【第4章】今も変わらない何か
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初めての飲酒で辛くなったのかと、身体を引き寄せたのは俺だ。
しかし今日1日を共にして、予想以上に胸が熱くなり、この女のことをもっと知りたいと思うようになっている。
名前も…
そう名付けられたのだがら、いつまでも「お前」というのも違う気がして呼んでみた。
呼んだだけなのに嬉しそうに微笑む姿は悪くなかった。
腰に手を回して抱けばアリアも俺にしなだれかかり、身体の境界がなくなったかのように暖かく感じた。
特に会話せずとも気まずい空気はなかったので、残りの酒をちびちび口にしていると、隣から僅かに寝息が聞こえる。
「…アリア?」
顔を覗き込めば、無防備にも確かに眠りに落ちている。
この状況下で眠れるのが多少信じられなかったが、俺もこの女の体温に安心を感じたのは否定しない。
もし彼女もそうなら…
俺のぬくもりがアリアにとって安らぎになるのだろうか…?
あまり信じることができず、じっと見つめると穏やかな表情で目蓋を閉じている。
「…」
どうやらかなり寝入っているので、叩き起こすのも違う気がした。
どうしたものか。
俺はアリアの家を知らない。
いや、思い出せないだけかもしれないが。
少し考えてから、起こさないように身体を離し、とりあえず会計を済ます。
今日ほど悪魔狩りで金を稼いでいて良かったと思う日はなかった。
店から出る時から横抱きにして街を歩けば、すれ違う人間の視線を嫌でも感じる。
まるで俺がこの女を誘拐でもしているような反応だ。
昔の俺なら周りの様子など心底どうでも良かっただろうと、アリアの顔を眺めれば無垢な表情で相変わらずよく眠っている。
俺が今、この白い首を握り締めたら、すぐ死ぬ。
一瞬物騒な思考が頭をよぎり自身の中に流れる悪魔の血を感じ、怖くなる。
アリアを殺すことは、俺の中に確かにあっただろう「想い合う日々」の否定になる。
今日感じた「暖かさ」もなくなってしまう。
人気のない路地裏に入ると悪魔の力を解放し、アリアを抱いたまま夜空に飛び立つ。
彼女の家を知らない以上、向かう場所はひとつしかない。
「早かったじゃねぇか。今日は朝帰りかと…!?」
ダンテの事務所の扉を開ければ、俺の姿を見てやつは目を見開いた。
まぁ、アリアを見つけて早々に本人を連れて帰ったらこの反応でも無理はない。
自分用のベッドは今晩アリアに譲ろう。
一応掃除をしようと、とりあえず彼女の身をソファに下ろした。
乱れた髪を整えていれば、ダンテが俺の傍にやって来てアリアの姿をやや距離を取りながら眺める。
「…今日、俺はソファで寝る」
「別にその辺は勝手にしてもらって構わねぇけど、どこから突っ込めばいいか…」
「安心しろ、誰にも見られんように飛んできた」
「さすがにあの格好で電車には乗れねぇよな。どこの人攫いかと思うぜ」
今までレッドグレイブまでは人探しということもあり、人間と同じように電車を使っていた。
今日も行きは電車だったが、アリアを抱いた状態で乗る訳にもいかず、空から帰る方法を選択した。
もし…
途中でアリアが起きていたら、俺の姿に驚いただろうか?
悪魔をその身に宿しているくらいだ、受け入れただろうか?
