Charlotte
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テメンニグルの件で破壊された街は、少しずつ復興し始めている。
一時期ニュースでトップを飾っていたそれも、まるで夢のことのように埋もれていく。
勿論現実に起こったことで、たくさんのひとを恐怖に陥れ亡くなったひともいる。
それは忘れてはいけないことで、2度と繰り返してはいけないことだ。
その元凶をもたらした彼は少しずつ、自分の置かれた状況を受け入れ、心を開きつつあった。
エリは目覚まし時計の音で定時の朝6時に起き、キッチンへ向かう。
最近3人分になった食事の支度に苦痛ではなく喜びを感じながら、パステルピンクのエプロンを身につけた。
バージルも体調が良くなったし、今日の朝食はパンケーキにしよう。
エリが材料を準備していると、誰かの足音が聞こえてくる。
ダンテにしては起きるのが早いし、あとこの事務所にいるのはひとりしかいないはず。
「バージル!」
キッチンに顔を見せたのは、ずっと部屋に籠もっていた双子の兄だった。
初めて自分たちと交流をもとうとしてくれたのが嬉しくて、エリは思わず手を止めた。
「どうしたの?今日は」
「ベッドの上はそろそろ退屈だったからな」
「そ、そっか。ありがとう、バージル」
言葉に乗せた理由がバージルらしくて吹き出しそうになるが、きっと不快にさせるから我慢する。
あまり感情の起伏がない表情も、今はもう怖くない。
「もうすぐご飯できるから待っててね」
そう伝えればすぐに下がると思っていたバージルは、何故かずっとエリの手元を見て、腕を組む。
まるで監視されているようだったが、朝食の準備を再開した。
不思議な沈黙にエリの心臓がどきどきし出した頃、彼は口を開いた。
「食事は全部お前が作っているのか?」
「うん、パンとかは買っちゃうけど」
「そうか」
その後もバージルの視線はずっと手元に付いて来て、どうにもやりにくい中で黙々料理を続ける。
バージルが興味持ってくれるのはすごく嬉しいが、正直準備の邪魔だった。
「…慣れたものだな」
「なんかずっと見られてると緊張しちゃう」
「ああ、すまん」
それで初めてバージルは引き下がった。
彼がキッチンから姿を消して、エリはひとつ深呼吸する。
肩の力が抜けた。
なんだろう、今の。
バージルが普通に傍に来てくれるのは嬉しいのに、無言で立っていられるとものすごく気まずい。
内心大騒ぎしながら、なんとか朝食が完成し、テーブルに運ぼうとする。
が、今までダンテと2人で囲んでいたので、バージルも加えてどこに配置したらいいかわからない。
とりあえず、それはダンテとバージルが揃ってから決めよう。
「バージル!お待たせ」
バージルはソファに足を組んで座り肘をついて、ぼんやりとテレビを見ていた。
ニュース番組だ。
内容はテメンニグルによって崩壊した街が再建しつつあるというものだった。
気にしてるのかなと思うと、スイッチを切ってバージルがエリを見る。
「ああ」
端的な返事で表情は相変わらずなかったが、何か考えているようにエリには思えた。
やっぱり気にしてるのかな…。
ちょうどその時、ドアの開く音がしてダンテが欠伸しながら現れる。
いつもの少し遅い起床だった。
「エリ、おはよ」
「ダンテ!おはよう」
エリが挨拶を返した後、ダンテとバージル、それぞればっちりと視線が合う。
テメンニグルで戦った以来の顔合わせだ。
「…あんた引き籠もりは卒業したのか」
「まぁな」
それで会話が終了してしまう。
もう少しにこやかにしてもいいのになと思ったが、一応殺し合いまでしたのだからこれで済んで良かったかもとも思った。
エリは2人を取り持ちながら、リビングテーブルへと案内する。
「バージルはどこで食べる?」
