出会いと戦いの始まり
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「え、後継者の試験!?」
幻海おばあちゃんの声に、あたしは思わず声をあげた。
「聞いてないっ!」
「そりゃ、今言ったからね。今度の日曜日に、ここに候補者たちがたんと集まるから、あんたにも手伝ってもらうよ」
狼狽するあたしにおかまいなく、おばあちゃんはお茶をすすりながらしれっと応える。
「おばあちゃん、霊光波動拳を使いたくて狙ってる妖怪がたんまりいるんだよ。試験なんかやって、たちの悪い妖怪が紛れこんできたらどうするのよ?」
「そんときはそんときさ。そもそも、あんたがあたしの後を継いでくれりゃ、こんなことしなくたっていいんだ。けど、あんたにその気はなさそうだからね」
「それは…」
おばあちゃんに厳しいところを突っ込まれて、あたしは返す言葉を失ってしまった。
「とにかく、今度の日曜日、ここに後継者の候補を集めるからね。覚悟しときな」
*
「…って、どうしてあたしがこんなことしないといけないのよ」
おばあちゃんから、試験に使うとかで大量のくじ引き用のくじ作りを押し付けられ、あたしは部屋でひたすら紙を切ってくじを作る羽目になった。
「は~、いつ終わるんだか…てか、おばあちゃん、何人試験をする気なんだか…」
ため息をつきながら、ふと机の上に目をやる。
小さいころに亡くなった母の写真が飾ってある。
(お母さん…あたし、霊光波動拳使えるようになったよ。でも…ごめん。おばあちゃんの後継者にはなれない)
物心ついたとき、すでに父親はあたしのそばにいなかった。だから、あたしは父親の顔を知らない。
幻海おばあちゃんの弟子だった母親はあたしを育てながら、おばあちゃんのもとで修業を続けていたけれど、あたしが小さい頃に死んでしまった。
天涯孤独になったあたしを、幻海おばあちゃんが引き取り、自分の養女として育ててくれた。
引き取られたときから、おばあちゃんは、「自分の身は自分で守れるようになりな」という言葉とともに、あたしに武術と霊光波動拳の手ほどきをはじめた。
つらかったけれど、決して修行も嫌いじゃなかった。身体を動かし、精神統一することで自分が磨かれていくのがうれしかった。
そして、修行のときは容赦なくおっかないけれど、毒舌はきながらもなんだかんだでやさしいおばあちゃんのことは大好きだった。
ただ、おばあちゃんの後継者になることはできなかった。
おばあちゃんの一番弟子だったお母さんは、本来霊光波動拳を継承するはずだった。けれど、お母さんは受け継ぐ前にこの世の人ではなくなってしまった。
本来なら、お母さんのその志をあたしが引き継ぐべきだったのかもしれない。
でも、できなかった。
霊光波動拳を継承したら、しなくてはならないこと。それは、奥義を守ることだ。
霊光波動拳をのどから手が出るほど欲しがっている妖怪や人間たちとの戦いに人生を費やすことになってしまう。
そんなの嫌。
普通に生活して、普通に結婚して、普通の人生を送りたい。
そんな夢が捨てきれず、あたしは自分が継ぐとはどうしても言い出せなかった。
自分がそんな平凡な人生を送れる自信は正直ないのだけれど…ね。
ため息をつきながら、窓の外を見上げる。
(霧が出てる…もしかしたら、不吉な妖怪がこっちに来ているのかも…後継者試験、無事に終わるといいんだけど)
幻海おばあちゃんの声に、あたしは思わず声をあげた。
「聞いてないっ!」
「そりゃ、今言ったからね。今度の日曜日に、ここに候補者たちがたんと集まるから、あんたにも手伝ってもらうよ」
狼狽するあたしにおかまいなく、おばあちゃんはお茶をすすりながらしれっと応える。
「おばあちゃん、霊光波動拳を使いたくて狙ってる妖怪がたんまりいるんだよ。試験なんかやって、たちの悪い妖怪が紛れこんできたらどうするのよ?」
「そんときはそんときさ。そもそも、あんたがあたしの後を継いでくれりゃ、こんなことしなくたっていいんだ。けど、あんたにその気はなさそうだからね」
「それは…」
おばあちゃんに厳しいところを突っ込まれて、あたしは返す言葉を失ってしまった。
「とにかく、今度の日曜日、ここに後継者の候補を集めるからね。覚悟しときな」
*
「…って、どうしてあたしがこんなことしないといけないのよ」
おばあちゃんから、試験に使うとかで大量のくじ引き用のくじ作りを押し付けられ、あたしは部屋でひたすら紙を切ってくじを作る羽目になった。
「は~、いつ終わるんだか…てか、おばあちゃん、何人試験をする気なんだか…」
ため息をつきながら、ふと机の上に目をやる。
小さいころに亡くなった母の写真が飾ってある。
(お母さん…あたし、霊光波動拳使えるようになったよ。でも…ごめん。おばあちゃんの後継者にはなれない)
物心ついたとき、すでに父親はあたしのそばにいなかった。だから、あたしは父親の顔を知らない。
幻海おばあちゃんの弟子だった母親はあたしを育てながら、おばあちゃんのもとで修業を続けていたけれど、あたしが小さい頃に死んでしまった。
天涯孤独になったあたしを、幻海おばあちゃんが引き取り、自分の養女として育ててくれた。
引き取られたときから、おばあちゃんは、「自分の身は自分で守れるようになりな」という言葉とともに、あたしに武術と霊光波動拳の手ほどきをはじめた。
つらかったけれど、決して修行も嫌いじゃなかった。身体を動かし、精神統一することで自分が磨かれていくのがうれしかった。
そして、修行のときは容赦なくおっかないけれど、毒舌はきながらもなんだかんだでやさしいおばあちゃんのことは大好きだった。
ただ、おばあちゃんの後継者になることはできなかった。
おばあちゃんの一番弟子だったお母さんは、本来霊光波動拳を継承するはずだった。けれど、お母さんは受け継ぐ前にこの世の人ではなくなってしまった。
本来なら、お母さんのその志をあたしが引き継ぐべきだったのかもしれない。
でも、できなかった。
霊光波動拳を継承したら、しなくてはならないこと。それは、奥義を守ることだ。
霊光波動拳をのどから手が出るほど欲しがっている妖怪や人間たちとの戦いに人生を費やすことになってしまう。
そんなの嫌。
普通に生活して、普通に結婚して、普通の人生を送りたい。
そんな夢が捨てきれず、あたしは自分が継ぐとはどうしても言い出せなかった。
自分がそんな平凡な人生を送れる自信は正直ないのだけれど…ね。
ため息をつきながら、窓の外を見上げる。
(霧が出てる…もしかしたら、不吉な妖怪がこっちに来ているのかも…後継者試験、無事に終わるといいんだけど)