Charlotte
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「何かと思えば仕事持って来たのかよ…」
ソファに通されたレディは早速用件を切り出した。
ダンテの事務所をただで訪ねるはずがなく、丁寧に仕事を引っさげて来た彼女に、向かい側のダンテはうなだれた。
「あら、私は親切で紹介してるのに。それに破壊は得意でしょ?」
明らかなイヤミが爽やかな笑顔から飛び出す。
確かにテメンニグルでは様々なものを破壊していたが、こちらも生活がかかっている。
妹にちゃんと飯を食わせてやらないといけないし、その辺はわきまえているつもりだ。
今回の仕事は、廃屋に悪魔が湧いており退治できれば建物はどうなってもいいというもの。
レディの言う通り、どんなに暴れて破壊しようが文句は言われないだろう。
「は、破壊…?」
「エリ!なんでもねぇから!」
エリが紅茶とクッキーをトレーに乗せ現れ、眉を歪める。
ちょうどレディの発言を聞いていたらしく、妹の前では格好つけていたダンテは声を張り上げ、ごまかした。
少しその瞳を見つめてから、エリはレディの隣に座りティーカップを置く。
クッキーの甘い香りも鼻をかすめ、レディは目を細めて微笑んだ。
「ありがとう。いい香りね。このクッキー、エリが?」
「あ…う、うん。ちょうど作ったのがあったから。あり合わせでごめんね、レディ」
「…ううん。料理得意なんだ?」
「得意っていうか、趣味かなぁ」
そう言ってにこりとするエリ。
手作りクッキーと同じような甘い香りが染み付いている。
ダンテとは正反対に、家庭的で平和の象徴のような彼女。
絶望とか恐怖とかそういった負のものとは無縁な笑顔にダンテが執着するのは、自身が置かれている境遇からか。
エリはきっとずっと妹として可愛がられて、そのまま育って来たんだろう。
護りたくなる女の子はこういう感じなのかもと、レディはクッキーをかじった。
「今度ご飯食べさせてね」
「うん!勿論!」
弾む声に、また近いうちに事務所に押し掛けようと密かに固く誓う。
毎日3食あの双子の食事を作ってるんだから、おいしいに決まってる。
エリから視線を外し、レディは再び向かいのダンテを問い詰める。
「で、ダンテ。やるの?やらないの?」
ダンテが口を開き掛けた時、2階からもうひとりの住人が降りてきて、話を中断し気にせずにはいられなかった。
バージル。
テメンニグルではひたすら力を求め、目的のためには手段を選ばなかった彼が、今ここで静かに暮らしている。
それが少し、信じられない。
バージルはゆっくりした足取りでソファへと近づき、ダンテは腰を捻ってにんまりした。
「バージル。あんた依頼受けるんだったよな?」
「…そうなの?」
ここはダンテの事務所で、バージルが悪魔退治をしているとは聞いていない。
レディは口を挟まずにいられなかった。
「ああ、これからあいつは俺の従業員なんだよ」
「誰が従業員だ」
悪戯っぽく笑って親指で自分を指すダンテに、バージルがつっこむ。
あんな本気の殺し合いをしていた2人なのに、これじゃまるで本当の兄弟みたいだ。
いや、本当の血を分けた双子だが。
2人には直接言わず、レディは隣のエリに話し掛けた。
「…彼って今はあんな調子なの?」
「バージルのこと?」
「うん、2人とっても仲が良いのね」
「そ、そうかな…そうならいいな」
エリから見たら、まだ「仲が良い」とは言えないようだ。
テメンニグルでの一部始終を知っているレディからすれば、今普通に話をしているのも仲が良く見える。
しかもあんなに冷徹そうに見えたバージルにも、ちゃんと家族がいて、そしてそれに応える心があるんだとぼんやり思う。
これも、エリのおかげなのだろうか。
あれから随分と丸くなったような気もする。
「バージル、依頼受けるよな?この間依頼行ったの俺だったし」
「お前は下心丸出しだな」
「あんたに言われたくねぇ」
レディとエリが話している間も、双子の言い合いは続いていた。
バージルも悪魔狩りをすると決まったばかりで、ダンテは事実として絶対にそうさせようとしている。
それにこの間、わざとバージルに遠方の仕事を押し付けられたことを、またむし返しているようだ。
「この間は俺が行ったんだから、あんたの番だ。なぁ、エリ」
「…ちっ、わかった」
エリが答える前に結局バージルが折れ、ダンテは拳を振り上げる。
その一部始終を見ていたレディはクライアントの連絡先をバージルに預け、また来ると言って事務所を出て行った。
「バージル。私、バージルがいつ帰って来てもいいように、おいしいもの作って待ってるから」
エリは決してやる気に満ちている訳ではないバージルに駆け寄ってフォローを入れる。
微笑むと彼も口角を上げ、返してくれた。
「…ああ、留守は頼む」
「バージル強いから本当にすぐ終わっちゃいそうだね」
「なるべく早く帰宅するからな、エリ」
きちんと帰る意思を表示してくれるのが、何より嬉しい。
いやそれは、やはり自分がダンテの事務所にいるからか。
2人で出掛けた夜、一緒に改めて再会を喜んだ。
同時にあの悪夢から、ダンテと違い、共に人生を歩めなかったことを意識している節もあった。
成り行きとはいえ、バージルが悪魔狩りの道を選ぼうとしてくれたのは何故なのだろう。
End.
