猫の日
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※ご都合主義展開
※シャボンディ以降、パンクハザード編より前だと思われます。
「キャプテーーーン!!!!」
朝っぱらから勢いよく食堂に入ってくるイッカク。部屋から走ってきたと思われる彼女は、真っ直ぐにローのもとへ歩いてきた。
「どうした」
「シノが、なんか変なことに……!!」
「……変?」
焦っている割にはなんとも煮え切らない説明をする。体調が悪いのであればそう伝えるはずなので、病気の類ではないはずだ。具体的な説明がしづらいのか、イッカクはその場でうぅんと唸る。
「あー……とりあえず来てもらえます?」
イッカクがそこまで説明に困るような事象が起きているのであれば、行かないわけにもいかない。ローと野次馬のベポ達は言われるがままに女子部屋へ向かった。部屋の前に着いたところで、何故かイッカクはドアを開けずにスッと後ろに下がった。
「お前なんで下がるんだよ?」
「これは直接みた方がおもしろ……早いかと思って」
「キャプテンどうぞ」
何も分かってないはずのシャチ、ペンギンも、イッカクにならってどうぞどうぞと下がる。いちいちツッコむのも面倒臭いので、ローはがちゃりと部屋のドアを開けた。……そして、そっと閉じた。
「キャプテン!?」
「……いや、なんか面倒臭……厄介なものを見ちまった気がした」
頭を抱えるロー。シノがベッドに座って頭を抱えているのが見えた。一瞬目が合って、イッカクのいう"変"の理由がチラリと見えたうえで、思わずドアを閉じてしまった。
「キャプテン!?なんで閉めちゃうの!?」
「あ、シノ」
バタンと大きな音を立てて再びドアが開く。今度は中から開けられ、シノが飛び出してきた。シノはそのまま目の前のローに抱きついた。いつも通りのシノ……とは言えない大きな特徴に、その場の全員が一瞬で気付いた。
「「「み、耳ー!?!?」」」
そう、シノの頭に、動物の耳が付いていた。
獣耳の形状から、恐らく猫の耳だろうと思われる。無論、普通の人間の耳もついているので、現状耳が4つある不思議な状態だ。この場合、全部から音が聞こえるのだろうか。そんなどうでもいいことを考え現実逃避しながら、ローはとりあえず、引っ付いているシノを引き剥がした。
「一応聞くが、何がどうしてそうなった……?」
「朝起きたらなんか生えてた!!」
後ろで腹を抱えて笑っている奴らを放って、状況確認を実施する。昨日の夜までは何もなく普通に眠りについたが、今朝起きたらこうなっていたらしい。正直、医学的な知識でどうこうなる問題とは思えない。とはいえ、不安そうにこちらを見てくるシノを無視するわけにもいかない。
「……とりあえず、検査、するか……?」
「俺、血液検査の準備してくる!」
「じゃあ俺は悪魔の実の能力かも知れねェし、一応図鑑見てくるわ」
言っておいてなんだが、何の検査をすると言うのか。一通り笑って満足したのか、テキパキと動くベポ達にならって、とりあえずシノをつれて診察室へ向かった。
ベポによる血液検査も特に異常なし。人間と変わらない数値だった。スキャンもしてみるも、当然何も解決はしない。本当に耳が生えており、付け耳によるドッキリではないことを確認したくらいだ。むしろもう一つ新しいものを発見してしまった。
「ちょっと待て、お前それ尻尾も生えてねェか?」
「え!?確かになんかむずむずするとは思ったけど!?起きた時は無かったよ!?」
何故本人が気が付かないのか。つなぎを着ているせいで外には出ていないにしても違和感はあるだろう。それよりも朝は無かったものが生えたということは、少しずつ猫に近づいているとでもいうのか。
「あ、本当だ。尻尾あった」
「当たり前のように目の前で脱ぐな」
視界の端でもぞもぞしていると思えば、つなぎを上だけ脱いで、ひょっこりと白い尻尾を覗かせた。中にインナーを着ているので問題はないと言えど、男の前で堂々と脱ぐその精神はどうかと思い、ローは頭を抱えた。
「……ベポ、お前どう思う」
「んー……ミンク族とも違うし、シャチが言ってた通り悪魔の実の能力か変な薬飲んだかじゃないかな」
「だよな……」
