【第3章】皆で叩く現実の扉
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目覚めてすぐに、Vが私の右手を握っていることに気付いた。
ぴったりと寄り添うように眠って、身体中がじんわり温かく、重なった手と手は更に熱を持っている。
伏せられたまぶたは長い睫毛に縁取られ、唇から洩れる寝息に、改めてどきどきして来た。
私も握られていない方の手をVの手に重ねたら、起こす気は全くなかったのに、Vがゆっくりと瞳を開く。
「アリア」
囁くように名前を呼ばれ、その唇に笑みを浮かべたのに誘われて、Vに身体を密着させる。
「おはよう、V」
「ああ…おはよう」
手を離すかわりに腕を腰に回され、ぎゅっと抱き合う。
Vの温もりをいっぱいに感じていると、外から雨音が響いて、そういえば起きた時からいつもより暗かったなと思った。
「今日は雨、か…」
「うん…ずっと天気良かったのにね」
「たまにはそんな日にもいいだろう」
そう言ってVは不意打ちとばかりに、私の唇にキスしてからくすっと笑う。
「…もう1回したい」
2人でこうして過ごしているだけでとても満たされて、私は気づいたらVにおねだりしていた。
Vも嫌がったりする素振りは全くなく、すぐにまたキスをくれる。
その後顎に手を添えられ唇を親指で何度か撫でられて、にやりとVが微笑むので、頭の中は疑問でいっぱいになる。
「こんな…俺を好きで好きで堪らないという顔をして」
面と向かって改めて言われると恥ずかしくて、一気に顔が熱くなった。
見つめていた視線を横に逸らし、ただこの気持ちだけは嘘でもなんでもない。
「だって…Vのこと、好きだもん」
「そうか」
ゆっくり少しずつVの方を見れば、変わらずVがにやりと笑っている。
私だけ好きが溢れている状態みたいで嫌だなと思った瞬間、Vの薄い唇が開かれた。
「俺もお前が…愛おしい」
ストレートな言葉が嬉しくて、でもやっぱりしっかり顔を合わせていることができず、胸に擦り寄って表情がわからないようにする。
Vの行動は止まらず、私の頭に手を乗せて優しく撫でてくれる。
もうVとは色々なことをして来たのに、まだまだ心臓が暴れてしまってうるさい。
「…どうした、アリア」
確信してやってるのか、なんなのか。
「どうした?」の答えは、「Vを好きすぎて苦しい」しかない。
でも別の言い方に変換しようとして、選んだのはこれだった。
「なんだか…今日のVは一段と優しいなって思って」
「いつも優しいはずだが」
「もっともっと、更に」
「そうか」
くすくすと笑い混じりのVの返答にしばらくそのままでいたら、訪れた沈黙に、雨音がより一層大きく聞こえる。
そこで妙に雨を意識してしまって、私は父の買い貯めたレコードのラインナップを自然と頭に再生していた。
1枚思い出したものがあって、やっと再びVと顔を合わせる。
「…そういえば、雨の曲のレコードあった気がする」
「雨に唄えば、か」
「そう!それそれ!」
タイトルを言わなくても何故かVはわかっていて、興奮して私は声を弾ませた。
ばっと起き上がると同時に、Vがすぐにその答えをくれる。
「俺の好きな曲のひとつだ」
「そうだったんだ!聞きに行こうよ…!」
「ああ」
Vも続いて身を起した時、また別のことに気付く。
Vの好きなものに触れるのは、もう何度目だろう。
教えてくれるのが嬉しい反面、自分からは何もできていないのを改めて実感してしまう。
聞きに行こうと誘ったのにも関わらず固まってしまった私を、Vが急かすこともなく見守っていた。
「ねぇ、V…私、まだVにお気に入りの曲紹介できてない」
「そうだな」
Vとお別れするまであと少し。
それまでに、私からもVと色々世界を共有したいのに。
「…まぁそう焦るな」
「でも!」
Vは私を落ち着けようとしているのに、思わず声を荒げてしまう。
「もうすぐ1ヶ月が終わるのに、か」
真剣な眼差しで真っ直ぐ見つめられ、さっきとは別の意味で視線を逸らし両手を強く握り締めた。
あまり間もなく、Vは私の様子にふっと笑う。
「図星だな」
笑ってる場合じゃないのにと思ったら、また自然とVと向き合っていた。
Vはお別れするの、もしかして平気なの?
