～まるで天使のような～

ふわふわの白い癖っ毛に大きめの真っ白いシャツ。床でぺたぺたと真っ白いパズルを埋めていくその姿勢は脱力感はあったが、どこか集中していて人を寄せ付けない雰囲気をも出していた。日の光に暖かく照らされているその姿はまるで天使が人間界に舞い降りて、遊びに来ているように見えた。私はその光景に魅入ってしまっていた。光が入る隙もないような黒い瞳が瞬き、ふと目が合う。自分が見られていることに気付いたようだが、興味がないと言わんばかりにまたパズルの方に目を向ける。

「Hello, little angel (こんにちは、小さな天使さん)」

その天使は私のかけた言葉に反応し、再び私と目を合わせる。そしてキョロキョロと周りを見渡すが、私以外に他の誰もいない部屋を見てその言葉が自分宛てであると気付いただろう。しかし、またすぐ目線を落として床に散らばったパズルピースを一つ摘み上げては未完成のパズルに嵌め込む。

「Are you shy, my angel? (私の天使は恥ずかしがり屋さんかな？)」

今度は少し距離を縮めて、天使の顔を覗き込んでみる。遠くから目を合わせた時から気づいていたけど目と鼻の形が美しく並んでおり、まるで神の創造物、天の使い、天使にしか見えない。
天使は小さくため息を吐くとパズルの方を向いたまま口を開いた。

「I’m no angel. (私は天使なんかではありません)」

とても子供っぽく可愛らしい声だった。しかし、言葉遣いは子供っぽくはなく、とても大人びた回答だった。

「So then, what’s your name? (それじゃあ、君の名前はなんて言うの？)」

「…Nate River, or you can just call me Near. (ネイトリバー、それかニアとでも呼んでください)」