笑み、怒っている様子も寂しがっていた様子もないことに安堵する。
「愛しのお兄様のお帰りだぜ」
いつもみたいにあくまでも茶化して言うと、彼女はゆっくり階段を降りてくる。
パフスリーブのブラックワンピース。
胸元にはロザリオのネックレスが輝いている。
ダンテは思わず言葉を失った。
妹がすごくきれいに見える。
いっそのこと神々しいくらいだ。
「お帰りなさい!ダンテ」
「ただいま、エリ。遅くなってごめん」
エリが抱きついてきたのをダンテは喜んで受け入れた。
ぎゅっと抱き締め、彼女のぬくもりを堪能する。
髪を撫でると、さらさらと指に絡んで気持ちいい。
しばらくそのままで、ようやくエリの身体を離してぎょっとした。
「ばか、何泣いてんだよ」
「ごめん。なんかよくわからないけど涙が…」
エリは胸元のロザリオを右手で握り締めて、もう片方で涙を拭い始める。
こんな姿を見ていると、最近あったことをエリに話すべきか迷ってしまう。
きっと話したら妹は、一方で喜んで一方で悲しむだろう。
その姿を想像してダンテは唇を噛んだ。
「ダンテ、お腹空いてるでしょう?すぐシチュー温めるから」
エリは笑顔を作って、小走りでキッチンに向かった。
エリは俺の大切な家族だ。
そして、あいつも家族。
エリも、「覚悟」はできるだろう。
ダンテは拳に力を込め、エリの後を追った。
「エリ」
「どうしたの?」
「後で話したいことがある」
俺たちの兄、バージルのことを。
end.