今まではダンテと2人だったので向かい合って食事していた。
バージルの顔を見ると何も反応を示さず、代わりにダンテが指差した。
「エリが真ん中」
「珍しくお前に同意する」
「えっ私が真ん中でいいの?」
バージルが即答で賛同したので、そんなに単純に決めてしまっていいものかと、2人の顔をそれぞれ見る。
「てか、エリ以外真ん中はありえない」
「そうだな。こいつと隣はありえない」
仲がいいのか悪いのか、2人の意見は理由はどうあれ一致した。
「…わかった、ご飯にしよう!」
エリは、ダンテを右、バージルを左、自分の分を真ん中にしてお皿を並べ始める。
再会して、3人で初めて囲む朝食。
少し胸がどきどきする。
席につくと、ダンテがバージルに言う。
「言っとくがエリの飯は世界一うまいぜ」
「ダンテそれは言い過ぎだよ」
「そんなことねぇって」
世界一なんて随分大袈裟だなと勿論バージルは思った。
確かに、今まで部屋に運んでもらった料理は全部口に合ったし、正直うまかった。
全部エリが作っていると知って感心もした。
だが、手作りの料理なんてそこら辺りの一般家庭にはありふれている。
バージルは2人が楽しそうに会話している中、ひとりパンケーキを口にした。
こんな子どものような食事、何年ぶりだろう。
一瞬脳内に、かつて家族で囲んだ風景が広がった。
ずっとずっと忘れていたが、そんな時も確かにあった。
そうして、ダンテが世界一だと言う理由をなんとなく理解し始める。
エリの料理は、懐かしい味、母親であるエヴァが作ってくれたものと同じ味がする。
血は繋がっていないとは言え、エリも家族のひとりだった。
彼女の中で、母親の味はずっと生きていた。
バージルは思わずフォークを持つ手を止めた。
「バージル、もしかして口に合わなかったかな…」
「いや、そうじゃない」
「そう?バージル好きなものとか教えてね」
「俺にも聞いてくれよ、エリ」
「ダンテには前聞いたじゃない」
ダンテもエリもずっとあの頃と同じ、甘えたのままだ。
だが、俺もなかなか…。
end.
一時期ニュースでトップを飾っていたそれも、まるで夢のことのように埋もれていく。
勿論現実に起こったことで、たくさんのひとを恐怖に陥れ亡くなったひともいる。
それは忘れてはいけないことで、2度と繰り返してはいけないことだ。
その元凶をもたらした彼は少しずつ、自分の置かれた状況を受け入れ、心を開きつつあった。
エリは目覚まし時計の音で定時の朝6時に起き、キッチンへ向かう。
最近3人分になった食事の支度に苦痛ではなく喜びを感じながら、パステルピンクのエプロンを身につけた。
バージルも体調が良くなったし、今日の朝食はパンケーキにしよう。
エリが材料を準備していると、誰かの足音が聞こえてくる。
ダンテにしては起きるのが早いし、あとこの事務所にいるのはひとりしかいないはず。
「バージル!」
キッチンに顔を見せたのは、ずっと部屋に籠もっていた双子の兄だった。
初めて自分たちと交流をもとうとしてくれたのが嬉しくて、エリは思わず手を止めた。
「どうしたの?今日は」
「ベッドの上はそろそろ退屈だったからな」
「そ、そっか。ありがとう、バージル」
言葉に乗せた理由がバージルらしくて吹き出しそうになるが、きっと不快にさせるから我慢する。
あまり感情の起伏がない表情も、今はもう怖くない。
「もうすぐご飯できるから待っててね」
そう伝えればすぐに下がると思っていたバージルは、何故かずっとエリの手元を見て、腕を組む。
まるで監視されているようだったが、朝食の準備を再開した。
不思議な沈黙にエリの心臓がどきどきし出した頃、彼は口を開いた。
「食事は全部お前が作っているのか?」
「うん、パンとかは買っちゃうけど」
「そうか」
その後もバージルの視線はずっと手元に付いて来て、どうにもやりにくい中で黙々料理を続ける。