あり得るとしたら昨日上陸していた島だ。シノはロー達とは別行動していたため、知らないどこかでシノが偶然何かしらの能力を受けた可能性もある。
「シノ。昨日何か……ってどこ行くんだ?」
「飽きちゃった、あとお腹すいちゃった」
「はぁああ!?」
周りが真剣に悩んでる中、変なことを言い出すシノ。あまりにのんきな発言に思わず大きな声が出てしまった。隣にいたベポもポカンと口を開いている。
「キャプテン、これ、猫化進んでない?普段のシノだったら絶対そんなこと言わないし」
言われてみれば。ローが真剣に悩んでいるのであれば喜んで協力するようなシノが、こんな発言をするとは思えない。今もベポが掴んでいなければどこかへ行ってしまいそうだ。
「ベポ、こいつに飯持ってきてやれ。念のため猫が食べられるもの調べろよ。ついでにシャチに状況確認だ」
「アイアーイ」
「シノは、とりあえず落ち着け」
「なんか体が勝手に……」
診察室の椅子はすぐに後ろを向けるように回る仕様になっている。その椅子でくるくる回るシノ。とりあえずすぐ横にあるベッドに座り直させ、ローもその横に腰掛けて、シノの手を掴んだ。猫の習性を考えると、一度見失うと探すのが大変かもしれない。機関室の狭い場所に潜り込まれたら厄介だ。食事を取り、少しは落ち着いてくれれば良いが。
「昨日、何か変なもの食ったり飲んだり、変なやつに会ったりしなかったか」
「……それ考えて見たんだけど、イッカクとお茶した時、なんか変な味した」
「絶対、それだろ」
一瞬で原因がわかってしまった。いや、もちろん他の可能性もあるが、どう考えても怪しい。今からその島に戻ってその店を問いただすべきか。シノを一人で放置はできないので、ベポが戻ってきたら即船を戻すしかない。一口飲んで味がおかしかったので、豆の品質が悪いか保存方法が悪いのだろうと判断し、イッカクのものが運ばれてくる前に店を出たらしい。飲んだ量が少なかったから効果が出るのが遅かったのか。
その成分が体内から排出されれば戻るのであれば明日くらいには戻るかも知れないが、そうではない可能性もある。能力で薬を抜くことも出来るが、飲んだ量が少なかったせいか、スキャンをしてぱっと見でわからなかった。そうなると、現物を見て成分を確認した方が正確に処置できる。いっそ解毒剤が手に入ればそれがベストだ。
そんな事を考えていると、突然、シノが寄りかかってきた。頭をローの腕にすりすりとなすりつけている。猫がよくやる行動だ。人や物に匂いをつけて、自分の縄張りを主張する行動らしい。ローはため息を漏らし、本日何度目かわからないが頭を抱えた。
「おい、勝手にマーキングするな」
「にゃー………」
「「!?」」
その返しに思わずシノを見る。と同じようにシノも驚いた表情でローを見た。
「私、今なんて言った……?」
どうやら無意識に出たものらしい。これはベポが戻ってくるまで待っている場合ではない。驚いて目を丸くしてこちらを見ているシノを抱えてローは診察室を出た。
キッチンへ向かうとベポが本を見ながらペンギンとイッカクと一緒に調理をしていた。
「ベポ!!!!」
「あ、キャプテン、今とりあえず食べられそうなものを……」
「昨日の島に船を戻せ!!こいつらが行った店、問い詰めに行くぞ!!」
「りょ、りょーかい!!すぐ戻す!!」
慌ててキッチンを飛び出していくベポ。今、舵をとっているはずのハクガンに相談に行くのだろう。その様子を見て、食堂で図鑑を読んでいたシャチがローに寄ってきた。
「原因わかったのか?」
「何か盛られた可能性がある」
「……もしかして昨日の店の……ごめんキャプテン」
「イッカクが謝る事じゃねェ。むしろお前だけでも無事で良かった」
ぽんとイッカクの頭に手を乗せる。どう考えても悪いのは店だ。彼女が責任を感じる必要はない。相手が海賊と認識した上で盛ったのかは定かではないが、クルー達に危害を加えられるとは。しかもわざと女性を狙った可能性もある。ローはふつふつと怒りを覚えた。
シノはローに抱えられままいつのまにかうとうとし始めた。そのうちシノの自我がなくならないとも限らない。先ほどのように喋れなくなり意思疎通もできなくなってしまうかもしれない。そんなこちらの気持ちを知ってか知らずか、のんきに尻尾を人に巻きつけてくつろいでいるシノ。
「シノ、寝るな、まだ喋れるか?」
