Charlotte
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兄に異性としてそれぞれ告白されてから、家族らしい時間は全く消えてしまったような気がした。
自分自身、2人を見る目はただ兄としてだけではなくなったのだろう。
それを寂しいとするのか、新しく未来の選択をするいい機会だとするのか、自分でまだわからない。
やっぱり王子様は、2人はいらないのか。
エリは昼食の支度をしながら、幼い頃のごっこ遊びを思い返した。
あれが無意識でも未来を暗示していたなら、あんな遊びやめれば良かった。
ダンテとバージル。
最初に紹介された時のことは、小さくてあまり覚えていない。
2人はお互いにお互いを意識していたものの、険悪という雰囲気ではなかったと思う。
今は…。
色々考え出して珍しく包丁で指を切ってしまい、慌てて水道で流す。
「エリ…?切ったのか?」
「バージル…うん、少しだけ」
声に振り向くと、いつからか気づかないうちにバージルがキッチンに入って来ていたらしい。
絆創膏を貼るため蛇口を閉めて再び傷口を見たら、切ったばかりでまた血が滲み始めた。
「大丈夫か?……痛むだろう」
「ありがとう、心配してくれて」
バージルはすぐさまその手を取り、エリの顔を見つめる。
気遣い溢れる行動にエリは指先の痛みよりも嬉しさが上回った。
絆創膏を貼るのも手伝ってくれ、自然と距離は近くなったが、またキッチンによく知った声が響く。
「おい、バージル。あんた抜け駆けし過ぎだろ」
「ダンテ」
2人でいることに気付いたのか、ドアからダンテが顔を出してすぐに隣までやって来る。
「…なんだダンテ、ヤキモチか」
バージルが軽く睨み付けると、ダンテの肩がぴくっと反応した。
エリの意思を尊重すると言ったものの、やはり何もせずに勝負に負けるのは気に食わない。
バージルのアプローチが凄まじい今、尚更行動をしなければと思い始めた。
「そうだぜ。ヤキモチだ。俺はな、子どもの頃からずっとエリが…」
「それは俺も同じだ」
即答したバージルに、ダンテは被せるなよと頭の中でつっこむ。
先にエリへの想いを自覚したのは、間違いなく自分だと言うのに。
一方、今回も間に挟まれる形になったエリは、2人のやり取りを気にしながらも再び考えていた。
あの夜バージルにも、子どもの頃から好きだったと言われた。
そしてダンテも、同じだった。
2人とも無意識の感情だったかもしれないけれど、そんなに前から私のことを…。
何か言わなきゃと口を開いた時、事務所の黒電話が鳴り響く。
「ちっ…なんだよこんな時に!」
一応オーナーであるダンテは舌打ちしながらも急いで受話器を取ったが、間違い電話だったのか再びキッチンに戻って来た。
「…依頼じゃなかったの?ダンテ」
「ああ、ウチは葬儀屋じゃねぇってーの」
溜め息混じりに愚痴ると同時いいことを思い付き、にやりと笑ってバージルを横目で見る。
「そうだ、バージル。あんたも依頼受けろよ」
以前無理矢理遠方の仕事の依頼を取り付けられ、その間エリを良いようにされたことを、根に持っているようだ。
「…俺が、悪魔狩りを?」
「いいだろ、やってみろよ」
バージルは少し眉間に皺を刻み、ダンテを睨む。
その睨みが何を意味しているか本当のところはわからないが、弟が選んだ仕事の後追いのようになるのが気に食わないのだろうか。
「…バージルもとっても強いし、私もいい考えだと思ったんだけどな」
エリの何気ない褒め言葉に、ダンテ相手とは違って、バージルの考えは変わり始めた。
しばらくしてから、小さく頷く。
「…わかった。エリの考えにのろう」
変わり身の速さにつっこみたくなったが、そうするとバージルの機嫌を損ねかねないので、ダンテは黙っておいた。
ともかく、これからバージルと事務所を共同経営することになるようだ。
提案したのは自分なのに、こんな状況は予想もしていなかった。
エリの影響なのか、バージルの行動自体が少しずつ変わって行っている気がする。
「良かった…の、かな」
事務所内の掃除をしようと、エリはひとりブラシや洗剤を用意しながら呟く。
数分でも久しぶりに殺伐とした雰囲気ではなく、まともに3人で会話ができた気がした。
しかもバージルが、ダンテと同じようにデビルハンターをすると決めてくれた。
それがいっときの気の迷いでも、なんだか大きな一歩に思える。
