02.どんぐりの秋、またたきの冬
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「———……ポムフィオーレ寮生の、誕生パーティー?」
そうそう、と言うエースには目もくれず、実験に使う香草をナイフで切り続ける。
そんなわたしに向かって、エースは おーい と間延びした声を掛ける。
特に返事をしないでいると、拗ねた声が聞こえてきた。
「それとダンスパーティーに、何の関係が?」
デュースはそう聞きながら、やはりエースを見遣ることもなく、隣で液体の入ったフラスコを振っている。
わたしたち二人にそっけなくされたからか、エースはわたしとデュースの間に割り込み、
そしてあろうことか実験机に腰かけた。
クルーウェル先生の授業でテーブルに座っちゃマズいって!
慌ててそう言ったが、エースはどこ吹く風。
そのまま続きを話し始めた。
「まあ聞けよ。
で、その明日が誕生日のポムフィオーレ生がさ、
なんと
8 人。」
「 8 人 」
「誕生日ってそこまで被るものなのか……?」
「エグいよな。
しかもその8人全員が ダンス好きらしくってさ。」
「奇跡としか言いようがないんだゾ……。」
エースの話を聞きながらも、わたしたちは製薬作業を止めない。
かたん とナイフを置いて、切り終えたハーブを大鍋に入れると、グリムがゆっくりと大釜の中身を混ぜ始めた。
そこへ クルーウェル先生が現れた。
冷ややかな顔の先生に頭を叩かれ、実験机に腰掛けたままだったエースは ぺこぺこしながら飛び降りた。
だから言ったじゃん、と目で言うと、エースは「イーッ!」という顔をした。ふふ。笑
「——……それで、ダンス好きのその8人のために、
ポムフィオーレの副寮長が ダンスパーティーを企画したんだって。」
「すごいな……まあでも、8人もの誕生日が被ったのなら、そうもなるか。」
「だろ? しかも全生徒が参加できるんだって!」
「大盤振る舞いだなぁ。 会場はもちろんポムフィオーレ寮だよね。」
「そそ、ボールルームだって。」
「でも、もし生徒全員が行っちまったら、会場がパンクしちまうんだゾ。」
大釜がぐつぐつと煮立ってきたのを見て、デュースが火を消した。
わたしは 鉱石のひとつを手に取って、鍋の上で削り、粉をぱらぱらと落とす。
これまでの1時間、な~~んにもしなかったエースが、や~~っと重い腰を上げ、大釜の中に向かって 魔力を込め始めた。
これが最後の工程。
もうすぐ、くすりが完成する。
「確かに、パンクするかも……。
でもさ、イグニハイドとかディアソムニアとか、あんまり参加しなさそうだよね。」
「確かにそうなんだゾ。」
「でもあそこも王族とか妖精とか、名家出身の学生が多いし、来るやつも結構いるんじゃないか?」
「妖精まで通っているのか……すごいなこの学園……」
鍋の中から、ほのかな柑橘系の香りがし始めた。
くすりが出来たようだ。
グリムが小瓶を4つ持ってきてくれた。
あとはこれに詰めるだけだ。
「ていうか、ダンスのジャンルとかすごいことなりそうだけど、いいのかな。
ハーツラビュル生のダンスはポップとかロックっぽいけど、
ポムフィオーレって社交ダンスとか踊りそうじゃない?笑」
「わかるw 大変なことになりそう」
「ちょっと見てみたくなってきたんだゾ!」
4人で どんちゃん騒いでいると、カンカンに怒ったクルーウェル先生が現れた。
先生は、わたしたちを一列に正座させ、横並びの四つの背中を 順に鞭でピシャリとたたいた。
いたい!!
ひとしきりわたしたちを怒ったクルーウェル先生は、
瓶詰めになったわたしたちの初級変身薬を見、「及第点だ」と言った。
良かった。
くすりの出来が良かったお陰で、罰は受けずに済みそう。
先生は ほっとした顔のわたしたちに、掃除をきちんとするよう言い渡して 去っていった。
ぢくぢくと痛む背中に悪態をつきながら四人で実験器具を洗っていると、終業のベルが鳴り響いた。
昼休みだ!!