懸賞金と悪魔の実
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ドレスローザで意気投合し宴を催した麦わらの一味とその傘下のものたちは、それぞれの目的地へと散らばっていった。麦わらの一味とローとシノは、そのうちの一船、バルトロメオ達の船に身を寄せることとなった。いよいよ次の目的地は、仲間たちの待つゾウだ。再会を目前にし浮足立つシノを他所に、バルトロメオ達もまた別の意味で浮足立っていた。バルトロメオ達は生粋の麦わらの一味ファンらしい。彼らに憧れて海賊になったという一風変わった海賊団だ。その船にはファン……を通り越して麦わらの一味オタクらしい趣向が凝らされており、その一つ一つを説明していく彼らをシノとローは遠巻きに見守っていた。
「世の中にハートの海賊団ファンもいるかな」
「いるだろ」
当たり前に返してきたローを見て、思わず目をぱちぱちと瞬かせた。
「とっておきの船をくれた奴がいるだろ」
海賊団結成のお祝いにポーラータング号をくれたヴォルフ。彼に限らずスワロー島の人々はきっと新聞でハートの海賊団の"悪評"を目にするたび、懐かしみながら応援してくれていることだろう。確かにその通りなのだが、まさかローから言ってくるとは思わなかった。どんなに人助けをして感謝をされても、偶然だと言って認めない彼のことだ、てっきり海賊にファンなんていないしいらないと斬り捨てると思っていたのだが。予想外の反応にシノは何となく嬉しくなった。
「確かに、正真正銘ファン第一号だね」
「なんだなんだ、何の話してんだー?」
船ツアーを終えたルフィが腕を伸ばし、シノ達のもとへと飛んできた。他の面々もその後ろから歩いてくる。
「おかえりー、楽しそうだったね」
「そんなことよりバルトロメオ、とにかくゾウへ急げ」
普段であればローの言い方に突っかかってくるであろうバルトロメオも、何も言ってこなかった。尊敬する麦わらの一味にとってもゾウへ向かうのが急務だと認識しているからだろう。
「サンジ達ちゃんと島についてるかな」
「ナミがいるから航行は問題ねェが、ビッグマム達の艦がどうなったか……!」
ビッグマム。カイドウと並ぶ四皇の一人だ。ビッグマム本人に会ったわけではないにしろ、そう易々と通してくれるとは思えない。しかも、聞くところによると、どうやら麦わらの一味はパンクハザードに来る前の時点で、ビッグマムに喧嘩を売っていたらしい。ドレスローザでの休養中の新聞では彼らやビッグマム関連の記事は無かった。何事もなくゾウへたどり着いていることを祈るしかない。
「カイドウにビッグマムかー……そのうち黒ひげや赤髪のシャンクスとも戦うことになったりするのかなぁ……」
「会っちまったらやるしかねェだろうな」
「じゃあできるだけ避けよう!!」
海賊同盟を組んでいてもどうなるかわからない相手に、ハートの海賊団単体では出来れば会いたくない。避けようといって避けられるものなのかもわからないが、わざわざ四皇達の拠点に近付きさえしなければ、多少は遭遇する確率は下がるはずだ。
「おい、ルフィ。どうやら俺たち、懸賞金上がってんぞ?」
「えー本当か!?」
新聞を読んでいたゾロがルフィに話しかける。ルフィは嬉しそうに目を輝かせた。ドンキホーテファミリーを壊滅させたのだ、当然の結果だろう。どれほど上がったのかとシノも気になり、ゾロの新聞を覗き込もうとする。
「あ、俺の部屋に手配書あるんでどーぞどーぞ!!」
「え……部屋に手配書飾ってんの?」
流されるままにシノ達もそれについていく。ズラリと額に入れられ並んでいる麦わらの一味たちの手配書。これはもうまごう事なきオタ活だ。飾られてはいないが今までのそれも保管しているに違いない。あまりの徹底ぶりに感嘆する。
「私もやろうかな……」
「やめろ」
ローの手配書を飾ろうかと目論んだが、即却下された。シノも含め、クルーのほとんどが、飾ってこそいないがこっそり保管している事は口が裂けても言えない。
「おい、トラファルガー。おめェのは捨てたが5億に上がってた」
