【第1章】夢のようなひと
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
2日目の夜。
私は不意に目覚めてしまい、ゆっくり瞼を開いた。
隣で眠っているはずだったVは横になっておらず、見上げてみる。
そこにはぼんやり月明かりに照らされ、腰掛けていつも持ち歩いてる本に目を通すVの姿があった。
私が声を掛けるより先にVは私の視線に気づき、目が合う。
「V…」
「アリア」
改めてこんな幻想的なひとがしっかり私を認識して私の名前を呼んでくれるのが、信じられないような気持ちになる。
Vは確かに今私の目の前にいるのに、どこか夢のようにぼんやりしてる。
「寝ないの?」
「俺もお前と同じだ」
「ああ…起きちゃったのか」
私も身を起こしてVの隣に座った。
身体が密着するくらいの近い距離に、Vが私と同じで生きていることを実感する。
「その本、面白い?」
「俺にとっては…な」
「そっか」
Vが好きなもの、Vが「私の世界」に興味があるように、私も気になってる。
こんなこと父以外では初めてだ。
ましてやVとは出逢ったばかりなのに、変だなと思いつつも心地いい。
私が膝を抱えてVに微笑むと、それに答えてくれる。
「…お前はよっぽど父親が大切だったんだな」
「…うん…まぁ大切じゃなかったら、ここに残ってないよね」
「そうか」
そう言って口角を上げ小さく鼻で笑うから、思わずむっとしてしまった。
違うだろうけど馬鹿にされているような気もして、私はVの顔を思いっきり覗き込んだ。
「何、V?今笑ったでしょ?」
「いや、なんでもない」
「ごまかさないで…!」
相変わらず涼しい顔。
開きっぱなしだった本を閉じ床に静かに置いて、Vは真っ直ぐに私を見つめた。
「初めて出逢ったからな」
「?」
「ひとの趣味にこんなに理解を示す人間に」
私は父が大事にしていたものを守りたくて、命の危険さえ冒してここにいる。
最初出逢った時はVも私をここから避難させようとしていたのに、今は認めてくれ、しかも守ってくれている。
「ありがとう…なのかな?」
胸が暖かくなるのと同時に、なんだかVの瞳から逃げたくて、膝に置いた自分の手元を見つめる。
本当はVと向き合って話したいけれどこんなの初めてで、Vの、言葉で表現し難いグリーンの瞳を見ていると苦しくなる。
なんだろう、この気持ち。
「私…もっと、あなたのこと知りたい」
好奇心そのままに、私は口を開いていた。
勝手に溢れてしまった言葉に、はっと正気に戻って、やっとまたVの顔を見ることができた。
とりあえず、今の台詞がVの誤解を招くような意味にならないように、言い直さないと!
「あっいや、素性とかじゃなくて、もっと、奥にあるもの」
なんて言ったらいいか、うまい言葉が見つからない。
Vが何者であるとかそういうのじゃなく、たとえればVの心にある風景とか、そういうものが知りたい。
「えっと、つまり…」
私が戸惑っていると、不意にVが私の腕に手をやった。
その緑の瞳には、私が映っていた。
「アリア」
「…っ」
名前を呼ばれて、私の心臓は確かにどくんと脈打つ。
「大丈夫だ。伝わった」
「あ…うん、良かった…」
Vは言葉に詰まった私を安心させるために、こんなことをしたのかもしれないけど逆効果だ。
自分の胸を落ち着かせながら、私はなんとかVに微笑み立ち上がった。
「また寝るね。おやすみ、V」
「ああ…俺も眠ることにする」
Vは眠れるのかな?
