13話 しあわせは画面の向こうまで
演練での初勝利を収めた瑞葉たち。るんるんと足取りは軽い。本丸へのゲートをくぐり、うきうきで玄関の戸を開ける。
「ただいまー!」
「お帰りなさい」
「おかえりー」
奥からわらわらと男士が顔を出す。得意げな顔で審神者の後ろに控える部隊の男士たちと、ほっぺがふくふくな審神者の表情。それを見て結果を悟った本丸の面々は顔を見合わせて笑う。
「初陣は成功ですね! 兼さん! 主さん!」
「たりめえよ!」
「うん、みんなつよかった!」
瑞葉は履物を脱ぎながらよいしょと中に入る。そこに小狐丸がスススと近づいてきて審神者の手を取った。
「ぬしさま、ぬしさま」
「こぎつねまる」
「ぬしさまにご覧いただきたいものが」
「?」
そのまま手を引かれてトコトコ向かった先を見て瑞葉は首をかしげる。
「おおひろま?」
「ええ、喜んでくださるとよいのですが」
そして大広間に足を踏み入れると、たくさんのごちそうが並び、男士が今か今かと瑞葉のことを待っていた。上座に子供用の椅子が置かれ、ふかふかの座布団も用意されている。
「わあ……!」
「ふふ」
小狐丸はその椅子に瑞葉をぽすんと座らせた。瑞葉はきょろきょろと見渡しながら、つい目の前のごちそうに目が奪われる。
「おいしそう……!」
「腕によりをかけて作ったんだ」
「ありがとう! で、でもどうして?」
横にいた燭台切にそう聞けば、燭台切は悪戯めいた笑みを浮かべた。
「初陣勝利のお祝いだよ、勝つって信じてたからね」
「わあ!」
勝つと信じて用意して待ってくれていた。それが嬉しくて瑞葉は目を輝かせてくすぐったそうに微笑む。
「さ、冷めないうちにお食べ」
「うん! いただきます!」
スプーンを握って、ふるふるの茶碗蒸しを掬ってぱくんと食べる。つるりと喉を通ってじんわりと体の中から温かさが伝わった。
みんなが用意してくれた勝利の味は、温かくて優しい、幸せの味だった。
▽▽▽▽▽▽▽▽▽
一方そのころ政府では。大量の問い合わせの対応に追われていた。
「いえ、そのようなことはしておらず……ええ、はい……」
「本人の希望もあってのことでして。あ、いやこれ以上はお話しできず……」
「保護!? できませんし止めてください……」
演練での噂を聞いた者たちがちょっと暴走していた。子どもを連れ去ってきたんじゃないのか、本当に子どもが審神者をしているのか、本当ならば保護はできないのか。などなどなど……。
各本丸のこんのすけも質問攻めにあったり疑いの目を向けられたりと大変なようだ。埒が明かない、何とかしろと瑞葉のこんのすけのもとに要請が来るのはすぐだった。
「ふう」
こんのすけは耳を伏せると、ごちそうに舌鼓を打つ瑞葉を眺める。ほっぺをまん丸に、美味しいと全身で伝える瑞葉を眩しそうに眺めて、こんのすけは瑞葉のもとへと近づいていく。
「審神者様」
「むぐ?」
「ああほら、口にご飯がついているよ」
歌仙に口を拭いてもらいながら、もきゅと口の中のご飯を飲み込んで瑞葉はこんのすけに笑いかけた。
「どうしたの?」
「記念にお写真でもどうかと思いまして」
「おお! それはいいな!」
「けどカメラなんて本丸にあったかな?」
「ふふ、光坊、今はこの端末で撮れるんだぜ」
こんのすけの言葉にうっきうきの鶴丸が端末をどこからともなく持ってくる。給金で買ったのだろう最新の端末だ。慣れた手つきですいすいと操作している。
「よーし、主! ここを見てくれ」
「はーい!」
カシャと音が聞こえて、鶴丸は端末を覗き込む。にぱっと笑って画面を瑞葉に向けた。
「いい感じだ! ほら」
差し出された端末の画面には、男士に囲まれて幸せそうに笑う瑞葉が映っている。瑞葉は照れくさそうに頬を押さえてくふふと笑う。
「いいしゃしん!」
カシャ
「シャッターチャンスしかないんだが」
