Charlotte
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「ダンテがお前を独り占めするから、俺はいつも嫉妬している」
まだ好きって言われた訳じゃない。
「今は俺しかいない。俺のことだけ考えてほしい」
ヤキモチだって、家族の間でもある。
ほら、昔はよくお母さんを巡ってヤキモチ妬いてた。
きっと、それと同じ。大丈夫。
いつもみたいに普通に笑って挨拶すればいい。
エリはぼんやりした頭で朝食を作りながら、バージルに言われたことを整理していた。
昨日の夜はあまり眠れなかった。
バージルが私を好きなんて、きっと、思い込み。
そこまでは言われてないもの。
「おはよう。エリ」
突然耳元で囁かれる低い声。
ぞくぞくと身体の奥まで響くようなそれ。
「バージル…!?」
エリが振り向くと、口角を上げたバージルがいた。
わざとやってる。
そうわかっても、頬は勝手に赤くなった。
「いじわる…」
「今日も可愛いな」
可愛い。
その言葉に胸がどくんと脈打つ。
やっぱり、そうなんだ。
バージルは、私を…。
朝食はまた色々考えて無口になってしまった。
バージルのことは好き。
だけど、ダンテのことだって好きだし大切だ。
異性としての愛情は、兄妹として家族としての3人の関係を揺るがせてしまう。
だからこそ、悩む。
バージルの気持ちは勿論嬉しい。
多くの女の子の中から、自分に好意を持ってくれたのだから。
約束通りバージルと図書館に向かったが、あれだけ楽しみにしていたにも関わらず、気は乗らなかった。
「エリ」
「…ごめん、何?」
棚から目を反らしたバージルに声を掛けられ、笑顔を作る。
ただ後をついて行く形になってしまっている。
「さっきから上の空だな」
胸の奥がずきりと痛んだ。
せっかく2人で図書館に来たのに、何やってるんだろう。
バージルに腕を引っ張られ、たくさんある本棚の死角になっている壁に背中をつく。
至近距離でアイスブルーの瞳に見つめられて、また勝手に心臓が高鳴った。
「悩ませているのは俺だとわかっているが…」
バージルはまた少し眉をひそめる。
こんな顔してほしくないのに、バージルを苦しめているのもまた自分なんだ。
どうしたら、いいの?
バージルは泣きそうなエリの頬に指を滑らせ、赤い唇を親指で撫でる。
「キス、したい。抱き締めたい」
「バージル…」
初めて直接男としての欲望を打ち明けられ、鼓動が早くなる。
バージルの瞳はまた熱を帯びていた。
「お前は妹だが、それだけでいられない」
「そ、そんなの…」
「エリのすべてがほしい。好きだ」
好きだと言われてしまった。
その瞬間、家族としての何かが終わってしまった気がした。
「愛している…きっとずっと、前から」
「バージル…っ」
動揺してバージルの胸を思い切り突き返す。
そのまま走って行こうとしたが、バージルに腕を掴まれてしまった。
「逃げるな。頼む」
懇願され、もう現実と向き合うしかないんだと思った。
バージルに返事を返すとすれば、今のエリが言えるのはひとつしかない。
「バージルの気持ち…すごく嬉しいけど」
嬉しいのは本当だ。
だけど、複雑な気持ちが勝っている。
「まだ、整理できない…」
バージルの顔が見ていられず、俯く。
胸が痛くて呼吸するのも苦しい。
「ごめんなさい…」
こんな答えをバージルに言うのも怖かった。
拒否したらバージルが自分の前からいなくなってしまうかもしれない。
また家族がばらばらになってしまうかもしれない。
帰り道は無口で、バージルの半歩後ろをとぼとぼと歩いた。
つい最近まで楽しく笑って過ごしていたのに、バージルがすごく遠く感じる。
嫌だ。こんなの。
だけど、隣で普通に笑う自信がない。
地面を睨んでいると、突然周囲が暗くなるのがわかり、顔を上げる。
「バージル。見つけたぞ」
空中に、心臓を掴まれるような低い声が響く。
2人を取り囲む形で、大きな鎌を持った黒装束が数体現れた。
悪魔だ。
あの、母親を殺された悪夢の日が、重なる。
身体が勝手に震え出した。
「それは、人間の女か」
悪魔のひとりがエリを見て呟くと、皆の注目がエリに向かう。
「人間の女だと?」
怖い。
悪魔全てが一斉に自分に殺意を抱いている。
殺される。
恐怖に押し潰されそうになった時、大きな手が身体を包んだ。
「エリ。心配ない。俺の傍から離れるな」
言いながら、バージルの視線は悪魔に向かっている。
指示された通りに2本足で立って傍にいるのがいっぱいいっぱいだ。
