【第3章】皆で叩く現実の扉
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雨の次の日は風が強めに吹いて庭のデイリリーが波打つ様を、私たちは並んで眺めていた。
隣に座るVがいつも持っている本の表紙を指で撫でるように触れてから、私に笑みをくれる。
「ここは本当に…時が止まったようだな」
「うん、ずっと…変わらない」
ここの景色だけは、父といた時も街が悪魔に襲われた時も、そして今も変わらない。
黄色い花畑は、黄金の絨毯みたいだ。
傍にグリフォンもシャドウも勿論いるけれど、何のためらいもなく、Vは私に身を寄せてキスをくれる。
緑色の瞳にしっかり私が映っていて、胸が熱くなって思わず微笑んでしまう。
「…V、大好き」
「俺もだ…アリア」
おでことおでこをくっつけ笑い合うと、Vが私の頬に左手を滑らせ少し距離を取った。
さっきと比べてちょっと厳しい眼差しに、どきっとする。
「お前にもうひとつ言っておきたいことがある」
もう全てを話してくれたとばかり思っていたから、私は再び背筋を伸ばしVの言葉を待った。
「俺がバージルに戻ってから、俺を探さないでほしい」
「え…」
想像していなかったまさかのお願いに、何も考えられなくなる。
というか、その時に私がバージルさんを探す行動を取るのかも、自分自身でわかっていない。
Vには勿論会いたい。
でもそれが、バージルさんと会うこととイコールになるかはちょっと疑問はある。
「お前に会いたくない訳ではない。バージルが、お前を覚えているかわからないからだ」
Vにそう言われて、反対にバージルさんが私を覚えているか確認したい気持ちがじわじわ湧いて来てしまった。
もし覚えていてくれたら、それは本当に私たちが「1ヶ月を超えた」ことを意味する気がするから。
Vもそれを信じてくれているのに、なんで探さないでなんて言うんだろう。
その理由を、すぐにVが続けた。
「俺は、お前に生きたまま死んだようになってほしくない…過去に取り憑かれた亡霊にはなるな」
Vと出逢った時、私は父の思い出ばかりを追ってここに篭っていた。
それと同じことを繰り返すなと、言われているような気がした。
過去に閉じこもるんじゃなく、抱いて前に進めと。
「わかった…探すことはしない。約束するよ、V」
私が答えれば、眉を歪めながらもVは口角を上げて微笑んだ。
その複雑な表情に、もう1度告げる。
「前に進む力は、Vたちから貰ったから…私はもう亡霊にはならないから…だから、心配しないで」
改めてVに感謝の気持ちが溢れてくる。
偶然に私を見つけて、そして気にかけてくれて、ありがとう。
Vがバージルさんに戻っても、ずっとずっと好き。
にっこり笑うと、ぎゅっと強い力で私の身体を抱き締めてくれた。
「俺は…お前を、見つけ出そう。必ず」
Vの背中に両手を回して、返事の代わりにする。
「こんな非力な身体でも、守れるものはあるんだな…」
独り言のように呟かれた台詞に反応する間もなく、何故か突然腕を解かれ、Vがデイリリーの咲く庭に視線をやった。
それまで私たちを見守っていたグリフォンも、大きく翼を広げる。
「よォVちゃん、最後まで気は抜けねェ!お前が1度感じてンだろ?」
「…わかっている。状況は益々悪くなっている」
2人の会話と明らかに臨戦態勢で構えるシャドウに、心臓がどくんと脈打つ。
「ここから…出た方がいいかな?」
「そうだな…」
「危ねェ!」
花畑の中から、先端が槍のように尖った木の根が何本か飛び出す。
グリフォンとシャドウが根に向かって攻撃する姿が、私にはスローモーションがかかって見える。
ぼろぼろになって舞い落ちる黄色い花びら。
赤黒い根に押し上げられて、掘り返された土。
さっきまでずっと変わらず綺麗だったのに。
とうとう、このお店まで悪魔の影響が出て来てしまった。
「アリア、予定より少し早いが…ここを出よう」
どこかぼんやりしていた私は、Vの言葉で現実に戻って来る。
むしろ今まで無事だったのが、奇跡だったんだ。
Vはもう1度私の両肩に手を置いて、瞳を覗き込んだ。
「出られるな…?」
「…うん、大丈夫。行ける」
ゆっくり深く、確かに頷く。
end.
