Charlotte
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ダンテとバージル。
いつかはどちらか選ばなくちゃいけない。
そう考えれば考えるほど、答えは出ない。
そもそも、そんなに簡単な問題でもない。
どちらも気付いたら傍にいて、それが当たり前だった。
あの幼い頃は特に。
エリはキッチンで心臓がどきどきうるさくなるのに、必死で耐えていた。
というのもその日の夕食の支度中、ダンテが早速後ろから抱き締めてきたからだ。
どちらか決められないだけで2人のことは兄として大好きなので、振り払うこともできない。
「エリ」
耳に直接流し込まれる熱い想いがこもった自分の名前。
ダンテにこんな風に扱われるのは初めてで、兄の面とは違った男性のそれに、やっぱりどぎまぎしてしまう。
「ダンテ…ねぇ、ご飯作れないよ」
すぐにダンテの顔があるため横は向けず、エリは呟いた。
「飯はいるが、俺は今お前を抱き締めてることの方が重要だ」
ストレートな言葉に身体が沸騰しそうだ。
今まで何回も抱き締められているのにこんなに緊張するのは、きっとお互いに男女の面を出し始めたから。
「こんなにぎゅっと抱き締めなくても…」
この間は逃げてしまったけれど、もう2度と無断でそんなことはしない。
いくら選べずに悩んでも、それだけはしないと心に決めた。
ダンテは一向にエリの首筋に顔をうずめたまま動こうとせず、料理は何も手がつかない。
痺れを切らして、腰に回されている逞しい腕に手をやる。
「ねぇ…ダンテ」
ちょっと左右に揺らしてみても、反応はない。
突然どうしたんだろう。
今までは兄であることを意識して極力自分に触れることを禁じていたのか、反動がすごい。
バージルの告白から、ダンテも明らかに触発されて行動しているのはわかり始めていた。
「…この間は無理矢理キスして悪かった」
「えっ…うん、大丈夫」
やっと反応があったと思えば、全く予想外の発言。
あのキスを気にしていないと言えば嘘だが、また潮らしく謝られて、ダンテはそんなに気にしてるんだと実感する。
ダンテとバージル、2人の間で激しく揺れ動いて半分以上忘れ始めていた。
「今更すぎるが、嫌じゃなかったか?ファーストキスが俺で」
ファーストキス。
改めて言われるとそう実感してしまい、唇に感触が蘇ってくる。
目線を合わせずに、しかし声色からダンテが真剣に言っていることがわかって、エリはゆっくり深く頷く。
嫌、ではなかった。
ただ驚いただけで、嫌悪感などはなかった。
「嫌じゃなかったのか?エリ、ちゃんと声で聞かせてくれ」
「ダ、ダンテ…!」
今度は食い入るように見つめられ、無意識に頰が熱くなる。
なんでこんな風に反応してしまうんだろう。
ダンテのことを、男性としても好きなんだろうか。
ダンテとは子どもの頃から一緒で、あの悪夢の後も支え合い明らかに「特別な存在」ではある。
とにかくダンテの要望に答えて、エリはなんとか口を開いた。
「嫌…ではなかったよ。びっくりしただけ」
「ほんとか?」
再び頷いたら、ダンテの表情が見る見るうちに明るくなって笑顔を抑えられないという様子。
回された腕にまた力が籠るのもわかった。
「エリ、俺を選べよ。これからは恋人としても俺の傍にいてくれ」
ダンテを選んだらバージルはどうなるのか。
すぐにそんな想いが出て来てしまった。
スカイブルーの瞳にはしっかり自分の姿が映っていて、まっすぐな視線を昔からずっと変わらずに向けてくれているのが嬉しく、同時に切なくもある。
やっぱり返事が出来ずにいたら、ダンテが続ける。
「…バージルのこと、考えてるだろ」
図星だったので、耐え切れず視線をそらした。
ダンテを選んだら、テメンニグルでバージルを連れ戻した意味だとか全てなくなるんじゃないか。
バージルが生きていて、バージルに再会できたことは、人生の中で大きなことだ。
だけど2人は、自分を巡って今ある意味争っている。
冷静に考えて初めからバージルがいなければ、今まで2人でずっと暮らして、恋人同士になることもできたはずだ。
だから、あの日「バージルを連れ戻す」と誓ってくれたダンテの考えが気になった。
「ダンテは…バージルを、ここに連れて来て良かった?」
言葉に出したのはいいが、後になって心臓が暴れ出す。
やめておけば良かっただとか言われたら、どうしよう。
エリの問いにダンテはすぐに答えず、しばらくしてからゆっくりと切り出す。
「今は…まだ、わからねぇ。言わなかったが、俺はバージルが生きてたのもっと前から知ってたんだ。ごめんな」
バージルを探し続けていたことを、ダンテは知っている。
