[Theme 02]4年目編
28
はっきり言って、状況は最悪だった。
女性との接触に恐怖を感じる状態は、はっきりとした原因が分からないままその後も続いていた。
移動の際は細心の注意を払い、私生活では極力外出を避けるようにすればある程度は回避できるけれど──どうしても避けられないものがあった。
ハリアーズでは本拠地で勝利した場合、出場選手たちがフィールドシートの観客とハイタッチをする慣習がある。
そして当然そこには、女性のファンもいる。
これまで何とも思っていなかったその瞬間にさえ、日に日に恐怖をおぼえるようになった。
最悪なのは、試合中もその瞬間が脳裏にチラついて、まるで自分のスイングができなくなっていることだった。
「おかえりなさい」
チームとしても黒星が続き、胸の奥で何かが痞えたような心持で帰宅すると、はるかは至っていつも通りに微笑んだ。
こんな時間にまだ起きている時点で、“いつも通り”でないのは明らかなのだけど。
「観てた…?」
「えっ」
何を、と言わずに尋ねても、瞳がうろうろと彷徨う。
「うん…やっぱり、藤野さん強いねえ」
相手投手を褒めたのは十中八九、凡退続きの瑛に気を遣ってのことだ。
筋金入りの野球バカのはるかが、本当の敗因を見抜けない訳がない。
だけど確かに、それをそのまま口にされたところで、今の瑛にはうまく受け止められないかもしれない。
きっとはるかももどかしいのだと、胸が痛んだ。
貴文が紹介してくれたカウンセラーは、とても優秀な人なのだろうと素直に思った。
決して踏み込み過ぎることはなく、相談者の話したいことを自然に引き出していくのが上手なのだと、姿勢や話しぶりから推測できた。
だけど瑛には、彼と話すことが、問題の解決に繋がるようにはどうしても思えなかった。
瑛自身には話したいこともなければ、何か大きなトラウマを抱えているわけでもなかったから。
小学4年生の夏の終わり、突然はるかを失ったあの時のことは、思い出す度に今でも胸が抉れるようだけど。
たったひとり、海の向こうですべてを失ったはるかに比べたら、なんてことないものだと思った。
はるかは瑛のもとへ帰ってきたけれど、はるかが失った家族は、もう二度と帰ってはこないのだから。
そしてその日、監督から告げられたその事実は、至極当然の結果だった。
ここまで必死で積み上げてきたものが、ぼろぼろと崩れ落ちていくような感覚。
車に乗り込んだまま、エンジンもかけずにしばらく呆然としていた。
もはや目の前の事実に、自分が何をどう感じているのかも分からない。
砂嵐のように雑然とした脳内で、浮かんだのはやはりはるかの顔だった。
悲しむだろうか。
それともやっぱり、やさしい笑顔を見せるんだろうか。
結局家に帰り付いたのは数時間後で、“その事実”は既に何らかの形ではるかの目に入っているだろう。
そうでなくとも、これから試合だというのに、“帰る”と連絡を入れた時点ですべてを察してしまうのかもしれない。
はるかの返事は“気をつけてね”と、ただそれだけだった。
玄関の扉を開けると、はるかがすぐそこに立っていた。
「おかえりなさい」
そう言って笑う顔は、瑛の想像通りだった。
無意識に手を伸ばして、抱き締める。
はるかの身体は少し冷えていて、はっとした。
「ずっとここにいたの…?」
「え…」
もう5月の終わりだというのに、風の冷たい日だった。
日の当たらない玄関は薄っすらと肌寒いほどだ。
瑛が連絡を入れてから、はるかはずっとここで待っていたんだろうか。
「はるか…ごめん…」
呟くように言う。返事はない。
「抹消に、なった。しばらく二軍に通う」
そこではじめて、鼻をすする音がした。
腕を緩めて顔を覗き込むと、はるかは今にも泣きだしそうな顔で、それでも決して涙は流さなかった。
星の瞳はゆらゆらと揺れて、零れ落ちそうなほどの涙をふくんでいるのに。