なんてことさえ頭に浮かんで、でも私の考えはやっぱり違ったみたいだ。
「アリア、俺たちは…終わりはしない」
口の端を上げ、穏やかな笑みを見せるV。
何度も何度も、私たちは1ヶ月で終わると言われた。
今は逆のことを、他でもないVが言葉にしている。
「え…?」
「あまりこのような台詞は言わないんだがな…俺を、信じろ」
終わらないことを信じろって…。
具体的な方法とか意味とか何もわからない。
だけど、Vがそんな気持ちでいること自体が、私の胸を熱くしてくれた。
しっかり深く頷き、やっと私たちは「雨に唄えば」を目当てに、レコードの置いてあるお店の方へ向かった。
繋がる扉を開くと、外の雨音を引き裂いてグリフォンの大声が響く。
「おっ、おはよー!お2人さん!」
「おはよう。グリフォン、シャドウ」
丸まって横になっていたシャドウも立ち上がって、私たちの方に走り寄ってきた。
触り心地のいい背中を撫でて、父の私物レコードの棚に足を運んで、探し始める。
以前1度目を通して印象に残っていたのもあって、すぐに見つかった。
「あったよ、V!」
「ああ。これもまた…懐かしいな」
手に取ったジャケットにVが目を細め、グリフォンは私たちの様子を見て首を傾ける。
「ナニ?またなんか聴くの?」
「そう、Vの好きな曲!」
確かこの曲は、映画の主題歌だった気がする。
観たことはないけど、雨の中で歌って踊るシーンがあるみたい。
プレイヤーにセットして針を落とせば、雨模様を吹き飛ばすくらいに明るいサウンドが流れる。
「…今聴くと、なんだかすごくしっくりする」
Vはソファーに腰を下ろし足を組んで、曲に集中し始めた。
アームレストに腕を置き、指先がリズムに乗って僅かに動いている。
よっぽど好きだったのかなと思うと、なんだか私まで心が躍る。
歌詞もあって、それはまるで今の私たちを表しているようにも聞こえた。
だからさっきVは、今すごくしっくり来るって言ったのかもしれない。
雨の中でも恋の喜びを表した1曲に、私はVの台詞まで思い出す。
「アリア、俺たちは…終わりはしない」
end.
ぴったりと寄り添うように眠って、身体中がじんわり温かく、重なった手と手は更に熱を持っている。
伏せられたまぶたは長い睫毛に縁取られ、唇から洩れる寝息に、改めてどきどきして来た。
私も握られていない方の手をVの手に重ねたら、起こす気は全くなかったのに、Vがゆっくりと瞳を開く。
「アリア」
囁くように名前を呼ばれ、その唇に笑みを浮かべたのに誘われて、Vに身体を密着させる。
「おはよう、V」
「ああ…おはよう」
手を離すかわりに腕を腰に回され、ぎゅっと抱き合う。
Vの温もりをいっぱいに感じていると、外から雨音が響いて、そういえば起きた時からいつもより暗かったなと思った。
「今日は雨、か…」
「うん…ずっと天気良かったのにね」
「たまにはそんな日にもいいだろう」
そう言ってVは不意打ちとばかりに、私の唇にキスしてからくすっと笑う。
「…もう1回したい」
2人でこうして過ごしているだけでとても満たされて、私は気づいたらVにおねだりしていた。
Vも嫌がったりする素振りは全くなく、すぐにまたキスをくれる。
その後顎に手を添えられ唇を親指で何度か撫でられて、にやりとVが微笑むので、頭の中は疑問でいっぱいになる。
「こんな…俺を好きで好きで堪らないという顔をして」
面と向かって改めて言われると恥ずかしくて、一気に顔が熱くなった。
見つめていた視線を横に逸らし、ただこの気持ちだけは嘘でもなんでもない。
「だって…Vのこと、好きだもん」
「そうか」
ゆっくり少しずつVの方を見れば、変わらずVがにやりと笑っている。
私だけ好きが溢れている状態みたいで嫌だなと思った瞬間、Vの薄い唇が開かれた。
「俺もお前が…愛おしい」
ストレートな言葉が嬉しくて、でもやっぱりしっかり顔を合わせていることができず、胸に擦り寄って表情がわからないようにする。
Vの行動は止まらず、私の頭に手を乗せて優しく撫でてくれる。
もうVとは色々なことをして来たのに、まだまだ心臓が暴れてしまってうるさい。
