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コエンマから、免罪のための奉仕活動といわれて、稽古をつけることになった彼女。
出会ったときは、多少俺と飛影に警戒するそぶりを見せたけど、すぐに打ち解けた。
というよりも、むしろ踏み込んできた。飛影と俺の怪我を見抜いて、妖怪とバレるのもかまわず治癒の術を施してくれた。
飛影が痛そうだったし、同じ妖怪だからバレてもいいと思ったと屈託なく笑うかえでに、俺はつい自分の生い立ちを話してしまった。
自分と似ている気がしたから。
妖怪であることを隠して生きてきて、ときおりなんともいえない寂しさを覚えていたもの同士。
人間と融合してから、まさか同じ種類の孤独を抱えた相手に出会うことがあるとは思っていなかった。
だから、彼女と親しくなりたいとおもってしまった。
修行を始めると、体力も格闘力も並の人間より優れていて、俺と飛影に熱心に立ち向かってくる。
そのくせ、戦うとき、いつも俺たちを傷つけるのを躊躇し、俺や飛影の怪我を自分のことのように心配して、治癒を施そうとする。
最初は、『おせっかいな女だ』とぼやいていた飛影も、なんだかんだで大人しく治療を受けている。たぶん、彼女のことが気に入りつつあるのだと思う。
俺は俺で、ひたむきで優しいかえでが
眩しく思えていた。
最初の日に、女の子に一人で夜道を歩かせるわけにはいかないと家まで送っていき、以来、毎日一緒に帰るようになった。もちろん、心配だったからでもあるけど、むしろ俺が一緒に帰りたい気持ちがどんどん強くなっていったからだ。
人間界で俺が妖怪だと知ったうえで親しみを見せてくれたのは幽助と、そして彼女だったから。
かえでの前では、人間と妖怪の両方の自分のままでいられて、帰り道、学校のことや幽助の話をして彼女が驚いたり笑ったりしながら聞いてくれるのがうれしかった。
素顔を共有してくれる相手がいるのが、これほど心地いいなんて知らなかった。
だからこそ、俺は次第にコエンマの言っていたことが気にかかるようになった。
✳︎
『どうした、蔵馬。何かまだ言いたいことがあるのか』
かえでは台所で後片付けをしている。
俺は食事のあと寝てしまった幽助を布団まで運ぶと、庭にいる幻海師範のもとへ行った。
『師範、教えてください。かえでが妖怪と戦わないといけないというのは、どういうことなのか。彼女を狙う妖怪がいるんですか?』
『…それをお前が聞いてどうする』
幻海師範は、厳しい表情で答える。しかし、俺はひきさがるつもりはなかった。
『彼女を強くしてほしいとコエンマから命を受けました。その役目を負ったからには、彼女が戦うのがどんな奴なのか知っておきたい…!』
俺が食い下がると、幻海師範はため息をついた。どうやら少し話してくれる気になったらしい。
『かえでの父親が妖怪なのは、あんたももう知ってるんだろう。あの子の父はある妖怪に殺された』
…予想していたとおりだった。
『では、その妖怪がかえでのことも狙っていると?』
『あたしも断言はできないが、あの子の父親を殺したのは、かなり執念深いやつだったからね。娘がいるとわかったら、何か仕掛けてくる可能性がある。そして…』
そう言って師範は、山の先の方を向いた。
『最近、そいつに近い妖気が近づいてきている』
✳︎
幻海師範は、それ以上のことはあまり話さなかった。
ただ、かえでを強くしてほしいと、念押しして頼まれた。
俺はもちろんそれを承知し、そして、心に決めた。
彼女に何かあったら、俺が守る…と。
出会ったときは、多少俺と飛影に警戒するそぶりを見せたけど、すぐに打ち解けた。
というよりも、むしろ踏み込んできた。飛影と俺の怪我を見抜いて、妖怪とバレるのもかまわず治癒の術を施してくれた。
飛影が痛そうだったし、同じ妖怪だからバレてもいいと思ったと屈託なく笑うかえでに、俺はつい自分の生い立ちを話してしまった。
自分と似ている気がしたから。
妖怪であることを隠して生きてきて、ときおりなんともいえない寂しさを覚えていたもの同士。
人間と融合してから、まさか同じ種類の孤独を抱えた相手に出会うことがあるとは思っていなかった。
だから、彼女と親しくなりたいとおもってしまった。
修行を始めると、体力も格闘力も並の人間より優れていて、俺と飛影に熱心に立ち向かってくる。
そのくせ、戦うとき、いつも俺たちを傷つけるのを躊躇し、俺や飛影の怪我を自分のことのように心配して、治癒を施そうとする。
最初は、『おせっかいな女だ』とぼやいていた飛影も、なんだかんだで大人しく治療を受けている。たぶん、彼女のことが気に入りつつあるのだと思う。
俺は俺で、ひたむきで優しいかえでが
眩しく思えていた。
最初の日に、女の子に一人で夜道を歩かせるわけにはいかないと家まで送っていき、以来、毎日一緒に帰るようになった。もちろん、心配だったからでもあるけど、むしろ俺が一緒に帰りたい気持ちがどんどん強くなっていったからだ。
人間界で俺が妖怪だと知ったうえで親しみを見せてくれたのは幽助と、そして彼女だったから。
かえでの前では、人間と妖怪の両方の自分のままでいられて、帰り道、学校のことや幽助の話をして彼女が驚いたり笑ったりしながら聞いてくれるのがうれしかった。
素顔を共有してくれる相手がいるのが、これほど心地いいなんて知らなかった。
だからこそ、俺は次第にコエンマの言っていたことが気にかかるようになった。
✳︎
『どうした、蔵馬。何かまだ言いたいことがあるのか』
かえでは台所で後片付けをしている。
俺は食事のあと寝てしまった幽助を布団まで運ぶと、庭にいる幻海師範のもとへ行った。
『師範、教えてください。かえでが妖怪と戦わないといけないというのは、どういうことなのか。彼女を狙う妖怪がいるんですか?』
『…それをお前が聞いてどうする』
幻海師範は、厳しい表情で答える。しかし、俺はひきさがるつもりはなかった。
『彼女を強くしてほしいとコエンマから命を受けました。その役目を負ったからには、彼女が戦うのがどんな奴なのか知っておきたい…!』
俺が食い下がると、幻海師範はため息をついた。どうやら少し話してくれる気になったらしい。
『かえでの父親が妖怪なのは、あんたももう知ってるんだろう。あの子の父はある妖怪に殺された』
…予想していたとおりだった。
『では、その妖怪がかえでのことも狙っていると?』
『あたしも断言はできないが、あの子の父親を殺したのは、かなり執念深いやつだったからね。娘がいるとわかったら、何か仕掛けてくる可能性がある。そして…』
そう言って師範は、山の先の方を向いた。
『最近、そいつに近い妖気が近づいてきている』
✳︎
幻海師範は、それ以上のことはあまり話さなかった。
ただ、かえでを強くしてほしいと、念押しして頼まれた。
俺はもちろんそれを承知し、そして、心に決めた。
彼女に何かあったら、俺が守る…と。