「まだ大丈夫……だと思う」
くつろいでいるように見えたが、少し手が震えていた。シノも自分が自分で無くなりそうで不安を感じ、猫の性にあらがっているのだろう。笑顔を浮かべてはいるが、不安そうに見える。
「キャプテン、もし完全に猫になっちゃっても、船に置いといてくれる?」
「うちのクルーを猫にさせるわけねェだろうが、俺は医者だぞ」
「そうだね、じゃあ安心だ」
普通であれば医者にどうこうできるものとは思えないが、ローには能力があるのでなんとか出来る。元の薬さえ入手できれば成分を確認して綺麗さっぱり抜いてみせる自信もある。
「おい、だから俺にマーキングするなって言って、ん……」
「「「あ…………」」」
またしても擦り寄ってきたシノを止めようとした時だった。口と口が当たった。固まるローに、シノは目を細めて満足げに笑った。
「にゃぁ〜」
この反応は。見た目は人に猫耳と尻尾が生えただけだが、中身は完全に猫だ。その場にいた全員が黙ってシノを見る。
「……ペンギン、これ持ってろ」
「いや、さすがにちょっと……」
「あ、私、代わります!!」
シノを引き剥がしイッカクに放り投げ、操舵室へ向かう。まだ浮上はしていないが、もうすぐそこに島は見えているようだ。
「キャプテン、もうちょい近づいたら浮上して……」
「……ROOM……シャンブルズ」
「「「「あ…………」」」」
船が接岸するまで待っていられず、ローは他のクルー達を置いて先に島へ上陸していった。
それから先はすぐに片付いた。店に殴り込みをし、ベポ達が駆けつける頃にはローひとりで制圧を終えていた。その後事情聴取したところによると、1,2名で来た観光の女性客を選び薬を盛り、猫化に伴う体調不良の看病のフリをして捕まえ、売り捌いていたらしい。解毒剤(と売上金)を回収し、店員全員能力で切り刻み、一応海軍へも通報した上で、ハートの海賊団はその場を後にした。
「あ、おかえりなさい!!」
船に戻るとシノは診察室のベッドで丸くなって眠っていた。猫はよく眠ると聞いたことはあるが、ずっと眠っていたらしい。毛布をかけられて気持ちよさそうに眠っている。ローは奪ってきた解毒剤をイッカクに渡した。
「起こしてこれを飲ませておけ。睡眠薬の成分も入ってるからその後しばらく寝るだろうが起きる頃には治ってるはずだ」
「キャプテンが飲ませなくて良いんですか?」
きょとんと不思議そうに聞いてくるイッカク。悪気は一切ないのだろう。
「飲ませるだけなら誰でも問題ないだろ」
「キャプテン近付いたらまた襲われるかもしれねェもんな」
「めちゃくちゃ懐かれてたからなー」
「……お前らどっちか、こいつ部屋に運んどけよ。ここでイッカクに看病させるわけに行かねェだろ」
「「えーーーー」」
不満そうなシャチとペンギンを放置し、ベポを連れてローは部屋を後にした。
***
「「キャプテーーーン!!!」」
朝っぱらから勢いよく食堂に入ってくるシノとイッカク。二人揃って仲の良いことだ。
「無事取れたよーお騒がせしましたー!!」
「そりゃよかったな」
見て見てと頭を下げてわざわざ見せてくるシノ。イッカクもやはり責任を感じていたのか、昨日はやや強張っていた表情も、いつも通りに戻っていた。朝一で飛び込んで来た時は、まさかあんなことになるとは誰も思っていなかった。島によっては、女子二人の行動は注意させないといけないかもしれない。
ローは念のためシノの頭を触り、本当に何もない事を確認した。
「なぁなぁ、シノ、昨日の記憶ちゃんと残ってるのか?」
「いやー……正直途中からもう何が何だかわからなくて……」
「そのまま忘れとけ」
お互いの為にもそれが良い。もし思い出したら土下座をして平謝りしてくることだろう。それはそれで図としては面白いが、その話題を掘り返されるのはローとしても正直避けたい。
「あ、でもキャプテンが何とかしてくれるって言ってたのはぼんやり覚えてるよ。ありがと、キャプテン」
「……あぁ」
そう言って目を細めて満足げに笑うシノ。話題にされずとも、結局その時のことを思い出させられることになるとは。本当は覚えているのではないかと疑いたくなるが、シノがそんなに器用な人間ではないことは十分知っている。
なんとなく気まずくなって、ローはそっと目線を逸らし返事をした。
end.
