Charlotte
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そこは暗いし狭くて息苦しくて、だけど絶対外に出る訳にはいかなかった。
私は泣くことしかできず、一緒にいたダンテは私の小さな身体を強く抱き締め、落ち着かせようとしていた。
日頃からお母さんに妹を守るように言われていたダンテは立派にお兄ちゃんをしていた。
でも、私はダンテの身体が震えていることに気づいていた。
私たちがまだ小さな子どもだった時、お母さんは悪魔に殺された。
私もダンテも、何もできなかった。
お母さんは近くにいた私たち2人をクローゼットに押し込んで、身を挺して守ってくれ、代わりに死んでしまった。
代わりにというより、悪魔たちはお父さんに関わった者を皆殺そうとしていた。
裏切り者スパーダの家族。
ダンテは今でも悪魔に襲われている。
今だからこそダンテは、お父さんから受け継いだリベリオンと、2丁拳銃で、悪魔たちをなぎ倒している。
その悪魔退治のお金で私を学校に出してくれ、私がスパーダの家族であることもうまく隠すことができた。
思えばずっと、私はダンテに守られてきた。
一緒に震えていたダンテはいつの間にかとても強くなり、逞しくなった。
優しくまっすぐなダンテは、これからたくさんのひとを悪魔たちの脅威から救うだろう。
私たちがあの夜震えることしかできなかった悔しさをバネにして。
「うわ、めっちゃいい匂い」
「おはよう!ダンテ」
トーストが焼けたところで、ちょうどタイミングよくダンテが起きてきた。
エリはスクランブルエッグやボイルしたソーセージを盛り付けた皿をテーブルに置き、ほんのり赤く色づいた頬で微笑む。
彼女はフレアスカートとピンク色のエプロンをまとって、まるで新婚だなとダンテは頭の裏でにやりとする。
今日も俺の妹は可愛い。
こんな健気で純粋な女を自分のそばに置いてくれたカミサマに感謝しながら、食卓につく。
朝食を誰かと囲むなんて何年ぶりだろう。
「ねぇダンテ。この事務所の名前って決まってるの?」
「それがまだなんだよな…いいのが思い付かなくてよ」
まだ借りたばかりだと言っていたし、回線は繋がっているので何かあれば仲介屋が電話をくれるだろうから、そんなに焦る必要はないかとエリは思った。
表立って悪魔退治のお店をする訳にもいかず、一応便利屋という体で創業するようだ。
どんなお店でも名前は立派なものをつけたいと少し頭をひねったけれど、やっぱり思い浮かばなかった。
朝食を済ませてからお皿を洗っていると、噂をすれば事務所中央のデスクにある黒電話が鳴り響く。
ソファに座っていたダンテがしぶしぶ出て、聞こえてきたのはエンツォという名前だった。
確か以前ダンテに聞いたことのある仲介屋だ。
食器を片付けたエリはダンテのそばに寄った。
「エリ、ちょっと出掛けてもいいか?」
「うん、大丈夫だよ。仕事?」
「ああ、夜には戻るぜ。誰か来ても出なくていいからな」
ダンテはいつもの赤いコートを羽織り武器を準備すると、すぐに出て行った。
夜には戻る、か。
まだ日は高く、お昼にも少し早いので、時間はたっぷり過ぎるほどある。
昼食はひとりで取ることになりそうだ。
この事務所は広いから、下宿先より寂しさを感じたが、待つひとがいる分条件は変わる。
ダンテが帰る頃を見計らって夕食の支度をしておこう。
とりあえず、洗濯と掃除を済ませる。
いつもやってきたことだから、場所が変わろうが戸惑いはなかった。
エリは母を失ったあの日から、直接悪魔は見ていない。
出会う悪魔は自分の夢の中で繰り返し見るその記憶だけだ。
ダンテは無数の悪魔に出会っていて、そしてそれらと戦っている。
単純にすごいなと思う。
あの日の悪夢は脳裏に焼き付いて離れず、悪魔を前にしたらきっとそれが蘇る。
身体は成長したのに、あの夜だけはまだ乗り越えられないでいる。
ダンテと暮らす以上悪魔と出会うことは避けて通れないし、そんな覚悟はしたつもりなのに、やっぱり少し怖かった。
「よし、できた」
午後7時頃。
さすがにそろそろダンテが帰ってくるだろうと、夕食の準備ができた。
エリはリビングテーブルに皿を並べて、にんまりする。
早く帰ってきてほしい。
ふとそう思うと、玄関のドアを叩く音がした。
きっとダンテだ。
エリは駆け足でドアに急ぐと、言い付けを守ってすぐには開けなかった。
「ダンテ?」
「ただいま、エリ」
確証が取れすぐにドアを開ければ、いつもの笑顔がそこにある。
エリは身体の力が抜けるのがわかり、無事で帰ってくれてほっとしている自分に気づいた。
帰ってくるなり、ダンテはエリの小さな身体をそっと抱き締める。
突然のことで驚いた彼女は身を強ばらせた。
「ダンテ…!?」
「悪ぃ…ちょっとこのままがいい」
