【第2章】目に見えないもの
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「V」
「…どうした、アリア」
今日も夕食時に、にこにこと上機嫌なアリアが俺を呼ぶ。
「また紅茶にする?偶にはコーヒー?」
「紅茶で大丈夫だ」
自然と穏やかな気持ちになり、同じように頬が緩む。
一歩出たら街は悲惨な状態なのに、ここは対照的だ。
彼女も音楽も食事も、何故かあの日失ったものに近しいものを感じてしまっている。
限定された環境、関係だというのに。
「はい、お待たせV」
「…ああ」
アリアが微笑みながらティーカップを運んで来て、再び席につく。
「俺」と比べまだまだ幼い彼女は、俺がいると本当に嬉しそうな顔をするようになった。
そんなに俺が好きなのだな。
まるで真っ白なキャンパスに絵具をのせていくようだ。
悪くない。
「アリア」
「ん?何?」
名前を呼べばアリアは瞳を輝かせる。
それをいつもうるさいグリフォンがにやにやしながら見守っていて、一瞬ぎろりと睨んでやった。
すぐに視線を逸らしてわざとらしく首を縮こませるのを無視し、再びアリアに集中する。
「何かアリアがしたいことはあるか?」
「…したいこと?」
「お前が望むことに…答えてみたいと思ってな」
俺がすることに彼女がいちいち反応するのが面白く、我ながら珍しくそんな考えに行き着いた。
今までは自身にとって都合の良いように誘導していた節もあったからだ。
恐らくそんなこと予想もしていなかったのだろう、アリアはしばらく目をぱちくりさせてから、口を開く。
「じゃあ、Vが大切にしてるあの本…!読んでほしいな!」
「…そんなことか。簡単だ」
「やった!約束ね、V!」
「ああ…」
音読なんて、今のこの身体でもいともたやすい。
そんな単純なことに満面の笑みで喜ぶ彼女が、やはり愛しいとも可愛らしいとも思ってしまった。
end.