生きていたことをすぐに知らせてくれなかったのは、きっと何か言えない理由があったからだ。
ダンテの優しさの中で生きていたエリには、それがわかった。
そうして同時にまた、あのテレビで観た、人が悪魔に襲われる映像が頭の中に再生される。
が、すぐに図書館の帰り道にバージルが悪魔から助けてくれたことも思い出す。
「私は…バージルと再会できて、本当に嬉しかったんだ。今考えられるのはそこまで…」
「そうか…そうだよな」
「ありがとう、ダンテ。バージルを連れ戻してくれて。本当に、ありがとう」
テメンニグルのことを詳しくは知らないがあの時敵対関係であったなら、ダンテがバージルを連れ帰るのは色々な苦労があったのは間違いない。
改めて心からの感謝を伝えたら、ここで初めてダンテの拘束が解かれた。
「馬鹿…エリが感謝することじゃねぇだろ。あいつも、一応…家族…なんだからな」
「うん、ダンテ…」
バージルを家族と言ってくれたことに胸が暖かくなり、エリはダンテと向き合って瞳を細めて微笑む。
しかし次の瞬間、何故か両肩を掴まれダンテの顔がぐっと近づいて来て、ぎゅっと力を込めてまぶたを閉じた。
予想した感触はやって来ず、代わりにどんっと鈍い音が響き渡る。
見れば、キッチンの入口の壁をバージルが思い切り殴ったようで、眉間には深くしわが刻まれていた。
確実に怒っていることがわかって、ダンテはバージルを見つめ、エリはそのままどうすることもできずに固まってしまう。
「ダンテ、貴様にエリはやらん。俺は今すぐにでもエリを連れて出て行ってもいいんだぞ?」
「バージル、てめぇ…エリの気持ちはどうでもいいってのかよ」
「安心しろ。エリには何も不自由な思いはさせん」
「そういうことを言ってんじゃねぇよ!あんた、何も変わってねぇな…!」
「2人ともやめて!!」
とうとうダンテがバージルに掴みかかろうとした時、エリが力の限り叫んだ。
2人の前から逃げないと決めたが、どうやら思った以上に2人の溝は深くなっているようだ。
それは、もしかして自分のせいなのか。
泣く気はなかったのに、勝手にまた瞳から一筋涙が溢れてしまう。
「エリ」
ダンテはすぐさまエリの傍に舞い戻り、そっと背中に右手を添えた。
さすがのバージルもエリを泣かせることは本意ではないため、静かに自身の中で胸が痛むのに気づく。
「エリ…すまない」
ダンテではなくエリに謝罪したバージルは、一旦自室へと引き返すことにした。
end.
いつかはどちらか選ばなくちゃいけない。
そう考えれば考えるほど、答えは出ない。
そもそも、そんなに簡単な問題でもない。
どちらも気付いたら傍にいて、それが当たり前だった。
あの幼い頃は特に。
エリはキッチンで心臓がどきどきうるさくなるのに、必死で耐えていた。
というのもその日の夕食の支度中、ダンテが早速後ろから抱き締めてきたからだ。
どちらか決められないだけで2人のことは兄として大好きなので、振り払うこともできない。
「エリ」
耳に直接流し込まれる熱い想いがこもった自分の名前。
ダンテにこんな風に扱われるのは初めてで、兄の面とは違った男性のそれに、やっぱりどぎまぎしてしまう。
「ダンテ…ねぇ、ご飯作れないよ」
すぐにダンテの顔があるため横は向けず、エリは呟いた。
「飯はいるが、俺は今お前を抱き締めてることの方が重要だ」
ストレートな言葉に身体が沸騰しそうだ。
今まで何回も抱き締められているのにこんなに緊張するのは、きっとお互いに男女の面を出し始めたから。
「こんなにぎゅっと抱き締めなくても…」
この間は逃げてしまったけれど、もう2度と無断でそんなことはしない。
いくら選べずに悩んでも、それだけはしないと心に決めた。
ダンテは一向にエリの首筋に顔をうずめたまま動こうとせず、料理は何も手がつかない。
痺れを切らして、腰に回されている逞しい腕に手をやる。
「ねぇ…ダンテ」
ちょっと左右に揺らしてみても、反応はない。
突然どうしたんだろう。
今までは兄であることを意識して極力自分に触れることを禁じていたのか、反動がすごい。
バージルの告白から、ダンテも明らかに触発されて行動しているのはわかり始めていた。
「…この間は無理矢理キスして悪かった」
「えっ…うん、大丈夫」
やっと反応があったと思えば、全く予想外の発言。
あのキスを気にしていないと言えば嘘だが、また潮らしく謝られて、ダンテはそんなに気にしてるんだと実感する。
ダンテとバージル、2人の間で激しく揺れ動いて半分以上忘れ始めていた。
「今更すぎるが、嫌じゃなかったか?ファーストキスが俺で」
ファーストキス。
改めて言われるとそう実感してしまい、唇に感触が蘇ってくる。