瑛はこの顔を、見たことがある。
あと一点、あとヒット一本だった。
リトルリーグに入団してから、はじめて臨んだ大会だった。
毎日転んでばかりで、泥だらけになりながら、ようやく掴んだレギュラー。
一つ上の大会へ進むための大事な一戦。
一点ビハインドの最終回、ツーアウトで打順が回ってきたのは瑛だった。
ランナー二、三塁。
三塁は俊足が自慢の選手だった。
彼ならそこそこの当たりでも、きっとホームに帰ってくれるだろう。
長打が出ればサヨナラだけど、そこまでは望まない。
せめて同点にさえ追いつければ。
あと一点、あとヒット一本。
そんな思いで打席に立った瑛は、ボール球に手を出し、あっさりと内野フライに打ち取られた。
当時の瑛は守備には苦戦しつつも、既にバッティングセンスは上級生を含めたチームメイトの中でも群を抜いていた。
普段なら、絶対にしないようなミスだった。
その時も、はるかはこんな顔で瑛を見つめていたのだ。
負けたチームメイトの誰よりも、最後のアウトをとられた瑛よりも、全身に悔しさを滲ませて。
星の瞳に、たっぷりと涙をためて。
それでも決して、その雫をこぼすことはなかった。
「だって…悔しいのは、瑛くんだから…!」
だから、自分が泣いてはいけないのだと。
幼い瑛はなんだそれ、なんて首を傾げるばかりだったけれど。
もう二度と、彼女の前で負けてはいけない。
子供ながらにそんなことを決意したように思う。
二度と負けない、なんてことは当然無理な話で。
だけどはるかにそんな顔をさせるようなプレーだけは、してこなかったと自負している。
──“こんな状態”になってしまう前までは。
「なあはるか、もう全部ぶちまけてくれ」
「え…?」
「最近の試合のこと、ボロクソに言ってくれよ」
「はい…!?」
涙をためたままの目を丸くするはるかを、くすりと笑って頬を撫でる。
「いいから。俺がそうして欲しいの」
「…ええと…」
一体何が飛び出してくることやら。
どう考えてもおそろしいのに、楽しみな気さえしてきた。
「全員守備練習をしろと思います」
「ブッ…」
「あと顔に覇気がない。あんな面構えで打てる気がしない」
躊躇いがちな声音の割に、言葉はナイフのように鋭利で、それがどうにもおかしかった。
「それから瑛くんは…」
「うん」
「今の状況なら、いったん二軍に行った方がいいと、思っていました…」
ぐさり、胸に刺さる言葉。
だけどやっぱりはるかは、瑛のことをよく見ている。
「前向きに捉えても、いいと思います。試合後のこととか気にせず、野球だけに集中できる環境が、今の瑛くんには必要だと思う」
「…マジで監督と同じこと言ってるわ」
「えええっ!?お、恐れ多い…ていうかもう既にだいぶ恐れ多い…瑛くんに…」
急にしおしおと俯いて、ぶつぶつと呟く。
そんなはるかを見ていると自然と頬が緩んで、肩の力が抜けた。
「はるかは、俺に遠慮なんかしなくていいよ」
「え、遠慮って…?」
「俺がプロになってから、試合の話全然しなくなっただろ」
「だって、できないよ…!」
顔を上げたはるかは、ひどく切ない表情を浮かべていた。
「もうずっと、わたしなんかじゃ想像できないような世界で、頑張ってる瑛くんに…勝手な口出しなんて、できない」
「想像できない世界、ねえ…」
「それに…家では気持ち切り替えて、リラックスしたいかなって…」
それは確かに、はるからしい発想だと思った。
彼女自身、旅先にわざわざ部屋着を持って行くくらいには、昔から“切り替え”をとても大事にしているのだから。
「…高校生の時、はじめて甲子園の話した時、覚えてる?」
「それは…うん。体育祭の日、だよね」
その日ははるかにとっても大切な日なのだろう、再び瞳が揺れた。
──瑛くんが戦っているのはどんな世界なんだろうって気になって、それから…
瑛にとってはまだ夢物語のようだったその場所のことを、高校2年生の彼女はそう語った。
