02.どんぐりの秋、またたきの冬
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「———…… つのたろ!」
ドアから頭を出し、きょろきょろと見渡す。
見えたのは、階段をゆっくりと上ってくる彼の姿。
屋根のほうを向いていた彼は、にこにことほほ笑むわたしに目を落とし、ふっと笑った。
出会いたてのときはけっこう怖かったけど、だいぶ人間味ある表情をしてくれるようになったなあ。
「ああ、人間。」
「!! つのたろ、めっちゃ薄着じゃん!??!!?!
寒くないの!?」
制服のジャケットを脱いだ状態のつのたろに驚いて声を掛ける。
寒くない、と言う彼を疑いの目でじとりと見ると、声を上げてわらわれた。
なんで!?!?
つのたろは良く分からないツボを持っているらしい。
こんなふうに急に笑い始めることがよくある。
言動からして高貴な身分のご家庭出身っぽいんだけど、どうせすぐ分かってしまうから、と言って正体を教えてくれないでいる。
話したくないことは訊かない主義なので、「わたしの知っている彼」と仲良くしていると、それなりに気に入られたらしい。
良好な友好関係なんて なんぼあっても困りませんからね!!
わたしは、おいでやすこが やなって思いましたけどね……。
アキナも好きですね……関西人やし、せやねん見てたから結構応援してたねんけどね……。
なんの話や、もうええわ!
脳内ひとり漫才に終止符を打ち、寒そうな出で立ちで佇む2m2cmのそばへ駆け寄る。
観察するかのようにわたしを見つめる彼に、オンボロ寮に入るよう促す。
彼は少しだけ目を見開き、口を少しすぼめた。
恐ろしいほどの美形によるこの顔、正直かなり怖いのだが、
どうやらただ驚いているだけで、悪い意味は全く含まれていないようだ。
なににそんなに驚くんだろう。
わかんないけど、この寒天下に学友を置いていけるほど 冷たい女ではない。
掌を上にして寮のほうへ向けると、彼はふわっと笑って、その長い脚を動かしてくれた。
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