囚われのお姫様

家臣が戦争を焚き付けようと誘拐してきた姫が自分に異様なほど執着していることは知っていた。
聞けば両親のみならず周りの人間全てから溺愛されてきた彼女は相当な箱入りらしく、異性とはろくな関わりを持っていないらしい。そんな彼女が第一王子誕生をきっかけに蔑ろにされ、周りの態度の急変についていけない中家臣がここへ連れてきたというわけだ。そんな彼女にとって構ってくれる自分達の存在はまさしく救世主のようなものだったのだろう。
一過性のものだと思い軽くあしらっていたが、まさかその執心ゆえに母親を手にかけようとするとは。魔物は縄張り意識が強く一度気に入ったものへは強い執着を示すが、対する人間は利己的ですぐにものを手放す。そう思っていたため、ここまで執着されているとは想定外だった。
自分の魔力が彼女に影響を及ぼしている可能性があると言われ渋々監視をつけていたが、その結果こうして再度連れ出すことになるとは。家臣の策略にハマったような気がしてどうにも不愉快である。
幾分かの時間を経て再会した彼女は全てがすっかり変わっていて、対して何も変わらぬ自分に種族間の隔たりをひしひしと感じ取った。
自分を見て彼女はどんな反応をするのだろうか。あの国に帰すことはさすがにもうないが、かといってここに置いておくとも限らない。
彼女の反応によってはまたあの騒がしい日々が戻ってくるのだ。当時はやかましいと思っていたが、今の彼女ならば多少は鬱陶しさも軽減しているかもしれない。

そう考えると、自然と眠っている彼女へ手が伸びた。
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