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囚われのお姫様

「っ…何者です!」
人の気配に目が覚める。くらくらと目眩のする体を無理やり起こし、暗器の仕込まれた髪留めを手に取った。
「だれ、…え?」
視界に入るのは、ニヤニヤと気持ちの悪い笑みを浮かべ下品な視線を向けてくるあの男ではない。
忘れぬよう何度も反芻し、それでも薄れてしまうほどに長い間求め続けた、黒と紫の色彩だった。
「成長、したんだな」
掠れて聞き取りづらいその声は、どうにも魅力的には思えない。
しかし、抗いようもなく忘れてしまったその声は、同時に記憶から薄れていった彼との一時を思い起こさせるようだった。
「だぁ、だーりん…?生き、え、……?」
漆黒の髪は彼の性格のようにふわふわと曖昧な輪郭を形どっている。紫の瞳は酷く濁っていて、見ているこちらまで不安になってしまいそうなほど強い魔力を宿していた。
「姫」
私をぶっきらぼうにそう呼ぶ人は一人しかいない。
「……何で生きてるの」
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