「貸せ、俺も撮る」
「長谷部も自分の端末があるだろう」
「くそ、何故俺は型落ちの端末を……!」
「そんなに性能変わらんぞ」
「主の最高の写真を残したいだろうが!」
ぎゃいぎゃいと騒がしい審神者の周辺からするりと抜けて、こんのすけは加州の元へと移動する。
「ん? 何?」
「実は今、こんなSNSがありまして」
「あー、サニッターじゃん。知ってる知ってる」
「いかがでしょう、これに審神者様とのお写真を載せるアカウントを作っては」
「え!? 主のことを世界に自慢できるってこと!?」
「清光得意そう」
加州はガタっと立ち上がると瑞葉のもとへ駆け寄った。鶴丸と長谷部を押しのけて、きゃるるんとおねだりの姿勢。
「あーるじ♡」
「なーに?」
身振り手振りで瑞葉に話しかけている加州を横目に、こんのすけは一仕事終えた顔で部屋を出る。その背後から姿を現したのは一文字則宗だ。
「珍しいなあ」
「何がでしょう?」
「いや、何」
則宗は持っている扇子をぱちりと閉じる。値踏みするかのようにこんのすけをじっくりと眺めた。廊下に冷ややかな空気が流れる。
「お前さんは随分とあの子に肩入れしているようだ」
「……」
こんのすけはふるりと尾を揺らす。静かに目を閉じると、一言だけ答えた。
「……今度こそ、笑っていてほしいのです」
「ほう?」
それだけ言うとこんのすけは頭を下げ、くるりと回って姿を消した。残された則宗はゆっくりと瞬きをする。こんのすけの中身には個体差がある。この個体は、どうしてか審神者の味方であるらしい。
「……まあ、害がないのなら構わないか」
瑞葉は色々なモノに守られている。そしてそれは自分たち以外にも、何かいるのかもしれない。
「……なんてな。うはは」
則宗は扇子を広げると、ただの好々爺に戻る。冷んやりとした廊下から熱気あふれる大広間へと入っていった。
「じじいどこ行ってたんだよ」
「ん? ちょっとな」
「今、主の写真上げるアカウントを……え? うわバズった」
「ばず……?」
「ただいまー!」
「お帰りなさい」
「おかえりー」
奥からわらわらと男士が顔を出す。得意げな顔で審神者の後ろに控える部隊の男士たちと、ほっぺがふくふくな審神者の表情。それを見て結果を悟った本丸の面々は顔を見合わせて笑う。
「初陣は成功ですね! 兼さん! 主さん!」
「たりめえよ!」
「うん、みんなつよかった!」
瑞葉は履物を脱ぎながらよいしょと中に入る。そこに小狐丸がスススと近づいてきて審神者の手を取った。
「ぬしさま、ぬしさま」
「こぎつねまる」
「ぬしさまにご覧いただきたいものが」
「?」
そのまま手を引かれてトコトコ向かった先を見て瑞葉は首をかしげる。
「おおひろま?」
「ええ、喜んでくださるとよいのですが」
そして大広間に足を踏み入れると、たくさんのごちそうが並び、男士が今か今かと瑞葉のことを待っていた。上座に子供用の椅子が置かれ、ふかふかの座布団も用意されている。
「わあ……!」
「ふふ」
小狐丸はその椅子に瑞葉をぽすんと座らせた。瑞葉はきょろきょろと見渡しながら、つい目の前のごちそうに目が奪われる。
「おいしそう……!」
「腕によりをかけて作ったんだ」
「ありがとう! で、でもどうして?」
横にいた燭台切にそう聞けば、燭台切は悪戯めいた笑みを浮かべた。
「初陣勝利のお祝いだよ、勝つって信じてたからね」
「わあ!」
勝つと信じて用意して待ってくれていた。それが嬉しくて瑞葉は目を輝かせてくすぐったそうに微笑む。
「さ、冷めないうちにお食べ」
「うん! いただきます!」
スプーンを握って、ふるふるの茶碗蒸しを掬ってぱくんと食べる。つるりと喉を通ってじんわりと体の中から温かさが伝わった。
みんなが用意してくれた勝利の味は、温かくて優しい、幸せの味だった。
▽▽▽▽▽▽▽▽▽
