[ad lib]番外編など
In A Mellow Tone [1]
朝練の後、朝食にしては量の多過ぎる食事をかき込んで、制服に着替えて校舎へ向かう。
放課後にまたいちいち着替えるのが面倒で、ワイシャツの下はアンダーシャツでいいんじゃないかと毎朝のように思うけれど、校則でアウトらしい。なんだその校則。
「おい!置いてくなって!」
背後からそんな憎まれ口を叩かれるのも、毎朝のこと。
この男と“教室まで一緒に行こう”などと気色の悪い約束をした覚えは一度もないし、今後も一生する気はない。
「なー、今日の単語テスト何ページだっけ?てか和訳やった?」
それでも正也は勝手に隣に並んで、これまた毎朝のように同じようなセリフを口にする。
この男がまともに小テストの勉強や課題を済ませているのを見たことがない。
適当に返事をしながら校舎に辿り着いて、くたびれた上履きに履き替える。
階段を昇れば、自分たちの教室はすぐそこだ。
後方窓際、席替えの度に争奪戦になる“当たり席”。
そこに腰を下ろすなりポケットからスマートフォンを取り出して、ネットニュースやSNSをなんとなく眺める。
それもまた、もはや癖のように染み付いたルーティーン。
すべてがあまりに“いつも通り”だった──これが夢だというには。
「どうせ夢なら、もっとこう…」
夢の中で、誰に聞こえていたってどうということはないので、思ったままに一人呟く。
するとふいに、みずみずしい花のような、爽やかな香りが通り過ぎて行った。
「おはよう、瑛くん」
ふんわりと笑う顔は、その香りから、今まさに思い浮かべたひとで。
「え…?」
驚いてしまったのは、彼女が2年生である自分の教室にいて、当たり前のように一つ前の席に腰を下ろしたからだ。
「高原君おはよう」
「おっす、月城おはよ!」
「は、おい!」
先輩であるはずの彼女を呼び捨てにする正也を咄嗟に咎めたけれど、正也も、そして彼女も、不思議そうな顔で振り返るだけだった。
──なるほど、そういう。
つまりこれは、“もしも月城 はるかが同い年だったら”という設定の夢だったらしい。
“同い年のはるか”が姿を現したのは、結構ギリギリの時間だった。
これが現実に忠実な描写なんだとしたら、かなり意外だ。
なんとなく、はるかは早めに席について、予習か読書でもしていそうなイメージだったから。
だけどそういえば、朝にはるかからメッセージが来ることは滅多にない。
ホームルームまでもう残り僅かな時間、はるかが手に取ったのは教科書でも文庫本でもなく、スマートフォンだった。
またしても意外、と肩越しに覗き込むと、画面には藤堂選手の写真がでかでかと表示されていた。
「おい」
「わっ!」
見られているとは思わなかったのだろう、はるかがぴくりと肩を震わせる。
何事かと振り向いた顔も、席が前後だとこんなにも近いのか。
「俺のことほったらかして何見てんだよ」
「え…?何って、昨日の逆転スリーランの写真上がってたから」
「テレビでも観たんだろ、どうせ」
「中継切れちゃったんだよー。社会人になったらサブスク入る!絶対!」
「別に今入ればいいだろ」
「ハリアーズに捧げるお金は自分で稼ぐと決めてますので!」
らんらんと瞳を輝かせて宣言するはるか。
間違いない、これは現実に忠実な描写だ──同い年であるという決定的な矛盾を覗いて──。
後ろの席から眺めるはるかは、常にしゃんと背筋が伸びていた。
頭も肩幅も背中も小さくて、後ろ姿だけ見れば小学生に間違われてもおかしくないのではないか。
さすがに言い過ぎだろうか。本人に言うと数日は口を聞いてもらえなくなりそうだ。
「瑛くん?」
「え」
失礼極まりないことを考えていたところに突然振り返られたので、どきりとした。