私は勿論、ブランケットに包まれてもなかなか眠れなかった。
ただ、目を開いてVの姿を見たら心臓がまた暴れ出しそうだったから、ずっと瞑っていた。
しばらくしたらさすがに寝ることはできたものの。
自分の心に芽生えた新しい気持ちが、知りたいし知りたくない、完全に矛盾している。
3日目の夕方。
もうVたちが帰って来ないかもなんて、そんな悲観的な考えはなくなっていた。
昨日と同じようにレコードを何枚か聞き、帰宅時に流すための一曲を選ぶ。
それに今日からは新しいことを始めようと、書斎にも改めて目を通してみた。
「ただいまー!メシアちゃん!」
「おかえり!鳥くん、黒猫ちゃん!」
昨日と同じように、鳥くんの元気な声で私は皆の帰宅を知る。
黒猫ちゃんの後に続く形で、Vがお店のドアを潜ると、何故がVだけが輝いて見えてしまう。
「V」
私が名前を呼べば確かにVは微笑んで、胸がきゅっとなる。
ああ、だめだよ。
なんだろう、この気持ち。
「今日の1曲はなんだァ?」
「あっ、今日はこれだよ!」
再びの鳥くんの声にはっとした私は、用意していたレコードをセットする。
鳥くんも鳥くんで、当たり前みたいに聞いてくれるのが、嬉しい。
「今日はしっとり系なのねー!」
店内には大人っぽいムーディーな曲が流れ始める。
自分で選曲したけど、やめておけば良かったかも。
Vに対して変な気持ち持っちゃってるし…。
それを振り切るように、書斎で探した白紙のノートを手に持って皆に突き付けて見せた。
「あとね、日記つけることにしたんだ。こんな奇妙なこと、この先なかなかないだろうし」
皆と一緒にいられるのは1ヶ月だけ。
最初からわかってたけどあまりにも短い。
だから、残しておきたい。
「…いいな」
1番最初に反応してくれたのは、他でもないVだった。
「いつでも振り返れる。いいことも悪いことも…」
Vに後押しされた私は、なんだかとっても興奮してしまって、勝手に笑顔が溢れる。
それこそ、ノート片手に踊ってしまいそう。
「皆のことたくさん書くね!」
「マジかー!俺のこと、カッコよく書いてくれよ!」
そばにあった椅子の上に留まった鳥くんが、笑いながら宣言したのを受けて、私は思わず吹き出した。
「鳥くん、別に本出す訳じゃないんだからさ」
「どんなのでもカッコよく書いてほしいじゃねェかー!」
「もーわかったよ!」
書き出していけば、思い出も残る。
そうして、私自身のお気に入りの曲もきっと見つかる。
Vに抱いているこの気持ちも、きっとわかるよね…?
end.
私は不意に目覚めてしまい、ゆっくり瞼を開いた。
隣で眠っているはずだったVは横になっておらず、見上げてみる。
そこにはぼんやり月明かりに照らされ、腰掛けていつも持ち歩いてる本に目を通すVの姿があった。
私が声を掛けるより先にVは私の視線に気づき、目が合う。
「V…」
「アリア」
改めてこんな幻想的なひとがしっかり私を認識して私の名前を呼んでくれるのが、信じられないような気持ちになる。
Vは確かに今私の目の前にいるのに、どこか夢のようにぼんやりしてる。
「寝ないの?」
「俺もお前と同じだ」
「ああ…起きちゃったのか」
私も身を起こしてVの隣に座った。
身体が密着するくらいの近い距離に、Vが私と同じで生きていることを実感する。
「その本、面白い?」
「俺にとっては…な」
「そっか」
Vが好きなもの、Vが「私の世界」に興味があるように、私も気になってる。
こんなこと父以外では初めてだ。
ましてやVとは出逢ったばかりなのに、変だなと思いつつも心地いい。
私が膝を抱えてVに微笑むと、それに答えてくれる。
「…お前はよっぽど父親が大切だったんだな」
「…うん…まぁ大切じゃなかったら、ここに残ってないよね」
「そうか」
そう言って口角を上げ小さく鼻で笑うから、思わずむっとしてしまった。
違うだろうけど馬鹿にされているような気もして、私はVの顔を思いっきり覗き込んだ。
「何、V?今笑ったでしょ?」
「いや、なんでもない」
「ごまかさないで…!」
相変わらず涼しい顔。
開きっぱなしだった本を閉じ床に静かに置いて、Vは真っ直ぐに私を見つめた。
「初めて出逢ったからな」
「?」
「ひとの趣味にこんなに理解を示す人間に」
私は父が大事にしていたものを守りたくて、命の危険さえ冒してここにいる。
最初出逢った時はVも私をここから避難させようとしていたのに、今は認めてくれ、しかも守ってくれている。
「ありがとう…なのかな?」
胸が暖かくなるのと同時に、なんだかVの瞳から逃げたくて、膝に置いた自分の手元を見つめる。
本当はVと向き合って話したいけれどこんなの初めてで、Vの、言葉で表現し難いグリーンの瞳を見ていると苦しくなる。
なんだろう、この気持ち。
「私…もっと、あなたのこと知りたい」
好奇心そのままに、私は口を開いていた。
勝手に溢れてしまった言葉に、はっと正気に戻って、やっとまたVの顔を見ることができた。
とりあえず、今の台詞がVの誤解を招くような意味にならないように、言い直さないと!
