[Theme 02]2年生編
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「ねえじいさん、あのバイトの子って何者?マネージャーじゃないよね?」
目一杯背伸びをして見上げてきたあの瞳がなぜだか忘れられなくて、店長に尋ねた。
「マネージャーじゃないけど、野球が大好きだから応援してるそうですよ」
「へえ、それだけ?どうせ誰かと付き合ってんじゃないの?」
「さあ、それは知りませんけど…あんた今日学校は?」
面倒な質問は適当にあしらって、カウンターの奥に見えるホワイトボードに目を向ける。
かすれたインクで記された、“月城さんお休み”の文字。
“月城って誰の彼女?”
かつてのチームメイトに、メッセージを飛ばしてみた。
“そんなことを勝手に教えるわけがないだろう”
“お前の?”
“違う”
ちょうどスマートフォンを見ていたのか、案外すぐに得られた返答を見るに“誰かの彼女である”ということは当たりのようだ。
“余計なことはするなよ。あまり気の長いやつではない”
「アハ」
思わず笑いが漏れる。
──その一言こそ余計だったね。弱み教えてるようなもんじゃん。
目の前に並んだ顔ぶれを見て、なんとなく予想はついた。
最初に目についたのは、すらりとしていて中性的な顔立ちの男。この外見は明らかにモテそうだ。
しかし、引き締まった表情ながらもどこか余裕を感じさせる雰囲気は、どう見ても“気が短い”ようには見えなかった。
次に、目の前の男を見下ろす。
──こいつだな。
眼光鋭い、精悍な顔。
やけに不機嫌そうだが、たぶん元々こういう顔つきなのだろう。
少しでも気に障る言動をしたら殴りかかってきそうな危うさを滲ませている。
事前に入れていた情報によると2年生で、遊撃手としての技術は全国レベル。
こいつの守備範囲に飛ばしたらまず抜けられない。
チャンスに強く出塁率が高い。一発もある。
「あのエロい子の彼氏って、お前?」
その問いかけへの反応は、些か予想外だった。
別に揺さぶりでもなんでもない、興味本位の一言だったけれど。
もしかして読みが違ったか、なんて思ったりもした。
しかし、三遊間を抜けていくはずだった打球を掬い捕ったその瞬間、突き刺さった視線。
飛び出さなくてよかった、いや、飛び出せなかった。
──やっぱり、こいつだ。
分析した情報と自らの経験から、狙い球を突く拓真のバッティング。
そこから瑛が繋ぎ、今大会では初めてとなる、高峰が1点を追う状況での二度目の打席。
──決勝戦、楽しみにしています
それなら、このまま勢い付かせたんじゃつまらないよね?
背後でミットを構える、かつてのチームメイト。
中学生の頃から、投手の良さを活かすリードが巧みだった。
──情報と経験なら、こっちだって持ってるよ。
強豪・高峰のスコアに、順調に“0”を並べていたそのピッチングを、
砕く。
気持ち良いほど狙い通り。
大きく大きく放物線を描くその打球には、誰の手も届かない。
バックスクリーンを叩く音が、球場に響いた。
先に出塁していたチームメイトに続いて、ホームベースを踏む。
一振りで、追う者から追われる者へ。
──楽しませてあげなきゃね?
歓声の中、きっとどこかにいるであろう彼女に向けて、拳を突き上げた。
「ねえじいさん、あのバイトの子って何者?マネージャーじゃないよね?」
目一杯背伸びをして見上げてきたあの瞳がなぜだか忘れられなくて、店長に尋ねた。
「マネージャーじゃないけど、野球が大好きだから応援してるそうですよ」
「へえ、それだけ?どうせ誰かと付き合ってんじゃないの?」
「さあ、それは知りませんけど…あんた今日学校は?」
面倒な質問は適当にあしらって、カウンターの奥に見えるホワイトボードに目を向ける。
かすれたインクで記された、“月城さんお休み”の文字。
“月城って誰の彼女?”
かつてのチームメイトに、メッセージを飛ばしてみた。
“そんなことを勝手に教えるわけがないだろう”
“お前の?”
“違う”
ちょうどスマートフォンを見ていたのか、案外すぐに得られた返答を見るに“誰かの彼女である”ということは当たりのようだ。
“余計なことはするなよ。あまり気の長いやつではない”
「アハ」
思わず笑いが漏れる。
──その一言こそ余計だったね。弱み教えてるようなもんじゃん。
目の前に並んだ顔ぶれを見て、なんとなく予想はついた。
最初に目についたのは、すらりとしていて中性的な顔立ちの男。この外見は明らかにモテそうだ。
しかし、引き締まった表情ながらもどこか余裕を感じさせる雰囲気は、どう見ても“気が短い”ようには見えなかった。
次に、目の前の男を見下ろす。
──こいつだな。
眼光鋭い、精悍な顔。
やけに不機嫌そうだが、たぶん元々こういう顔つきなのだろう。
少しでも気に障る言動をしたら殴りかかってきそうな危うさを滲ませている。
事前に入れていた情報によると2年生で、遊撃手としての技術は全国レベル。
こいつの守備範囲に飛ばしたらまず抜けられない。
チャンスに強く出塁率が高い。一発もある。
「あのエロい子の彼氏って、お前?」
その問いかけへの反応は、些か予想外だった。
別に揺さぶりでもなんでもない、興味本位の一言だったけれど。
もしかして読みが違ったか、なんて思ったりもした。
しかし、三遊間を抜けていくはずだった打球を掬い捕ったその瞬間、突き刺さった視線。
飛び出さなくてよかった、いや、飛び出せなかった。
──やっぱり、こいつだ。
分析した情報と自らの経験から、狙い球を突く拓真のバッティング。
そこから瑛が繋ぎ、今大会では初めてとなる、高峰が1点を追う状況での二度目の打席。
──決勝戦、楽しみにしています
それなら、このまま勢い付かせたんじゃつまらないよね?
背後でミットを構える、かつてのチームメイト。
中学生の頃から、投手の良さを活かすリードが巧みだった。
──情報と経験なら、こっちだって持ってるよ。
強豪・高峰のスコアに、順調に“0”を並べていたそのピッチングを、
砕く。
気持ち良いほど狙い通り。
大きく大きく放物線を描くその打球には、誰の手も届かない。
バックスクリーンを叩く音が、球場に響いた。
先に出塁していたチームメイトに続いて、ホームベースを踏む。
一振りで、追う者から追われる者へ。
──楽しませてあげなきゃね?
歓声の中、きっとどこかにいるであろう彼女に向けて、拳を突き上げた。