その手はプリントの束をこちらに差し出していて、どうやらこれを回してきていたようだ。
「…どーも」
プリントを受け取って、自分の分を引き抜いて後ろへ回す。
視線を向けるでもなく手の中から感覚が消えたので、はるかのように振り返ることはなかった。
まだこちらを向いたままだったはるかの顔。
ふ、とやわらかく微笑んだ。
鼓動が跳ねて、息を呑む。
次の瞬間にはゆっくりと、前を向いてしまった。
毛先まで艶やかな黒髪が、目の前でさらりと揺れる。
配布物を回される度にこんなイベントが巻き起こるというなら、はるかの後ろに座る者は無事ではいられないだろう。
現実でこのポジションについている存在を、じわじわと恨めしく思った。
ふと気付けば場面は体育館へと切り替わり、クラスメイトたちは皆体操服でバドミントンラケットを手にしていた。
はるかも例外ではなく、自分と同じ色のジャージ姿がどうにも見慣れない。
彼女はこれからダブルスの試合に臨むようで、瑛はそれをネット越しに眺めていた。
なんだかいつもと逆の立ち位置だ。
「いくよー」
相手コートのサーバーがひらりと手を挙げる。
レシーバーのはるかは、気合十分といった様子でラケットを構えている。
軽い音とともに放たれたシャトルが、ゆるゆるとはるかのもとへ向かう。
バドミントン部同士でラリーをしているコートからは恐ろしい音が聞こえてくるが、初心者がやるのとはもはや別のスポーツだなと見る度に思う。
速度のないサーブ。これなら誰でも返せるだろう。
はるかは舞い込んできたシャトルに対して半身になって、ラケットを両手で握り、思い切り振り抜いた。
教科書のような美しい重心移動。
「お前それ…バッティングな」
「うわっ!」
最初は右手に持っていたはずのラケットは左手に移っていて、打ち放たれたシャトルは相手チームの頭上を遥かに飛び越え、ネットに直撃した。
硬球と違って重さのないシャトルは、瑛の目の前でふらふらと床へ落ちていく。
「ごめん!ものすごくごめんなさい!!」
「反射でやっちゃってんじゃん!どんだけ野球好きなの!」
「片手ね!」
コートの中からも外からも爆笑を浴びて、はるかは顔を真っ赤にして謝っていた。
片手、片手、と言われたままに小さく繰り返す様子がこれまたいじらしい。
今の一回はナシにしてくれるのか、同じ生徒がシャトルを放った。
はるかは左手を決して出さないように、背後に回している。それでは絶対にやりづらいだろう。
ぎこちない所作で打ち返したシャトルは、高く舞い上がって、またしてもネットをたゆんと揺らす。
「再放送かよ」
「月城の、強打者の本能が…無意識に飛距離を求めている…!」
呆れ気味に呟いた瑛の横で、正也は腹を抱えて笑った。
気付いたはるかが再び真っ赤に染め上がった顔をこちらに向ける。
怒ったように寄せていた眉が、そのうちしゅんと下がってしまった。
「ごめん…わたしちょっと壁と練習してくる…」
「え、いいよ!やろうよ!面白いから!」
「面白くないよ!輪を乱さないプレーができるまで修行させて…」
縮こまったはるかをクラスメイトたちは優しさ半分、おちょくり半分で囲んでいる。
足の速さとバッティングセンスには驚かされてばかりだけど、他のスポーツかこんなにも残念な腕前だったとは。
ネットを持ち上げて、はるかのもとへ向かった。
「“修行”、付き合うよ」
「瑛くんこそ、本能が飛距離を求めてしまうのでは…?」
「お前ほど野球バカじゃねーからな」
物言いたげなはるかの手をとって、クラスメイトたちの輪を離れる。
しゅんとした顔を見るのも、それを笑顔にするのも、自分だけでいいから。
とりあえずふたりきりではるかのラケットさばきを堪能しようと思っていたら、はるかの手のぬくもりが消えた。
