02.どんぐりの秋、またたきの冬
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「———……ふう。」
ポムフィオーレ寮、入り口。
夕陽のオレンジと夜の紫が混ざる空。
秋の夜風は冷たい。
遠くのほうから聞こえる 宴の楽し気な音楽に背を向け、雲に隠れた月を見上げる。
そろそろ戻らないと、みんな心配してるだろうな。
口を閉じたまま小さくため息を漏らし、掴んでいた華美な寮門を軽く揺らす。
カシャン、という音にもう一度息をついて、振り返る。
そこには金髪に狐目の男の人が、鋭い目をしてこちらを見ていた。
び
びっっっっっっっっっっくりした!!!!!!!!!!
いッ、いつから!??!?
いつからいたんだろう!!!!!!
全然気が付かなかった!!!!!!!!
驚きすぎて声も出せないでいると、彼の表情が急転、満面の笑みになった。
なに!?!?!??!
この人こわい!!!!!!!!!
ばくばくと脈打つ心臓を隠すかのように少しかがみながら、後ずさりする。
鉄の寮門に背が触れ、ガシャリ と大きな音が鳴る。
完全に怯え切ったわたしの様子を見、彼は驚いた顔をして、慌てたように話しかけてきた。
「すまない、怖がらせるつもりはなかった。
キミがあまりにも美しくて……見とれてしまってね。」
うっ、美し……?!??
さ、さすが
日本じゃ、誉め言葉に「美しい」なんて使わない。
びっくりしたぁ……。
挙動が大げさでちょっと胡散くさく感じるけど、嘘とかお世辞とか言わなさそうなタイプだなぁ。
明るいブラウンの革靴に、白のスラックス。
白シャツの上にベージュ色のベスト、そして美しいグリーンのジャケットをきっちりと羽織って。
胸元には
学生の略礼装にしては格好良すぎるくらい、きっちりとした服装だ。
きっとこの人はポムフィオーレ寮生なんだろう。
……それにしても。
初対面の「男子高校生」に「美しい」だなんて。
変わった人だなあ……。
そう思いながら、笑顔のままのその人に話しかけてみた。
「あ、あの、あなたは……?」
「ああ! 自己紹介がまだだったね、失礼。
私はポムフィオーレの副寮長 ルーク・ハント。
美を求め、美を助くことを人生のテーマとする者さ。」
どうぞお見知りおきを、と言い、帽子を取って恭しくお辞儀をする。
な、なんてスマートな人なんだ。
すごすぎるな、この学園。
「あ、わたしは、」
「キミは、オンボロ寮のユウくんだね。」
「え、ええっ!? ど、どうして御存じなんですか」
「フフフ、狩人として当然のことさ。」
ニコニコと笑っているが、なかなかえげつないことをしている。
この調子だと、全校生徒ぶんの個人情報を知ってそうだ。
……。
すごすぎるなぁ、この学園……。
そう思っていると、ルーク先輩の影が動き、こちらに近付いてくる。
何事かと思って見上げると、逆光の中、柔らかいみどり色の瞳の奥に またあの鋭い光が宿っていた。
「どう、しましたか……?」
思ったよりも自分の声が不安げだったことに少し驚く。
わたしにどんどんと近付いた彼は、いじわるなような——
——何か……大事な獲物を見つめるかのような、そんなふうににやりと口許をゆがませ、わたしの左手を取り、
……わたしの耳元に顔を寄せた。
「
上で 私めと一曲、踊ってはくださいませんか。」
「え、……えっ……!?」
「返事は?」
優しく持たれている指先ではあるが、どうにも払い除けられない圧を感じる。
そんなことより、なぜ、なぜ女だと……。
急な事態に混乱していると、彼は早く、というかのように、わたしの指先にキスを落とした。
キス!?!???!?!?!?!??!?
あまりの出来事に目を白黒させていると、ルーク先輩はまたフフ、と笑った。
「どうか返事を、マドモアゼル。」
「へ、返事。あの、ダンス……踊れないんですけれど……」
「構わないよ。私がすべてエスコートしよう。
キミは私にすべて預けてくれさえすれば良い。
それで……私と踊ってくれるのだろうか。」
「……は、はい。」