「そりゃどうも。額なんてどうでもいい……」
「え、欲しかった!!」
しばらく王下七武海にいたので懸賞金の概念が無くなり、上がることはなかったが、本来であれば既にある程度上がっていてもおかしくは無い実力と功績はあった。思わず手配書を欲しがったが、ローに睨みつけられ、さすがに断念した。
「麦わらの一味も凄いねー億超え5人だよ」
「このままいけばインフレし続けるだろうな」
麦わらのルフィ5億ベリー
海賊狩りのゾロ3億2千万ベリー
悪魔の子ニコロビン1億3千万ベリー
鉄人フランキー9千4百万ベリー
ゴッドウソップ2億ベリー
その他、途中でゾウへ向かった面々も(チョッパー以外は)一律で上がっている。
「今回の事件に関係して際立った危険度を示した人達以外は全員一律に5千万アップなんだべ!」
麦わらの一味だけではなく、バルトロメオやドレスローザにいた他の賞金首達は一律で上がった。それほど今回の一件は、世界中が注目する一大事件となったようだ。ロー同様捨てられてしまっただろうが、誰がいくらか頭に入れておくため、後ほど手配書を確保しなければならない。ゾウがどういった国かはわからないが、新聞や手配書が手に入る場所であればよいが。そんなことを考えぼんやりしていたシノの肩をバルトロメオが叩いた。
「だからあんたのもあるべ」
「へ……?」
「は……?」
予想外に話しかけられて変な声が出てしまった。今までシノに懸賞金は付いていなかった。海軍の前で目立つような行動は行なわず、これといった功績が無かった為だ。今回、ドフラミンゴのせいでドレスローザ専用ではあったが賞金をかけられてしまったことが大きかったのか、シノも正式につけられてしまったようだ。
「ほれ、初めての手配書だろうから記念に取っといてやったべ」
「ワァ……ア、アリガトウ……」
「おーシノ良かったなー!!」
にしししと笑うルフィ。全く嬉しくない記念品を受け取ってしまった。確かに間違いなくシノの名前が書いてある。一律5千万の基準を満たしてしまったようで、早速5千万の懸賞金がかけられてしまった。初めての手配書に、持つ手が思わず震える。
「ど、どうしよう……全く嬉しくない……!!」
「ほらみろ、分かっただろ」
ローの懸賞金が上がるたびに、仲間達でわいわいと喜んでいたものだが、彼自身は全く興味を示さなかったのはこういう事だったのか。ベポの懸賞金を超えてしまい、後で怒られそうだ。
「私、特に何もしてないんだけど……」
「海軍からしたら関係ないんだろ。俺や麦わら屋に与した時点で悪だ」
「そんなー!?」
確かに王宮内で多少好き勝手はしたが、あくまでそれだけであって、誰一人としてドンキホーテファミリーの幹部は倒していない。能力もバレるはずがないので、やはりドフラミンゴによる懸賞金ゲームのせいで顔が割れてしまったのだろう。
「しかしお前に手配書が出るのは予想外だった……どうするか」
「まぁ出ちゃったものはしょうがない……皆へのいい便りになったってことで」
こちらから電伝虫や手紙で連絡を取る手段はないので、新聞の報道や手配書で動向を伝えるしかない。そういう意味では注目されるのはある意味ちょうど良かった。
「別に新聞だけで伝わるだろ」
「ローはともかく私の生死は分からないかもだし」
「お前だけ死なせるわけねェだろ」
「……自分は死ぬ気だったくせに」
「死ぬ気はねェ。死ぬだろうなと思ってただけだ」
「どっちもどっちだよ!?」
結果的に生き残った訳だが、どうもこの男は自分の命を軽く見ている節がある。仲間を大切にしてくれるのはありがたいが、ローが死んだらその仲間達がどう思うのか、自分が船長であるという自覚をもっと持って欲しい。とはいえ恩人の仇のドフラミンゴを倒した今、自らそんな危険な事はしないと思いたいところだ。
「皆、元気かなー早く会いたいな」
「お前らの仲間もゾウに先に行ってるんだったか」
「うん、ゾウ出身の仲間がいるんだ」
「あーあのクマか!!」
「ベポって言うの」
