【第2章】目に見えないもの
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17日目。
今日は珍しくアリアの元にはシャドウを残し、俺はグリフォンと共に街を歩いていた。
すでに見慣れた光景は、惨劇をそのままに止めたようだった。
隣で羽ばたくグリフォンも、同じようなことを考えていたのだろう、クリフォトの根を横目にしながら囁く。
「V…正直もう外に出る必要って、あんまねェだろ」
「…わかっている」
「2週間以上経ってこの街で生きてるなら、そりゃもうキセキだ」
この日に関して言えば、人命救助のために出てきた訳ではない。
アリア抜きで、話したいことがあったからだ。
「…ラジオでも状況を伝えていたが、レッドグレイブから悪魔を出さないように人間も必死なようだな」
ユリゼンの影響は、すでにこの街の外にも及ぼうとしている。
俺に力があれば食い止めることも可能だったろうが、ユリゼンとは逆に、生まれてから力は落ちていく一方だ。
「人の血を吸って、アイツはどんどん力つけてんのかねェ」
「…力だけならそうだろう。対照的に俺は体力が落ちている」
「悲しい現実だな…」
ネロと落ち合うまで、約10日。
なんとか「その時」まで肉体が保ってほしい。
そうしなければ、今までの全てが無駄になる。
明日からは体力温存を第一に過ごそう。
さてようやく本題だということで、なんとか形状を残したベンチに腰掛け、グリフォンの瞳をじっと見つめた。
「…グリフォン、アリアに聞いたぞ」
聞きたいことはひとつしかない。
俺に重大な秘密を作っていることが気に食わないのに、やつは思い当たらず首を傾けるばかりだった。
「え?何を?」
「とぼけるな。宿主の話だ」
「アーあれか!」
全く、言わなければわからないのか。
その上なんともないようなリアクションをされ、再びイラついたが、冷静を保ち話を続ける。
「ちゃんとアリアの身の危険も考えているんだろうな?」
目つきが悪かったのか、グリフォンがベンチの端に留まり、羽根を控えめにばたつかせた。
「あったりまえだろ…!考えなしにする訳ねェ!ジェントルマンだからな!」
「アリアは、お前たちのことも気に入っている…アリアに何かあれば、呪い殺すぞ」
「…本当に死にそうだからやめて…」
アリアはただの人間で、「魔」を取り込む必要なんて、これっぽっちもない筈だ。
俺もグリフォンも共にいるのは「生きるため」だった。
アリアも「生きるため」にグリフォンたちが必要だと言う。
それは精神的な支えという意味で、自分の身体に何かしらの影響が出る可能性があることは、怖くないと。
その覚悟もしていると。
あの瞳は、迷いは少しもなかった。
「俺」を忘れないと宣言したあの日と、同じだった。
「アリアは、強いな…愚かしいくらいに」
「…それ褒めてんだよなァ」
彼女のこれまでを振り返りながら空を仰ぐと、初めて共に黄色い花デイリリーの中庭に足を踏み入れたことを、思い出す。
あの日も雲ひとつない、晴天だった。
「アリアに生きろって気づかせたのは、俺たちだぜ。V」
「そうだな…」
俺も「その時」に、再びユリゼンという「魔」を受け入れよう。
そうして、1ヶ月を越えてみせよう。
何も怖がることはない。
あれは、「俺」なのだ。
「…バージルに戻るには、俺が、ユリゼンにトドメを刺す必要がある」
「ユリゼンが完全消滅しちまったら終わり、だぜ」
「その時、俺は確実にその場にいなくては」
ネロがユリゼンを弱らせたところを、最後の最後は自分の手で終わらせる。
俺もユリゼンも「その時」まで、お互いに生きていなければならない。
ついていた杖を再び握り締め、視線を空から前方に戻せば、グリフォンが珍しく真剣な口調で切り出した。
「バージルに戻っても…アリアに会うのか?」
「何があっても…俺は、俺だ」
「…そうだな、楽しみだぜ。未来の「V」に逢う時が」
やはり俺はあの日、アリアの元に戻るという選択をして良かった。
戻らなければ、今この時、俺がこの意思を持って立っていることはなかっただろう。
end.
