Charlotte
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ダンテが事務所でひとりパニックになっている間、エリとバージルは通りを並んで歩いていた。
ダンテとは会う度にそうしていたが、バージルも同じような背の高さをしていて、離れていてもやっぱり双子だなと思って楽しくなった。
「バージルと並んで歩けるなんて夢みたい」
エリが微笑めば、バージルは僅かに口角を上げる。
妹が泣きながら自分のベッドに突っ伏して再会を喜んでいた姿を思い出した。
「泣く程俺に会いたかったのか?」
「あ…あれは違うの!」
エリも言われて思い出し、思わず叫ぶ。
恥ずかしいのか、頬を赤くし視線を下にして合わせないようにしている。
その姿が可愛くて、もう少しからかいたくなってきた。
「違うのか」
「いや、違わないけど…!」
今度はバージルに顔を合わせ、むきになって叫ぶ。
こういうところ、昔と全く変わらない。
バージルはなんとなく機嫌がよくなった。
「どっちだ」
「ずっと…会いたかった。本当に」
態度で言わせなくてもわかるが、面と向かって言わせたい。
素直な心からのエリの言葉に、胸が温かくなるのを感じる。
「俺もだ」
バージルが目を細めて微笑む。
初めて見るバージルの笑顔。
困ったような、悲しそうな、それでいて嬉しそうな深みがあるそれ。
とっても綺麗。
エリは胸かどきどきするのを感じ、思わず足を止める。
「どうした、エリ」
振り向いたバージルはいつもの厳しい顔に戻っている。
もう少しさっきの笑顔を見ていたかった。
残念だと思う気持ちと、心臓が保たないから良かったと思う気持ち、両方ある。
バージルにはもっと、笑ってもらいたい。
「ごめん!なんでもないの!」
エリはバージルの傍に寄ると、こうして隣を歩くのが当たり前になればいいなと思った。
その後目的の紳士服店に辿り着き、適当に必要な分だけバージルが買い物を済ませ、エリは見ているだけだった。
自分が買う時はもっと何倍も悩むから、そんなにすぐ決めて良かったのか、戸惑うほどだ。
男性全般がそうなのかバージルだからそうなのか、ダンテ含め異性とこういう買い物をしたことがなくて、エリにはわからなかった。
せっかく外に出たからと近くの店を見て歩いていれば、ピンクストライプ柄のテントの白い建物が目に入る。
中からは甘い香りが漂って、エリは店の前で足を止め、バージルもその様子を見て止まった。
「あ、ケーキ屋さん!こんなところにあったんだ」
目を輝かせたエリの姿が、店のガラス窓に映る。
店内のショーケースには色とりどりのケーキやシュークリーム、焼き菓子などが並んでいた。
「入るか」
「いいの?」
「ああ、付き合ってもらったしな」
バージルの好意に甘えて、エリは白いドアを開け、ベルの音が鳴る。
カフェスペースも併設されていたので、女性店員に案内されてバージルと2人掛けの席に向き合って座った。
店内の雰囲気も、赤いチェックのワンピースに白いフリルエプロンの制服も、全部自分好みでわくわくする。
「ここのお店とっても可愛いですね!気にいっちゃいました」
「ありがとう、あなたもかっこいい彼氏がいて羨ましいわ。注文が決まったら教えてね」
ブロンドヘアでポニーテールの店員はエリにウインクして下がる。
さり気なくバージルを「彼氏」と言われてしまった。
他のひとには彼氏と彼女に見えるのかと改めて意識してしまう。
なんとなくバージルの方を見れずに、エリはメニューで自分の赤い顔を隠す。
「エリ」
「はいっ」
いきなり名前を呼ばれて心臓が跳ねる。
衝動的にメニューを外してしまい、情けない顔をばっちり見られてしまった。
「…顔が赤いぞ」
「そ、そうかな!?」
なんだかバージルにからかわれてる気がする。
エリは深呼吸して心を落ち着かせる。
動揺してるのはやっぱり私だけなのかな?