隣に座るVがいつも持っている本の表紙を指で撫でるように触れてから、私に笑みをくれる。
「ここは本当に…時が止まったようだな」
「うん、ずっと…変わらない」
ここの景色だけは、父といた時も街が悪魔に襲われた時も、そして今も変わらない。
黄色い花畑は、黄金の絨毯みたいだ。
傍にグリフォンもシャドウも勿論いるけれど、何のためらいもなく、Vは私に身を寄せてキスをくれる。
緑色の瞳にしっかり私が映っていて、胸が熱くなって思わず微笑んでしまう。
「…V、大好き」
「俺もだ…アリア」
おでことおでこをくっつけ笑い合うと、Vが私の頬に左手を滑らせ少し距離を取った。
さっきと比べてちょっと厳しい眼差しに、どきっとする。
「お前にもうひとつ言っておきたいことがある」
もう全てを話してくれたとばかり思っていたから、私は再び背筋を伸ばしVの言葉を待った。
「俺がバージルに戻ってから、俺を探さないでほしい」
「え…」
想像していなかったまさかのお願いに、何も考えられなくなる。
というか、その時に私がバージルさんを探す行動を取るのかも、自分自身でわかっていない。
Vには勿論会いたい。
でもそれが、バージルさんと会うこととイコールになるかはちょっと疑問はある。
「お前に会いたくない訳ではない。バージルが、お前を覚えているかわからないからだ」
Vにそう言われて、反対にバージルさんが私を覚えているか確認したい気持ちがじわじわ湧いて来てしまった。
もし覚えていてくれたら、それは本当に私たちが「1ヶ月を超えた」ことを意味する気がするから。
Vもそれを信じてくれているのに、なんで探さないでなんて言うんだろう。
その理由を、すぐにVが続けた。
「俺は、お前に生きたまま死んだようになってほしくない…過去に取り憑かれた亡霊にはなるな」
Vと出逢った時、私は父の思い出ばかりを追ってここに篭っていた。
それと同じことを繰り返すなと、言われているような気がした。
過去に閉じこもるんじゃなく、抱いて前に進めと。
「わかった…探すことはしない。約束するよ、V」
私が答えれば、眉を歪めながらもVは口角を上げて微笑んだ。
その複雑な表情に、もう1度告げる。
「前に進む力は、Vたちから貰ったから…私はもう亡霊にはならないから…だから、心配しないで」
改めてVに感謝の気持ちが溢れてくる。
偶然に私を見つけて、そして気にかけてくれて、ありがとう。
Vがバージルさんに戻っても、ずっとずっと好き。
にっこり笑うと、ぎゅっと強い力で私の身体を抱き締めてくれた。
「俺は…お前を、見つけ出そう。必ず」
Vの背中に両手を回して、返事の代わりにする。
「こんな非力な身体でも、守れるものはあるんだな…」
独り言のように呟かれた台詞に反応する間もなく、何故か突然腕を解かれ、Vがデイリリーの咲く庭に視線をやった。
それまで私たちを見守っていたグリフォンも、大きく翼を広げる。
「よォVちゃん、最後まで気は抜けねェ!お前が1度感じてンだろ?」
「…わかっている。状況は益々悪くなっている」
2人の会話と明らかに臨戦態勢で構えるシャドウに、心臓がどくんと脈打つ。
「ここから…出た方がいいかな?」
「そうだな…」
「危ねェ!」
花畑の中から、先端が槍のように尖った木の根が何本か飛び出す。
グリフォンとシャドウが根に向かって攻撃する姿が、私にはスローモーションがかかって見える。
ぼろぼろになって舞い落ちる黄色い花びら。
赤黒い根に押し上げられて、掘り返された土。
さっきまでずっと変わらず綺麗だったのに。
とうとう、このお店まで悪魔の影響が出て来てしまった。
「アリア、予定より少し早いが…ここを出よう」
どこかぼんやりしていた私は、Vの言葉で現実に戻って来る。
むしろ今まで無事だったのが、奇跡だったんだ。
Vはもう1度私の両肩に手を置いて、瞳を覗き込んだ。
「出られるな…?」
「…うん、大丈夫。行ける」
ゆっくり深く、確かに頷く。
end.