象の上の国
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バルトロメオの船に乗せてもらいドレスローザを出発した一行。想定外に波乱万丈な航海を続ける事一週間でようやく目的地に到着した。シノはローの持つビブルカードをまじまじと見る。
「ビブルカード、反応してるけど……これ?」
「あぁ。深い霧と押し返す海流で侵入を阻む島だと聞いている」
「ルフィくん、着いたってー!!」
霧の中の大きな影を指さし、シノはルフィを呼んだ。新しい島と聞きつけて嬉々と飛んできたルフィだったが、その姿を見て目を見開いた。
「トラ男お前これ……象じゃねェか!!」
「あぁ、ゾウは巨大な象の背に栄えた土地の名だ」
「えええ~!?生きてんのかこれ!?」
驚くのも無理はない。事前に話には聞いていたといえど、初めて見たシノとしてもさすがに信じられなかった。見たこともない大きな象が、海の上を歩いている。深い海を当たり前のように歩けるとは、どれだけ大きな象なのか。
ゾウの足元にたどり着くと、つい先日まで乗っていたサウザンド・サニー号が足に括り付けられていた。これでサンジ達先に向かったメンバーが、無事にたどり着いていることが確定した。
「それで、どうやってのぼるの?」
「ここはそれがしに任せてもらおう」
そう言ってカン十郎は何やら大きな筆でサニー号の甲板に絵を描きだした。足と角が生えている細長い何者かが書かれていくのを見守る。
「出でよ!昇り龍!!」
「龍!?」
「なんだか気の毒な生き物出てきたー!!」
よくわからないが、ピンク色の少々弱弱しい見た目の細長い生物は、龍だったらしい。言われてみれば見えないこともない。龍とは言うものの、飛ばないらしく、ひたすら象の足をこの龍が這って昇ってくれるようだ。
「待って、ほぼ垂直のこれに乗って掴まるの?」
「ちゃんと捕まらないと海に真っ逆さまね」
「怖い事、笑顔で言わないで!?」
とりあえずロビンの後ろに座り、ピンク色の龍の背の出っ張りに掴まる。出っ張りと出っ張りの間がちょうど席のようになっており、意外と安定感はあったが、それでも昇っている間ずっと背に掴まっていないといけないとなると、腕が疲れそうだ。
「ちゃんと後ろいてね!?最悪落ちそうになったら拾ってね!?」
「わかったからちゃんと前向いてろ」
「はーい」
すぐ後ろに乗り込んできたロー。その後ろにはもっと大きいフランキーもいるので、最悪落ちたとしても誰かに引っかかって助かるだろう。ゆっくりと昇っていく歩く龍。霧がかかっていて上の方は見えないが、まだまだかかりそうだ。
「そういやお前ら何でゾウに行きてェんだっけ、キンえもんとカンジューロー」
一番前に乗っているルフィがくるりと頭だけ振り返り、一番後ろに乗っている錦えもんたちに声をかけた。ドレスローザに向かう途中で象に行きたいという話を聞いた。元々4人でゾウを目指していたが、いろいろあってはぐれてしまった仲間を集めていたのが今までのパンクハザード・ドレスローザに立ち寄った経緯だった。
「そうでござるな、いずれ全てを話さねばならぬが、まずは安心させてくれ」
「うむ……ワノ国を出て、このゾウこそが我らの目的地。モモの助は無事であるか、また海上にて逸れたもう一人の同心、忍者の雷ぞうは無事にこの島に着いておるか確認した」
「え!?ニンジャ!?ニンジャなのか!?」
カン十郎の"忍者"という単語に反応し、前に座っていた男性陣がくるりと振り返り、錦えもんとカン十郎をキラキラした目で見る。ロビンとシノも釣られるようにちらりと、錦えもん達を見た。
「……何?」
「ロボの時もだけど、みんな忍者とかロボとか好きだよね」
「トラ男くんもそういうの好きなのね」
「まぁヒーローものとかも昔から結構好きだし……」
ロビンからしたら意外だったかもしれないが、ローもなんやかんやペンギン達と一緒に絵物語に夢中だった時期もあった。今もその心は変わらないのだろう。ルフィ風に言うと男のロマンってやつらしい。シノも多少忍者に興味はあるが、さすがに彼らほどの熱量ではない。
「ロビンさんは……」
「待って!上を見て!何か降ってくる!」
「え?」