──瑛くんが今してる練習の先に、あの場所があるんでしょう?もうとっくに、土俵の上でしょ
正直、圧倒されるばかりの言葉だった。
腹を括らせてくれたのもきっと、この言葉だった。
「俺は今のプロの世界も、あの頃の続きだと思ってるよ」
フィールドに足を踏み入れる度に噛み締めてきたその思いを口にした瞬間、星の瞳から涙があふれた。
「はるかと一緒に駆け抜けた、あの頃の続き。これからもずっとそうであって欲しいから──あの頃みたいに容赦なく、ケツ叩いて欲しい」
そう言って笑えば、堰を切ったように、はらはらと雫が流れた。
「つづき…」
「そう、続き。つってもまた一歩下がっちゃうんだけど…でも、絶対また這い上がって見せるから」
監督の、そしてはるかの言う通り、今回の二軍落ちは決してマイナスな意味だけではない。
どうにか解決の糸口を見つけて、また戻ってきて欲しいから。
きっとそういう思いが込められているのだと、今なら信じられた。
「…ふふ。わたし、そんなにずけずけ口出してたかなあ?」
はるかはまだ涙が止まらないまま、ふにゃりと笑った。
「結構言ってたぞ。“全打席ホームラン打て”だの、“オーバーワークやめて寝ろ”だの」
「なんかだいぶ、ニュアンスちがくない…?」
「あと、“打率5割超えてないと男として見れない”だっけ?」
「それはほんとに何!?」
「あー、そっか。あれはチカさんのハッタリか」
「千景君…?」
どういうことだ、とあたふたしているうちに、涙も引っ込んだようだ。
こんなに泣かせてしまうのは予想外だったけど、はるかはどこかすっきりしたような顔をしているから、伝えてよかったと思う。
はっきり言って、状況は最悪だった。
女性との接触に恐怖を感じる状態は、はっきりとした原因が分からないままその後も続いていた。
移動の際は細心の注意を払い、私生活では極力外出を避けるようにすればある程度は回避できるけれど──どうしても避けられないものがあった。
ハリアーズでは本拠地で勝利した場合、出場選手たちがフィールドシートの観客とハイタッチをする慣習がある。
そして当然そこには、女性のファンもいる。
これまで何とも思っていなかったその瞬間にさえ、日に日に恐怖をおぼえるようになった。
最悪なのは、試合中もその瞬間が脳裏にチラついて、まるで自分のスイングができなくなっていることだった。
「おかえりなさい」
チームとしても黒星が続き、胸の奥で何かが痞えたような心持で帰宅すると、はるかは至っていつも通りに微笑んだ。
こんな時間にまだ起きている時点で、“いつも通り”でないのは明らかなのだけど。
「観てた…?」
「えっ」
何を、と言わずに尋ねても、瞳がうろうろと彷徨う。
「うん…やっぱり、藤野さん強いねえ」
相手投手を褒めたのは十中八九、凡退続きの瑛に気を遣ってのことだ。
筋金入りの野球バカのはるかが、本当の敗因を見抜けない訳がない。
だけど確かに、それをそのまま口にされたところで、今の瑛にはうまく受け止められないかもしれない。
きっとはるかももどかしいのだと、胸が痛んだ。
貴文が紹介してくれたカウンセラーは、とても優秀な人なのだろうと素直に思った。
決して踏み込み過ぎることはなく、相談者の話したいことを自然に引き出していくのが上手なのだと、姿勢や話しぶりから推測できた。
だけど瑛には、彼と話すことが、問題の解決に繋がるようにはどうしても思えなかった。
瑛自身には話したいこともなければ、何か大きなトラウマを抱えているわけでもなかったから。
小学4年生の夏の終わり、突然はるかを失ったあの時のことは、思い出す度に今でも胸が抉れるようだけど。
たったひとり、海の向こうですべてを失ったはるかに比べたら、なんてことないものだと思った。
はるかは瑛のもとへ帰ってきたけれど、はるかが失った家族は、もう二度と帰ってはこないのだから。