ダンテの声はいつもと比べて張りがない。
ちょうど肩に頭が乗るような形なので、表情もわからなかったが、なんとなくダンテの気持ちが沈んでいるような気がして、エリは広い背中に手を回す。
「寂しいの?」
「は?なんだそれ」
どこをどう見て寂しいと思ったのか、ダンテは少し彼女の身を離し顔を合わせる。
「私が寂しかったから、ダンテもかなぁって」
「お前寂しかったのか?」
エリはいつも笑っていたから、寂しかったなんて初めて聞いた。
学校で友だちと仲良くやって楽しく暮らしてたとばかり。
「だって学校以外はひとりだし。家に帰ればずっとひとり」
「…離れてるけど俺がいただろ」
「そうだけど…離れてたし…」
そう言いながら自分の胸元に顔を擦り付けてくる妹にキスしたいとか、兄失格だろうか。
エリと兄妹という絆だけでもすがりつきたいのに、キスしたら全部ぶち壊してしまうんだろうかと臆病な自分が顔を覗かせる。
「ほら、ご飯にしよう!」
エリは回した腕を離して、ダンテの手を握って奥に招き入れた。
家に帰れば笑顔で迎えてくれる人がいて、温かい食事も出てくる。
おまけに掃除洗濯その他もろもろまで全部やってくれる妹。
ダンテは柄にもなく涙が出そうなほど感動していた。
自分を想ってくれる人がいるのは、ちょっとくすぐったくてふわふわして心地良い。
今までエリの言う通りお互いひとりで生活してきたから、ちょっとナーバスになったようだ。
こんな生活が懐かしい、なんて。
今だってリビングから懐かしい香りがするのだ。
これは確か、母さんがよく作ってくれたハンバーグ。
「そろそろダンテが帰ってくるんじゃないかと思って温めておいたの」
エリは微笑みながら椅子を引いて座るように促し、自らも席についた。
予想以上に妹は料理のスキルが高いと思ったが、まさかここまでとは。
タイムスリップでもしたかのように、あの日そっくりの味がそこにあった。
「エリの飯は世界一だ」
「大袈裟だよ。私の中の世界一はお母さんだから、私はずっと世界二なの」
エリは謙遜するように言う。
きっとここまでになるまで、ものすごく練習したんだろう。
そう思うと、彼女への愛しさがこみ上げてくる。
「ダンテは他に何か食べたいものある?」
「母さんのシチューうまかったな」
「じゃあ今度作るね」
「マジ!?楽しみ」
昔母親にそうしてもらったように、エリはダンテがリクエストしてくるものはなんでも作りたかった。
それが、悪魔と戦えない自分にできる仕事のひとつだと思った。
end.
私は泣くことしかできず、一緒にいたダンテは私の小さな身体を強く抱き締め、落ち着かせようとしていた。
日頃からお母さんに妹を守るように言われていたダンテは立派にお兄ちゃんをしていた。
でも、私はダンテの身体が震えていることに気づいていた。
私たちがまだ小さな子どもだった時、お母さんは悪魔に殺された。
私もダンテも、何もできなかった。
お母さんは近くにいた私たち2人をクローゼットに押し込んで、身を挺して守ってくれ、代わりに死んでしまった。
代わりにというより、悪魔たちはお父さんに関わった者を皆殺そうとしていた。
裏切り者スパーダの家族。
ダンテは今でも悪魔に襲われている。
今だからこそダンテは、お父さんから受け継いだリベリオンと、2丁拳銃で、悪魔たちをなぎ倒している。
その悪魔退治のお金で私を学校に出してくれ、私がスパーダの家族であることもうまく隠すことができた。
思えばずっと、私はダンテに守られてきた。
一緒に震えていたダンテはいつの間にかとても強くなり、逞しくなった。
優しくまっすぐなダンテは、これからたくさんのひとを悪魔たちの脅威から救うだろう。
私たちがあの夜震えることしかできなかった悔しさをバネにして。
「うわ、めっちゃいい匂い」
「おはよう!ダンテ」
トーストが焼けたところで、ちょうどタイミングよくダンテが起きてきた。
エリはスクランブルエッグやボイルしたソーセージを盛り付けた皿をテーブルに置き、ほんのり赤く色づいた頬で微笑む。
彼女はフレアスカートとピンク色のエプロンをまとって、まるで新婚だなとダンテは頭の裏でにやりとする。
今日も俺の妹は可愛い。
こんな健気で純粋な女を自分のそばに置いてくれたカミサマに感謝しながら、食卓につく。
朝食を誰かと囲むなんて何年ぶりだろう。
「ねぇダンテ。この事務所の名前って決まってるの?」
「それがまだなんだよな…いいのが思い付かなくてよ」
まだ借りたばかりだと言っていたし、回線は繋がっているので何かあれば仲介屋が電話をくれるだろうから、そんなに焦る必要はないかとエリは思った。
表立って悪魔退治のお店をする訳にもいかず、一応便利屋という体で創業するようだ。
どんなお店でも名前は立派なものをつけたいと少し頭をひねったけれど、やっぱり思い浮かばなかった。