そういえばルフィはシャボンディ諸島でベポに興味を持っていた。チョッパーはミンク族ではなく、トナカイがヒトヒトの実を食べた姿らしいので、ミンク族には会ったことがなく珍しかったのだろう。ガイコツやロボットが仲間のルフィに驚かれるのも癪だが。シノやローも、ベポ以外のミンク族を見たことはないため、少々楽しみではある。
「……おい、バルトロメオ。少し部屋を借りたい」
「はぁ!?なんでお前なんかに」
「麦わら屋、少しシノと話がしたいんだが」
「おう、頼むぞ、ロメ男!」
「よーし、使って良いぞー!!」
確実に周りの扱いに慣れてきたロー。シノが馴染みすぎていることに文句を言っていたが、ロー自身も十分適応能力が高いほうだと思う。ルフィに頼まれ意気揚々と指示をするバルトロメオ。彼の部下の案内のもと、近くの部屋に通された。
「それで、なんの話?」
「いろいろあるだろ。ゾウに着く前に確認しておきたい」
一体どの話を指しているのか。思い当たる節がありすぎて困る。わざわざ部屋を借りて話すからには、ローかシノの個人的な話も含まれるのだろう。
「シノ、言いたいことはあるか」
パンクハザードで再会してからというもの、あまりにも怒涛の日々でドレスローザの騒動を巻き起こし、ようやくお互い腰を据えて話す時間が取れた。パンクハザードからの移動中や、ドレスローザでローの腕が繋がるまでも多少話す機会はあったが、あの時はローの余裕がなかった。肩の荷が下りた今、どの件で文句を言われるのか気が気ではない。
「あー……どれのことですかね」
「お前、いつ悪魔の実食べた」
「あ、そこ??」
「まぁ、なんでヴェルゴと戦ってんだとか、俺が知らない間になんでドフラミンゴに会ってんだとか、ドフラミンゴに何されたかとか、オモチャにされた事とか、言いたいことは山ほどあるが、あとで全部洗いざらい話させるとして、一旦おいておく」
「ヴェルゴのことは遡りすぎじゃない!?」
パンクハザードのことまで蒸し返してくるとは。確かに肋骨を折られていたのをまだ黙っているけれども。一応パンクハザードを出た時にある程度話したのでそれで終わりではないのか。もしやパンクハザードからの行動全て報告させられるのか。そうなったら徹夜も覚悟しなければならない。そもそもローの方がどう考えても無茶をしているのだが、自分の事は棚にあげるようだ。
「食べたのはパンクハザードに着いてから。その前だと船旅中に一人で海落ちたら死んじゃうし……小舟だから何回も転覆してたし……」
「おいまさかお前、あの荒れた海に小舟で来たのか」
口が滑ってしまった。ローの言葉に黙って目をそらす。その様子にローは頭を抱えた。今思えば無茶だったとは思うが、他に一人で動かせる船が無かったので仕方がない。
「……なるほどな、だから海に飛び込むの拒んだのか」
「そういうことです」
はぁ、と長いため息を吐かれる。パンクハザードでベビー5達を拾いに行くように依頼されたのに適当に誤魔化したことも合点がいったらしい。今日だけで何回ローのため息を聞くことになるか。その点に関しては何となく申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
「……まぁだいたいわかった。で、能力の詳細はわかってんのか」
「正直ローとかルフィ君の能力みたいにわかりやすくないから何とも言えないけど、一応元々図鑑で調べてたからある程度は」
マンシェリーが持っていたチユチユの実の能力と似てはいるが、残念ながらそこまで万能ではない。ゆっくりリラックスした状態を作り、体力や疲れを回復出来るが、傷や病気が治せるようなものではない。本来は戦い中に使えるものではない気がする。
「まぁ物は使いようだ。いつでも回復出来る状況を作れるとしたら、かなり活用の幅は広がる」
「回復の補給タンク的な?」
「とりあえず当面の目標は覇気の回復を出来るようにする事だな」
「え、覇気の回復も出来るの!?」
「知らん。だが、試してみる価値はあるだろう」