目線を合わせずに、しかし声色からダンテが真剣に言っていることがわかって、エリはゆっくり深く頷く。
嫌、ではなかった。
ただ驚いただけで、嫌悪感などはなかった。
「嫌じゃなかったのか?エリ、ちゃんと声で聞かせてくれ」
「ダ、ダンテ…!」
今度は食い入るように見つめられ、無意識に頰が熱くなる。
なんでこんな風に反応してしまうんだろう。
ダンテのことを、男性としても好きなんだろうか。
ダンテとは子どもの頃から一緒で、あの悪夢の後も支え合い明らかに「特別な存在」ではある。
とにかくダンテの要望に答えて、エリはなんとか口を開いた。
「嫌…ではなかったよ。びっくりしただけ」
「ほんとか?」
再び頷いたら、ダンテの表情が見る見るうちに明るくなって笑顔を抑えられないという様子。
回された腕にまた力が籠るのもわかった。
「エリ、俺を選べよ。これからは恋人としても俺の傍にいてくれ」
ダンテを選んだらバージルはどうなるのか。
すぐにそんな想いが出て来てしまった。
スカイブルーの瞳にはしっかり自分の姿が映っていて、まっすぐな視線を昔からずっと変わらずに向けてくれているのが嬉しく、同時に切なくもある。
やっぱり返事が出来ずにいたら、ダンテが続ける。
「…バージルのこと、考えてるだろ」
図星だったので、耐え切れず視線をそらした。
ダンテを選んだら、テメンニグルでバージルを連れ戻した意味だとか全てなくなるんじゃないか。
バージルが生きていて、バージルに再会できたことは、人生の中で大きなことだ。
だけど2人は、自分を巡って今ある意味争っている。
冷静に考えて初めからバージルがいなければ、今まで2人でずっと暮らして、恋人同士になることもできたはずだ。
だから、あの日「バージルを連れ戻す」と誓ってくれたダンテの考えが気になった。
「ダンテは…バージルを、ここに連れて来て良かった?」
言葉に出したのはいいが、後になって心臓が暴れ出す。
やめておけば良かっただとか言われたら、どうしよう。
エリの問いにダンテはすぐに答えず、しばらくしてからゆっくりと切り出す。
「今は…まだ、わからねぇ。言わなかったが、俺はバージルが生きてたのもっと前から知ってたんだ。ごめんな」
バージルを探し続けていたことを、ダンテは知っている。
生きていたことをすぐに知らせてくれなかったのは、きっと何か言えない理由があったからだ。
ダンテの優しさの中で生きていたエリには、それがわかった。
そうして同時にまた、あのテレビで観た、人が悪魔に襲われる映像が頭の中に再生される。
が、すぐに図書館の帰り道にバージルが悪魔から助けてくれたことも思い出す。
「私は…バージルと再会できて、本当に嬉しかったんだ。今考えられるのはそこまで…」
「そうか…そうだよな」
「ありがとう、ダンテ。バージルを連れ戻してくれて。本当に、ありがとう」
テメンニグルのことを詳しくは知らないがあの時敵対関係であったなら、ダンテがバージルを連れ帰るのは色々な苦労があったのは間違いない。
改めて心からの感謝を伝えたら、ここで初めてダンテの拘束が解かれた。
「馬鹿…エリが感謝することじゃねぇだろ。あいつも、一応…家族…なんだからな」
「うん、ダンテ…」
バージルを家族と言ってくれたことに胸が暖かくなり、エリはダンテと向き合って瞳を細めて微笑む。
しかし次の瞬間、何故か両肩を掴まれダンテの顔がぐっと近づいて来て、ぎゅっと力を込めてまぶたを閉じた。
予想した感触はやって来ず、代わりにどんっと鈍い音が響き渡る。
見れば、キッチンの入口の壁をバージルが思い切り殴ったようで、眉間には深くしわが刻まれていた。
確実に怒っていることがわかって、ダンテはバージルを見つめ、エリはそのままどうすることもできずに固まってしまう。
「ダンテ、貴様にエリはやらん。俺は今すぐにでもエリを連れて出て行ってもいいんだぞ?」
「バージル、てめぇ…エリの気持ちはどうでもいいってのかよ」
「安心しろ。エリには何も不自由な思いはさせん」
「そういうことを言ってんじゃねぇよ!あんた、何も変わってねぇな…!」
「2人ともやめて!!」
とうとうダンテがバージルに掴みかかろうとした時、エリが力の限り叫んだ。
2人の前から逃げないと決めたが、どうやら思った以上に2人の溝は深くなっているようだ。
それは、もしかして自分のせいなのか。
泣く気はなかったのに、勝手にまた瞳から一筋涙が溢れてしまう。
「エリ」
ダンテはすぐさまエリの傍に舞い戻り、そっと背中に右手を添えた。
さすがのバージルもエリを泣かせることは本意ではないため、静かに自身の中で胸が痛むのに気づく。
「エリ…すまない」
ダンテではなくエリに謝罪したバージルは、一旦自室へと引き返すことにした。
end.