[Theme 03]3年生編
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相手校の応援歌も、スタンドの歓声も一瞬で遠のく。
腕を伸ばし、躊躇わず黒土に飛び込んだ。
グラブトスで瑛に白球を託した瞬間、世界が再び動き始める。
一塁手のミットの音が、試合終了を告げた。
「今度は本物のグラブトスだな!」
「ありがとうございます」
「あのランナーだったからな、瑛の肩にも感謝だわ」
一打逆転、満塁のピンチを切り抜け掴んだ2回戦突破。
挨拶に駆け付けたチームを、初戦以上の歓声が出迎えた。
「月城さんは今日も内野席ですか?」
「ああ、現役生に遠慮してるらしい」
「それはまた…」
ベンチへと戻りながら、目を細める横顔。
わずかに頬を緩めたその表情にも、これまでとどこか違う印象を受けた。
長い夏だった。
昨年よりも一試合多く、あの場所で戦うことができた。
それでもたった2週間ほど、県大会を含めても2ヶ月にも満たない間の出来事を、これまでの高校生活よりもずっと長く感じていた。
「最後までパッとしない主将だったけど…ついてきてくれてありがとう」
そう言って頭を下げた直哉に、全員が拍手を送っていた。
「…お疲れ様でした?」
それだけ言って形だけの会釈をした瑛には、ブーイングの嵐だったけど。
「これで、満足ですか」
静かな夜のグラウンド。
去年と同じシチュエーション、だけど冬真の表情は去年とは違って見えた。
「なんだ急に」
「この夏、瑛先輩の目的は果たせたのかなと」
「目的か…さあな。それが分かるのはこれからだろ」
決して、ここで終わりじゃない。
やるべきことはこれからだって山積みだ。
「…僕はやっぱり、瑛先輩は結構な畜生だと思います」
「は!?何だお前、」
「でも…他人の運命も、自分の魂さえ平気で売り払ってしまえるほどに追い求めるものがあることを、羨ましくも思います」
それまでどこか難しい顔を浮かべていた冬真が、ふいに笑った。
「瑛先輩にはただの駒にしか思われていなくても…先輩と二遊間を守れて良かったです」
「な…」
「もっと言うと、もう少し長く一緒に野球をやりたかったです。魂売るほどじゃないですけど」
──先輩と、甲子園で二遊間を守ってみたいって思って、それで…
一体何をもってそんなふうに思ってくれたのかは、未だに謎のままだけど。
そもそも冬真の言動には謎が多いので、それが明らかになる日は来ないのかもしれない。
「これで終わりじゃねえだろ、お前も」
「え?」
「俺で笑いを取るんだろ?」
もう一度笑った冬真の目は、少しだけ揺れていた。
相手校の応援歌も、スタンドの歓声も一瞬で遠のく。
腕を伸ばし、躊躇わず黒土に飛び込んだ。
グラブトスで瑛に白球を託した瞬間、世界が再び動き始める。
一塁手のミットの音が、試合終了を告げた。
「今度は本物のグラブトスだな!」
「ありがとうございます」
「あのランナーだったからな、瑛の肩にも感謝だわ」
一打逆転、満塁のピンチを切り抜け掴んだ2回戦突破。
挨拶に駆け付けたチームを、初戦以上の歓声が出迎えた。
「月城さんは今日も内野席ですか?」
「ああ、現役生に遠慮してるらしい」
「それはまた…」
ベンチへと戻りながら、目を細める横顔。
わずかに頬を緩めたその表情にも、これまでとどこか違う印象を受けた。
長い夏だった。
昨年よりも一試合多く、あの場所で戦うことができた。
それでもたった2週間ほど、県大会を含めても2ヶ月にも満たない間の出来事を、これまでの高校生活よりもずっと長く感じていた。
「最後までパッとしない主将だったけど…ついてきてくれてありがとう」
そう言って頭を下げた直哉に、全員が拍手を送っていた。
「…お疲れ様でした?」
それだけ言って形だけの会釈をした瑛には、ブーイングの嵐だったけど。
「これで、満足ですか」
静かな夜のグラウンド。
去年と同じシチュエーション、だけど冬真の表情は去年とは違って見えた。
「なんだ急に」
「この夏、瑛先輩の目的は果たせたのかなと」
「目的か…さあな。それが分かるのはこれからだろ」
決して、ここで終わりじゃない。
やるべきことはこれからだって山積みだ。
「…僕はやっぱり、瑛先輩は結構な畜生だと思います」
「は!?何だお前、」
「でも…他人の運命も、自分の魂さえ平気で売り払ってしまえるほどに追い求めるものがあることを、羨ましくも思います」
それまでどこか難しい顔を浮かべていた冬真が、ふいに笑った。
「瑛先輩にはただの駒にしか思われていなくても…先輩と二遊間を守れて良かったです」
「な…」
「もっと言うと、もう少し長く一緒に野球をやりたかったです。魂売るほどじゃないですけど」
──先輩と、甲子園で二遊間を守ってみたいって思って、それで…
一体何をもってそんなふうに思ってくれたのかは、未だに謎のままだけど。
そもそも冬真の言動には謎が多いので、それが明らかになる日は来ないのかもしれない。
「これで終わりじゃねえだろ、お前も」
「え?」
「俺で笑いを取るんだろ?」
もう一度笑った冬真の目は、少しだけ揺れていた。