「…どうした、アリア」
確信してやってるのか、なんなのか。
「どうした?」の答えは、「Vを好きすぎて苦しい」しかない。
でも別の言い方に変換しようとして、選んだのはこれだった。
「なんだか…今日のVは一段と優しいなって思って」
「いつも優しいはずだが」
「もっともっと、更に」
「そうか」
くすくすと笑い混じりのVの返答にしばらくそのままでいたら、訪れた沈黙に、雨音がより一層大きく聞こえる。
そこで妙に雨を意識してしまって、私は父の買い貯めたレコードのラインナップを自然と頭に再生していた。
1枚思い出したものがあって、やっと再びVと顔を合わせる。
「…そういえば、雨の曲のレコードあった気がする」
「雨に唄えば、か」
「そう!それそれ!」
タイトルを言わなくても何故かVはわかっていて、興奮して私は声を弾ませた。
ばっと起き上がると同時に、Vがすぐにその答えをくれる。
「俺の好きな曲のひとつだ」
「そうだったんだ!聞きに行こうよ…!」
「ああ」
Vも続いて身を起した時、また別のことに気付く。
Vの好きなものに触れるのは、もう何度目だろう。
教えてくれるのが嬉しい反面、自分からは何もできていないのを改めて実感してしまう。
聞きに行こうと誘ったのにも関わらず固まってしまった私を、Vが急かすこともなく見守っていた。
「ねぇ、V…私、まだVにお気に入りの曲紹介できてない」
「そうだな」
Vとお別れするまであと少し。
それまでに、私からもVと色々世界を共有したいのに。
「…まぁそう焦るな」
「でも!」
Vは私を落ち着けようとしているのに、思わず声を荒げてしまう。
「もうすぐ1ヶ月が終わるのに、か」
真剣な眼差しで真っ直ぐ見つめられ、さっきとは別の意味で視線を逸らし両手を強く握り締めた。
あまり間もなく、Vは私の様子にふっと笑う。
「図星だな」
笑ってる場合じゃないのにと思ったら、また自然とVと向き合っていた。
Vはお別れするの、もしかして平気なの?
なんてことさえ頭に浮かんで、でも私の考えはやっぱり違ったみたいだ。
「アリア、俺たちは…終わりはしない」
口の端を上げ、穏やかな笑みを見せるV。
何度も何度も、私たちは1ヶ月で終わると言われた。
今は逆のことを、他でもないVが言葉にしている。
「え…?」
「あまりこのような台詞は言わないんだがな…俺を、信じろ」
終わらないことを信じろって…。
具体的な方法とか意味とか何もわからない。
だけど、Vがそんな気持ちでいること自体が、私の胸を熱くしてくれた。
しっかり深く頷き、やっと私たちは「雨に唄えば」を目当てに、レコードの置いてあるお店の方へ向かった。
繋がる扉を開くと、外の雨音を引き裂いてグリフォンの大声が響く。
「おっ、おはよー!お2人さん!」
「おはよう。グリフォン、シャドウ」
丸まって横になっていたシャドウも立ち上がって、私たちの方に走り寄ってきた。
触り心地のいい背中を撫でて、父の私物レコードの棚に足を運んで、探し始める。
以前1度目を通して印象に残っていたのもあって、すぐに見つかった。
「あったよ、V!」
「ああ。これもまた…懐かしいな」
手に取ったジャケットにVが目を細め、グリフォンは私たちの様子を見て首を傾ける。
「ナニ?またなんか聴くの?」
「そう、Vの好きな曲!」
確かこの曲は、映画の主題歌だった気がする。
観たことはないけど、雨の中で歌って踊るシーンがあるみたい。
プレイヤーにセットして針を落とせば、雨模様を吹き飛ばすくらいに明るいサウンドが流れる。
「…今聴くと、なんだかすごくしっくりする」
Vはソファーに腰を下ろし足を組んで、曲に集中し始めた。
アームレストに腕を置き、指先がリズムに乗って僅かに動いている。
よっぽど好きだったのかなと思うと、なんだか私まで心が躍る。
歌詞もあって、それはまるで今の私たちを表しているようにも聞こえた。
だからさっきVは、今すごくしっくり来るって言ったのかもしれない。
雨の中でも恋の喜びを表した1曲に、私はVの台詞まで思い出す。
「アリア、俺たちは…終わりはしない」
end.