【第2章】目に見えないもの
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例えば映画とか、場面場面で音楽が切り替わるように、今頭の中でたくさんの曲が流れている。
それはそばにVがいて皆がいて、すごく楽しいから。
以前Vが言っていた「私のお気に入りの1曲」。
本当に心からって考えてしまうと、まだどれもしっくり来ない。
今まで私にとって1番の思い出のものは音楽ではないけど、やっぱりデイリリーだ。
皆で足を踏み入れた一面黄色の中庭。
きっとこれから、ずっと忘れない。
どうにかしてこの記憶を残しておきたい。
思い付いたら頭からその考えが消えず、私は目覚めてすぐにVに切り出す。
「V、おはよう。今日…やりたいことがあるんだ。一緒にしてくれる?」
朝から唐突な提案に、Vは目を見開いた後、それでも柔らかく微笑んでくれた。
「…ああ、勿論だ」
何をするかも言っていないのに私に付き合ってくれるVに、胸が熱くなって大好きな気持ちが身体中に溢れてくる。
「良かった!グリフォンもシャドウも、皆一緒にさせてね」
「わかった。では、早速呼びに行こう」
Vより先に、別の場所で寝泊りしている2人に会いに行こうと足を向けたら、不意に後ろから名前を呼ばれて振り返った。
「…珍しいな。お前が誰かと、共に何かしたいと言うのは」
Vの柔らかい笑みに、改めて今までを思い出す。
私が、自分から誰かを何かに引き入れるのはなかった気がする。
そういうのは何故か苦手意識があってできなくて、でも今は不思議と抵抗がない。
これも、Vたちと出逢えたおかげだろうな。
「そうだね!こういうの、家族以外で初めてかも」
「そうか。安心しろ、俺もだ」
にっこり微笑むとVが私のそばまで来て、手をそっと握ってくれる。
まさかの台詞も聞かせてくれて、勝手に胸が高鳴ってしまった。
「Vもなんだ…」
初めてデイリリーの中に足を踏み入れた時もそうだったけど、お互いにお互いが色々な初めてを共有している。
この1ヶ月には、そんな贅沢なことがたくさんたくさん詰まっている。
Vと手を繋いで、改めてグリフォンとシャドウに声を掛け、私たちはまた咲き乱れるデイリリーの前にやって来た。
「アリアちゃん、どうしたァ?また追いかけっこでもするのか!」
「それもいいけど、作りたいなって思って!押し花!」
私の提案に、お喋りなグリフォンよりもVが先に反応する。
「押し花、か。この形の花は…作るのは大変そうだが」
私じゃなくデイリリーをじっと見つめながら、どうやって押し花を作るか考えているみたい。
とても立体感のある花だから、そのままに押し花にするのは難しいのは分かりきっていて、グリフォンも首を何度か傾げる。
「確かになァ!ぐちゃぐちゃになっちまいそう」
「そうなんだよね。だから考えたんだ」
言い出したのは私で形の問題もずっと考えていたから、庭に足を踏み入れ、咲いている1輪のデイリリーにそっと指先で触れてみた。
「花びらばらばらにして、1枚ずつにするの」
花まるまるは難しくても、花びら1枚なら簡単なはず。
1枚ずつに触れてまた頭の中でシミュレーションしていると、Vが私の触れている花を覗き込んでくる。
「1輪を分け合うのか…いいな。俺はこの本に挟んでおこう」
いつも大切にしている本に、デイリリーを加えてくれる。
それが心の底から嬉しくて、自然と笑顔になっていた。
「ありがとう、V…嬉しい…今から作ってもまだ間に合うよね」
「ああ…十分だろう」
「おー!!いいじゃねェか!良かったなァ、Vちゃん!?」
私とVがまた2人の世界に入りかけた時、グリフォンの大きな声がそれを引き止めてくれる。
