7.再び、主になるために

 やっと会えた、大事な家族。それでもやっぱり一筋縄ではいかないようです。

 改めてみんなを大広間に集めて、私から説明の場を設けた。前世の話、この体のこと、出会えた喜び。証拠になるかわからないけど、加州に言われてまたカメハ〇波のポーズを取ってみたりした。これを見て涙ぐんでる男士を見るのは少し複雑な気分だったけど。信じてくれて本当に良かった。恐る恐る、というように思い出話をしてくる男士と昔話に花を咲かせて。ああ、もう怖いことなんてない。そう思った時である。

「少々、よろしいでしょうか」

「こんのすけ……?」

 広場の真ん中にぶわりと現れたこんのすけは、そう静かに言った。今までこんのすけの姿を見たことはなく、これが初対面である。こんのすけはふんふんと審神者の匂いを嗅いで、ちょこんと目の前に座り込んだ。そのしっぽはふわふわと揺れている。男士に囲まれている私を見上げて、それから続けた。

「確かに霊力は『竜胆』様のもののようですが、政府としては新たに審神者の登録をしなければなりません」

「とうろく?」

「はい。ですので新たに審神者名を決め、登録のために政府に来ていただく必要がございます。そこで認められれば、この本丸の審神者として登録が可能です」
 
 それはつまり……。嫌な予感がしたところで周りにいた男士から声が上がる。

「政府から認められなかった場合はどうなる」

「……その場合は別の審神者様に来ていただくことになるかと」

「なんだと?」

 長谷部が厳しい口調でこんのすけに問い詰めると、こんのすけは首をすくめる。まあこんのすけは中間管理職みたいなものだろうしなあ。なんとなく不憫に思いつつ、こんのすけの話を考える。こんのすけの話も分からないわけではない。私……『竜胆』が死亡したことは調べればわかるだろうし、新たな名前で登録するのも仕方がない。ただ、政府に認められるかが不安だ。ごくりと喉を鳴らして、こんのすけに向き直る。

「ねえ、こんのすけ」

「なんでしょう?」

「せいふにみとめてもらうにはどうしたらいい?」

 これで認めてもらえないと、もうみんなと一緒にいられないかもしれない。しかも私の今の体は幼い子供。なんとかして認めてもらうために、できることはないだろうか。そう望みをかけてこんのすけに問うと、こんのすけはくるりと視線を動かした。

「……審神者様が本丸を運営するのに問題がないと分かればよろしいかと。鍛刀、手入れといった通常業務に支障がないと証明できればいいと思われます」

「わかった、ありがとう。……かねさん!」

「ん? どうした」

 こんのすけにこくりと頷いた私は、兼さんを手招きした。すぐに近くに来てくれた兼さんの頬には小さな傷がついている。兼さんの手をぎゅっと握ってふんすと気合を入れる。

「ていれ、しにいこう!」

 ならば証明して見せよう。みんなと一緒にいるために。

▽▽▽▽▽▽▽▽▽


 手入れ部屋に入ると、そこは保健室のような作業部屋のような不思議な部屋だった。男士が横になれるような布団もあり、かと思えば刀剣の手入れをするようにだろう粉も置いてある。刀剣男士は不思議な存在なのだなあと改めて考えていると、兼さんが顔を覗き込んできた。

「大丈夫か?」

「うん、だいじょうぶ」

 力こぶを作って見せ、気合を入れる。しかし手入れの方法は知らないのでこんのすけにも来てもらった。横にいるこんのすけに視線を向けると、こんのすけはとてとてと近づいてくる。

「では手入れの方法をお伝えしますね」

「うん」

 この体に兼さんの刀は少々大きすぎるのでそっと床に置く。手を切らないように気を付けて刀身を抜いた。こんのすけに言われるように、柔らかい紙で汚れを落とし、粉をぽふぽふと付ける。その時に霊力を込めるように言われるのだがこれがよく分からない。むむむ、と力を込めて、なんとなく手から何かが出ていくようなイメージをしながら作業を続ける。なんだか手汗が出そうで怖い。最後に油を薄く塗って、その時にも力を込めるイメージだけは忘れない。はたしてこれでいいのだろうか……。

「手入れは問題ないようですね」

「ほんと?」

 かちん、と刀身をしまい、兼さんの方を見ればいつの間にか頬の傷も消えている。やった!
 きゃっきゃとこんのすけを掴んで喜んでいると、兼さんが優しく微笑んでこちらを見ている。しかしどこか瞳は光って見えた。

「あんた、ほんとうに主なんだな」

「?」

「いや、手入れしてもらって改めて思ってな。間違いなく主の霊力だ」

 兼さんがぽんぽんと頭を撫でてくれた。にへ、と笑いながらそれを受け入れる。瞳が光って見えた理由には触れないようにして。きっと私の目も潤んでいるだろうから。
 これで手入れは問題ない。政府もきっと認めてくれるだろう。……たぶん。

 どこか不安をまだ残したまま、政府に行く日取りが決められていくのだった。


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