ソファに通されたレディは早速用件を切り出した。
ダンテの事務所をただで訪ねるはずがなく、丁寧に仕事を引っさげて来た彼女に、向かい側のダンテはうなだれた。
「あら、私は親切で紹介してるのに。それに破壊は得意でしょ?」
明らかなイヤミが爽やかな笑顔から飛び出す。
確かにテメンニグルでは様々なものを破壊していたが、こちらも生活がかかっている。
妹にちゃんと飯を食わせてやらないといけないし、その辺はわきまえているつもりだ。
今回の仕事は、廃屋に悪魔が湧いており退治できれば建物はどうなってもいいというもの。
レディの言う通り、どんなに暴れて破壊しようが文句は言われないだろう。
「は、破壊…?」
「エリ!なんでもねぇから!」
エリが紅茶とクッキーをトレーに乗せ現れ、眉を歪める。
ちょうどレディの発言を聞いていたらしく、妹の前では格好つけていたダンテは声を張り上げ、ごまかした。
少しその瞳を見つめてから、エリはレディの隣に座りティーカップを置く。
クッキーの甘い香りも鼻をかすめ、レディは目を細めて微笑んだ。
「ありがとう。いい香りね。このクッキー、エリが?」
「あ…う、うん。ちょうど作ったのがあったから。あり合わせでごめんね、レディ」
「…ううん。料理得意なんだ?」
「得意っていうか、趣味かなぁ」
そう言ってにこりとするエリ。
手作りクッキーと同じような甘い香りが染み付いている。
ダンテとは正反対に、家庭的で平和の象徴のような彼女。
絶望とか恐怖とかそういった負のものとは無縁な笑顔にダンテが執着するのは、自身が置かれている境遇からか。
エリはきっとずっと妹として可愛がられて、そのまま育って来たんだろう。
護りたくなる女の子はこういう感じなのかもと、レディはクッキーをかじった。
「今度ご飯食べさせてね」
「うん!勿論!」
弾む声に、また近いうちに事務所に押し掛けようと密かに固く誓う。
毎日3食あの双子の食事を作ってるんだから、おいしいに決まってる。
エリから視線を外し、レディは再び向かいのダンテを問い詰める。
「で、ダンテ。やるの?やらないの?」
ダンテが口を開き掛けた時、2階からもうひとりの住人が降りてきて、話を中断し気にせずにはいられなかった。
バージル。
テメンニグルではひたすら力を求め、目的のためには手段を選ばなかった彼が、今ここで静かに暮らしている。
それが少し、信じられない。
バージルはゆっくりした足取りでソファへと近づき、ダンテは腰を捻ってにんまりした。
「バージル。あんた依頼受けるんだったよな?」
「…そうなの?」
ここはダンテの事務所で、バージルが悪魔退治をしているとは聞いていない。
レディは口を挟まずにいられなかった。
「ああ、これからあいつは俺の従業員なんだよ」
「誰が従業員だ」
悪戯っぽく笑って親指で自分を指すダンテに、バージルがつっこむ。
あんな本気の殺し合いをしていた2人なのに、これじゃまるで本当の兄弟みたいだ。
いや、本当の血を分けた双子だが。
2人には直接言わず、レディは隣のエリに話し掛けた。
「…彼って今はあんな調子なの?」
「バージルのこと?」
「うん、2人とっても仲が良いのね」
「そ、そうかな…そうならいいな」
エリから見たら、まだ「仲が良い」とは言えないようだ。
テメンニグルでの一部始終を知っているレディからすれば、今普通に話をしているのも仲が良く見える。
しかもあんなに冷徹そうに見えたバージルにも、ちゃんと家族がいて、そしてそれに応える心があるんだとぼんやり思う。
これも、エリのおかげなのだろうか。
あれから随分と丸くなったような気もする。
「バージル、依頼受けるよな?この間依頼行ったの俺だったし」
「お前は下心丸出しだな」
「あんたに言われたくねぇ」
レディとエリが話している間も、双子の言い合いは続いていた。
バージルも悪魔狩りをすると決まったばかりで、ダンテは事実として絶対にそうさせようとしている。
それにこの間、わざとバージルに遠方の仕事を押し付けられたことを、またむし返しているようだ。
「この間は俺が行ったんだから、あんたの番だ。なぁ、エリ」
「…ちっ、わかった」
エリが答える前に結局バージルが折れ、ダンテは拳を振り上げる。
その一部始終を見ていたレディはクライアントの連絡先をバージルに預け、また来ると言って事務所を出て行った。
「バージル。私、バージルがいつ帰って来てもいいように、おいしいもの作って待ってるから」
エリは決してやる気に満ちている訳ではないバージルに駆け寄ってフォローを入れる。
微笑むと彼も口角を上げ、返してくれた。
「…ああ、留守は頼む」
「バージル強いから本当にすぐ終わっちゃいそうだね」
「なるべく早く帰宅するからな、エリ」
きちんと帰る意思を表示してくれるのが、何より嬉しい。
いやそれは、やはり自分がダンテの事務所にいるからか。
2人で出掛けた夜、一緒に改めて再会を喜んだ。
同時にあの悪夢から、ダンテと違い、共に人生を歩めなかったことを意識している節もあった。
成り行きとはいえ、バージルが悪魔狩りの道を選ぼうとしてくれたのは何故なのだろう。
End.
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