02.どんぐりの秋、またたきの冬
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———……ポムフィオーレ寮、ボールルーム。
初めて来たそこは、軽音部が奏でる賑やかな音楽と、色とりどりの学生で溢れていた。
すごい!!
ダンスはほんとに何を踊ってもいいらしい。
ロックダンスを踊っている人もいるし、何人かでジャズダンスをしている人たちもいる。
あそこでブレイクダンス踊ってる色黒のひと、やっばいな。すごすぎか
8人ものバースデーボーイたちは、白いジャケットに身を包み、主役と書かれたタスキを付けて、
ボールルームの中央で楽し気にフォークダンスを踊っていた。
ここには ダンスと音楽だけではなく、簡単なドリンクや軽食を売っているスタンドまで用意されていた。
あのスタンドはええと、オク……オクタ……オクタヴィネル寮! の生徒たちの運営するものらしい。
メッシュの入ったターコイズブルーの髪の双子の青年たちがキリキリと働いているのが見える。
グリムはエースを誘って、軽い列ができたスタンドにドリンクを買いに行った。
残されたわたしは、キラキラした目でボールルームを見渡しているデュースの、ブラウンのジャケットの裾を引っ張る。
「——……あっ、すまない ぼーっとしていた。
ユウ、どうした?」
「折角来たんだから、一緒に踊ろう!」
「!! あんまりダンスは上手くないんだが……」
「あはは、大丈夫!!
ラフなパーティーだからさ、音楽を楽しめばいいんだよ!」
デュースの手を引いて、くるくると回る。
ぎこちなくカタい顔をしていたデュースも徐々に気が抜けていく。
声を出して二人で笑いながら、くるくる くるくると回る。
ただその場を回るだけのダンスが、こんなにも楽しい。
この世界に来たばっかりの頃は、こんなに良い友達ができるなんて 思ってもなかったな。
「——……デュース、ユウ……何してんの?」
「あっ、エース」
「ん? 踊っていただけだ。」
「オマエたちの分のジュースも買ってきたんだゾ。」
「ありがとうグリム~~! 寮に戻ったときにお金返すね。」
「で、なんで二人でずっと回ってたの? めちゃくちゃ怖かったんだけど」
ネイビーのジャケットにオールバックの髪でキメキメのエースが、眉根を寄せてじろじろとわたしたちを見る。
なに~~っ!
べーっ と舌を出し、いつもみたいにみんなで笑う。
……。
いつもみたいに、かあ……。
急に元の世界のことがぶわりと思い出されて、胸が苦しくなる。
表情をなくしたわたしの顔を、グリムが心配げにのぞき込む。
「オイ子分、どうした? 大丈夫か?」
「あっ……大丈夫! ちょっと御手洗い行ってくるね。先に3人で踊ってて!」
「あっ、おい ユウ!」
大丈夫だから、と言って ボールルームの外へ飛び出す。
ちょっとだけ、ちょっとの間だけ ひとりになりたかった。