バージルが興味持ってくれるのはすごく嬉しいが、正直準備の邪魔だった。
「…慣れたものだな」
「なんかずっと見られてると緊張しちゃう」
「ああ、すまん」
それで初めてバージルは引き下がった。
彼がキッチンから姿を消して、エリはひとつ深呼吸する。
肩の力が抜けた。
なんだろう、今の。
バージルが普通に傍に来てくれるのは嬉しいのに、無言で立っていられるとものすごく気まずい。
内心大騒ぎしながら、なんとか朝食が完成し、テーブルに運ぼうとする。
が、今までダンテと2人で囲んでいたので、バージルも加えてどこに配置したらいいかわからない。
とりあえず、それはダンテとバージルが揃ってから決めよう。
「バージル!お待たせ」
バージルはソファに足を組んで座り肘をついて、ぼんやりとテレビを見ていた。
ニュース番組だ。
内容はテメンニグルによって崩壊した街が再建しつつあるというものだった。
気にしてるのかなと思うと、スイッチを切ってバージルがエリを見る。
「ああ」
端的な返事で表情は相変わらずなかったが、何か考えているようにエリには思えた。
やっぱり気にしてるのかな…。
ちょうどその時、ドアの開く音がしてダンテが欠伸しながら現れる。
いつもの少し遅い起床だった。
「エリ、おはよ」
「ダンテ!おはよう」
エリが挨拶を返した後、ダンテとバージル、それぞればっちりと視線が合う。
テメンニグルで戦った以来の顔合わせだ。
「…あんた引き籠もりは卒業したのか」
「まぁな」
それで会話が終了してしまう。
もう少しにこやかにしてもいいのになと思ったが、一応殺し合いまでしたのだからこれで済んで良かったかもとも思った。
エリは2人を取り持ちながら、リビングテーブルへと案内する。
「バージルはどこで食べる?」
今まではダンテと2人だったので向かい合って食事していた。
バージルの顔を見ると何も反応を示さず、代わりにダンテが指差した。
「エリが真ん中」
「珍しくお前に同意する」
「えっ私が真ん中でいいの?」
バージルが即答で賛同したので、そんなに単純に決めてしまっていいものかと、2人の顔をそれぞれ見る。
「てか、エリ以外真ん中はありえない」
「そうだな。こいつと隣はありえない」
仲がいいのか悪いのか、2人の意見は理由はどうあれ一致した。
「…わかった、ご飯にしよう!」
エリは、ダンテを右、バージルを左、自分の分を真ん中にしてお皿を並べ始める。
再会して、3人で初めて囲む朝食。
少し胸がどきどきする。
席につくと、ダンテがバージルに言う。
「言っとくがエリの飯は世界一うまいぜ」
「ダンテそれは言い過ぎだよ」
「そんなことねぇって」
世界一なんて随分大袈裟だなと勿論バージルは思った。
確かに、今まで部屋に運んでもらった料理は全部口に合ったし、正直うまかった。
全部エリが作っていると知って感心もした。
だが、手作りの料理なんてそこら辺りの一般家庭にはありふれている。
バージルは2人が楽しそうに会話している中、ひとりパンケーキを口にした。
こんな子どものような食事、何年ぶりだろう。
一瞬脳内に、かつて家族で囲んだ風景が広がった。
ずっとずっと忘れていたが、そんな時も確かにあった。
そうして、ダンテが世界一だと言う理由をなんとなく理解し始める。
エリの料理は、懐かしい味、母親であるエヴァが作ってくれたものと同じ味がする。
血は繋がっていないとは言え、エリも家族のひとりだった。
彼女の中で、母親の味はずっと生きていた。
バージルは思わずフォークを持つ手を止めた。
「バージル、もしかして口に合わなかったかな…」
「いや、そうじゃない」
「そう?バージル好きなものとか教えてね」
「俺にも聞いてくれよ、エリ」
「ダンテには前聞いたじゃない」
ダンテもエリもずっとあの頃と同じ、甘えたのままだ。
だが、俺もなかなか…。
end.