夢というものはどうしてこう、肝心なところでうやむやになってしまうんだろうか。
いつの間にか制服に戻っていて、目の前では女子たちがこちらに背を向けて話している。
長い髪とダークグレーのカーディガンは、間違いなくはるかだ。
「ねー、結局はるかって何カップなの?」
「えっ!?」
瑛の存在に気付いていないのか、なんとも大胆な話題にはるかだけでなく瑛も肩を震わせる。
「何食べてたらそんななるの?やっぱ豆乳?」
「なんかさー、結局サイズの合った下着が大事とか言わない?」
「それホントなの?サイズ合ってたら増えんの?おかしくない?」
「あの…」
「いーなー、マジでちょっと分けてよー」
耳まで赤くしているのが、後ろから見ていても分かる。
今すぐ振り向かせて、抱き締めてしまいたい。
夢の中なんだからそれくらい許されるだろうけど、それはしなかった。
「そ、そんなにいいもんでもないよ…!」
しどろもどろに言い返すはるかの言葉が、なんとなく気になったから。
「なんでー、なんぼあってもいいでしょー!」
「それは言い過ぎ」
「だって…か、かわいい下着、あんまりないし…」
はて、と記憶を巡らせる。
はじめてはるかの下着姿を見た時、正直細かなデザインまで見ている余裕はなかったけれど、淡い色合いと控えめな刺繍がはるからしいと思った覚えがある。
「俺はかわいいと思うけど」
気付けば口に出ていた。
ぱっと振り返ったはるかは、驚いた表情で唇をわなわなと震わせている。
「え、何急に…」
「それって…日坂君、見たことあるってこと…?」
女子たちも怪訝な顔を向けてきたが、そんなことはどうでもよくて。
未だ声にならない声を上げるはるかの頭を撫でて、微笑みかけた。
「似合ってたよ。きれいだった」
夢の中なら素直に言えるな、なんて思っていると、はるかが小さな手を思い切り振りかぶって──
頬に衝撃が走った。
朝練の後、朝食にしては量の多過ぎる食事をかき込んで、制服に着替えて校舎へ向かう。
放課後にまたいちいち着替えるのが面倒で、ワイシャツの下はアンダーシャツでいいんじゃないかと毎朝のように思うけれど、校則でアウトらしい。なんだその校則。
「おい!置いてくなって!」
背後からそんな憎まれ口を叩かれるのも、毎朝のこと。
この男と“教室まで一緒に行こう”などと気色の悪い約束をした覚えは一度もないし、今後も一生する気はない。
「なー、今日の単語テスト何ページだっけ?てか和訳やった?」
それでも正也は勝手に隣に並んで、これまた毎朝のように同じようなセリフを口にする。
この男がまともに小テストの勉強や課題を済ませているのを見たことがない。
適当に返事をしながら校舎に辿り着いて、くたびれた上履きに履き替える。
階段を昇れば、自分たちの教室はすぐそこだ。
後方窓際、席替えの度に争奪戦になる“当たり席”。
そこに腰を下ろすなりポケットからスマートフォンを取り出して、ネットニュースやSNSをなんとなく眺める。
それもまた、もはや癖のように染み付いたルーティーン。
すべてがあまりに“いつも通り”だった──これが夢だというには。
「どうせ夢なら、もっとこう…」
夢の中で、誰に聞こえていたってどうということはないので、思ったままに一人呟く。
するとふいに、みずみずしい花のような、爽やかな香りが通り過ぎて行った。
「おはよう、瑛くん」
ふんわりと笑う顔は、その香りから、今まさに思い浮かべたひとで。
「え…?」
驚いてしまったのは、彼女が2年生である自分の教室にいて、当たり前のように一つ前の席に腰を下ろしたからだ。
「高原君おはよう」
「おっす、月城おはよ!」
「は、おい!」