そのうちシノよりもローの方が、シノの能力に詳しくなってしまいそうだ。難しい事を考えるのは苦手なので、そこは素直にローに甘えることにする。シノはとりあえず今分かっていることを伝えた。
「とにかく相手に触れれば良いみたい。こないだロビンさんに手伝ってもらっていろいろ試したから」
「何勝手にニコ屋と研究してんだ」
「そりゃ発動条件的に、女性相手の方がいろいろ試しやすいし」
「……」
ロビンが研究者気質ということもあり、いろいろな意見を出して試させてくれた。おかげで大分自分の基本的な能力について理解できた気がした。そもそも仲間以外に手の内をさらすなというローの気持ちもわかるが、今後同盟を解消しても、麦わらの一味と本気で戦うことは無いだろういうかむしろ避けるべきだろうと思う。しかも回復能力であれば、多少知られていても問題はないだろう。
「ということで、今度は会うたびにハグとかしたら効率良いと思うんだよね!!」
「却下」
「なんでー!?」
合法的に抱きつけるチャンスだと思ったのだが、ローのお気に召さなかったようだ。べポの癖のせいで、ハートの海賊団はよくハグをするので、今更恥ずかしさもないと思うのだが。
「発動条件はそれだけなのか?」
「どうゆうこと?」
「チユチユの実の能力者は涙でも回復出来るらしい。お前のもその可能性はあるんじゃないか」
「あーそれは試してないなぁ……まぁ他にも無くはないっぽいんだけど、使うことはないかも?」
ロビンとの実験中に泣くような事が無かったので残念ながら試してはいない、が。シノは、うーんと唸りながら目をそらした。他にも心当たりはあるが、正直あまり気が進まなかった。
「そんなもん状況次第だろ。知っておいた方が役に立つかもしれねェ」
「……じゃあ、ちょっと手貸して」
実践した方が早いだろうとシノはローの手を取った。
「わかる?」
「いや……今あまり疲れてねェしな」
「うん、じゃあ」
そう言って、スッとローの手を引き、手の甲にそっと口づける。わかりやすくするため、少々リップを音がしてしまったがやむを得ない、不可抗力だ。ちらりとローを見ると驚いて目を見開いていた。
「わかった?」
「……わかった」
深いため息をつくロー。ロビンとの実験中に、ちょっとした事故で判明したことだ。知って良かったのか、知らない方が良かったのか。恐らくただ接触するより、こちらの方が効き目がありそうだ。
「とりあえず今後は仲間以外に能力の事は話すな」
「了解!」
「それから、金輪際、絶対に敵や妙な奴らに捕まるんじゃねェぞ」
「そりゃもちろん気を付けるけど」
能力を悪用されないようにということだろう。ドレスローザでもマンシェリー姫が囚われていた。トンタッタの人質としての意味もあっただろうが、治癒系の能力は貴重で使い勝手が良い。バレれば狙われやすいのも事実だ。とは言えど、海賊を続ける以上、何が起こるかは分からない。何か対策をするべきかと、考える。
「じゃあ念のため露出少なめの服にしたり手袋とかするかー。布越しだと効果薄めだったから、捕まっても能力バレるようなことはまずないだろうし」
「そもそも捕まるな。服なんて脱がされたら終わりだろ」
「あぁ、なるほど」
そう言われて初めて思い至った。そういう物好きもいるかもしれないということだ。世の中の下衆な奴らは女なら誰でも良いという人間もいるだろう。特に海賊なんて法やモラルも関係ない、自分の欲望に忠実な人間が多いのが事実だ。そこらのチンピラ程度ならシノも負ける気はしないが、警戒するに越したことは無い。ということだろう。
「まぁ、キスも含めてローとしかする予定ないし」
「俺はそんな予定はない」
少し茶化すように言った言葉に予想通りの反応が返ってきた。この男は本当に少しでもシノを女として意識しているのだろうか、以前聞いた言葉はもしかしたら幻聴だったのかもしれない。とはいえ、長年の片思いを拗らせているシノとしては、これくらいでへこたれるような精神はしていない。予想通りの反応には、いつも通りの適当な返しで流すのが一番だ。
「ほら、やっぱそんなもんだよ。こないだもドフラミンゴですら"好みくらいある"って何故か振られた感じになったし、ペンギンやシャチもそうだけど、」