言われるがままに全員で上を見る。猿のような小さな生き物がエテテテと叫びながら落下してきている。このままでは直撃コースだ。
「危ねェ!よけろ~~~!!!」
ルフィの声に一同右に体を傾けて避ける。なんとかぶつからずに済んだ。そう思ったのだが、残念ながら後ろの方までちゃんと情報が伝達されなかったようだ。落ちてきた生物は錦えもんに直撃した。そしてその後ろにいたカン十郎も含め、龍の背中から落ちていく。
「錦えもんー!カン十郎ー!!」
「海に落ちたか!?助けに行こう!!」
「おい、龍!下へ引き返……」
涙と鼻水を垂らしながら必死でゾウを上り続けている龍。とてもじゃないが引き返してまた昇りなおす等出来るようには見えない。さすがのゾロも最後まで言い切ることが出来なかったようだ。
「辛そうだ、このまま行って貰おう……!」
「悪いけど先行くぞー!後で会おうー!」
遠くから、「承知した」という返事が聞こえてきたので、生きてはいるようだ。あの状況で落ちて何故生きているのか甚だ疑問だ。二人とも悪魔の実の能力者だ。何らかの手段で海には落ちずに済んだようだ。
「ねぇ、これ能力で描いた絵でしょ?そんな辛そうとか気にする必要ある?」
「お前は鬼か!?」
「意外と冷たいのね……」
「あれ、これ私がおかしいの!?」
「……」
恐らくローも同じことを思っているだろうが、面倒臭いのか何も言わなかった。
日が大分傾いてきた頃、ようやくてっぺんまでたどり着いた。見知らぬ土地を探索するにあたり、完全に夜を迎える前にたどり着けて良かった。ゾウの上には確かに文明があるようだ。自然に囲まれており木々が多いが、確かにその中に明らかな人工物がある。目の前の立派な門は苔むしており、作られてからの時間の経過を感じられる。
「物見やぐらもあるが見張りはなし……国としちゃ手薄だ」
「確かに見張りがいないなんて意味ないよね」
「そもそもそう簡単にたどり着けないがな」
ビブルカードでしかたどり着けない島。偶然ゾウを見かけたとしても、その上に文明が築かれている等、知らなければ夢にも思わない。 いつの間にかルフィが物見やぐらの上に登り叫んでいる。上からであればこの国がある程度一望できるはずだ。
「ルフィくん、何か見える~?」
「すげェなこれがゾウの背中かァ!?森があって川もあって町もあるぞ!」
町があるのであればまずはそこに向かうのが良いかもしれない。仲間達も問題なく到着していればそこにいる可能性が高い。きょろきょろとあたりを見回しながら門を抜ける。
「ゾロ、錦えもん達を待たなくても?」
「広いつっても大陸じゃねェんだ。先に行こう」
「それにしてもこの門、何のためにあるんだろう」
見張りもいない、門の構造はとっているが肝心の封鎖する扉が無い。いくらたどり着くのが困難と言えど、そもそもの門の役割をほぼ果たしていない。噂ではミンク族は人を好まない排他的な種族と聞いたことがある。ベポを見てきた限り俄かに信じがたいが、例えそうだとしたらもっと厳重な見張り体制をとっているはずだ。
「開いてんじゃねェなこれは……誰かにこじあけられてる」
「確かにこの道も妙だぞ、森の獣道と言うにゃ広すぎる」
「こりゃ明らかに破壊の跡じゃねェか!それもまだ新しい……あいつら大丈夫か!?」
門を抜けた先は明らかに破壊された跡があった。道らしき道はあるが、周りの木々は倒され、元は整備された道と森の境として使われていたと思われる岩が崩れている。断面を見る限り、フランキーの指摘する通り比較的最近に倒されたものだ。この時点でこの状態となると、ルフィの見たという町も無傷ということはないだろう。
ゾウの皮膚である地面を踏み締めながら、倒れた木々の障害物を避け進んでいく。
「うわぁー!!町だー!!!人いねぇー!!何だこの国ボロボロだ!!」
やはり町も通ってきた道同様、建物が壊れ、誰一人として姿が見えなかった。歴史のありそうな街並みの奥には大層大きく立派な木がそびえ立っている。ドレスローザとはまた違うかしっかりした文明の元栄えていた都だったことがうかがえる。そんな町を一人駆け抜けて行くルフィ。彼が迷子になったとしても困ることはないのか、誰一人として止めるようなことはしない。シノはロビンと並び、町の中を眺めた。
