【第1章】夢のようなひと
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見つけ出した時、あろうことか彼女は悪魔たちに囲まれていた。
気づいたら、勝手にグリフォンを寄越していた。
アリアが死ぬかと思ったら、なんだか怖かった。
その感情は瞬間的でとても強く、ただ助けようという気持ちだけで動いていた。
それ以外には何もなく、その感情ひとつだけ。
そんなことはもしかしたら初めてかもしれない。
たかが人間の女ひとり失うことを、俺は恐怖している。
こんなにも俺に懐いた彼女を失うのが嫌、らしい。
俺は今まで、俺自身のことばかり考えていた。
楽しい記憶、美しい記憶、今更手にして何になる?
それが充実していればいるほど、失った時辛い。
俺はそれを知っている。
だから、もういいんだ。
もう、これ以上いらない。
いらないというのに。
アリアを無事救うことができて、心の底から安心している自分がいた。
俺は彼女をこの街に、再びひとり残したのだ。
命の危険があると自分自身が嫌というほど理解しているのに。
その事実に、改めて気づいた。
「V…!ありがとう、助けてくれて」
いつぶりかの、アリアの素直な笑顔。
それは俺だけに向けられている。
それだけで、胸が暖かくなるのを感じた。
こんなに幸せな感情が、あるのだ。
できるなら、もっと彼女の笑顔を見ていたい。
1ヶ月と言わず、ずっと。
そうだ…これが、俺の本心。
「終わりが決まってても、その思い出が消えることはねェんだぜ」
ふと、グリフォンの言葉が思い出された。
もしこの瞬間がお互いにとって、永遠に残る優しい記憶になるのなら。
俺は、許されるまでここにいよう。
ここに、いたい。
目覚めたら、太陽なのか部屋の明かりなのかが瞳に眩しく、思わず右手で顔を隠した。
あれから、どれくらい経ったのだろう。
この脆い身体で少し無理をしてしまったなと、今更思った。
いや、だが、まだ実態はある。
ふと自身の左側に視線をやれば、もう見慣れている髪色に気づく。
身を起こしたらやはり思った通りに、アリアが丸まって眠っていた。
「良かった…」
改めてアリアの生死を確認して、自然と口から溢れた言葉。
よほど彼女が大切なのだと、まるで他人事のように思う。
「Vちゃん…!?目覚めたかァ!良かったぜ!」
「…グリフォン、シャドウ」
同じく聞き慣れた声にアリアから視線を外せば、いつもの二人が、少し距離を置いて並んでいた。
そうして、寝室として使っていた書斎にいることに、ここでようやく気づいた。
「あれから何日経った?」
「ンー、二日?とりあえず、倒れてから夜が来て、また夜が来て、今昼な!」
それなりに時間が経ってしまったようだ。
まぁ、そうだな。後悔はない。
俺には彼女ひとり守る力くらい残っている。
自分の行動が起こした彼女の危機を、自分で回避できた。
再びアリアの寝顔に視線をやると、グリフォンが俺の傍まで飛来し留まった。
「V!いい加減、覚悟、できただろ?」
「覚悟…?」
「とぼけんなよォ!アリアを愛する覚悟だよ!」
「そうだな…」
アリアのことは嫌ってはいない。
結果見殺しにせず、俺は彼女を助けに戻った。
生きていて安堵もした。
これは、愛なのか。
愛、だとして…。
彼女は、俺が避けて逃げ出すようにここを去ったことを許してくれるだろうか。
それに、またここにいたいと言ったら歓迎してくれるだろうか。
この先別れることは決まっているというのに。
俺の考えていることを読む技術でも身につけたのか、グリフォンはまた嘴を開いた。
「アリアはお前のことが好きだって気づいたぜ。今までだって、ずっと心配してお前のこと見守ってた」
