Charlotte
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エリのことになると、自身に余裕がなくなることをバージルは自覚し始めていた。
とにかくエリを手に入れたい。
ダンテとエリが一緒にいると、なんだかよくわからない黒いものが頭の中いっぱいに広がる。
しかしながら、エリを泣かせるのは本当に心から回避したいことだった。
夕食時3人で囲むテーブルはまた気まずい雰囲気で、ちらと見るエリの表情はやはり曇っていた。
このままでは、エリが自身を選ぶ可能性は限りなくゼロに近くなってしまう。
そこそこ夜は更けていたが、いてもたってもいられずにベッドから立ち上がり、隣のエリの部屋のベアをノックした。
もしかしたら拒否されるかもしれないとも思ったが、返事をもらう前に勝手に中に足を踏み入れる。
「エリ」
「……バージル」
ベッドに腰掛けていたエリの瞳はどことなく覇気がなく、バージルは何かに苛つくのを感じた。
それが自分自身になのかダンテになのか、はたまたエリになのか、わからない。
とにかく傍まで進んで隣に座り左手で頰に触れたら、エリが僅かでも震えるのに気づいてしまう。
無理矢理ここから連れ出されるとでも思っているのか。
「…エリ、少し出掛けないか?」
「え…今から?」
「ああ、今がいいんだ」
「わかった…バージル」
夕方の件があってもなんだかんだで提案に乗ってくれるエリに安堵し、2人は軽く外出の準備をして事務所を出た。
深夜なので勿論外は暗く、歩き出すなりバージルはエリの手を握り締める。
「エリ、危ないから俺の傍にいろ」
「…バージル」
その気遣いある台詞に、エリは思わずバージルを見つめた。
やっぱり、バージルはバージルなりに大切にしようとしてくれている。
ただ前だけを向いて足を運ぶ横顔が、胸を締め付ける。
しばらく歩いてこんな時間にどこに行くんだろうとも思い始めたが、街中で少数でも輝いている星たちがきれいで、手を繋ぎながらそればかり気にするようになった。
「先程はすまなかった。お前を泣かせるつもりは全くないのにな」
きちんと歩幅を合わせてくれるバージルが、やがてぽつりと呟く。
ダンテの前とは打って変わり、穏やかで優しい口調にエリの心は解れていった。
「…私も、ごめんね」
「お前が謝ることではないだろう」
バージルが繋いだ手に力を入れたので視線を向けてみると、アイスブルーを細め微笑んでくれる。
バージルの手は、あの頃とは変わって大きくて骨張っている。
言葉の代わりに、同じようにエリも手を握り返した。
ずっと、バージルに会いたかった。
死んでしまったのか、それともどこかで生きているのかわからなくて、心の底で漠然とした喪失感があり続けた。
でも、バージルは今ここにいる。
苦痛ではない沈黙の中、歩いて辿り着いたのは街中の大きな公園だった。
店や民家の明かりと星の煌めきが同時に見えて、エリは密かに胸がときめいた。
2人でベンチに並んで座ったら、バージルは自然と腰に手を添えて引き寄せて来たが、嫌だとは全く思わなかった。
「…俺はきっと昔から、子どもの頃からお前のことが好きだった。今はっきりわかる」
なんだかうっとりし始めた時、再びの突然の告白に心臓が飛び跳ねる。
瞳には自分の姿が映り、熱を帯びたそれに勝手にどきどきしてしまう。
「バージル」
「…離れ離れだった時、お前は幸せだったか?ダンテが、いたから」
「ダンテ…?」
「遠慮せず真実を言ってくれ、エリ」
バージルの視線に呑まれそうなところをダンテの名前に引き戻され、目を見開いた。
一緒にいられなかった時のことを、バージルも形は違えど気にしている。
ずっと一緒にいたダンテの存在と対比して。
どこか憂いのある表情にエリは少し緊張感のようなものを感じながら、言葉を選んでいく。