「何が起きたんだ…!?かすかに火薬の匂いも……ガスの匂いもしねェか?」
「何なんだよ……たまには平和な国でのんびり……」
ガクガクと震えるウソップ。シノはフランキーの言葉に、あたりの匂いを嗅ぐ。言われてみればほのかにガスの匂いがした。ガスといえば、ふと脳裏を過ぎるものはあるが、さすがにサンジ達がついていて奴が何かをやらかすとは思えない。
「 「 「!」 」 」
ぴくりとゾロ、ロー、フランキーが反応した。森の中からの殺気に反応したのだろう。シノにも分かるほどなので、ロビンも気付いただろうが、彼らに任せるつもりなのか戦闘態勢には入らなかった。
森の中から真っ直ぐにこちらへ何者かが突撃してくる。すぐさま刀で対応したゾロの剣筋を見抜いたのかくるりと空中でジャンプし器用によけ、爪をゾロに伸ばす。ゾロもすかさず刀で受け止めたが、バチリと音が響いた。雷のような電撃の音だ。ようやくはっきりと見えた敵の姿、うさぎだ。金髪のうさぎのミンク族だ。
「待て!!やめるのだキャロット!!」
森の中から大きなワニのような生物に乗った別の人物が飛び出してきた。そちらは恐らく犬のミンク族だろう。背中に剣を背負っている。彼女はうさぎのミンク族のキャロットを呼びにきたようだ。
「そティアらはよいのだ!それより今くじらの森に侵入者が!」
「ミンク族!!」
「ベポ以外初めて見た!」
スラリとして綺麗な姿の犬のミンク族のいうくじらの森が、町の先にあった大きなくじらの形をした木を指しているとしたら、侵入者はルフィのことであろう。町にミンク族達はいなかったが、森に潜んでいたのか。ウソップが犬のミンク族の着ている服に動揺している。どうやらナミが着ていたものらしい。しかし、彼女は焦っているのかこちらには一切反応せず、うさぎのキャロットと会話を続ける。
キャロットは空高く跳び、くじらの森の状況を確認した。人間離れした跳躍力はうさぎのミンク族ならではなのだろうか。
「どうだ、見えるか!?」
「くじらの森で諍いが!」
「やはりか、急ごうワーニー!乗れ、キャロット!」
ワーニーというのは恐らく彼女が乗っているワニのような大きな生き物のことだ。顔は確かにワニに見えないこともない。こちらはミンク族ではない、この国特有の生物と見える。かなり急いでいるようで、すぐさま方向をくじらの木の方へ向けた。
「ゆティアらを連行している暇はない、指示に従え!ここより右手、右尻の森を進み、闇深き沼を左折、右腹の森へ行け!ゆティアらの仲間の死体がそこに!!」
「えーーーーーー!?!?」
地名を言われても本来であればさっぱり分からないが、ゾウの右の腹の部分に当たる森に、仲間たちがいるらしい。それが、麦わらの一味なのか、ハートの海賊団なのかはわからない。どちらもここに辿り着いてはいるだろう。死体という発言も気になるが、どちらの仲間であっても簡単に死ぬような面子ではないことは確かだ。ウソップだけが鵜呑みにして泣き叫んでいる。根が素直なのだろう。
「落ち着け、ぐる眉がいるんだ、殺されるようヘマはしねェよ」
「ええ、全く信じがたいわ。トラ男くん、あなたの仲間たちがここにいるんでしょ?連絡手段は?」
「………ない、また会えるとも思ってなかったからな……」
「…………」
ローの発言に静かに睨みつけるシノと、目を逸らすロー。事情を知らないロビンが不思議そうに二人を見る。聞き捨てならない言葉に、やはり本心ではそう思っていたのかと憤りを感じたが、今更何を言っても仕方がない。シノが今何かを言うより、仲間達に怒られた方が効くはずだ。
「……ベポのビブルカードあるでしょ」
「!!あぁ、そうだ、ウチの航海士ベポのものがある」
「そういや喋るシロクマがいたな!あれもミンク族か!?」
シノがため息をつきながら指摘する。そもそもこの島にたどり着けたのも、べポのビブルカードを用意していたからだ。ローはごそごそとポケットからビブルカードを取り出した。ナミに少し分けてしまったので随分と小さくなってしまったそのカードは、問題なく存在している。彼らが無事なのは確実だ。
「ああ、ここはあいつの故郷、10年来の俺の仲間だ、信頼はできる。正確な情報を知りたければ真っ直ぐだ」