自問自答していると、ダンテが騒がずに冷静に切り出す。
「…その子だよな?ゆりの子」
「そうだが」
「ネロと同じくらいか?よくお前のこと3年も待ってたよな」
その発言の意図はなんだと思ったが、事実アリアは若いし、俺以外の選択肢がこの3年の中でなかった訳ではないだろう。
何も言わずにいれば、ダンテがひとりでずっと喋っている。
「しかも悪魔憑きかよ?どこでどんなやつに憑かれたのか…」
それは俺も気になっていた。
どうやら何か引っ掛かるところがあるようで腕を組んで天を仰いでから、こちらをしっかりと見た。
「その子、Vと知り合いなんだよな?」
「だからどうした?」
「めちゃくちゃ思い当たる節がある。もしかしたら…」
ダンテはずかずかとソファに近づき、眠っているアリアに触れることはせずに呼び掛ける。
「グリフォン」
「おい」
起きたらどうすると思いダンテに声だけを掛ければ、何ともない様子で口角を上げた。
「意識だけ変わってもらえば大丈夫だろ?」
「…確かにそうだが」
「おい、いるのか?グリフォン」
Vとそいつは関係があるのか。
グリフォンという悪魔に心当たりがない訳ではなかったが、例の如くこれまで生きてきた一部の記憶がないため、あまり自分の中で辻褄が合わない。
やがて、アリアの目蓋がぴくりと動き、緑色の瞳がこちらを捉えた。
身体を起こし、にやりと笑顔を浮かべるが、それはやはりアリアとは明らかに違う下品なものだった。
「よォー久しぶりだなァ!元気してたか?」
彼女の姿であまりにギャップがある態度に、俺は思わず頭を抱える。
こいつだけの身体なら拳のひとつでも食らわせたいくらいだ。
「…その口調どうにかならんのか」
「ン?アリアちゃんのマネした方が良かったかァ?…バージルさん、大好き!」
グリフォンは急に態度を変え、瞳を潤ませて俺を見つめるが、1ミリも嬉しいとは思わなかった。
「殺すぞ」
「相変わらずの塩対応だな。あんなに仲良くしてたのによォ」
そう言われたところで覚えていないものは仕方ない。
あの時手を借りた「何か」のひとつだろうが、どうしてVはこいつと関わったのかと思わずにはいられない。
が、経緯を聞くより俺が思い出した方が事実を受け入れられると質問はしなかった。
「まさか俺も、今日ダンテの事務所に行っちまうとは予想できなかったゼ」
やはり今までアリアの中で大人しくしていただけで、こいつの意識はあったようだ。
今目で見た状態では、グリフォンはアリアの身体を操れる状態にいながら普段はしてないことになる。
グリフォンがアリアに敬意を払っているとでも言うのだろうか。
「…単刀直入に言う。なんでソコにいるんだ?シャドウやナイトメアもいるのか?」
ダンテは1番気になっていることを真正面から質問した。アリアの身体からは複数の悪魔の気配があったが、3体もいたとは…。
改めて、今まで大きな影響がなかったことが不思議だった。
「俺たち皆ココにいるぜ。アリアが俺たちを受け入れて、消滅から救ってくれたからだ。ただ…今問題が起きちまって正直困ってる」
問題という単語に、アリアの指先が怪我をしてもすぐに治ってしまったことを思い出す。
グリフォンに説明されるより先に口を開いた。
「アリアの肉体が悪魔化している…」
「そうだ。俺たちを長い間体内に入れてたせいでアリアが悪魔化し始めちまった」
グリフォンがVと関係があるならば、こいつらがアリアの体内に入って3年経つことになる。
悪魔憑きは大概、悪魔側が悪意を持って人間の身体を乗っ取るケースが多いが、アリアは例外でお互いの意思で「身体を共有」する状態になったようだ。
時が経ち、それだけでは抗えずにアリアの身体に影響が出始めた…というところか。
「俺が最初に中に入った時は俺たちの力も弱かったんだケドよ…なんかアリアと相性が良かったみたいでなァ」
本心なのか冗談なのか、そう言って笑うグリフォンに何故かものすごく苛立ちを感じ、気付いたら胸ぐらを掴んでいる自分がいた。
何故アリアはただの人間だというのに、体内にこいつを住まわせているのか。
自分の身体に害があるなら、すぐに追い出せばいいものを。
そう思ったら勝手に身体が動いていた。
「オ、オイ!バージル、冷静になれよ!俺の身体は今アリアだ!」
言われて初めて少し正気に戻り、手を離す。
焦るグリフォンの表情に僅かにアリアを感じて、頭に血がのぼっている自分を客観視できるようになってくる。
「…てか、そんなに怒るんだな?アリアちゃんのこと好きになっちゃった?愛しちゃった?」
問われても答えられない。
確かに気になってはいるし、優しくしてやりたいという気持ちもある。
だが、それが愛なのかは分からない。
「おい、グリフォン。それ以上焚き付けるな」
「そうだな。そろそろ本題に移ろうじゃねェか」
今まで様子を見ていたダンテが仲裁に入り、グリフォンはあっさりと引き下がって俺の目を真っ直ぐ見つめた。
「バージル、アリアを救ってやってほしい」
「…お前たちがアリアの体内から出ていけばいい」
俺に頼まずとも簡単な願いに返答は至ってシンプルだったが、グリフォンは慌ててこちらに近づいて来る。
「そしたら俺たち消えちまうだろォが!そんな単純なら頭下げてねェつーの!」
「我が身可愛さでアリアを悪魔にするか」
「だってよォー!アリアが出て行くなって言うんだから、まだココにいたくなっちまうよなァ…」
まさか話し合った上で、アリア自身も体内に悪魔を入れたままにしているとは。
どういう経緯でアリアと使い魔が今の関係を結ぶに至ったか詳しくは今分からないが、アリアも「自業自得」という訳か。
少しだけアリアに対して失望のような感情を抱いた時、グリフォンは視線を下に落とし、ふざけた態度は一切なく口を開く。
「俺たち、アリアとはトモダチってヤツ?なんだよ…なるべく傍にいて支えたいって言うの?わかるか、ソー言うの」
悪魔と人間が友達だと?