一方そのころ政府では。大量の問い合わせの対応に追われていた。
「いえ、そのようなことはしておらず……ええ、はい……」
「本人の希望もあってのことでして。あ、いやこれ以上はお話しできず……」
「保護!? できませんし止めてください……」
演練での噂を聞いた者たちがちょっと暴走していた。子どもを連れ去ってきたんじゃないのか、本当に子どもが審神者をしているのか、本当ならば保護はできないのか。などなどなど……。
各本丸のこんのすけも質問攻めにあったり疑いの目を向けられたりと大変なようだ。埒が明かない、何とかしろと瑞葉のこんのすけのもとに要請が来るのはすぐだった。
「ふう」
こんのすけは耳を伏せると、ごちそうに舌鼓を打つ瑞葉を眺める。ほっぺをまん丸に、美味しいと全身で伝える瑞葉を眩しそうに眺めて、こんのすけは瑞葉のもとへと近づいていく。
「審神者様」
「むぐ?」
「ああほら、口にご飯がついているよ」
歌仙に口を拭いてもらいながら、もきゅと口の中のご飯を飲み込んで瑞葉はこんのすけに笑いかけた。
「どうしたの?」
「記念にお写真でもどうかと思いまして」
「おお! それはいいな!」
「けどカメラなんて本丸にあったかな?」
「ふふ、光坊、今はこの端末で撮れるんだぜ」
こんのすけの言葉にうっきうきの鶴丸が端末をどこからともなく持ってくる。給金で買ったのだろう最新の端末だ。慣れた手つきですいすいと操作している。
「よーし、主! ここを見てくれ」
「はーい!」
カシャと音が聞こえて、鶴丸は端末を覗き込む。にぱっと笑って画面を瑞葉に向けた。
「いい感じだ! ほら」
差し出された端末の画面には、男士に囲まれて幸せそうに笑う瑞葉が映っている。瑞葉は照れくさそうに頬を押さえてくふふと笑う。
「いいしゃしん!」
カシャ
「シャッターチャンスしかないんだが」
「貸せ、俺も撮る」
「長谷部も自分の端末があるだろう」
「くそ、何故俺は型落ちの端末を……!」
「そんなに性能変わらんぞ」
「主の最高の写真を残したいだろうが!」
ぎゃいぎゃいと騒がしい審神者の周辺からするりと抜けて、こんのすけは加州の元へと移動する。
「ん? 何?」
「実は今、こんなSNSがありまして」
「あー、サニッターじゃん。知ってる知ってる」
「いかがでしょう、これに審神者様とのお写真を載せるアカウントを作っては」
「え!? 主のことを世界に自慢できるってこと!?」
「清光得意そう」
加州はガタっと立ち上がると瑞葉のもとへ駆け寄った。鶴丸と長谷部を押しのけて、きゃるるんとおねだりの姿勢。
「あーるじ♡」
「なーに?」
身振り手振りで瑞葉に話しかけている加州を横目に、こんのすけは一仕事終えた顔で部屋を出る。その背後から姿を現したのは一文字則宗だ。
「珍しいなあ」
「何がでしょう?」
「いや、何」
則宗は持っている扇子をぱちりと閉じる。値踏みするかのようにこんのすけをじっくりと眺めた。廊下に冷ややかな空気が流れる。
「お前さんは随分とあの子に肩入れしているようだ」
「……」
こんのすけはふるりと尾を揺らす。静かに目を閉じると、一言だけ答えた。
「……今度こそ、笑っていてほしいのです」
「ほう?」
それだけ言うとこんのすけは頭を下げ、くるりと回って姿を消した。残された則宗はゆっくりと瞬きをする。こんのすけの中身には個体差がある。この個体は、どうしてか審神者の味方であるらしい。
「……まあ、害がないのなら構わないか」
瑞葉は色々なモノに守られている。そしてそれは自分たち以外にも、何かいるのかもしれない。
「……なんてな。うはは」
則宗は扇子を広げると、ただの好々爺に戻る。冷んやりとした廊下から熱気あふれる大広間へと入っていった。
「じじいどこ行ってたんだよ」
「ん? ちょっとな」
「今、主の写真上げるアカウントを……え? うわバズった」
「ばず……?」