※シャボンディ以降、パンクハザード編より前だと思われます。
「キャプテーーーン!!!!」
朝っぱらから勢いよく食堂に入ってくるイッカク。部屋から走ってきたと思われる彼女は、真っ直ぐにローのもとへ歩いてきた。
「どうした」
「シノが、なんか変なことに……!!」
「……変?」
焦っている割にはなんとも煮え切らない説明をする。体調が悪いのであればそう伝えるはずなので、病気の類ではないはずだ。具体的な説明がしづらいのか、イッカクはその場でうぅんと唸る。
「あー……とりあえず来てもらえます?」
イッカクがそこまで説明に困るような事象が起きているのであれば、行かないわけにもいかない。ローと野次馬のベポ達は言われるがままに女子部屋へ向かった。部屋の前に着いたところで、何故かイッカクはドアを開けずにスッと後ろに下がった。
「お前なんで下がるんだよ?」
「これは直接みた方がおもしろ……早いかと思って」
「キャプテンどうぞ」
何も分かってないはずのシャチ、ペンギンも、イッカクにならってどうぞどうぞと下がる。いちいちツッコむのも面倒臭いので、ローはがちゃりと部屋のドアを開けた。……そして、そっと閉じた。
「キャプテン!?」
「……いや、なんか面倒臭……厄介なものを見ちまった気がした」
頭を抱えるロー。シノがベッドに座って頭を抱えているのが見えた。一瞬目が合って、イッカクのいう"変"の理由がチラリと見えたうえで、思わずドアを閉じてしまった。
「キャプテン!?なんで閉めちゃうの!?」
「あ、シノ」
バタンと大きな音を立てて再びドアが開く。今度は中から開けられ、シノが飛び出してきた。シノはそのまま目の前のローに抱きついた。いつも通りのシノ……とは言えない大きな特徴に、その場の全員が一瞬で気付いた。
「「「み、耳ー!?!?」」」
そう、シノの頭に、動物の耳が付いていた。
獣耳の形状から、恐らく猫の耳だろうと思われる。無論、普通の人間の耳もついているので、現状耳が4つある不思議な状態だ。この場合、全部から音が聞こえるのだろうか。そんなどうでもいいことを考え現実逃避しながら、ローはとりあえず、引っ付いているシノを引き剥がした。
「一応聞くが、何がどうしてそうなった……?」
「朝起きたらなんか生えてた!!」
後ろで腹を抱えて笑っている奴らを放って、状況確認を実施する。昨日の夜までは何もなく普通に眠りについたが、今朝起きたらこうなっていたらしい。正直、医学的な知識でどうこうなる問題とは思えない。とはいえ、不安そうにこちらを見てくるシノを無視するわけにもいかない。
「……とりあえず、検査、するか……?」
「俺、血液検査の準備してくる!」
「じゃあ俺は悪魔の実の能力かも知れねェし、一応図鑑見てくるわ」
言っておいてなんだが、何の検査をすると言うのか。一通り笑って満足したのか、テキパキと動くベポ達にならって、とりあえずシノをつれて診察室へ向かった。
ベポによる血液検査も特に異常なし。人間と変わらない数値だった。スキャンもしてみるも、当然何も解決はしない。本当に耳が生えており、付け耳によるドッキリではないことを確認したくらいだ。むしろもう一つ新しいものを発見してしまった。
「ちょっと待て、お前それ尻尾も生えてねェか?」
「え!?確かになんかむずむずするとは思ったけど!?起きた時は無かったよ!?」
何故本人が気が付かないのか。つなぎを着ているせいで外には出ていないにしても違和感はあるだろう。それよりも朝は無かったものが生えたということは、少しずつ猫に近づいているとでもいうのか。
「あ、本当だ。尻尾あった」
「当たり前のように目の前で脱ぐな」
視界の端でもぞもぞしていると思えば、つなぎを上だけ脱いで、ひょっこりと白い尻尾を覗かせた。中にインナーを着ているので問題はないと言えど、男の前で堂々と脱ぐその精神はどうかと思い、ローは頭を抱えた。
「……ベポ、お前どう思う」
「んー……ミンク族とも違うし、シャチが言ってた通り悪魔の実の能力か変な薬飲んだかじゃないかな」
「だよな……」
あり得るとしたら昨日上陸していた島だ。シノはロー達とは別行動していたため、知らないどこかでシノが偶然何かしらの能力を受けた可能性もある。
「シノ。昨日何か……ってどこ行くんだ?」