「…ダンテがいてくれたのは、勿論救いだったよ。だけど、バージルがいないのはどうしても寂しくて…何度も泣いた」
一言でも逃すまいと瞬きさえ忘れ見つめるバージルに、そのまま続けた。
「ダンテは、勿論バージルの代わりにはならない…バージルがいない喪失感は、ずっとあった」
兄として2人を慕うようになってから、大切にしてくれるのは共通していたが、もたらしてくれるものはそれぞれ全く違っていた。
ダンテがいてくれたら、バージルがいなくても大丈夫だということは、当然なかった。
「エリ…」
バージルが腰に回した腕をますます引き寄せ、噛み締めるように名前を呼んでから1度目を伏せる。
今きっと、お互いに近しいことを考えている。
再び視線が交わり、同時に微笑んだ。
「エリ…俺は、もっと早くお前と再会したかった」
「バージル…私もだよ…」
話している途中でバージルの両腕が身体を包み込んで来たので、エリは無意識に少しだけ震えてしまう。
「バージル…?」
「心配するな。こうして、抱き締めるだけだ」
「うん…」
背中に手を回すことはできず、ただされるままでいることにした。
異性として今すぐにバージルを選ぶことができない自分がそうすることは、きっと許されない。
もし、バージルを抱き締め返したら?
その瞬間から、ダンテとはお別れなのだろうか。
「ダンテは…お前を、守れたんだな」
「え?」
いつもの笑顔を想像した時、バージルからもその名前が飛び出した。
バージルの表情を確認したかったが、恐らく意識して拘束されてできない。
「あの時…俺は…」
あの時。守る。
幼い日、目の前で母親を亡くした記憶が蘇る。
バージルはあの日、ひとりで別の場所にいた。
だから本当のことは知らないだろう。
ダンテもあの日「守れなかった」。
共にクローゼットに隠され、震えていた。
今現実として「守った」状態ができただけだ。
バージルに言葉が響くのか分からず、今度こそエリはその身体を抱き締めた。
end.
とにかくエリを手に入れたい。
ダンテとエリが一緒にいると、なんだかよくわからない黒いものが頭の中いっぱいに広がる。
しかしながら、エリを泣かせるのは本当に心から回避したいことだった。
夕食時3人で囲むテーブルはまた気まずい雰囲気で、ちらと見るエリの表情はやはり曇っていた。
このままでは、エリが自身を選ぶ可能性は限りなくゼロに近くなってしまう。
そこそこ夜は更けていたが、いてもたってもいられずにベッドから立ち上がり、隣のエリの部屋のベアをノックした。
もしかしたら拒否されるかもしれないとも思ったが、返事をもらう前に勝手に中に足を踏み入れる。
「エリ」
「……バージル」
ベッドに腰掛けていたエリの瞳はどことなく覇気がなく、バージルは何かに苛つくのを感じた。
それが自分自身になのかダンテになのか、はたまたエリになのか、わからない。
とにかく傍まで進んで隣に座り左手で頰に触れたら、エリが僅かでも震えるのに気づいてしまう。
無理矢理ここから連れ出されるとでも思っているのか。
「…エリ、少し出掛けないか?」
「え…今から?」
「ああ、今がいいんだ」
「わかった…バージル」
夕方の件があってもなんだかんだで提案に乗ってくれるエリに安堵し、2人は軽く外出の準備をして事務所を出た。
深夜なので勿論外は暗く、歩き出すなりバージルはエリの手を握り締める。
「エリ、危ないから俺の傍にいろ」
「…バージル」
その気遣いある台詞に、エリは思わずバージルを見つめた。
やっぱり、バージルはバージルなりに大切にしようとしてくれている。
ただ前だけを向いて足を運ぶ横顔が、胸を締め付ける。
しばらく歩いてこんな時間にどこに行くんだろうとも思い始めたが、街中で少数でも輝いている星たちがきれいで、手を繋ぎながらそればかり気にするようになった。