ぼんやり思いながら、改めてメニューの字を見つめた。
「何にしよう…シャルロットはないみたいだし」
ケーキと言われるとどうしても、思い出のシャルロットを探してしまう。
自分でも作るけれど、あれば絶対注文していた。
迷って、再び視線を上げてバージルを見る。
そういえば、さっきから1度もメニューを見ていない気がする。
「バージルは決まった?」
「俺は紅茶だけでいい」
「そうだよね、バージルはあんまり甘いもの食べないもんね」
「エリが食べているのを見るだけで十分だ」
そう言ってバージルは口角を上げる。
今日はとっても優しくされてる気がして、なんだかくすぐったい。
まるで昔に戻ったみたいだ。
エリは迷いに迷って、結局ガトーショコラを注文した。
しっとり甘いチョコレートの味が、今日1日を表しているようだった。
「ねぇバージル。ダンテにお土産買ってこう!」
「…ああ」
会計の前に、エリがショーケースを眺めて言う。
2人でいてもダンテのことを忘れないエリに、少しだけもやもやしながら、バージルは頷く。
「何がいいと思う?苺好きだからやっぱりショートケーキかな」
「お前の選ぶものなら何でも食べるんじゃないか」
「そうかなぁ」
エリとダンテがいつから一緒に暮らしているか知らないが、2人は見るからに仲が良く、この間暮らし始めたバージルには入れないところもある。
ダンテのことを考えて、ダンテの話をしているエリは、とても楽しそうだ。
さっきまで自分のことで頭がいっぱいで一喜一憂していたのに、今は弟の話ばかり。
そういえば、昔もこんな風だった。
エリは俺たち2人両方に微笑んでくれるが、たまにこうやって苦しくなる。
相手は妹なのに、おかしな話だ。
「ただいま、ダンテ!ケーキ買ってきたよ」
「良かった、エリ!バージルに攫われたかと思ったぜ…!」
「ちょ、ダンテ!ケーキが潰れる…っ!」
事務所に戻ってエリは嬉しそうに、ショートケーキをダンテに差し出した。
妹の姿が見えるなり、ダンテは走ってきて抱き締める。
まるで恋人にするようなハグ。
バージルはなんとなくそれに苛つきながら、エリの肩に頭を置いたダンテと目を合わせた。
「…いつもこんなことをやってるのか」
「なんだよ、あんた。羨ましいのか?」
弟はあからさまににやりと笑って、一向に妹を離そうとしない。
そのふざけた態度も相まって、バージルは益々苛立つのを感じた。
いっそ閻魔刀で切り捨てたいが、エリの前だから堪える。
「ダンテ、もういいでしょ」
「ああ…エリ、ケーキありがとな」
エリが言うと、ダンテは渋々腕を離す。
妹の態度を見ていると、随分慣れているようだ。
このままダンテがケーキのお礼と言ってキスのひとつでもしていたら、斬るのを我慢できなかったかもしれない。
どうにも苛つく。
バージルは逃げるように2階に上がる。
「バージル、行っちゃうの?」
「部屋で少し休む」
エリに言われ、適当に返事する。
何故自分がこんなにいらいらするのか、わかっているようでわからない。
end.
ダンテとは会う度にそうしていたが、バージルも同じような背の高さをしていて、離れていてもやっぱり双子だなと思って楽しくなった。
「バージルと並んで歩けるなんて夢みたい」
エリが微笑めば、バージルは僅かに口角を上げる。
妹が泣きながら自分のベッドに突っ伏して再会を喜んでいた姿を思い出した。
「泣く程俺に会いたかったのか?」
「あ…あれは違うの!」
エリも言われて思い出し、思わず叫ぶ。
恥ずかしいのか、頬を赤くし視線を下にして合わせないようにしている。
その姿が可愛くて、もう少しからかいたくなってきた。
「違うのか」
「いや、違わないけど…!」
今度はバージルに顔を合わせ、むきになって叫ぶ。
こういうところ、昔と全く変わらない。
バージルはなんとなく機嫌がよくなった。
「どっちだ」
「ずっと…会いたかった。本当に」
態度で言わせなくてもわかるが、面と向かって言わせたい。
素直な心からのエリの言葉に、胸が温かくなるのを感じる。
「俺もだ」
バージルが目を細めて微笑む。
初めて見るバージルの笑顔。
困ったような、悲しそうな、それでいて嬉しそうな深みがあるそれ。
とっても綺麗。
エリは胸かどきどきするのを感じ、思わず足を止める。
「どうした、エリ」
振り向いたバージルはいつもの厳しい顔に戻っている。
もう少しさっきの笑顔を見ていたかった。
残念だと思う気持ちと、心臓が保たないから良かったと思う気持ち、両方ある。
バージルにはもっと、笑ってもらいたい。
「ごめん!なんでもないの!」
エリはバージルの傍に寄ると、こうして隣を歩くのが当たり前になればいいなと思った。
その後目的の紳士服店に辿り着き、適当に必要な分だけバージルが買い物を済ませ、エリは見ているだけだった。
自分が買う時はもっと何倍も悩むから、そんなにすぐ決めて良かったのか、戸惑うほどだ。