初めてバージルの口から、事務所を出て行くという以外の選択肢が現れたのだ。
バスルームのドアに手を掛けた時、不意に玄関から声が聞こえた。
お客さんかもと急いで戻れば、オッドアイでエリと同じ黒髪の女の子が立っている。
「あの馬鹿の事務所ってここかしら?」
エリが声を掛けるより先に、自身の顎に手を当てて彼女は呟いた。
どうやら、ダンテかバージルの知り合いみたいだ。
「えっと…」
やっと口を開いたところで、後ろからダンテがやってくる。
「レディ!」
ダンテは目を見開いて驚いているけれど、これでダンテと彼女が面識があることがわかった。
自分と同じ黒髪の女の子。
今までダンテが散々好きだと褒めてくれた黒髪。
同じ髪の色を持つ女の子がダンテを訪ねてくることに、何故かエリの胸はちくっと痛んだ。
「妹がいるって本当だったんだ」
「嘘ついてどうするんだよ」
「ちゃんと人並みの生活送れてるみたいで良かったってことよ」
2人は適当に会話して、ダンテが後ろから彼女の説明をしてくれた。
彼女、レディとはテメンニグルの件で知り合い、今はダンテと同じようにデビルハンターをしているという。
かなりざっくりした説明の後、レディがエリに右手を差し出し握手する。
細められた左右で違う色の瞳が魅力的で、思わず見とれてしまう。
「あなたのこと、ダンテから散々聞かされたの。実際に会えて嬉しいわ」
「…兄がお世話になったみたいで、その節はありがとうございました。妹のエリです。宜しくお願いします」
とりあえず一通り挨拶すれば、レディは何故か吹き出して笑った。
「ごめんね、聞いた通りの子で笑っちゃった。こんなちゃんとした子がダンテの妹なんて信じられない」
「おい、それ失礼だろうが」
後ろからダンテがつっこむ。
一体どんな話をしたのか知らないけれど、自分がいない間に色々話されているのはやっぱり恥ずかしく、エリは頬が熱くなるのがわかった。
「レディさん、立ち話もなんですからこちらへどうぞ」
「ありがとう。あと、私には敬語使わなくていいからね。エリ」
気さくな言葉に、そういえばこの土地に友だちがいないことに、改めて気づく。
レディと友だちになれたら、きっともっと素敵な日々が待っている。
エリは喜んでキッチンにお茶を淹れに行った。
End.
自分自身、2人を見る目はただ兄としてだけではなくなったのだろう。
それを寂しいとするのか、新しく未来の選択をするいい機会だとするのか、自分でまだわからない。
やっぱり王子様は、2人はいらないのか。
エリは昼食の支度をしながら、幼い頃のごっこ遊びを思い返した。
あれが無意識でも未来を暗示していたなら、あんな遊びやめれば良かった。
ダンテとバージル。
最初に紹介された時のことは、小さくてあまり覚えていない。
2人はお互いにお互いを意識していたものの、険悪という雰囲気ではなかったと思う。
今は…。
色々考え出して珍しく包丁で指を切ってしまい、慌てて水道で流す。
「エリ…?切ったのか?」
「バージル…うん、少しだけ」
声に振り向くと、いつからか気づかないうちにバージルがキッチンに入って来ていたらしい。
絆創膏を貼るため蛇口を閉めて再び傷口を見たら、切ったばかりでまた血が滲み始めた。
「大丈夫か?……痛むだろう」
「ありがとう、心配してくれて」
バージルはすぐさまその手を取り、エリの顔を見つめる。
気遣い溢れる行動にエリは指先の痛みよりも嬉しさが上回った。
絆創膏を貼るのも手伝ってくれ、自然と距離は近くなったが、またキッチンによく知った声が響く。
「おい、バージル。あんた抜け駆けし過ぎだろ」
「ダンテ」
2人でいることに気付いたのか、ドアからダンテが顔を出してすぐに隣までやって来る。
「…なんだダンテ、ヤキモチか」
バージルが軽く睨み付けると、ダンテの肩がぴくっと反応した。
エリの意思を尊重すると言ったものの、やはり何もせずに勝負に負けるのは気に食わない。
バージルのアプローチが凄まじい今、尚更行動をしなければと思い始めた。
「そうだぜ。ヤキモチだ。俺はな、子どもの頃からずっとエリが…」
「それは俺も同じだ」
即答したバージルに、ダンテは被せるなよと頭の中でつっこむ。
先にエリへの想いを自覚したのは、間違いなく自分だと言うのに。
一方、今回も間に挟まれる形になったエリは、2人のやり取りを気にしながらも再び考えていた。