「飽きちゃった、あとお腹すいちゃった」
「はぁああ!?」
周りが真剣に悩んでる中、変なことを言い出すシノ。あまりにのんきな発言に思わず大きな声が出てしまった。隣にいたベポもポカンと口を開いている。
「キャプテン、これ、猫化進んでない?普段のシノだったら絶対そんなこと言わないし」
言われてみれば。ローが真剣に悩んでいるのであれば喜んで協力するようなシノが、こんな発言をするとは思えない。今もベポが掴んでいなければどこかへ行ってしまいそうだ。
「ベポ、こいつに飯持ってきてやれ。念のため猫が食べられるもの調べろよ。ついでにシャチに状況確認だ」
「アイアーイ」
「シノは、とりあえず落ち着け」
「なんか体が勝手に……」
診察室の椅子はすぐに後ろを向けるように回る仕様になっている。その椅子でくるくる回るシノ。とりあえずすぐ横にあるベッドに座り直させ、ローもその横に腰掛けて、シノの手を掴んだ。猫の習性を考えると、一度見失うと探すのが大変かもしれない。機関室の狭い場所に潜り込まれたら厄介だ。食事を取り、少しは落ち着いてくれれば良いが。
「昨日、何か変なもの食ったり飲んだり、変なやつに会ったりしなかったか」
「……それ考えて見たんだけど、イッカクとお茶した時、なんか変な味した」
「絶対、それだろ」
一瞬で原因がわかってしまった。いや、もちろん他の可能性もあるが、どう考えても怪しい。今からその島に戻ってその店を問いただすべきか。シノを一人で放置はできないので、ベポが戻ってきたら即船を戻すしかない。一口飲んで味がおかしかったので、豆の品質が悪いか保存方法が悪いのだろうと判断し、イッカクのものが運ばれてくる前に店を出たらしい。飲んだ量が少なかったから効果が出るのが遅かったのか。
その成分が体内から排出されれば戻るのであれば明日くらいには戻るかも知れないが、そうではない可能性もある。能力で薬を抜くことも出来るが、飲んだ量が少なかったせいか、スキャンをしてぱっと見でわからなかった。そうなると、現物を見て成分を確認した方が正確に処置できる。いっそ解毒剤が手に入ればそれがベストだ。
そんな事を考えていると、突然、シノが寄りかかってきた。頭をローの腕にすりすりとなすりつけている。猫がよくやる行動だ。人や物に匂いをつけて、自分の縄張りを主張する行動らしい。ローはため息を漏らし、本日何度目かわからないが頭を抱えた。
「おい、勝手にマーキングするな」
「にゃー………」
「「!?」」
その返しに思わずシノを見る。と同じようにシノも驚いた表情でローを見た。
「私、今なんて言った……?」
どうやら無意識に出たものらしい。これはベポが戻ってくるまで待っている場合ではない。驚いて目を丸くしてこちらを見ているシノを抱えてローは診察室を出た。
キッチンへ向かうとベポが本を見ながらペンギンとイッカクと一緒に調理をしていた。
「ベポ!!!!」
「あ、キャプテン、今とりあえず食べられそうなものを……」
「昨日の島に船を戻せ!!こいつらが行った店、問い詰めに行くぞ!!」
「りょ、りょーかい!!すぐ戻す!!」
慌ててキッチンを飛び出していくベポ。今、舵をとっているはずのハクガンに相談に行くのだろう。その様子を見て、食堂で図鑑を読んでいたシャチがローに寄ってきた。
「原因わかったのか?」
「何か盛られた可能性がある」
「……もしかして昨日の店の……ごめんキャプテン」
「イッカクが謝る事じゃねェ。むしろお前だけでも無事で良かった」
ぽんとイッカクの頭に手を乗せる。どう考えても悪いのは店だ。彼女が責任を感じる必要はない。相手が海賊と認識した上で盛ったのかは定かではないが、クルー達に危害を加えられるとは。しかもわざと女性を狙った可能性もある。ローはふつふつと怒りを覚えた。
シノはローに抱えられままいつのまにかうとうとし始めた。そのうちシノの自我がなくならないとも限らない。先ほどのように喋れなくなり意思疎通もできなくなってしまうかもしれない。そんなこちらの気持ちを知ってか知らずか、のんきに尻尾を人に巻きつけてくつろいでいるシノ。
「シノ、寝るな、まだ喋れるか?」
「まだ大丈夫……だと思う」
くつろいでいるように見えたが、少し手が震えていた。シノも自分が自分で無くなりそうで不安を感じ、猫の性にあらがっているのだろう。笑顔を浮かべてはいるが、不安そうに見える。