先輩であるはずの彼女を呼び捨てにする正也を咄嗟に咎めたけれど、正也も、そして彼女も、不思議そうな顔で振り返るだけだった。
──なるほど、そういう。
つまりこれは、“もしも月城 はるかが同い年だったら”という設定の夢だったらしい。
“同い年のはるか”が姿を現したのは、結構ギリギリの時間だった。
これが現実に忠実な描写なんだとしたら、かなり意外だ。
なんとなく、はるかは早めに席について、予習か読書でもしていそうなイメージだったから。
だけどそういえば、朝にはるかからメッセージが来ることは滅多にない。
ホームルームまでもう残り僅かな時間、はるかが手に取ったのは教科書でも文庫本でもなく、スマートフォンだった。
またしても意外、と肩越しに覗き込むと、画面には藤堂選手の写真がでかでかと表示されていた。
「おい」
「わっ!」
見られているとは思わなかったのだろう、はるかがぴくりと肩を震わせる。
何事かと振り向いた顔も、席が前後だとこんなにも近いのか。
「俺のことほったらかして何見てんだよ」
「え…?何って、昨日の逆転スリーランの写真上がってたから」
「テレビでも観たんだろ、どうせ」
「中継切れちゃったんだよー。社会人になったらサブスク入る!絶対!」
「別に今入ればいいだろ」
「ハリアーズに捧げるお金は自分で稼ぐと決めてますので!」
らんらんと瞳を輝かせて宣言するはるか。
間違いない、これは現実に忠実な描写だ──同い年であるという決定的な矛盾を覗いて──。
後ろの席から眺めるはるかは、常にしゃんと背筋が伸びていた。
頭も肩幅も背中も小さくて、後ろ姿だけ見れば小学生に間違われてもおかしくないのではないか。
さすがに言い過ぎだろうか。本人に言うと数日は口を聞いてもらえなくなりそうだ。
「瑛くん?」
「え」
失礼極まりないことを考えていたところに突然振り返られたので、どきりとした。
その手はプリントの束をこちらに差し出していて、どうやらこれを回してきていたようだ。
「…どーも」
プリントを受け取って、自分の分を引き抜いて後ろへ回す。
視線を向けるでもなく手の中から感覚が消えたので、はるかのように振り返ることはなかった。
まだこちらを向いたままだったはるかの顔。
ふ、とやわらかく微笑んだ。
鼓動が跳ねて、息を呑む。
次の瞬間にはゆっくりと、前を向いてしまった。
毛先まで艶やかな黒髪が、目の前でさらりと揺れる。
配布物を回される度にこんなイベントが巻き起こるというなら、はるかの後ろに座る者は無事ではいられないだろう。
現実でこのポジションについている存在を、じわじわと恨めしく思った。
ふと気付けば場面は体育館へと切り替わり、クラスメイトたちは皆体操服でバドミントンラケットを手にしていた。
はるかも例外ではなく、自分と同じ色のジャージ姿がどうにも見慣れない。
彼女はこれからダブルスの試合に臨むようで、瑛はそれをネット越しに眺めていた。
なんだかいつもと逆の立ち位置だ。
「いくよー」
相手コートのサーバーがひらりと手を挙げる。
レシーバーのはるかは、気合十分といった様子でラケットを構えている。
軽い音とともに放たれたシャトルが、ゆるゆるとはるかのもとへ向かう。
バドミントン部同士でラリーをしているコートからは恐ろしい音が聞こえてくるが、初心者がやるのとはもはや別のスポーツだなと見る度に思う。
速度のないサーブ。これなら誰でも返せるだろう。
はるかは舞い込んできたシャトルに対して半身になって、ラケットを両手で握り、思い切り振り抜いた。
教科書のような美しい重心移動。
「お前それ…バッティングな」
「うわっ!」
最初は右手に持っていたはずのラケットは左手に移っていて、打ち放たれたシャトルは相手チームの頭上を遥かに飛び越え、ネットに直撃した。