あの夜バージルにも、子どもの頃から好きだったと言われた。
そしてダンテも、同じだった。
2人とも無意識の感情だったかもしれないけれど、そんなに前から私のことを…。
何か言わなきゃと口を開いた時、事務所の黒電話が鳴り響く。
「ちっ…なんだよこんな時に!」
一応オーナーであるダンテは舌打ちしながらも急いで受話器を取ったが、間違い電話だったのか再びキッチンに戻って来た。
「…依頼じゃなかったの?ダンテ」
「ああ、ウチは葬儀屋じゃねぇってーの」
溜め息混じりに愚痴ると同時いいことを思い付き、にやりと笑ってバージルを横目で見る。
「そうだ、バージル。あんたも依頼受けろよ」
以前無理矢理遠方の仕事の依頼を取り付けられ、その間エリを良いようにされたことを、根に持っているようだ。
「…俺が、悪魔狩りを?」
「いいだろ、やってみろよ」
バージルは少し眉間に皺を刻み、ダンテを睨む。
その睨みが何を意味しているか本当のところはわからないが、弟が選んだ仕事の後追いのようになるのが気に食わないのだろうか。
「…バージルもとっても強いし、私もいい考えだと思ったんだけどな」
エリの何気ない褒め言葉に、ダンテ相手とは違って、バージルの考えは変わり始めた。
しばらくしてから、小さく頷く。
「…わかった。エリの考えにのろう」
変わり身の速さにつっこみたくなったが、そうするとバージルの機嫌を損ねかねないので、ダンテは黙っておいた。
ともかく、これからバージルと事務所を共同経営することになるようだ。
提案したのは自分なのに、こんな状況は予想もしていなかった。
エリの影響なのか、バージルの行動自体が少しずつ変わって行っている気がする。
「良かった…の、かな」
事務所内の掃除をしようと、エリはひとりブラシや洗剤を用意しながら呟く。
数分でも久しぶりに殺伐とした雰囲気ではなく、まともに3人で会話ができた気がした。
しかもバージルが、ダンテと同じようにデビルハンターをすると決めてくれた。
それがいっときの気の迷いでも、なんだか大きな一歩に思える。
初めてバージルの口から、事務所を出て行くという以外の選択肢が現れたのだ。
バスルームのドアに手を掛けた時、不意に玄関から声が聞こえた。
お客さんかもと急いで戻れば、オッドアイでエリと同じ黒髪の女の子が立っている。
「あの馬鹿の事務所ってここかしら?」
エリが声を掛けるより先に、自身の顎に手を当てて彼女は呟いた。
どうやら、ダンテかバージルの知り合いみたいだ。
「えっと…」
やっと口を開いたところで、後ろからダンテがやってくる。
「レディ!」
ダンテは目を見開いて驚いているけれど、これでダンテと彼女が面識があることがわかった。
自分と同じ黒髪の女の子。
今までダンテが散々好きだと褒めてくれた黒髪。
同じ髪の色を持つ女の子がダンテを訪ねてくることに、何故かエリの胸はちくっと痛んだ。
「妹がいるって本当だったんだ」
「嘘ついてどうするんだよ」
「ちゃんと人並みの生活送れてるみたいで良かったってことよ」
2人は適当に会話して、ダンテが後ろから彼女の説明をしてくれた。
彼女、レディとはテメンニグルの件で知り合い、今はダンテと同じようにデビルハンターをしているという。
かなりざっくりした説明の後、レディがエリに右手を差し出し握手する。
細められた左右で違う色の瞳が魅力的で、思わず見とれてしまう。
「あなたのこと、ダンテから散々聞かされたの。実際に会えて嬉しいわ」
「…兄がお世話になったみたいで、その節はありがとうございました。妹のエリです。宜しくお願いします」
とりあえず一通り挨拶すれば、レディは何故か吹き出して笑った。
「ごめんね、聞いた通りの子で笑っちゃった。こんなちゃんとした子がダンテの妹なんて信じられない」
「おい、それ失礼だろうが」
後ろからダンテがつっこむ。
一体どんな話をしたのか知らないけれど、自分がいない間に色々話されているのはやっぱり恥ずかしく、エリは頬が熱くなるのがわかった。
「レディさん、立ち話もなんですからこちらへどうぞ」
「ありがとう。あと、私には敬語使わなくていいからね。エリ」
気さくな言葉に、そういえばこの土地に友だちがいないことに、改めて気づく。
レディと友だちになれたら、きっともっと素敵な日々が待っている。
エリは喜んでキッチンにお茶を淹れに行った。
End.