朝食を済ませてからお皿を洗っていると、噂をすれば事務所中央のデスクにある黒電話が鳴り響く。
ソファに座っていたダンテがしぶしぶ出て、聞こえてきたのはエンツォという名前だった。
確か以前ダンテに聞いたことのある仲介屋だ。
食器を片付けたエリはダンテのそばに寄った。
「エリ、ちょっと出掛けてもいいか?」
「うん、大丈夫だよ。仕事?」
「ああ、夜には戻るぜ。誰か来ても出なくていいからな」
ダンテはいつもの赤いコートを羽織り武器を準備すると、すぐに出て行った。
夜には戻る、か。
まだ日は高く、お昼にも少し早いので、時間はたっぷり過ぎるほどある。
昼食はひとりで取ることになりそうだ。
この事務所は広いから、下宿先より寂しさを感じたが、待つひとがいる分条件は変わる。
ダンテが帰る頃を見計らって夕食の支度をしておこう。
とりあえず、洗濯と掃除を済ませる。
いつもやってきたことだから、場所が変わろうが戸惑いはなかった。
エリは母を失ったあの日から、直接悪魔は見ていない。
出会う悪魔は自分の夢の中で繰り返し見るその記憶だけだ。
ダンテは無数の悪魔に出会っていて、そしてそれらと戦っている。
単純にすごいなと思う。
あの日の悪夢は脳裏に焼き付いて離れず、悪魔を前にしたらきっとそれが蘇る。
身体は成長したのに、あの夜だけはまだ乗り越えられないでいる。
ダンテと暮らす以上悪魔と出会うことは避けて通れないし、そんな覚悟はしたつもりなのに、やっぱり少し怖かった。
「よし、できた」
午後7時頃。
さすがにそろそろダンテが帰ってくるだろうと、夕食の準備ができた。
エリはリビングテーブルに皿を並べて、にんまりする。
早く帰ってきてほしい。
ふとそう思うと、玄関のドアを叩く音がした。
きっとダンテだ。
エリは駆け足でドアに急ぐと、言い付けを守ってすぐには開けなかった。
「ダンテ?」
「ただいま、エリ」
確証が取れすぐにドアを開ければ、いつもの笑顔がそこにある。
エリは身体の力が抜けるのがわかり、無事で帰ってくれてほっとしている自分に気づいた。
帰ってくるなり、ダンテはエリの小さな身体をそっと抱き締める。
突然のことで驚いた彼女は身を強ばらせた。
「ダンテ…!?」
「悪ぃ…ちょっとこのままがいい」
ダンテの声はいつもと比べて張りがない。
ちょうど肩に頭が乗るような形なので、表情もわからなかったが、なんとなくダンテの気持ちが沈んでいるような気がして、エリは広い背中に手を回す。
「寂しいの?」
「は?なんだそれ」
どこをどう見て寂しいと思ったのか、ダンテは少し彼女の身を離し顔を合わせる。
「私が寂しかったから、ダンテもかなぁって」
「お前寂しかったのか?」
エリはいつも笑っていたから、寂しかったなんて初めて聞いた。
学校で友だちと仲良くやって楽しく暮らしてたとばかり。
「だって学校以外はひとりだし。家に帰ればずっとひとり」
「…離れてるけど俺がいただろ」
「そうだけど…離れてたし…」
そう言いながら自分の胸元に顔を擦り付けてくる妹にキスしたいとか、兄失格だろうか。
エリと兄妹という絆だけでもすがりつきたいのに、キスしたら全部ぶち壊してしまうんだろうかと臆病な自分が顔を覗かせる。
「ほら、ご飯にしよう!」
エリは回した腕を離して、ダンテの手を握って奥に招き入れた。
家に帰れば笑顔で迎えてくれる人がいて、温かい食事も出てくる。
おまけに掃除洗濯その他もろもろまで全部やってくれる妹。
ダンテは柄にもなく涙が出そうなほど感動していた。
自分を想ってくれる人がいるのは、ちょっとくすぐったくてふわふわして心地良い。
今までエリの言う通りお互いひとりで生活してきたから、ちょっとナーバスになったようだ。
こんな生活が懐かしい、なんて。
今だってリビングから懐かしい香りがするのだ。
これは確か、母さんがよく作ってくれたハンバーグ。
「そろそろダンテが帰ってくるんじゃないかと思って温めておいたの」
エリは微笑みながら椅子を引いて座るように促し、自らも席についた。
予想以上に妹は料理のスキルが高いと思ったが、まさかここまでとは。
タイムスリップでもしたかのように、あの日そっくりの味がそこにあった。
「エリの飯は世界一だ」
「大袈裟だよ。私の中の世界一はお母さんだから、私はずっと世界二なの」
エリは謙遜するように言う。
きっとここまでになるまで、ものすごく練習したんだろう。
そう思うと、彼女への愛しさがこみ上げてくる。
「ダンテは他に何か食べたいものある?」
「母さんのシチューうまかったな」
「じゃあ今度作るね」
「マジ!?楽しみ」
昔母親にそうしてもらったように、エリはダンテがリクエストしてくるものはなんでも作りたかった。
それが、悪魔と戦えない自分にできる仕事のひとつだと思った。
end.