そしてその日、監督から告げられたその事実は、至極当然の結果だった。
ここまで必死で積み上げてきたものが、ぼろぼろと崩れ落ちていくような感覚。
車に乗り込んだまま、エンジンもかけずにしばらく呆然としていた。
もはや目の前の事実に、自分が何をどう感じているのかも分からない。
砂嵐のように雑然とした脳内で、浮かんだのはやはりはるかの顔だった。
悲しむだろうか。
それともやっぱり、やさしい笑顔を見せるんだろうか。
結局家に帰り付いたのは数時間後で、“その事実”は既に何らかの形ではるかの目に入っているだろう。
そうでなくとも、これから試合だというのに、“帰る”と連絡を入れた時点ですべてを察してしまうのかもしれない。
はるかの返事は“気をつけてね”と、ただそれだけだった。
玄関の扉を開けると、はるかがすぐそこに立っていた。
「おかえりなさい」
そう言って笑う顔は、瑛の想像通りだった。
無意識に手を伸ばして、抱き締める。
はるかの身体は少し冷えていて、はっとした。
「ずっとここにいたの…?」
「え…」
もう5月の終わりだというのに、風の冷たい日だった。
日の当たらない玄関は薄っすらと肌寒いほどだ。
瑛が連絡を入れてから、はるかはずっとここで待っていたんだろうか。
「はるか…ごめん…」
呟くように言う。返事はない。
「抹消に、なった。しばらく二軍に通う」
そこではじめて、鼻をすする音がした。
腕を緩めて顔を覗き込むと、はるかは今にも泣きだしそうな顔で、それでも決して涙は流さなかった。
星の瞳はゆらゆらと揺れて、零れ落ちそうなほどの涙をふくんでいるのに。
瑛はこの顔を、見たことがある。
あと一点、あとヒット一本だった。
リトルリーグに入団してから、はじめて臨んだ大会だった。
毎日転んでばかりで、泥だらけになりながら、ようやく掴んだレギュラー。
一つ上の大会へ進むための大事な一戦。
一点ビハインドの最終回、ツーアウトで打順が回ってきたのは瑛だった。
ランナー二、三塁。
三塁は俊足が自慢の選手だった。
彼ならそこそこの当たりでも、きっとホームに帰ってくれるだろう。
長打が出ればサヨナラだけど、そこまでは望まない。
せめて同点にさえ追いつければ。
あと一点、あとヒット一本。
そんな思いで打席に立った瑛は、ボール球に手を出し、あっさりと内野フライに打ち取られた。
当時の瑛は守備には苦戦しつつも、既にバッティングセンスは上級生を含めたチームメイトの中でも群を抜いていた。
普段なら、絶対にしないようなミスだった。
その時も、はるかはこんな顔で瑛を見つめていたのだ。
負けたチームメイトの誰よりも、最後のアウトをとられた瑛よりも、全身に悔しさを滲ませて。
星の瞳に、たっぷりと涙をためて。
それでも決して、その雫をこぼすことはなかった。
「だって…悔しいのは、瑛くんだから…!」
だから、自分が泣いてはいけないのだと。
幼い瑛はなんだそれ、なんて首を傾げるばかりだったけれど。
もう二度と、彼女の前で負けてはいけない。
子供ながらにそんなことを決意したように思う。
二度と負けない、なんてことは当然無理な話で。
だけどはるかにそんな顔をさせるようなプレーだけは、してこなかったと自負している。
──“こんな状態”になってしまう前までは。
「なあはるか、もう全部ぶちまけてくれ」
「え…?」
「最近の試合のこと、ボロクソに言ってくれよ」
「はい…!?」
涙をためたままの目を丸くするはるかを、くすりと笑って頬を撫でる。
「いいから。俺がそうして欲しいの」
「…ええと…」
一体何が飛び出してくることやら。
どう考えてもおそろしいのに、楽しみな気さえしてきた。
「全員守備練習をしろと思います」
「ブッ…」
「あと顔に覇気がない。あんな面構えで打てる気がしない」
躊躇いがちな声音の割に、言葉はナイフのように鋭利で、それがどうにもおかしかった。