随分妙なことを言うなと思ったが、以前の自分ならともかく、今現在はダンテやネロの周囲の環境を知っている。
俺自身も、3年間もアリアを探し続けていたのは…?
ひとりで色々と考え始める前に、グリフォンが続ける。
「とりあえず…お前が本気でアリアを気になってンのは分かった。今日はもう引っ込むゼ。いいよな?ダンテ」
「ああ、聞きたいことは大体聞けたからな」
自分で呼び出したにも関わらずほとんど質問せずに、俺とグリフォンの様子を見ているだけで満足したらしい。
なんだかそれも少し腹が立ったが、アリア本人にグリフォンたちの話を聞くよりも状況が理解できたため、よしとする。
「まァ2回目の恋楽しめよ、バージル」
グリフォンは最後ににやりと笑うと、再びソファの上に横たわり、ようやくアリアの身体を解放した。
意識がないにしても眠っているだけだった彼女に無理をさせたことが、胸に罪悪感のようなものを湧き上がらせる。
「…俺はこの問題に関与しないぜ」
「当たり前だ」
アリアの寝顔を見つめているとダンテが口角を上げて囁いたので、思わず睨み付けた。
これ以上手出しされてたまるか。
その後やつはシャワー室に向かったのでやっと自室のベッドを整え、アリアを寝かせてやることができた。
end.
しかし今日1日を共にして、予想以上に胸が熱くなり、この女のことをもっと知りたいと思うようになっている。
名前も…
そう名付けられたのだがら、いつまでも「お前」というのも違う気がして呼んでみた。
呼んだだけなのに嬉しそうに微笑む姿は悪くなかった。
腰に手を回して抱けばアリアも俺にしなだれかかり、身体の境界がなくなったかのように暖かく感じた。
特に会話せずとも気まずい空気はなかったので、残りの酒をちびちび口にしていると、隣から僅かに寝息が聞こえる。
「…アリア?」
顔を覗き込めば、無防備にも確かに眠りに落ちている。
この状況下で眠れるのが多少信じられなかったが、俺もこの女の体温に安心を感じたのは否定しない。
もし彼女もそうなら…
俺のぬくもりがアリアにとって安らぎになるのだろうか…?
あまり信じることができず、じっと見つめると穏やかな表情で目蓋を閉じている。
「…」
どうやらかなり寝入っているので、叩き起こすのも違う気がした。
どうしたものか。
俺はアリアの家を知らない。
いや、思い出せないだけかもしれないが。
少し考えてから、起こさないように身体を離し、とりあえず会計を済ます。
今日ほど悪魔狩りで金を稼いでいて良かったと思う日はなかった。
店から出る時から横抱きにして街を歩けば、すれ違う人間の視線を嫌でも感じる。
まるで俺がこの女を誘拐でもしているような反応だ。
昔の俺なら周りの様子など心底どうでも良かっただろうと、アリアの顔を眺めれば無垢な表情で相変わらずよく眠っている。
俺が今、この白い首を握り締めたら、すぐ死ぬ。
一瞬物騒な思考が頭をよぎり自身の中に流れる悪魔の血を感じ、怖くなる。
アリアを殺すことは、俺の中に確かにあっただろう「想い合う日々」の否定になる。
今日感じた「暖かさ」もなくなってしまう。
人気のない路地裏に入ると悪魔の力を解放し、アリアを抱いたまま夜空に飛び立つ。
彼女の家を知らない以上、向かう場所はひとつしかない。
「早かったじゃねぇか。今日は朝帰りかと…!?」
ダンテの事務所の扉を開ければ、俺の姿を見てやつは目を見開いた。
まぁ、アリアを見つけて早々に本人を連れて帰ったらこの反応でも無理はない。
自分用のベッドは今晩アリアに譲ろう。
一応掃除をしようと、とりあえず彼女の身をソファに下ろした。
乱れた髪を整えていれば、ダンテが俺の傍にやって来てアリアの姿をやや距離を取りながら眺める。
「…今日、俺はソファで寝る」
「別にその辺は勝手にしてもらって構わねぇけど、どこから突っ込めばいいか…」
「安心しろ、誰にも見られんように飛んできた」
「さすがにあの格好で電車には乗れねぇよな。どこの人攫いかと思うぜ」
今までレッドグレイブまでは人探しということもあり、人間と同じように電車を使っていた。
今日も行きは電車だったが、アリアを抱いた状態で乗る訳にもいかず、空から帰る方法を選択した。
もし…
途中でアリアが起きていたら、俺の姿に驚いただろうか?
