半分人間の妖狐と半妖の少女
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蔵馬は、自分のことを話してくれた。
自分の正体は妖狐で魔界の盗賊だったこと。
昔、妖怪ハンターに襲われて深手を負い、人間界に逃亡して、ある女性のお腹の中の子どもに憑依したこと。
「ただ、実際は憑依というよりは、融合に近くてね。今の俺は妖狐・蔵馬であると同時に人間の南野秀一でもある」
最初は妖力が戻ったら、母親のもとから去るつもりだったけれど、今はお母さんを守っていきたいと思っていることも話してくれた。
自分と同じように妖怪の血が混ざっていて、人間として暮らしている人が他にもいたということに、あたしは驚いていた。そして、目の前にいる彼、蔵馬に不思議と親しみがわいた。
だから、つい話してしまった。これまで誰にも言わなかった自分の生い立ちのことを。
『あたしは、お父さんが妖怪なの』
妖怪の父も産んでくれた母もすでにいなくて、母親が幻海おばあちゃんの弟子だった縁で、おばあちゃんに引き取られたこと、これまでずっと霊光波動拳の修行をしてきたことなどを、あたしは打ち明けた。
『小さいときから修行を? なのに、君は幻海師範のあとは継がないの?』
怪訝そうな顔をする蔵馬。
『修行は嫌いじゃないわ。でも、霊光波動拳を継承はしたくない。だって…』
言いかけて、あたしははたと気がついて口をつぐんだ。
理由はもちろんあったけれど、それを妖怪である彼の前で言うのは、ちょっとためらいがあった。
ただ、蔵馬はあたしを見てすぐに察したみたいだった。
『そうか…妖怪と戦うことを、本当は望んでないんだね』
図星だった。
こんな身の上だから、妖怪と関わらずに生きていくのはたぶん無理だとはわかっている。ただ、それでもできるなら人間として生きていきたかった。そして、戦うこともできる限りは避けたかった。
『霊光波動拳を継承すれば、奥義を狙う妖怪たちと戦うことになる。でも、そんな人生を君はのぞんでいない。なんとなくわかるよ』
『わかるの? 会ったばかりなのに』
『会ったばかりの妖怪に治癒の術をかけるくらい優しいきみが、戦いを好むとは思えませんから』
笑顔でそう話す蔵馬に、あたしは恥ずかしくなりうつむいてしまった。なんというか、キザになりそうなセリフでもこの人は不思議と嫌味がない。
そんなあたしを見ていた蔵馬が、真面目な表情になる。
『ただ、幻海師範が妖怪と戦えるよう鍛えてくれと言ってるってことは…たぶん、君が妖怪と戦わざるを得ないときが近づいてるんだろうな』
『…そうだと思う』'
蔵馬の言葉にあたしもうなずく。
そして、気がつくと、あたしと蔵馬はおばあちゃんのマンションの前についていた。
『送ってくれてありがとう』
あたしは、マンション入り口の前で蔵馬に別れを告げる。
『それじゃ、明日も夕方に同じ場所で。明日からは本格的にいくから、覚悟しておいて』
蔵馬は笑顔でそう言うと去っていった。
あたしは、彼の背中を見送りながら、なんともいえない気持ちに浸っていたら。
会ったばかりの彼にいろいろ自分のことを明かしすぎてしまったかもしれない。
でも、蔵馬と話すのは楽しくて、そして一緒にいるのも楽しくて。
たぶん、あたしと彼は似ているのだ。
自分の半分が妖怪で、でもそれを隠して生きていて。それは自分でえらんだことだけど、ときどき、いきぐるしくて。
そんな微かな孤独をあたしも蔵馬も感じて生きてきた。
また、明日も彼に会える。
そう思うとちょっと嬉しかった。
自分の正体は妖狐で魔界の盗賊だったこと。
昔、妖怪ハンターに襲われて深手を負い、人間界に逃亡して、ある女性のお腹の中の子どもに憑依したこと。
「ただ、実際は憑依というよりは、融合に近くてね。今の俺は妖狐・蔵馬であると同時に人間の南野秀一でもある」
最初は妖力が戻ったら、母親のもとから去るつもりだったけれど、今はお母さんを守っていきたいと思っていることも話してくれた。
自分と同じように妖怪の血が混ざっていて、人間として暮らしている人が他にもいたということに、あたしは驚いていた。そして、目の前にいる彼、蔵馬に不思議と親しみがわいた。
だから、つい話してしまった。これまで誰にも言わなかった自分の生い立ちのことを。
『あたしは、お父さんが妖怪なの』
妖怪の父も産んでくれた母もすでにいなくて、母親が幻海おばあちゃんの弟子だった縁で、おばあちゃんに引き取られたこと、これまでずっと霊光波動拳の修行をしてきたことなどを、あたしは打ち明けた。
『小さいときから修行を? なのに、君は幻海師範のあとは継がないの?』
怪訝そうな顔をする蔵馬。
『修行は嫌いじゃないわ。でも、霊光波動拳を継承はしたくない。だって…』
言いかけて、あたしははたと気がついて口をつぐんだ。
理由はもちろんあったけれど、それを妖怪である彼の前で言うのは、ちょっとためらいがあった。
ただ、蔵馬はあたしを見てすぐに察したみたいだった。
『そうか…妖怪と戦うことを、本当は望んでないんだね』
図星だった。
こんな身の上だから、妖怪と関わらずに生きていくのはたぶん無理だとはわかっている。ただ、それでもできるなら人間として生きていきたかった。そして、戦うこともできる限りは避けたかった。
『霊光波動拳を継承すれば、奥義を狙う妖怪たちと戦うことになる。でも、そんな人生を君はのぞんでいない。なんとなくわかるよ』
『わかるの? 会ったばかりなのに』
『会ったばかりの妖怪に治癒の術をかけるくらい優しいきみが、戦いを好むとは思えませんから』
笑顔でそう話す蔵馬に、あたしは恥ずかしくなりうつむいてしまった。なんというか、キザになりそうなセリフでもこの人は不思議と嫌味がない。
そんなあたしを見ていた蔵馬が、真面目な表情になる。
『ただ、幻海師範が妖怪と戦えるよう鍛えてくれと言ってるってことは…たぶん、君が妖怪と戦わざるを得ないときが近づいてるんだろうな』
『…そうだと思う』'
蔵馬の言葉にあたしもうなずく。
そして、気がつくと、あたしと蔵馬はおばあちゃんのマンションの前についていた。
『送ってくれてありがとう』
あたしは、マンション入り口の前で蔵馬に別れを告げる。
『それじゃ、明日も夕方に同じ場所で。明日からは本格的にいくから、覚悟しておいて』
蔵馬は笑顔でそう言うと去っていった。
あたしは、彼の背中を見送りながら、なんともいえない気持ちに浸っていたら。
会ったばかりの彼にいろいろ自分のことを明かしすぎてしまったかもしれない。
でも、蔵馬と話すのは楽しくて、そして一緒にいるのも楽しくて。
たぶん、あたしと彼は似ているのだ。
自分の半分が妖怪で、でもそれを隠して生きていて。それは自分でえらんだことだけど、ときどき、いきぐるしくて。
そんな微かな孤独をあたしも蔵馬も感じて生きてきた。
また、明日も彼に会える。
そう思うとちょっと嬉しかった。