「まっすぐ行くと町があったぞ!?大丈夫か!?」
「見知らぬ動物に従うよりはいい、そこに行こう」
こういう状況では基本、ゾロに決定権があるらしい。シノとローは仲間との合流を目指している為、彼らがこちらを選んでくれるのであれば、引き続き一緒に行動が出来るので助かる。ビブルカードが町の方を指したということは、先ほどの犬のミンク族が言っていた仲間というのは麦わらの一味の方だったようだ。無論、情報が正しいのであればだが。
突然のミンク族の襲撃に少々道が逸れてしまったが、改めて町の探索へと向かう。町中は、何度見ても酷い有様だ。
「襲撃と考えて間違いなさそうね。数十万人は住める程の都市から一人残らず住人が消えるなんて……」
生活の痕跡があることから、襲撃はやはりつい最近の出来事だと推測される。大通り沿いの建物は特に損傷が激しく、崩れた建物の壁には、引き裂かれたよう爪痕も多数見受けられる。彼らの事情はまだわからないので、ミンク族同士の内乱の可能性もゼロではない。謎の巨大な生物の足跡のようなものも大通りには残されている。ミンク族にそのような大きな人物がいるのか、別の生物のしわざなのか。町の様子からいろいろな情報が読み取れるが、現時点で断定できることはただ一つだけだった。
「この国は、ほんの一二週間前に突如滅びたんだわ……!」
何が起きたのか、何者によるものか等は全く分からない。だが、ただの人間によるものではないことは確かだろう。先ほど出会ったミンク族はかなり戦闘力が高かった。ベポも元々潜在能力は高く、ハートの海賊団でもNo.2を張る強さだ。そんなミンク族達が負けるような何者か。そして、このゾウの存在を知りたどり着ける何者か。
「……きっとベポ達も襲われたよね」
「ビブルカードが無事なんだ、大丈夫だ」
「そうだよね」
分かってはいるが、心配ではある。現状命の危険に晒されていないだけで、怪我はしているかもしれない。ローもシノも一応まだ怪我人ではあるので人のことは言えないが、今は全員の無事を祈るしかない。
もう少し町の探索を続けようかとしていた時だった。突然、地響きのような音と振動が来たと思うと、空に大量の水の塊が舞った。
「何!?」
「洪水になる量よ!高い場所へ!!」
「ROOM!!」
「うわっ!?」
ぐいとローに背中のリュックを引っ張られると、パッと建物の上に着地した。麦わらの一味の面々もまとめて彼の能力で移したようだ。礼を言う間もなく、水の塊が降ってくる。高いところに避難したとしてもこの水を被ることは避けられない。シノは引き寄せられたローにそのまましがみついた。一気に降ってきた大雨はそこにいる全員をずぶ濡れにし、町の大通りが一瞬にして川と化した。
「凄かったね……本当の雨じゃないよね?」
「そうね……もしかして、今のは象の水浴びじゃないかしら」
「あー確かに海水の匂いかも」
よく見ると町もこの水位を前提として作られているようだ。この国ではあの大雨こと象の水浴びが日常となっていたのだろう。先ほどの犬のミンク族が乗っていたワニも、この雨による洪水の中の移動手段に最適だった。
「ロビンさん、凄い。色んなことがわかるんだね」
「ロビンは考古学者だからな」
「考古学?」
「こういう遺されたものからいろいろな考察を重ねて、真実を見つけ出すの」
「へぇ、かっこいい!!」
シノにはあまり馴染みのない職業だったが確かにロマンを感じる。ローも好きそうな分野だ。海賊のクルーの役割としては珍しい気もするが、様々な知らない島を冒険する中では、かなり重要な能力だ。シノ達もいろいろと推察することはあるが、専門家の知識や視点があると発想の選択肢の数や正確性が向上するだろう。この世界は本当に解明されていないことが多すぎる。シノはずぶぬれになったシャツの裾を絞りながら、川のような水を覗き込んだ。よく見ると魚が泳いでいる。これも元々この国の食糧として重宝されていたのかもしれない。
「おい、ルフィがいるぞ町の奥に!さっきのナミイヌ女もジャンプうさぎも一緒だ!しかも何か食われてらァ~!!!」