何故かVを見てにやにやするので、Vがグリフォンの嘴を手で思いっきり握り締め、私は面白くて笑ってしまった。
そして、押し花用のデイリリーを探すために1輪ずつ確認し始める。
「俺たちは押し花しまっとくところねェけど、気持ちだけはアリアと一緒だからなァ」
グリフォンの台詞に、シャドウも私に寄り添って賛同してくれる。
しばらく何本か見てから、Vと2人で、1番花びらの形が良いだろう1輪を見つけ出した。
せっかく選んだ花を解体するのは少しためらってしまったけど、これがずっと残るならいいなとも思う。
丁寧に紙に挟んで、上に重しで何冊か本を置く。
作業が終わって、グリフォンはまた嘴を開いた。
「1日で枯れちまう花を永遠に残したいなんて、アリアもやっぱりロマンチストだぜ」
「あ…確かに」
「アラ、無意識?」
ついさっき同じようなことを考えていたから、グリフォンにロマンチストと言われても、なんだかしっくりくる。
「今すごく楽しいからなー」
このまま時が止まればいいって、何回か考えた。
この一瞬が永遠であってほしいとか、考えた。
「アリア」
「何?V」
少しの間ぼんやりしていたのか、Vが私の名前を呼んで、微笑んで返す。
でも目が合ったら、今度は何故か逸らされてしまう。
「…なんでもない。まだ少し時間をくれ」
Vは、何か言おうとしていたのかな。
不意に「俺という概念」という、以前Vが言っていたことを思い出してしまった。
それがきっと、私に教えてくれなかった最後のひとつ。
私よりも先にグリフォンの方が反応し、Vのもとに近づいて行く。
「Vちゃんよ、制限時間だいぶ減ってるぜ!」
「わかっている」
「オイオイ、怒るなよ!」
2人のやりとりは相変わらずで、本当に本当の意味で、私に全てを告げようとしてくれているのを感じられる。
「安心しろ、アリア。お前に言い掛けたままにするのは、もうやめた」
「…うん、わかった」
Vの、私を真っ直ぐ見つめる瞳と優しい笑みに、今不安は全くない。
end.
それはそばにVがいて皆がいて、すごく楽しいから。
以前Vが言っていた「私のお気に入りの1曲」。
本当に心からって考えてしまうと、まだどれもしっくり来ない。
今まで私にとって1番の思い出のものは音楽ではないけど、やっぱりデイリリーだ。
皆で足を踏み入れた一面黄色の中庭。
きっとこれから、ずっと忘れない。
どうにかしてこの記憶を残しておきたい。
思い付いたら頭からその考えが消えず、私は目覚めてすぐにVに切り出す。
「V、おはよう。今日…やりたいことがあるんだ。一緒にしてくれる?」
朝から唐突な提案に、Vは目を見開いた後、それでも柔らかく微笑んでくれた。
「…ああ、勿論だ」
何をするかも言っていないのに私に付き合ってくれるVに、胸が熱くなって大好きな気持ちが身体中に溢れてくる。
「良かった!グリフォンもシャドウも、皆一緒にさせてね」
「わかった。では、早速呼びに行こう」
Vより先に、別の場所で寝泊りしている2人に会いに行こうと足を向けたら、不意に後ろから名前を呼ばれて振り返った。
「…珍しいな。お前が誰かと、共に何かしたいと言うのは」
Vの柔らかい笑みに、改めて今までを思い出す。
私が、自分から誰かを何かに引き入れるのはなかった気がする。
そういうのは何故か苦手意識があってできなくて、でも今は不思議と抵抗がない。
これも、Vたちと出逢えたおかげだろうな。
「そうだね!こういうの、家族以外で初めてかも」
「そうか。安心しろ、俺もだ」
にっこり微笑むとVが私のそばまで来て、手をそっと握ってくれる。
まさかの台詞も聞かせてくれて、勝手に胸が高鳴ってしまった。
「Vもなんだ…」
初めてデイリリーの中に足を踏み入れた時もそうだったけど、お互いにお互いが色々な初めてを共有している。