悪魔をその身に宿しているくらいだ、受け入れただろうか?
自問自答していると、ダンテが騒がずに冷静に切り出す。
「…その子だよな?ゆりの子」
「そうだが」
「ネロと同じくらいか?よくお前のこと3年も待ってたよな」
その発言の意図はなんだと思ったが、事実アリアは若いし、俺以外の選択肢がこの3年の中でなかった訳ではないだろう。
何も言わずにいれば、ダンテがひとりでずっと喋っている。
「しかも悪魔憑きかよ?どこでどんなやつに憑かれたのか…」
それは俺も気になっていた。
どうやら何か引っ掛かるところがあるようで腕を組んで天を仰いでから、こちらをしっかりと見た。
「その子、Vと知り合いなんだよな?」
「だからどうした?」
「めちゃくちゃ思い当たる節がある。もしかしたら…」
ダンテはずかずかとソファに近づき、眠っているアリアに触れることはせずに呼び掛ける。
「グリフォン」
「おい」
起きたらどうすると思いダンテに声だけを掛ければ、何ともない様子で口角を上げた。
「意識だけ変わってもらえば大丈夫だろ?」
「…確かにそうだが」
「おい、いるのか?グリフォン」
Vとそいつは関係があるのか。
グリフォンという悪魔に心当たりがない訳ではなかったが、例の如くこれまで生きてきた一部の記憶がないため、あまり自分の中で辻褄が合わない。
やがて、アリアの目蓋がぴくりと動き、緑色の瞳がこちらを捉えた。
身体を起こし、にやりと笑顔を浮かべるが、それはやはりアリアとは明らかに違う下品なものだった。
「よォー久しぶりだなァ!元気してたか?」
彼女の姿であまりにギャップがある態度に、俺は思わず頭を抱える。
こいつだけの身体なら拳のひとつでも食らわせたいくらいだ。
「…その口調どうにかならんのか」
「ン?アリアちゃんのマネした方が良かったかァ?…バージルさん、大好き!」
グリフォンは急に態度を変え、瞳を潤ませて俺を見つめるが、1ミリも嬉しいとは思わなかった。
「殺すぞ」
「相変わらずの塩対応だな。あんなに仲良くしてたのによォ」
そう言われたところで覚えていないものは仕方ない。
あの時手を借りた「何か」のひとつだろうが、どうしてVはこいつと関わったのかと思わずにはいられない。
が、経緯を聞くより俺が思い出した方が事実を受け入れられると質問はしなかった。
「まさか俺も、今日ダンテの事務所に行っちまうとは予想できなかったゼ」
やはり今までアリアの中で大人しくしていただけで、こいつの意識はあったようだ。
今目で見た状態では、グリフォンはアリアの身体を操れる状態にいながら普段はしてないことになる。
グリフォンがアリアに敬意を払っているとでも言うのだろうか。
「…単刀直入に言う。なんでソコにいるんだ?シャドウやナイトメアもいるのか?」
ダンテは1番気になっていることを真正面から質問した。アリアの身体からは複数の悪魔の気配があったが、3体もいたとは…。
改めて、今まで大きな影響がなかったことが不思議だった。
「俺たち皆ココにいるぜ。アリアが俺たちを受け入れて、消滅から救ってくれたからだ。ただ…今問題が起きちまって正直困ってる」
問題という単語に、アリアの指先が怪我をしてもすぐに治ってしまったことを思い出す。
グリフォンに説明されるより先に口を開いた。
「アリアの肉体が悪魔化している…」
「そうだ。俺たちを長い間体内に入れてたせいでアリアが悪魔化し始めちまった」
グリフォンがVと関係があるならば、こいつらがアリアの体内に入って3年経つことになる。
悪魔憑きは大概、悪魔側が悪意を持って人間の身体を乗っ取るケースが多いが、アリアは例外でお互いの意思で「身体を共有」する状態になったようだ。