「それから瑛くんは…」
「うん」
「今の状況なら、いったん二軍に行った方がいいと、思っていました…」
ぐさり、胸に刺さる言葉。
だけどやっぱりはるかは、瑛のことをよく見ている。
「前向きに捉えても、いいと思います。試合後のこととか気にせず、野球だけに集中できる環境が、今の瑛くんには必要だと思う」
「…マジで監督と同じこと言ってるわ」
「えええっ!?お、恐れ多い…ていうかもう既にだいぶ恐れ多い…瑛くんに…」
急にしおしおと俯いて、ぶつぶつと呟く。
そんなはるかを見ていると自然と頬が緩んで、肩の力が抜けた。
「はるかは、俺に遠慮なんかしなくていいよ」
「え、遠慮って…?」
「俺がプロになってから、試合の話全然しなくなっただろ」
「だって、できないよ…!」
顔を上げたはるかは、ひどく切ない表情を浮かべていた。
「もうずっと、わたしなんかじゃ想像できないような世界で、頑張ってる瑛くんに…勝手な口出しなんて、できない」
「想像できない世界、ねえ…」
「それに…家では気持ち切り替えて、リラックスしたいかなって…」
それは確かに、はるからしい発想だと思った。
彼女自身、旅先にわざわざ部屋着を持って行くくらいには、昔から“切り替え”をとても大事にしているのだから。
「…高校生の時、はじめて甲子園の話した時、覚えてる?」
「それは…うん。体育祭の日、だよね」
その日ははるかにとっても大切な日なのだろう、再び瞳が揺れた。
──瑛くんが戦っているのはどんな世界なんだろうって気になって、それから…
瑛にとってはまだ夢物語のようだったその場所のことを、高校2年生の彼女はそう語った。
──瑛くんが今してる練習の先に、あの場所があるんでしょう?もうとっくに、土俵の上でしょ
正直、圧倒されるばかりの言葉だった。
腹を括らせてくれたのもきっと、この言葉だった。
「俺は今のプロの世界も、あの頃の続きだと思ってるよ」
フィールドに足を踏み入れる度に噛み締めてきたその思いを口にした瞬間、星の瞳から涙があふれた。
「はるかと一緒に駆け抜けた、あの頃の続き。これからもずっとそうであって欲しいから──あの頃みたいに容赦なく、ケツ叩いて欲しい」
そう言って笑えば、堰を切ったように、はらはらと雫が流れた。
「つづき…」
「そう、続き。つってもまた一歩下がっちゃうんだけど…でも、絶対また這い上がって見せるから」
監督の、そしてはるかの言う通り、今回の二軍落ちは決してマイナスな意味だけではない。
どうにか解決の糸口を見つけて、また戻ってきて欲しいから。
きっとそういう思いが込められているのだと、今なら信じられた。
「…ふふ。わたし、そんなにずけずけ口出してたかなあ?」
はるかはまだ涙が止まらないまま、ふにゃりと笑った。
「結構言ってたぞ。“全打席ホームラン打て”だの、“オーバーワークやめて寝ろ”だの」
「なんかだいぶ、ニュアンスちがくない…?」
「あと、“打率5割超えてないと男として見れない”だっけ?」
「それはほんとに何!?」
「あー、そっか。あれはチカさんのハッタリか」
「千景君…?」
どういうことだ、とあたふたしているうちに、涙も引っ込んだようだ。
こんなに泣かせてしまうのは予想外だったけど、はるかはどこかすっきりしたような顔をしているから、伝えてよかったと思う。
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【試合後のハイタッチ】一部の球団に存在するイベントで、特定の座席、チケットにそういった特典がついていたり、ファンクラブ会員の特典だったりするようです。ヒーローだけの場合もあります。
ちなみに筆者の贔屓は「ハイタッチの権利」つきのチケットを通年で販売していて、購入者は出場選手全員とハイタッチができます(サービス精神旺盛すぎて選手が心配…)。