「先程はすまなかった。お前を泣かせるつもりは全くないのにな」
きちんと歩幅を合わせてくれるバージルが、やがてぽつりと呟く。
ダンテの前とは打って変わり、穏やかで優しい口調にエリの心は解れていった。
「…私も、ごめんね」
「お前が謝ることではないだろう」
バージルが繋いだ手に力を入れたので視線を向けてみると、アイスブルーを細め微笑んでくれる。
バージルの手は、あの頃とは変わって大きくて骨張っている。
言葉の代わりに、同じようにエリも手を握り返した。
ずっと、バージルに会いたかった。
死んでしまったのか、それともどこかで生きているのかわからなくて、心の底で漠然とした喪失感があり続けた。
でも、バージルは今ここにいる。
苦痛ではない沈黙の中、歩いて辿り着いたのは街中の大きな公園だった。
店や民家の明かりと星の煌めきが同時に見えて、エリは密かに胸がときめいた。
2人でベンチに並んで座ったら、バージルは自然と腰に手を添えて引き寄せて来たが、嫌だとは全く思わなかった。
「…俺はきっと昔から、子どもの頃からお前のことが好きだった。今はっきりわかる」
なんだかうっとりし始めた時、再びの突然の告白に心臓が飛び跳ねる。
瞳には自分の姿が映り、熱を帯びたそれに勝手にどきどきしてしまう。
「バージル」
「…離れ離れだった時、お前は幸せだったか?ダンテが、いたから」
「ダンテ…?」
「遠慮せず真実を言ってくれ、エリ」
バージルの視線に呑まれそうなところをダンテの名前に引き戻され、目を見開いた。
一緒にいられなかった時のことを、バージルも形は違えど気にしている。
ずっと一緒にいたダンテの存在と対比して。
どこか憂いのある表情にエリは少し緊張感のようなものを感じながら、言葉を選んでいく。
「…ダンテがいてくれたのは、勿論救いだったよ。だけど、バージルがいないのはどうしても寂しくて…何度も泣いた」
一言でも逃すまいと瞬きさえ忘れ見つめるバージルに、そのまま続けた。
「ダンテは、勿論バージルの代わりにはならない…バージルがいない喪失感は、ずっとあった」
兄として2人を慕うようになってから、大切にしてくれるのは共通していたが、もたらしてくれるものはそれぞれ全く違っていた。
ダンテがいてくれたら、バージルがいなくても大丈夫だということは、当然なかった。
「エリ…」
バージルが腰に回した腕をますます引き寄せ、噛み締めるように名前を呼んでから1度目を伏せる。
今きっと、お互いに近しいことを考えている。
再び視線が交わり、同時に微笑んだ。
「エリ…俺は、もっと早くお前と再会したかった」
「バージル…私もだよ…」
話している途中でバージルの両腕が身体を包み込んで来たので、エリは無意識に少しだけ震えてしまう。
「バージル…?」
「心配するな。こうして、抱き締めるだけだ」
「うん…」
背中に手を回すことはできず、ただされるままでいることにした。
異性として今すぐにバージルを選ぶことができない自分がそうすることは、きっと許されない。
もし、バージルを抱き締め返したら?
その瞬間から、ダンテとはお別れなのだろうか。
「ダンテは…お前を、守れたんだな」
「え?」
いつもの笑顔を想像した時、バージルからもその名前が飛び出した。
バージルの表情を確認したかったが、恐らく意識して拘束されてできない。
「あの時…俺は…」
あの時。守る。
幼い日、目の前で母親を亡くした記憶が蘇る。
バージルはあの日、ひとりで別の場所にいた。
だから本当のことは知らないだろう。
ダンテもあの日「守れなかった」。
共にクローゼットに隠され、震えていた。
今現実として「守った」状態ができただけだ。
バージルに言葉が響くのか分からず、今度こそエリはその身体を抱き締めた。
end.