男性全般がそうなのかバージルだからそうなのか、ダンテ含め異性とこういう買い物をしたことがなくて、エリにはわからなかった。
せっかく外に出たからと近くの店を見て歩いていれば、ピンクストライプ柄のテントの白い建物が目に入る。
中からは甘い香りが漂って、エリは店の前で足を止め、バージルもその様子を見て止まった。
「あ、ケーキ屋さん!こんなところにあったんだ」
目を輝かせたエリの姿が、店のガラス窓に映る。
店内のショーケースには色とりどりのケーキやシュークリーム、焼き菓子などが並んでいた。
「入るか」
「いいの?」
「ああ、付き合ってもらったしな」
バージルの好意に甘えて、エリは白いドアを開け、ベルの音が鳴る。
カフェスペースも併設されていたので、女性店員に案内されてバージルと2人掛けの席に向き合って座った。
店内の雰囲気も、赤いチェックのワンピースに白いフリルエプロンの制服も、全部自分好みでわくわくする。
「ここのお店とっても可愛いですね!気にいっちゃいました」
「ありがとう、あなたもかっこいい彼氏がいて羨ましいわ。注文が決まったら教えてね」
ブロンドヘアでポニーテールの店員はエリにウインクして下がる。
さり気なくバージルを「彼氏」と言われてしまった。
他のひとには彼氏と彼女に見えるのかと改めて意識してしまう。
なんとなくバージルの方を見れずに、エリはメニューで自分の赤い顔を隠す。
「エリ」
「はいっ」
いきなり名前を呼ばれて心臓が跳ねる。
衝動的にメニューを外してしまい、情けない顔をばっちり見られてしまった。
「…顔が赤いぞ」
「そ、そうかな!?」
なんだかバージルにからかわれてる気がする。
エリは深呼吸して心を落ち着かせる。
動揺してるのはやっぱり私だけなのかな?
ぼんやり思いながら、改めてメニューの字を見つめた。
「何にしよう…シャルロットはないみたいだし」
ケーキと言われるとどうしても、思い出のシャルロットを探してしまう。
自分でも作るけれど、あれば絶対注文していた。
迷って、再び視線を上げてバージルを見る。
そういえば、さっきから1度もメニューを見ていない気がする。
「バージルは決まった?」
「俺は紅茶だけでいい」
「そうだよね、バージルはあんまり甘いもの食べないもんね」
「エリが食べているのを見るだけで十分だ」
そう言ってバージルは口角を上げる。
今日はとっても優しくされてる気がして、なんだかくすぐったい。
まるで昔に戻ったみたいだ。
エリは迷いに迷って、結局ガトーショコラを注文した。
しっとり甘いチョコレートの味が、今日1日を表しているようだった。
「ねぇバージル。ダンテにお土産買ってこう!」
「…ああ」
会計の前に、エリがショーケースを眺めて言う。
2人でいてもダンテのことを忘れないエリに、少しだけもやもやしながら、バージルは頷く。
「何がいいと思う?苺好きだからやっぱりショートケーキかな」
「お前の選ぶものなら何でも食べるんじゃないか」
「そうかなぁ」
エリとダンテがいつから一緒に暮らしているか知らないが、2人は見るからに仲が良く、この間暮らし始めたバージルには入れないところもある。
ダンテのことを考えて、ダンテの話をしているエリは、とても楽しそうだ。
さっきまで自分のことで頭がいっぱいで一喜一憂していたのに、今は弟の話ばかり。
そういえば、昔もこんな風だった。
エリは俺たち2人両方に微笑んでくれるが、たまにこうやって苦しくなる。
相手は妹なのに、おかしな話だ。
「ただいま、ダンテ!ケーキ買ってきたよ」
「良かった、エリ!バージルに攫われたかと思ったぜ…!」
「ちょ、ダンテ!ケーキが潰れる…っ!」
事務所に戻ってエリは嬉しそうに、ショートケーキをダンテに差し出した。
妹の姿が見えるなり、ダンテは走ってきて抱き締める。
まるで恋人にするようなハグ。
バージルはなんとなくそれに苛つきながら、エリの肩に頭を置いたダンテと目を合わせた。
「…いつもこんなことをやってるのか」
「なんだよ、あんた。羨ましいのか?」
弟はあからさまににやりと笑って、一向に妹を離そうとしない。
そのふざけた態度も相まって、バージルは益々苛立つのを感じた。
いっそ閻魔刀で切り捨てたいが、エリの前だから堪える。
「ダンテ、もういいでしょ」
「ああ…エリ、ケーキありがとな」
エリが言うと、ダンテは渋々腕を離す。
妹の態度を見ていると、随分慣れているようだ。
このままダンテがケーキのお礼と言ってキスのひとつでもしていたら、斬るのを我慢できなかったかもしれない。
どうにも苛つく。
バージルは逃げるように2階に上がる。
「バージル、行っちゃうの?」
「部屋で少し休む」
エリに言われ、適当に返事する。
何故自分がこんなにいらいらするのか、わかっているようでわからない。
end.