高い所からあたりを見ていたウソップが上から叫んだ。先ほどのミンク族の二人と一緒にいるらしい。やはりくじらの森の侵入者というのはルフィだった。町へ戻ってきているということは、犬のミンク族の女性が言っていた右腹の森へ向かっている可能性が高い。無事ミンク族がいることが確認できた今、ルフィと合流しておいた方が賢明だろう。
「ロー、あそこまで行ける?」
「行けるが水が引いてからの方が良いだろう」
「こっちにはカナヅチが3人いるからなァ」
「かたじけない」
フランキーの言葉にぺこりと頭を下げる。責めるつもりで言ったわけではないと分かってはいるが、何かあった時に助けてもらうため、素直に頭を下げておく。徐々に水位は下がってきており、洪水状態だった道がようやく見えてきた。地面が土ではなくゾウの皮膚の為、水捌けは良い様だ。毎日発生する現象なのであれば、それくらいでないと生活はままならないだろう。
「おい、トラ男そろそろ良いんじゃねェか」
「そうだ、ルフィを見失っちまう!!」
「……シャンブルズ」
指示されるのを嫌うローが少々嫌な顔をしたように見えたが、ちゃんと確認する前にすぐに移動させられた。パッと現れた先は森の中、シノは残念ながら上手く着地が出来ず地面にぶつかった。ゾウの皮膚がぶにぶにしているおかげで、多少の擦り傷位で済みそうだ。
「あー!お前ら!!」
ルフィの声に顔を上げる。先ほどのワニのような生物の背中に、ルフィとミンク族の二人が乗っている。随分打ち解けているようだ。先ほどもイヌの方はこちらに敵意は見えなかった。ウサギの方は何か誤解があったのかもしれない。ロビンが差し伸べてくれた手を取り、シノは立ち上がる。
「なんだ、そティアら、向かっていなかったのか。まぁよい、ちょうど目的地には着いた」
「目的地?」
背後でごごごごと大きな音を立てて門が開かれた。国の入り口の門は壊されていたが、ここは無事の様だ。イヌの女性が門番たちに経緯を説明する。本来は入口の門に見張りがおり、歓迎でも敵でも鐘がなるはずが、何故か見張りが不在だったため、いろいろとすれ違いが発生していたようだ。そして、麦わらの一味は、歓迎されるはずだったらしい。
「大切な客人だ!!大恩人の仲間にもてなしの準備を!!」
「!?」
「あァ!?」
「 「 「ガルチュー!!ようこそ!!」 」 」
門の先は、先ほどの町のような栄えた建物や水路等は無いものの、ちょっとした集落としては十分すぎるほどの環境が広がっていた。元々町以外にもこちらに住んでいたものもいたのかもしれない。そして何よりも、大量のミンク族から大歓迎を受けている。
「気になることはいろいろあるけど、べポ達はいなさそうだね」
「まぁビブルカードはあっちの森の方に反応してるからな」
仮にここに仲間たちがいたとすれば、我先にとローに飛びついていた事だろう。
大量のミンク族をかき分けてナミとチョッパーが走ってくる。すっかりこの国に馴染んでおり、通りがかるミンク族にすりすりとされている。べポしか今まで知らなかったが、本当にミンク族はスキンシップが激しいようだ。
「ルフィー!!!」
なんとかミンク族達を抜けて走ってきたナミはルフィに抱き着いた。チョッパーもウソップに抱き止められた。感動の再会のように見えたが、ナミの様子がおかしい。涙を流し震えている。
「サンジ君が……!!」
その言葉にシノとローは眉を顰め目を合わせた。確かにサンジの姿が見えない。ブルックもいないが、そちらの名前は出ないということは無事なのだろう。サンジの身に一体何があったのか。シノはナミの次の言葉を待った。
「取り込んでる所悪ィが、俺らも先に仲間と合流したい」
「あ、そうだ。あっちの森でトラ男んところのシロクマと会ったぞ」
「そうか。お互い状況の整理をしてから今後の事話すで良いか?」
「あァ、分かった!後でなトラ男、シノ!」
ルフィは既にべポ達に会ったらしい。ということはくじらの森にいるようだ。ゾウに上陸してから大分時間が経った。日が暮れるのも時間の問題だ。サンジの事も気になるが、早めに仲間たちの元へ向かった方が良さそうだ。シノはルフィ達に軽く手を振り、今くぐってきた門を抜け、大きなくじらの形をした木を目指し歩き出した。
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