湿地を散歩した後、あたしと蔵馬はおばあちゃんの畑で野菜を収穫し、夕飯の準備にとりかかった。

『よし、これでいいか』
お鍋の野菜の煮え加減を確かめるためにあたしが味見していると、隣でネギを切っていた蔵馬が近づいてきた。
『俺も味見させてもらえるかな』
『じゃ、一個だけね』
あたしは、スプーンでニンジンをすくって.スプーンごと渡そうとしたが…蔵馬がスプーンに顔を近づけてパクっとニンジンを食べてしまった。
『うん、いい感じですね』
ニンジンが美味しかったのか、蔵馬は満足そうな笑顔を見せたけど、あたしは内心ドキドキしていた。
だって…これってあたしが食べさせてあげたみたいで、まるでカップルか夫婦みたいじゃない？

『料理、上手なんですね。驚きました』
『ずっとおばあちゃんと二人暮らしで、ごはん作ってるから』
そう、何も好きこのんで料理できるようになったわけじゃない。人使いの荒いおばあちゃんに小さい頃からこきつかわれてきたので、家事も料理もいやでもできるようになってしまった。
『きっと、いいお嫁さんになれますよ』
こういうせりふをこの人はごく自然にどうして言うのだろう。
『早く…しなきゃ。そろそろ修行終えて帰ってくるだろうから』
あたしは恥ずかしくて、蔵馬に背を向けて、料理に戻る。
まあ…こうやって気になる男の子にほめてもらえるなら、こきつかったおばあちゃんにも少しは感謝かな。

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『いやあー、今日は豪華な飯だな！ありがてえ』
幽助くんは大喜びですき焼きをかっこんでいる。
そのそばで、おばあちゃんと蔵馬もすき焼きをつつき、あたしもみんなの給仕をしつつ、ごはんを食べる。

『蔵馬、おかわりは？』
『ああ、もらおうかな』
蔵馬のお茶碗をうけとり、ごはんをつぐ。
それを見ていた幽助くんが、にやっとした。
『よお、お前らずいぶん仲がよさげじゃねえか』
『それは…この一週間、ずっと稽古つけてもらったし』
幽助くんの言葉に、内心あたしは動揺したが、なんとか平静を装う。
『なかなか教えがいのある生徒でしたよ』
蔵馬は笑顔でこたえる。
そんな中、それまで黙って食事していたおばあちゃんが、口を開いた。
『かえで、蔵馬。食事が終わったら話がある』