「バージル。人間界と魔界を繋ぐのに失敗したな」
「ああ、生憎な。だが、今はどうでもいい」
「人間の女にほだされたか」
「今は、と言っている」
エリはバージルと悪魔たちの会話をただぼんやり聞いていた。
青い兄の包んでくれる大きな手だけが頼りだ。
「人間…!人間の女!お前もスパーダと同じだ!」
「…貴様らにエリはやらん。魂は勿論、髪の毛一筋さえな」
いきり立つ悪魔を、アイスブルーの瞳が睨み付ける。
バージルはエリの耳元で囁いた。
「エリ、目を閉じていろ」
「う、うん」
「すぐ済む」
戦闘前なのに、バージルの声は酷く優しい。
指示通りに目を閉じると、闇が広がる。
まるであの日の繰り返しのようだ。
だけど、繰り返しにはならない。
きっと、バージルが助けてくれる。
あの時とは違って、バージルは傍にいる。
「エリ」
次に名前を呼ばれた時、そっと目を開ければ、日の光とバージルの姿が映る。
すごい。
言う通りに、本当にすぐ悪魔を倒してしまった。
「バージル…」
「すまない。2度と怖い思いはさせないと自身に誓ったんだが」
「ううん…ありがとう」
「帰ろう。歩けるか?」
伸ばされた手を素直に握った。
温かい。
とても、安心する。
悩んでいたことを全て忘れるくらい、バージルの温もりが身体に染み込んでいく。
ああやっぱり、バージルがいてくれないと嫌だ。
私の大切な兄、なんだから。
バージルの想いに応えられないのに、こんな風に思っちゃだめかな…。
「ねぇ、バージル。さっきあんなこと言っちゃったけど、これからも傍にいてほしいの」
中途半端で気持ちの整理がつかない私でも、一緒にいてくれますか。
「わがままでごめんね…」
バージルが突然立ち止まって、振り返る。
いつもの厳しい表情だ。
「そんなことを気にしていたのか」
「そ、そんなことって…!」
エリが声を荒げると、バージルは確かに笑みを浮かべた。
「俺はこの先ずっとお前の傍を離れるつもりはない」
当たり前に告げてくれる兄。
嬉しくて胸が熱くなる。
「良かった…」
エリは目を細めてバージルの手をぎゅっと握る。
気持ちに応えられなくて本当にごめんなさい。
それなのに、当たり前に家族でいてくれてありがとう。
すっかり安心したエリに、バージルは囁いた。
「だが、これからは遠慮しない。お前に触れることをためらわない」
「バ、バージル…!」
「愛している、エリ」
バージルは諦めた訳じゃない。
明日も、2人っきりの生活が待っている。
end.
まだ好きって言われた訳じゃない。
「今は俺しかいない。俺のことだけ考えてほしい」
ヤキモチだって、家族の間でもある。
ほら、昔はよくお母さんを巡ってヤキモチ妬いてた。
きっと、それと同じ。大丈夫。
いつもみたいに普通に笑って挨拶すればいい。
エリはぼんやりした頭で朝食を作りながら、バージルに言われたことを整理していた。
昨日の夜はあまり眠れなかった。
バージルが私を好きなんて、きっと、思い込み。
そこまでは言われてないもの。
「おはよう。エリ」
突然耳元で囁かれる低い声。
ぞくぞくと身体の奥まで響くようなそれ。
「バージル…!?」
エリが振り向くと、口角を上げたバージルがいた。
わざとやってる。
そうわかっても、頬は勝手に赤くなった。
「いじわる…」
「今日も可愛いな」
可愛い。
その言葉に胸がどくんと脈打つ。
やっぱり、そうなんだ。
バージルは、私を…。
朝食はまた色々考えて無口になってしまった。
バージルのことは好き。
だけど、ダンテのことだって好きだし大切だ。
異性としての愛情は、兄妹として家族としての3人の関係を揺るがせてしまう。
だからこそ、悩む。
バージルの気持ちは勿論嬉しい。
多くの女の子の中から、自分に好意を持ってくれたのだから。
約束通りバージルと図書館に向かったが、あれだけ楽しみにしていたにも関わらず、気は乗らなかった。
「エリ」
「…ごめん、何?」
棚から目を反らしたバージルに声を掛けられ、笑顔を作る。
ただ後をついて行く形になってしまっている。
「さっきから上の空だな」
胸の奥がずきりと痛んだ。
せっかく2人で図書館に来たのに、何やってるんだろう。
バージルに腕を引っ張られ、たくさんある本棚の死角になっている壁に背中をつく。
至近距離でアイスブルーの瞳に見つめられて、また勝手に心臓が高鳴った。
「悩ませているのは俺だとわかっているが…」
バージルはまた少し眉をひそめる。
こんな顔してほしくないのに、バージルを苦しめているのもまた自分なんだ。
どうしたら、いいの?