時が経ち、それだけでは抗えずにアリアの身体に影響が出始めた…というところか。
「俺が最初に中に入った時は俺たちの力も弱かったんだケドよ…なんかアリアと相性が良かったみたいでなァ」
本心なのか冗談なのか、そう言って笑うグリフォンに何故かものすごく苛立ちを感じ、気付いたら胸ぐらを掴んでいる自分がいた。
何故アリアはただの人間だというのに、体内にこいつを住まわせているのか。
自分の身体に害があるなら、すぐに追い出せばいいものを。
そう思ったら勝手に身体が動いていた。
「オ、オイ!バージル、冷静になれよ!俺の身体は今アリアだ!」
言われて初めて少し正気に戻り、手を離す。
焦るグリフォンの表情に僅かにアリアを感じて、頭に血がのぼっている自分を客観視できるようになってくる。
「…てか、そんなに怒るんだな?アリアちゃんのこと好きになっちゃった?愛しちゃった?」
問われても答えられない。
確かに気になってはいるし、優しくしてやりたいという気持ちもある。
だが、それが愛なのかは分からない。
「おい、グリフォン。それ以上焚き付けるな」
「そうだな。そろそろ本題に移ろうじゃねェか」
今まで様子を見ていたダンテが仲裁に入り、グリフォンはあっさりと引き下がって俺の目を真っ直ぐ見つめた。
「バージル、アリアを救ってやってほしい」
「…お前たちがアリアの体内から出ていけばいい」
俺に頼まずとも簡単な願いに返答は至ってシンプルだったが、グリフォンは慌ててこちらに近づいて来る。
「そしたら俺たち消えちまうだろォが!そんな単純なら頭下げてねェつーの!」
「我が身可愛さでアリアを悪魔にするか」
「だってよォー!アリアが出て行くなって言うんだから、まだココにいたくなっちまうよなァ…」
まさか話し合った上で、アリア自身も体内に悪魔を入れたままにしているとは。
どういう経緯でアリアと使い魔が今の関係を結ぶに至ったか詳しくは今分からないが、アリアも「自業自得」という訳か。
少しだけアリアに対して失望のような感情を抱いた時、グリフォンは視線を下に落とし、ふざけた態度は一切なく口を開く。
「俺たち、アリアとはトモダチってヤツ?なんだよ…なるべく傍にいて支えたいって言うの?わかるか、ソー言うの」
悪魔と人間が友達だと?
随分妙なことを言うなと思ったが、以前の自分ならともかく、今現在はダンテやネロの周囲の環境を知っている。
俺自身も、3年間もアリアを探し続けていたのは…?
ひとりで色々と考え始める前に、グリフォンが続ける。
「とりあえず…お前が本気でアリアを気になってンのは分かった。今日はもう引っ込むゼ。いいよな?ダンテ」
「ああ、聞きたいことは大体聞けたからな」
自分で呼び出したにも関わらずほとんど質問せずに、俺とグリフォンの様子を見ているだけで満足したらしい。
なんだかそれも少し腹が立ったが、アリア本人にグリフォンたちの話を聞くよりも状況が理解できたため、よしとする。
「まァ2回目の恋楽しめよ、バージル」
グリフォンは最後ににやりと笑うと、再びソファの上に横たわり、ようやくアリアの身体を解放した。
意識がないにしても眠っているだけだった彼女に無理をさせたことが、胸に罪悪感のようなものを湧き上がらせる。
「…俺はこの問題に関与しないぜ」
「当たり前だ」
アリアの寝顔を見つめているとダンテが口角を上げて囁いたので、思わず睨み付けた。
これ以上手出しされてたまるか。
その後やつはシャワー室に向かったのでやっと自室のベッドを整え、アリアを寝かせてやることができた。
end.