「そうか…」
アリアに全部、思ったそのまま言おう。
それで、彼女の気持ちも全部聞いてやる。
こんな考えになるなんて、予想もしていなかった。
俺が口角を上げて彼女の髪に触れようとした時、そのまぶたがぴくりと動いて確かに目が合ってしまった。
「…V…!?良かった!目が覚めたんだね!」
勢いよく身を起こしたアリアが大声を出して、俺に顔を寄せ、そして何故かすぐに反らす。
「ごめん!今近づき過ぎた…!」
謝罪理由が謎すぎる。
しかし、アリアの態度がここを出て行った時が嘘のように、変わらずにいることが嬉しい。
それを言葉よりも行動に移してしまい、気づいたら、アリアの身体を両腕で包んでいた。
「え!?…V…?」
胸の中で困惑する彼女をそのままに、俺は瞳を閉じてその暖かさを感じる。
アリアは声は上擦らせるが、身体は強張らせたままだ。
「ヤダ、Vちゃん!いきなり大胆…!」
真横にいるグリフォンも少々うるさいが、そんなことはどうでも良かった。
「アリア…お前が許すなら、ここにいたいと今強く思う。最後、まで」
ようやく彼女に、何も包まない、本当の気持ちを初めて言えたような気がする。
彼女の身体をかき抱けば、アリアの腕がゆっくり背中に回されるのがわかった。
「…これが、俺の心からの言葉だ」
彼女が、ぎゅっと力を込めて俺を抱き締める。
何も言われなくても、アリアが受け入れてくれたのを感じる。
「…V…っ…一緒にいて、いいんだね…?」
やがて、声と身体を震わせながら聞いてくるので、腕を緩めて彼女の顔を確認した。
案の定細めた瞳から涙を零しているので、左手でそっと拭ってやる。
「一緒にいると決めた。だから…今はそんなに悲しむな」
「違う…!嬉しいの…!」
「そうか…ありがとう…アリア」
こんな気持ちは、初めてだ。
残された時間、僅かばかりでも彼女と俺自身のために使おう。
この瞬間が未来に繋がるっていくと、信じて。
End.
気づいたら、勝手にグリフォンを寄越していた。
アリアが死ぬかと思ったら、なんだか怖かった。
その感情は瞬間的でとても強く、ただ助けようという気持ちだけで動いていた。
それ以外には何もなく、その感情ひとつだけ。
そんなことはもしかしたら初めてかもしれない。
たかが人間の女ひとり失うことを、俺は恐怖している。
こんなにも俺に懐いた彼女を失うのが嫌、らしい。
俺は今まで、俺自身のことばかり考えていた。
楽しい記憶、美しい記憶、今更手にして何になる?
それが充実していればいるほど、失った時辛い。
俺はそれを知っている。
だから、もういいんだ。
もう、これ以上いらない。
いらないというのに。
アリアを無事救うことができて、心の底から安心している自分がいた。
俺は彼女をこの街に、再びひとり残したのだ。
命の危険があると自分自身が嫌というほど理解しているのに。
その事実に、改めて気づいた。
「V…!ありがとう、助けてくれて」
いつぶりかの、アリアの素直な笑顔。
それは俺だけに向けられている。
それだけで、胸が暖かくなるのを感じた。
こんなに幸せな感情が、あるのだ。
できるなら、もっと彼女の笑顔を見ていたい。
1ヶ月と言わず、ずっと。
そうだ…これが、俺の本心。
「終わりが決まってても、その思い出が消えることはねェんだぜ」
ふと、グリフォンの言葉が思い出された。
もしこの瞬間がお互いにとって、永遠に残る優しい記憶になるのなら。
俺は、許されるまでここにいよう。
ここに、いたい。
目覚めたら、太陽なのか部屋の明かりなのかが瞳に眩しく、思わず右手で顔を隠した。
あれから、どれくらい経ったのだろう。
この脆い身体で少し無理をしてしまったなと、今更思った。