「今なんつった」
「え、なにが?」
ローの言葉に、自分の言葉を振り返る。――どう考えてもドフラミンゴの件だろう。何も考えずに喋った結果、わざわざ地雷を踏みぬいてしまったようだ。自分で話し始めてしまったことなので、隠しても無駄だと思い、素直に白状することにした。
「……あー……ほら、ローが気絶してた時、闘技場の前でドフラミンゴに会ったって話したでしょ。その時、ドフラミンゴの女になるかって聞かれて、もちろんローへの嫌がらせのためになんだけど」
「…………」
ローがわなわなと震えている。
「……お前は本当に何されてんだ!?」
「だから何もされてないってば。好みじゃなかったんだって」
「好みだったらどうすんだ!!!!」
そう言われると、何も言えない。今までの人生であまりモテたことがないので考えたこともなかったが、まぁ今後もないとは言えないのか。ドフラミンゴが女なら誰でも良い主義だったとしたら、考えただけで恐ろしい。
「いいか、お前が今まで誰にも言い寄られなかったのは、俺がいたからだ!!」
「え、そうかな!?」
「俺に限らずクルーの誰かしらが常に一緒に行動していただろ!?」
島に上陸する際に、あまり一人で行動することはなかった。幼少期もずっとローやベポ達といて、船に乗ってからも常に一緒にいる。そしてシノ自身も隠すことなくローを好いていた。そうなったら言い寄られる隙は微塵もなかったのかもしれない。
「わかったら、ちゃんと自覚しろ!お前は十分女として魅力的だ!ドフラミンゴの目が節穴だったんだ、わかったか!?」
なんてことを言い出すのか。シノの先ほどの発言なんかよりよっぽど恥ずかしい。顔が真っ赤になるが恥ずかしすぎて動くことすら出来ず固まってしまう。
「は、はい……」
なんとか返事をすると、よし、とようやくローが腰掛けた。ローは恥ずかしくないのだろうか。ローにとっては世間一般論を述べただけなのか。そういえば、今では随分昔のことに感じるが、パンクハザードに旅立つ前にも近しい話をしていたきがする。あの時も別に恥ずかしがっている様子はなかった。
好みの問題なので、ドフラミンゴの目が節穴だったかは置いておいて、つまりローにとっては好みということなのだろうか。そうとっても良いのだろうか。
「やっぱり全部聞くしかねェな……」
「他にやましい気はないよ!?ヴェルゴに殴られた時も帽子や服の上からだったし、ドフラミンゴにも脇腹銃で撃たれたり蹴られたけど直接は触ってない……あ、放り投げられた時、手首触られたかも……ってちょっと服捲らないで!?」
「診察だ、黙ってろ!!」
着ていたTシャツをちょうど下着が見えないくらいの胸の下まで上げられる。全てここ数日の話なので傷が消えているはずもない。腹の間近でため息を吐かれ、くすぐったい。診察のためだと分かっていても少しドキドキしてしまう自分が憎い。
「……お前、肋骨骨折してるだろ。腕もヒビ入ってるぞ。脱臼も無理やり治したな」
ずっと忙しくてスキャンする暇もないと思っていたのに。全て丸見えのようだ。脇腹の傷は露骨なので正直に話していたが、それ以外はぱっと見バレないとたかをくくっていたのだが。
「……傷を残さないためには早めの処置が大事だって何度も言ってんだろうが」
「……ローを守ってついた傷だもん、残っても良いよ。それより心配かけたくなかったし……」
「バカ言え、他のやつにつけられた傷なんて絶対残すかよ」
特にドフラミンゴ、と付け加える。よっぽど嫌いなのだろう。一周回ってなんだか面白くなってきた。結局すぐ様治療が始まってしまった。なんだかんだ大切にされているのだからしょうがない。素直に治療を受け入れることにした。よく考えたら治療のために何度も裸も見られているし、今更恥ずかしがるもの等何もない。シノはローに促されるがままにソファへ寝転がり、身をゆだねて目を閉じた。
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