バージルは泣きそうなエリの頬に指を滑らせ、赤い唇を親指で撫でる。
「キス、したい。抱き締めたい」
「バージル…」
初めて直接男としての欲望を打ち明けられ、鼓動が早くなる。
バージルの瞳はまた熱を帯びていた。
「お前は妹だが、それだけでいられない」
「そ、そんなの…」
「エリのすべてがほしい。好きだ」
好きだと言われてしまった。
その瞬間、家族としての何かが終わってしまった気がした。
「愛している…きっとずっと、前から」
「バージル…っ」
動揺してバージルの胸を思い切り突き返す。
そのまま走って行こうとしたが、バージルに腕を掴まれてしまった。
「逃げるな。頼む」
懇願され、もう現実と向き合うしかないんだと思った。
バージルに返事を返すとすれば、今のエリが言えるのはひとつしかない。
「バージルの気持ち…すごく嬉しいけど」
嬉しいのは本当だ。
だけど、複雑な気持ちが勝っている。
「まだ、整理できない…」
バージルの顔が見ていられず、俯く。
胸が痛くて呼吸するのも苦しい。
「ごめんなさい…」
こんな答えをバージルに言うのも怖かった。
拒否したらバージルが自分の前からいなくなってしまうかもしれない。
また家族がばらばらになってしまうかもしれない。
帰り道は無口で、バージルの半歩後ろをとぼとぼと歩いた。
つい最近まで楽しく笑って過ごしていたのに、バージルがすごく遠く感じる。
嫌だ。こんなの。
だけど、隣で普通に笑う自信がない。
地面を睨んでいると、突然周囲が暗くなるのがわかり、顔を上げる。
「バージル。見つけたぞ」
空中に、心臓を掴まれるような低い声が響く。
2人を取り囲む形で、大きな鎌を持った黒装束が数体現れた。
悪魔だ。
あの、母親を殺された悪夢の日が、重なる。
身体が勝手に震え出した。
「それは、人間の女か」
悪魔のひとりがエリを見て呟くと、皆の注目がエリに向かう。
「人間の女だと?」
怖い。
悪魔全てが一斉に自分に殺意を抱いている。
殺される。
恐怖に押し潰されそうになった時、大きな手が身体を包んだ。
「エリ。心配ない。俺の傍から離れるな」
言いながら、バージルの視線は悪魔に向かっている。
指示された通りに2本足で立って傍にいるのがいっぱいいっぱいだ。
「バージル。人間界と魔界を繋ぐのに失敗したな」
「ああ、生憎な。だが、今はどうでもいい」
「人間の女にほだされたか」
「今は、と言っている」
エリはバージルと悪魔たちの会話をただぼんやり聞いていた。
青い兄の包んでくれる大きな手だけが頼りだ。
「人間…!人間の女!お前もスパーダと同じだ!」
「…貴様らにエリはやらん。魂は勿論、髪の毛一筋さえな」
いきり立つ悪魔を、アイスブルーの瞳が睨み付ける。
バージルはエリの耳元で囁いた。
「エリ、目を閉じていろ」
「う、うん」
「すぐ済む」
戦闘前なのに、バージルの声は酷く優しい。
指示通りに目を閉じると、闇が広がる。
まるであの日の繰り返しのようだ。
だけど、繰り返しにはならない。
きっと、バージルが助けてくれる。
あの時とは違って、バージルは傍にいる。
「エリ」
次に名前を呼ばれた時、そっと目を開ければ、日の光とバージルの姿が映る。
すごい。
言う通りに、本当にすぐ悪魔を倒してしまった。
「バージル…」
「すまない。2度と怖い思いはさせないと自身に誓ったんだが」
「ううん…ありがとう」
「帰ろう。歩けるか?」
伸ばされた手を素直に握った。
温かい。
とても、安心する。
悩んでいたことを全て忘れるくらい、バージルの温もりが身体に染み込んでいく。
ああやっぱり、バージルがいてくれないと嫌だ。
私の大切な兄、なんだから。
バージルの想いに応えられないのに、こんな風に思っちゃだめかな…。
「ねぇ、バージル。さっきあんなこと言っちゃったけど、これからも傍にいてほしいの」
中途半端で気持ちの整理がつかない私でも、一緒にいてくれますか。
「わがままでごめんね…」
バージルが突然立ち止まって、振り返る。
いつもの厳しい表情だ。
「そんなことを気にしていたのか」
「そ、そんなことって…!」
エリが声を荒げると、バージルは確かに笑みを浮かべた。
「俺はこの先ずっとお前の傍を離れるつもりはない」
当たり前に告げてくれる兄。
嬉しくて胸が熱くなる。
「良かった…」
エリは目を細めてバージルの手をぎゅっと握る。
気持ちに応えられなくて本当にごめんなさい。
それなのに、当たり前に家族でいてくれてありがとう。
すっかり安心したエリに、バージルは囁いた。
「だが、これからは遠慮しない。お前に触れることをためらわない」
「バ、バージル…!」
「愛している、エリ」
バージルは諦めた訳じゃない。
明日も、2人っきりの生活が待っている。
end.