02.どんぐりの秋、またたきの冬
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「———……オイ、ユウ! はやく支度するんだゾ!!」
玄関で飛び跳ねているグリムに、はいはい と大声で返事をする。
昨日のお昼休み。
エースとデュースとグリムの4人でプリンを食べながらした作戦会議。
バースデーパーティーは18:30からなので、授業が終わった後 みんなで集まり、食堂で夕食を摂る。
そこから一旦寮へ帰って着替え、図書館前へ集合、メインストリートを通って鏡舎に。
そしてポムフィオーレ寮へ行き、ダンスパーティーに参加する……といった算段だ。
こういうとき、女性ならば、パーティードレスを着て、お化粧をして、ヘアメイクもして……ってするべきなんだろうけれど、
わたしはこの学校では「男子高校生」として振る舞っている。
今日のところはカジュアルなスーツか、キレイめの服装だろう。
ちなみに。
今のところ、わたしが女子だということを知っている学生は、グリムだけ。
学園長には、雑用係としてここへの滞在を許された日の夜に、すぐに話をした。
何せ生理用品や下着を調達しないといけなかったから。
学園長は、書類に捺していた判を放り投げ、「貴方、女性だったんですか!?」と、心底驚いた。
なにぃ!??!?
見ればわかるでしょ!!
この美人JKを捕まえて~~!!!!
『貴方の学園関係者登録の書類、もう書き終わっちゃいましたよ……。
エ、書き直せ? いやぁ流石にちょっと面倒くs……いえ、私、忙しいのでね。』
『じゃ、じゃあ、どうしたら……!?』
『ム。ではこれはどうでしょう。
貴女、男としてこの学園に在籍するというのは?』
『お、男として!?』
『ええ。
学生はみな優秀で かつ損得勘定が得意なので、間違いが起こるともあまり思えませんが、
魔法の使えない貴女は、育ち盛りの男子生徒に抗う術を持ち合わせていません。』
女性だとバレてしまうと、わたしにも学園にも危険が及ぶかもしれない。
な、なるほど……確かに。
すると、学園長は その足で錬金実験室へと行き、わたしの目の前で「中級変身薬」という、液状のくすりを作ってくれた。
毎朝このくすりを飲めば、その後16時間は体が男そのものになるらしい。
中級変身薬は2年生の最初に錬金術の授業で習うものだそう。
加え、少し手間がかかるが、魔力を使わないレシピもあるとのこと。
2年生になってこれが作れるようになるまでは、クルーウェル先生に製薬を手伝ってもらえるよう、
学園長から連絡をしてくれる とのことだ。
いつにもなく優しい!!!
そういうわけで、グリムとオンボロ寮のゴーストたち、先生たちと購買部の店員さんだけが、この世界でわたしを女性だと知っている。
グリムは何度か口を滑らしそうになっていたが、そのたびに必死に誤魔化し、何とかバレずにやってきた。
今朝はギリギリの時間に中級変身薬を飲んだから、遅くなりすぎなければ大丈夫。
ネイビーのスラックスに、アイスブルーのシャツ。
カジュアルなベージュのジャケットを羽織り、蝶ネクタイを締める。
ブラウンのローファーを履き、かかとを鳴らしながら、玄関で騒いでいるグリムのもとへ走って行った。