Dark Chocolate
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「Devil May Cry?」
「あ、ダンテ!久しぶり!」
電話の声を聞いて、俺は年甲斐もなく心臓が高鳴るのを感じた。
世界で1番聞いていたかったのに、1番聞きたくない声だった。
「久しぶり…元気してるか?」
「うん!それなりにね」
それなりに、ね。
俺以外の誰かと、どこかでよろしくやってるんだろ?
お前には幸せでいてほしいと思うけど、もう俺はお前に会う自信さえない。
「ダンテはどう?」
「俺は相変わらずだぜ。悪魔が現れたらぼこぼこにしてる」
「そうなんだ、やっぱりダンテはヒーローみたいだね」
ヒーロー「みたい」か。
俺は他の誰でもない、お前のヒーローになりたかったよ。
これ以上話していたらどんどん女々しくなりそうだったので、もらった早々に電話を切る方向に話をすることにした。
「もういいだろ。じゃあ…」
切るぞ、という台詞は言えなかった。
何故なら、すぐに被せて質問が来たからだ。
「ダンテ…今度は、私に会ってくれる?」
お前な。
会える訳がないだろう。
俺は、お前があの男を紹介する時でさえ行きたくなかったってのに。
俺以外の誰かと幸せになるお前の姿なんて、見たくなかったのに。
「わりぃ、エリ。これからデカイ仕事があるんだ。多分行けない」
「そう…わかった…またね、ダンテ」
「ああ、じゃあな…」
エリは俺が断ると、あからさまに声のトーンが低くなった。
俺だって、本当はお前に会いたい。
受話器を置くと、若い頃の記憶が蘇ってきた。
それこそ、バージルとテメンニグルでやり合う前まで。
エリが、学校を卒業する直前まで。
あいつは、卒業後は学校近くの会社で事務員をすると言っていた。
「そうか。おめでとう、エリ」
「ありがとう、ダンテ!」
いつものように花のように微笑むエリに、俺は自分の笑顔が引きつっているのに、気づいていた。
エリがひとりで働く。
それはつまり、俺の助けは実質必要なくなるってことだ。
俺とエリは血は繋がっていないが、兄妹だ。
じゃあ、俺がエリに女として好きだと、唐突に言えるか?
答えはNOだ。
頭がおかしいと思われて、絶交されるかもしれない。
俺はエリの選択をそのまま受け入れた。
今思えばここで、エリを抱き締めて好きだと言っていたら、少なくともこんな歳になるまでこの想いは抱えていなかっただろう。
エリが社会に出てしばらくして、あいつは事務所に電話をかけてきた。
「ダンテ、会ってほしいひとがいるの」
心臓が止まるかと思った。
俺はどれだけタフな悪魔と戦ってもどうとも思わなかったが、この時ばかりは大げさじゃなく死ぬかと思った。
ああ、馬鹿だよな。
他のどうでもいい女は口説けて、1番の本命を落とせなきゃ意味がないんだよ。
この時どうやって返事したかわからないが、俺は精一杯エリの兄の「ふり」をした。
相手の男を前にして、それこそぶちのめしてやりたかったけど、大好きなエリのためを思って必死に耐えた。
俺はお前が笑っていればいいと思ったが、それは思い違いだった。
俺の前で笑ってくれないと意味がない。
だけどあの時勇気がなかった俺には、お前との未来は全て断ち切れた。
「ああ…エリ。今でも、こんなにも愛してるよ」
俺の独り言は、事務所の中に消えた。
エリに言ったデカイ仕事は嘘だったんだが、少ししたらそれは現実のものになってしまった。
end.