硬球と違って重さのないシャトルは、瑛の目の前でふらふらと床へ落ちていく。
「ごめん!ものすごくごめんなさい!!」
「反射でやっちゃってんじゃん!どんだけ野球好きなの!」
「片手ね!」
コートの中からも外からも爆笑を浴びて、はるかは顔を真っ赤にして謝っていた。
片手、片手、と言われたままに小さく繰り返す様子がこれまたいじらしい。
今の一回はナシにしてくれるのか、同じ生徒がシャトルを放った。
はるかは左手を決して出さないように、背後に回している。それでは絶対にやりづらいだろう。
ぎこちない所作で打ち返したシャトルは、高く舞い上がって、またしてもネットをたゆんと揺らす。
「再放送かよ」
「月城の、強打者の本能が…無意識に飛距離を求めている…!」
呆れ気味に呟いた瑛の横で、正也は腹を抱えて笑った。
気付いたはるかが再び真っ赤に染め上がった顔をこちらに向ける。
怒ったように寄せていた眉が、そのうちしゅんと下がってしまった。
「ごめん…わたしちょっと壁と練習してくる…」
「え、いいよ!やろうよ!面白いから!」
「面白くないよ!輪を乱さないプレーができるまで修行させて…」
縮こまったはるかをクラスメイトたちは優しさ半分、おちょくり半分で囲んでいる。
足の速さとバッティングセンスには驚かされてばかりだけど、他のスポーツかこんなにも残念な腕前だったとは。
ネットを持ち上げて、はるかのもとへ向かった。
「“修行”、付き合うよ」
「瑛くんこそ、本能が飛距離を求めてしまうのでは…?」
「お前ほど野球バカじゃねーからな」
物言いたげなはるかの手をとって、クラスメイトたちの輪を離れる。
しゅんとした顔を見るのも、それを笑顔にするのも、自分だけでいいから。
とりあえずふたりきりではるかのラケットさばきを堪能しようと思っていたら、はるかの手のぬくもりが消えた。
夢というものはどうしてこう、肝心なところでうやむやになってしまうんだろうか。
いつの間にか制服に戻っていて、目の前では女子たちがこちらに背を向けて話している。
長い髪とダークグレーのカーディガンは、間違いなくはるかだ。
「ねー、結局はるかって何カップなの?」
「えっ!?」
瑛の存在に気付いていないのか、なんとも大胆な話題にはるかだけでなく瑛も肩を震わせる。
「何食べてたらそんななるの?やっぱ豆乳?」
「なんかさー、結局サイズの合った下着が大事とか言わない?」
「それホントなの?サイズ合ってたら増えんの?おかしくない?」
「あの…」
「いーなー、マジでちょっと分けてよー」
耳まで赤くしているのが、後ろから見ていても分かる。
今すぐ振り向かせて、抱き締めてしまいたい。
夢の中なんだからそれくらい許されるだろうけど、それはしなかった。
「そ、そんなにいいもんでもないよ…!」
しどろもどろに言い返すはるかの言葉が、なんとなく気になったから。
「なんでー、なんぼあってもいいでしょー!」
「それは言い過ぎ」
「だって…か、かわいい下着、あんまりないし…」
はて、と記憶を巡らせる。
はじめてはるかの下着姿を見た時、正直細かなデザインまで見ている余裕はなかったけれど、淡い色合いと控えめな刺繍がはるからしいと思った覚えがある。
「俺はかわいいと思うけど」
気付けば口に出ていた。
ぱっと振り返ったはるかは、驚いた表情で唇をわなわなと震わせている。
「え、何急に…」
「それって…日坂君、見たことあるってこと…?」
女子たちも怪訝な顔を向けてきたが、そんなことはどうでもよくて。
未だ声にならない声を上げるはるかの頭を撫でて、微笑みかけた。
「似合ってたよ。きれいだった」
夢の中なら素直に言えるな、なんて思っていると、はるかが小さな手を思い切り振りかぶって──
頬に衝撃が走った。