今日は珍しくアリアの元にはシャドウを残し、俺はグリフォンと共に街を歩いていた。
すでに見慣れた光景は、惨劇をそのままに止めたようだった。
隣で羽ばたくグリフォンも、同じようなことを考えていたのだろう、クリフォトの根を横目にしながら囁く。
「V…正直もう外に出る必要って、あんまねェだろ」
「…わかっている」
「2週間以上経ってこの街で生きてるなら、そりゃもうキセキだ」
この日に関して言えば、人命救助のために出てきた訳ではない。
アリア抜きで、話したいことがあったからだ。
「…ラジオでも状況を伝えていたが、レッドグレイブから悪魔を出さないように人間も必死なようだな」
ユリゼンの影響は、すでにこの街の外にも及ぼうとしている。
俺に力があれば食い止めることも可能だったろうが、ユリゼンとは逆に、生まれてから力は落ちていく一方だ。
「人の血を吸って、アイツはどんどん力つけてんのかねェ」
「…力だけならそうだろう。対照的に俺は体力が落ちている」
「悲しい現実だな…」
ネロと落ち合うまで、約10日。
なんとか「その時」まで肉体が保ってほしい。
そうしなければ、今までの全てが無駄になる。
明日からは体力温存を第一に過ごそう。
さてようやく本題だということで、なんとか形状を残したベンチに腰掛け、グリフォンの瞳をじっと見つめた。
「…グリフォン、アリアに聞いたぞ」
聞きたいことはひとつしかない。
俺に重大な秘密を作っていることが気に食わないのに、やつは思い当たらず首を傾けるばかりだった。
「え?何を?」
「とぼけるな。宿主の話だ」
「アーあれか!」
全く、言わなければわからないのか。
その上なんともないようなリアクションをされ、再びイラついたが、冷静を保ち話を続ける。
「ちゃんとアリアの身の危険も考えているんだろうな?」
目つきが悪かったのか、グリフォンがベンチの端に留まり、羽根を控えめにばたつかせた。
「あったりまえだろ…!考えなしにする訳ねェ!ジェントルマンだからな!」
「アリアは、お前たちのことも気に入っている…アリアに何かあれば、呪い殺すぞ」
「…本当に死にそうだからやめて…」
アリアはただの人間で、「魔」を取り込む必要なんて、これっぽっちもない筈だ。
俺もグリフォンも共にいるのは「生きるため」だった。
アリアも「生きるため」にグリフォンたちが必要だと言う。
それは精神的な支えという意味で、自分の身体に何かしらの影響が出る可能性があることは、怖くないと。
その覚悟もしていると。
あの瞳は、迷いは少しもなかった。
「俺」を忘れないと宣言したあの日と、同じだった。
「アリアは、強いな…愚かしいくらいに」
「…それ褒めてんだよなァ」
彼女のこれまでを振り返りながら空を仰ぐと、初めて共に黄色い花デイリリーの中庭に足を踏み入れたことを、思い出す。
あの日も雲ひとつない、晴天だった。
「アリアに生きろって気づかせたのは、俺たちだぜ。V」
「そうだな…」
俺も「その時」に、再びユリゼンという「魔」を受け入れよう。
そうして、1ヶ月を越えてみせよう。
何も怖がることはない。
あれは、「俺」なのだ。
「…バージルに戻るには、俺が、ユリゼンにトドメを刺す必要がある」
「ユリゼンが完全消滅しちまったら終わり、だぜ」
「その時、俺は確実にその場にいなくては」
ネロがユリゼンを弱らせたところを、最後の最後は自分の手で終わらせる。
俺もユリゼンも「その時」まで、お互いに生きていなければならない。
ついていた杖を再び握り締め、視線を空から前方に戻せば、グリフォンが珍しく真剣な口調で切り出した。
「バージルに戻っても…アリアに会うのか?」
「何があっても…俺は、俺だ」
「…そうだな、楽しみだぜ。未来の「V」に逢う時が」
やはり俺はあの日、アリアの元に戻るという選択をして良かった。
戻らなければ、今この時、俺がこの意思を持って立っていることはなかっただろう。
end.