「キャプテン、もし完全に猫になっちゃっても、船に置いといてくれる?」
「うちのクルーを猫にさせるわけねェだろうが、俺は医者だぞ」
「そうだね、じゃあ安心だ」
普通であれば医者にどうこうできるものとは思えないが、ローには能力があるのでなんとか出来る。元の薬さえ入手できれば成分を確認して綺麗さっぱり抜いてみせる自信もある。
「おい、だから俺にマーキングするなって言って、ん……」
「「「あ…………」」」
またしても擦り寄ってきたシノを止めようとした時だった。口と口が当たった。固まるローに、シノは目を細めて満足げに笑った。
「にゃぁ〜」
この反応は。見た目は人に猫耳と尻尾が生えただけだが、中身は完全に猫だ。その場にいた全員が黙ってシノを見る。
「……ペンギン、これ持ってろ」
「いや、さすがにちょっと……」
「あ、私、代わります!!」
シノを引き剥がしイッカクに放り投げ、操舵室へ向かう。まだ浮上はしていないが、もうすぐそこに島は見えているようだ。
「キャプテン、もうちょい近づいたら浮上して……」
「……ROOM……シャンブルズ」
「「「「あ…………」」」」
船が接岸するまで待っていられず、ローは他のクルー達を置いて先に島へ上陸していった。
それから先はすぐに片付いた。店に殴り込みをし、ベポ達が駆けつける頃にはローひとりで制圧を終えていた。その後事情聴取したところによると、1,2名で来た観光の女性客を選び薬を盛り、猫化に伴う体調不良の看病のフリをして捕まえ、売り捌いていたらしい。解毒剤(と売上金)を回収し、店員全員能力で切り刻み、一応海軍へも通報した上で、ハートの海賊団はその場を後にした。
「あ、おかえりなさい!!」
船に戻るとシノは診察室のベッドで丸くなって眠っていた。猫はよく眠ると聞いたことはあるが、ずっと眠っていたらしい。毛布をかけられて気持ちよさそうに眠っている。ローは奪ってきた解毒剤をイッカクに渡した。
「起こしてこれを飲ませておけ。睡眠薬の成分も入ってるからその後しばらく寝るだろうが起きる頃には治ってるはずだ」
「キャプテンが飲ませなくて良いんですか?」
きょとんと不思議そうに聞いてくるイッカク。悪気は一切ないのだろう。
「飲ませるだけなら誰でも問題ないだろ」
「キャプテン近付いたらまた襲われるかもしれねェもんな」
「めちゃくちゃ懐かれてたからなー」
「……お前らどっちか、こいつ部屋に運んどけよ。ここでイッカクに看病させるわけに行かねェだろ」
「「えーーーー」」
不満そうなシャチとペンギンを放置し、ベポを連れてローは部屋を後にした。
***
「「キャプテーーーン!!!」」
朝っぱらから勢いよく食堂に入ってくるシノとイッカク。二人揃って仲の良いことだ。
「無事取れたよーお騒がせしましたー!!」
「そりゃよかったな」
見て見てと頭を下げてわざわざ見せてくるシノ。イッカクもやはり責任を感じていたのか、昨日はやや強張っていた表情も、いつも通りに戻っていた。朝一で飛び込んで来た時は、まさかあんなことになるとは誰も思っていなかった。島によっては、女子二人の行動は注意させないといけないかもしれない。
ローは念のためシノの頭を触り、本当に何もない事を確認した。
「なぁなぁ、シノ、昨日の記憶ちゃんと残ってるのか?」
「いやー……正直途中からもう何が何だかわからなくて……」
「そのまま忘れとけ」
お互いの為にもそれが良い。もし思い出したら土下座をして平謝りしてくることだろう。それはそれで図としては面白いが、その話題を掘り返されるのはローとしても正直避けたい。
「あ、でもキャプテンが何とかしてくれるって言ってたのはぼんやり覚えてるよ。ありがと、キャプテン」
「……あぁ」
そう言って目を細めて満足げに笑うシノ。話題にされずとも、結局その時のことを思い出させられることになるとは。本当は覚えているのではないかと疑いたくなるが、シノがそんなに器用な人間ではないことは十分知っている。
なんとなく気まずくなって、ローはそっと目線を逸らし返事をした。
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