「あっいや、素性とかじゃなくて、もっと、奥にあるもの」
なんて言ったらいいか、うまい言葉が見つからない。
Vが何者であるとかそういうのじゃなく、たとえればVの心にある風景とか、そういうものが知りたい。
「えっと、つまり…」
私が戸惑っていると、不意にVが私の腕に手をやった。
その緑の瞳には、私が映っていた。
「アリア」
「…っ」
名前を呼ばれて、私の心臓は確かにどくんと脈打つ。
「大丈夫だ。伝わった」
「あ…うん、良かった…」
Vは言葉に詰まった私を安心させるために、こんなことをしたのかもしれないけど逆効果だ。
自分の胸を落ち着かせながら、私はなんとかVに微笑み立ち上がった。
「また寝るね。おやすみ、V」
「ああ…俺も眠ることにする」
Vは眠れるのかな?
私は勿論、ブランケットに包まれてもなかなか眠れなかった。
ただ、目を開いてVの姿を見たら心臓がまた暴れ出しそうだったから、ずっと瞑っていた。
しばらくしたらさすがに寝ることはできたものの。
自分の心に芽生えた新しい気持ちが、知りたいし知りたくない、完全に矛盾している。
3日目の夕方。
もうVたちが帰って来ないかもなんて、そんな悲観的な考えはなくなっていた。
昨日と同じようにレコードを何枚か聞き、帰宅時に流すための一曲を選ぶ。
それに今日からは新しいことを始めようと、書斎にも改めて目を通してみた。
「ただいまー!メシアちゃん!」
「おかえり!鳥くん、黒猫ちゃん!」
昨日と同じように、鳥くんの元気な声で私は皆の帰宅を知る。
黒猫ちゃんの後に続く形で、Vがお店のドアを潜ると、何故がVだけが輝いて見えてしまう。
「V」
私が名前を呼べば確かにVは微笑んで、胸がきゅっとなる。
ああ、だめだよ。
なんだろう、この気持ち。
「今日の1曲はなんだァ?」
「あっ、今日はこれだよ!」
再びの鳥くんの声にはっとした私は、用意していたレコードをセットする。
鳥くんも鳥くんで、当たり前みたいに聞いてくれるのが、嬉しい。
「今日はしっとり系なのねー!」
店内には大人っぽいムーディーな曲が流れ始める。
自分で選曲したけど、やめておけば良かったかも。
Vに対して変な気持ち持っちゃってるし…。
それを振り切るように、書斎で探した白紙のノートを手に持って皆に突き付けて見せた。
「あとね、日記つけることにしたんだ。こんな奇妙なこと、この先なかなかないだろうし」
皆と一緒にいられるのは1ヶ月だけ。
最初からわかってたけどあまりにも短い。
だから、残しておきたい。
「…いいな」
1番最初に反応してくれたのは、他でもないVだった。
「いつでも振り返れる。いいことも悪いことも…」
Vに後押しされた私は、なんだかとっても興奮してしまって、勝手に笑顔が溢れる。
それこそ、ノート片手に踊ってしまいそう。
「皆のことたくさん書くね!」
「マジかー!俺のこと、カッコよく書いてくれよ!」
そばにあった椅子の上に留まった鳥くんが、笑いながら宣言したのを受けて、私は思わず吹き出した。
「鳥くん、別に本出す訳じゃないんだからさ」
「どんなのでもカッコよく書いてほしいじゃねェかー!」
「もーわかったよ!」
書き出していけば、思い出も残る。
そうして、私自身のお気に入りの曲もきっと見つかる。
Vに抱いているこの気持ちも、きっとわかるよね…?
end.