この1ヶ月には、そんな贅沢なことがたくさんたくさん詰まっている。
Vと手を繋いで、改めてグリフォンとシャドウに声を掛け、私たちはまた咲き乱れるデイリリーの前にやって来た。
「アリアちゃん、どうしたァ?また追いかけっこでもするのか!」
「それもいいけど、作りたいなって思って!押し花!」
私の提案に、お喋りなグリフォンよりもVが先に反応する。
「押し花、か。この形の花は…作るのは大変そうだが」
私じゃなくデイリリーをじっと見つめながら、どうやって押し花を作るか考えているみたい。
とても立体感のある花だから、そのままに押し花にするのは難しいのは分かりきっていて、グリフォンも首を何度か傾げる。
「確かになァ!ぐちゃぐちゃになっちまいそう」
「そうなんだよね。だから考えたんだ」
言い出したのは私で形の問題もずっと考えていたから、庭に足を踏み入れ、咲いている1輪のデイリリーにそっと指先で触れてみた。
「花びらばらばらにして、1枚ずつにするの」
花まるまるは難しくても、花びら1枚なら簡単なはず。
1枚ずつに触れてまた頭の中でシミュレーションしていると、Vが私の触れている花を覗き込んでくる。
「1輪を分け合うのか…いいな。俺はこの本に挟んでおこう」
いつも大切にしている本に、デイリリーを加えてくれる。
それが心の底から嬉しくて、自然と笑顔になっていた。
「ありがとう、V…嬉しい…今から作ってもまだ間に合うよね」
「ああ…十分だろう」
「おー!!いいじゃねェか!良かったなァ、Vちゃん!?」
私とVがまた2人の世界に入りかけた時、グリフォンの大きな声がそれを引き止めてくれる。
何故かVを見てにやにやするので、Vがグリフォンの嘴を手で思いっきり握り締め、私は面白くて笑ってしまった。
そして、押し花用のデイリリーを探すために1輪ずつ確認し始める。
「俺たちは押し花しまっとくところねェけど、気持ちだけはアリアと一緒だからなァ」
グリフォンの台詞に、シャドウも私に寄り添って賛同してくれる。
しばらく何本か見てから、Vと2人で、1番花びらの形が良いだろう1輪を見つけ出した。
せっかく選んだ花を解体するのは少しためらってしまったけど、これがずっと残るならいいなとも思う。
丁寧に紙に挟んで、上に重しで何冊か本を置く。
作業が終わって、グリフォンはまた嘴を開いた。
「1日で枯れちまう花を永遠に残したいなんて、アリアもやっぱりロマンチストだぜ」
「あ…確かに」
「アラ、無意識?」
ついさっき同じようなことを考えていたから、グリフォンにロマンチストと言われても、なんだかしっくりくる。
「今すごく楽しいからなー」
このまま時が止まればいいって、何回か考えた。
この一瞬が永遠であってほしいとか、考えた。
「アリア」
「何?V」
少しの間ぼんやりしていたのか、Vが私の名前を呼んで、微笑んで返す。
でも目が合ったら、今度は何故か逸らされてしまう。
「…なんでもない。まだ少し時間をくれ」
Vは、何か言おうとしていたのかな。
不意に「俺という概念」という、以前Vが言っていたことを思い出してしまった。
それがきっと、私に教えてくれなかった最後のひとつ。
私よりも先にグリフォンの方が反応し、Vのもとに近づいて行く。
「Vちゃんよ、制限時間だいぶ減ってるぜ!」
「わかっている」
「オイオイ、怒るなよ!」
2人のやりとりは相変わらずで、本当に本当の意味で、私に全てを告げようとしてくれているのを感じられる。
「安心しろ、アリア。お前に言い掛けたままにするのは、もうやめた」
「…うん、わかった」
Vの、私を真っ直ぐ見つめる瞳と優しい笑みに、今不安は全くない。
end.