いや、だが、まだ実態はある。
ふと自身の左側に視線をやれば、もう見慣れている髪色に気づく。
身を起こしたらやはり思った通りに、アリアが丸まって眠っていた。
「良かった…」
改めてアリアの生死を確認して、自然と口から溢れた言葉。
よほど彼女が大切なのだと、まるで他人事のように思う。
「Vちゃん…!?目覚めたかァ!良かったぜ!」
「…グリフォン、シャドウ」
同じく聞き慣れた声にアリアから視線を外せば、いつもの二人が、少し距離を置いて並んでいた。
そうして、寝室として使っていた書斎にいることに、ここでようやく気づいた。
「あれから何日経った?」
「ンー、二日?とりあえず、倒れてから夜が来て、また夜が来て、今昼な!」
それなりに時間が経ってしまったようだ。
まぁ、そうだな。後悔はない。
俺には彼女ひとり守る力くらい残っている。
自分の行動が起こした彼女の危機を、自分で回避できた。
再びアリアの寝顔に視線をやると、グリフォンが俺の傍まで飛来し留まった。
「V!いい加減、覚悟、できただろ?」
「覚悟…?」
「とぼけんなよォ!アリアを愛する覚悟だよ!」
「そうだな…」
アリアのことは嫌ってはいない。
結果見殺しにせず、俺は彼女を助けに戻った。
生きていて安堵もした。
これは、愛なのか。
愛、だとして…。
彼女は、俺が避けて逃げ出すようにここを去ったことを許してくれるだろうか。
それに、またここにいたいと言ったら歓迎してくれるだろうか。
この先別れることは決まっているというのに。
俺の考えていることを読む技術でも身につけたのか、グリフォンはまた嘴を開いた。
「アリアはお前のことが好きだって気づいたぜ。今までだって、ずっと心配してお前のこと見守ってた」
「そうか…」
アリアに全部、思ったそのまま言おう。
それで、彼女の気持ちも全部聞いてやる。
こんな考えになるなんて、予想もしていなかった。
俺が口角を上げて彼女の髪に触れようとした時、そのまぶたがぴくりと動いて確かに目が合ってしまった。
「…V…!?良かった!目が覚めたんだね!」
勢いよく身を起こしたアリアが大声を出して、俺に顔を寄せ、そして何故かすぐに反らす。
「ごめん!今近づき過ぎた…!」
謝罪理由が謎すぎる。
しかし、アリアの態度がここを出て行った時が嘘のように、変わらずにいることが嬉しい。
それを言葉よりも行動に移してしまい、気づいたら、アリアの身体を両腕で包んでいた。
「え!?…V…?」
胸の中で困惑する彼女をそのままに、俺は瞳を閉じてその暖かさを感じる。
アリアは声は上擦らせるが、身体は強張らせたままだ。
「ヤダ、Vちゃん!いきなり大胆…!」
真横にいるグリフォンも少々うるさいが、そんなことはどうでも良かった。
「アリア…お前が許すなら、ここにいたいと今強く思う。最後、まで」
ようやく彼女に、何も包まない、本当の気持ちを初めて言えたような気がする。
彼女の身体をかき抱けば、アリアの腕がゆっくり背中に回されるのがわかった。
「…これが、俺の心からの言葉だ」
彼女が、ぎゅっと力を込めて俺を抱き締める。
何も言われなくても、アリアが受け入れてくれたのを感じる。
「…V…っ…一緒にいて、いいんだね…?」
やがて、声と身体を震わせながら聞いてくるので、腕を緩めて彼女の顔を確認した。
案の定細めた瞳から涙を零しているので、左手でそっと拭ってやる。
「一緒にいると決めた。だから…今はそんなに悲しむな」
「違う…!嬉しいの…!」
「そうか…ありがとう…アリア」
こんな気持ちは、初めてだ。
残された時間、僅かばかりでも彼女と俺自身のために使おう。
この瞬間が未来に繋がるっていくと、信じて。
End.